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第6回国連障害者の権利条約特別委員会

短報  2005年8月12日(金)

崔栄繁
DPI(障害者インターナショナル)日本会議

午前

マッケイ議長より議長報告(Report of the Chairman)が提出され、それに基づいて議論した。議長レポートはこの間議論がどのように進んできたのかを示すものである。また、15bis、16、17、21条等のファシリテーターによるコンサルテーションの結果についても報告を行った。

●24条のファシリテーション

タイ:24条のファシリテーションについて報告する。内容の重複を避け、柱書の強化も行い、より実行力の強い条文となるよう努めた。ある程度の合意には至ったが、知的財産権・著作権の問題など、今後さらに話し合う必要のある事項も課題として残った。

●21条について

議長:21条についてはヨルダンがファシリテーターとなって議論を行った。具体的な文言も出てきている。括弧に入っている文言についてはまだ合意がなされていないので、今の段階では、それ以外の部分について議論を行い、それに引き続いて21bisについての話し合いを行いたい。

ニュージーランド:全体としてはだいぶ進展したが、インフォームドコンセントについての言及がなされていない。また柱書にあるHelth Serviceという言葉には、地域や社会における全体的な健康サービスが含まれるべき。

カナダ:ヨルダンのファシリテートにより、草案は大変進展したものとなったが、保健医療サービスやリハビリテーション、ハビリテーションについて、「それらのサービスが提供される」という書き方ではなく、「そのようなサービスにアクセス出来る」という書き方にしてほしい。またサービスへのアクセス時に、自由とインフォームドコンセントが確保されることが明記されるべき。

EU:いくつかのEU提案がファシリテーター案には反映されている。ニュージーランドの意見を支持する。

コスタリカ:ニュージーランド、カナダの意見に賛成する。またインフォーマルな形でのカタール提案があったが、それもファシリテーター案に入れてほしい。

チリ:全体としては良いと思うが、保健医療サービスなどの提供において、自由と強制されないことが確保されるべき。

タイ:「自由」と「インフォームドコンセント」という言葉を入れるべき。

イエメン:21条からはリハビリテーションを削除し、医療サービスに特化させるべき。

WHO:病気進行の予防という点から、リハビリテーションが医療サービスを通じて早い段階から提供されることが大切。

アルゼンチン:「自由」と「インフォームドコンセント」という言葉が入るべき。

ロシア:リハビリテーションは医療を扱う条項で扱われるべき。リハビリと医療には強い関連性があるというWHOの意見を反映させてほしい。

●21条bisについて

議長:(リハビリテーションとハビリテーションを扱う項として)21条bisを独立条項にすることは広範な支持が得られているものの、それに反対する意見もある。
パレスチナ:リハビリテーションとハビリテーションの違いについて理解できない部分がある。リハビリテーションは職場復帰という側面が強く、ハビリテーションとは生まれながらの障害に対応するものなのか。リハビリテーションとハビリテーションの違いをより明確にしなければならない。
インド:リハビリテーションや健康について述べる際には、様々なdeviceの開発についても触れるべき。また21条bisは医療的なリハビリに限定すべき。
マリ:リハビリテーション、ハビリテーションの概念をより明確にすべき。仏訳ではよくわからない部分が出てくる。
カナダ:医療・社会リハビリテーションの定義については、ファシリテータ案でいいと思うが、歴史的に障害者がリハの側面からどのように扱われてきたかについても言及すべき。「自由」と「インフォームドコンセント」という言葉を入れることも重要。「サービスを提供する」という書き方ではなく、「サービスにアクセスできる」という書き方にすべき。
イスラエル:医療と社会心理的リハビリテーションを分けるべき。
チリ:21条bisはこの条約全体に関わる哲学的な問題を含んでいる条項である。医療リハビリテーションのみならず、より広い概念の下で、社会リハビリテーションも考えなければならない。
カメルーン:「リハビリテーション」や「リアダプテーション」の理解や概念把握がより明確になされるべき。またリハはアクセスビリティーにも関係するものである。重複を避けつつも、関連条項との関係を考えるべき。

