音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

第6回国連障害者の権利条約特別委員会

短報  2005年8月2日(火)

寺島彰
浦和大学 教授

特別委員会で話合われたテーマについて、非常に簡単に報告します。本報告は、正式な報告ではありません。本報告は、国連で何をしているのかに親しんでいただきたいと思って作成しております。筆者が聞き取った範囲のものであり、正確な報告は、UNのホームページ、日本政府の発表、傍聴団の報告等を参照していただくようにお願いします。

8月2日午前1

第15条bis「障害のある女性(Women with disabilities)」に関する議論

議長団

 第15条bisは、第3回特別委員会で韓国から提案された。障害をもつ女性独特の問題であることから、独立条として取り扱われるべきであるというのが主な提案理由である。しかし、障害女性の問題を独立条にすることについては、第4回、5回の特別委員会でも決着がついていない。今回の特別委員会でもこの議論が行われた。
 英国を代表とするEUやニュージーランド、オーストラリア、メキシコ等は、独立条にすることに反対である。その理由は、限られたグループのみを対象にした条をもうけるなら、先住民などのさまざまな同様のグループに対する条項もつくらなければならない。また、女性差別撤廃条約との重複にもなるし、モニタリングも複雑になる。そこで、前文である第4条「一般的義務(general obligation)」に4.2bisをもうけて一般的な事項として記述することを主張する。
 また、モロッコ、ケニア、ウガンダなど韓国の提案に賛成する国も多く、さらに、韓国の提案を発展させて独立条を作りさらに一般的な事項として記述することを主張するコスタリカ、チリ、イラン等の国や、高齢の障害女性についても記述すべきことを主張するエルサルバドルのような国がある。また、カナダは、統計やモニタリングの中にも記述すべきと主張している。DPI等の障害者団体も女性差別撤廃条約には女性障害者に関する記述はないので独立条にすべきであると主張している。
 結果的には、障害女性が障害と女性の両方の非常に不利な立場にあり、条約で取り上げるべきことは認められているので、コスタリカが主張するようなシステマティックで総合的(comp;ihensive)な観点から、この件に関するファシリテーター(facilitator)を任命し、関心のある人々と協議し、条約でどのように取り扱うべきか検討していただき、その報告を待って独立条項にすべきかどうかを検討することとなった。

8月2日午前2・午後1

16条「障害児(Children with disabilities)」についての議論

発言中の日本代表角参事官

 ケニアのジョセフィンセニアさんがファシリテーター(facilitator)で作業部会草案が提出されている(UNのHP参照)。今回、特に話題になったのは、