●22条について

ファシリテーター:以下のような意見が出された。
・法的な就業年齢にある障害者は、他の者との平等を基礎として、差別されない。
・労働への権利の目的が列挙されるべきではない。
・アファーマティブアクションについて意見の相違が見られた。
・割当制度を強化すべきとの意見もあった。

●19条について

ファシリテーター:以下のような意見が出された。

・7条や2条に入れるべきとの意見も出された。
・漸進的な実現に賛成する意見と、反対の意見が出された。
・もっと簡素化すべきとの意見と、現在のままでいいという意見が出された。
・19条と20条をまとめるべきという意見もだされた。
・物理的アクセスのみならず、情報へのアクセスも確保されるべき都の意見が出された。
・民間事業体にアクセシビリティーの義務を課すことへの是非も議論された。

午後

マッケイ議長から合計31ページにわたる「議長報告(Report of the Chairman)」(案)が出された。これは、第6回特別委員会での非公式討議の内容をまとめたものである。条約の構成、草案15条から25条までと、15条bis、24条bisについてである。内容確認のため、各項目、各条文について異論がないか、政府代表が確認した。議長報告は、今次会議報告の付属書IIとして納まることになる。

今までの討議の整理なので、ここで特に細かいことは省くことにするが、議長報告(案)について各条項での細かい修正意見は提起されたが、全体として大きな問題は全くなかった。議長報告(案)の内容確認・チェックは、非常にスムーズに進められたという印象を受けた。

議長報告(案)のイントロダクションでは、この討議は作業部会草案の条文についての論点をできるだけ多く明確にするためのものであり、漸進的実現をもとめる社会権について扱う条項が多いが、いわゆる社会権的条項の中にも、即時的効果が求められる自由権の要素を含むこともあり、社会権の「漸進的実現主義」はそのまま受け入れられるものではない、こうした問題を例えば、4条の一般規定で扱う必要があるという合意が得られた、ということなどが述べられている。こうした既存の自由権と社会権の二分論に対する問題提起が条約策定作業でなされているということは興味深い。

また、条約の構成に関してであるが、作業部会草案の構成は、一般的には受け入れられているが、一部の政府代表からは、ある条項に関しては位置を移すべきであるという意見があったということ、自由権と社会権の条文を分けて規定するということに対しては、いくつかの条項は両方の性質を持つものであるということなどから、条項の配置について柔軟であるべきであること、また、権利の階層(hierarchy)を作ってはならないという指摘がなされたこと、が述べられている。

また、一部の条文のファシリテータから報告がされた。

22条(労働)のファシリテータによれば、昼休みにファシリテータ会合がもたれた。EU、日本、NGOなどが参加し進展がみられた。アファーマティブアクションについて、特に民間部門において、どうするか解決していない。大企業への雇用割当についてはアファーマティブアクションという文言でよいとか、ここでは公共部門が先駆けになるという意見も出た。Lawful working age(合法的な就労年齢)という言葉は削除すべきであるという意見が出た。

24bis(国際協力)のファシリテータ(メキシコ)によれば、何条にするかは別として、内容に関しては、障害者の権利促進において国際協力の重要性にかんがみて、関係国や市民社会の参画が大切であり、障害者団体のサポート、人材育成のサポートに関する幅広い議論が必要である。国際協力と開発を障害者のニーズにかんがみ推進すべきであり、政策決定の中でメインストリーム化が必要であり、国際協力の中には経験の共有、技術支援なども含まれる。また、どれくらい詳細にわたって記述するかは慎重にすべきであるという意見が出された。国際協力は国によっては入れるべきでないという意見もあった。経済支援などをいれるべきかについて、民間で行われるということについて懸念もあった。

17条(教育)のファシリテータのローズマリ(豪)からは、教育の権利にインクルーシブという原則を入れるため、柱書きに2bを挿入するという意見が出されたということ、などが報告された。

こうした報告の後、マッケイ議長からまとめがあり、来年は2回の特別委員会を3週間

以上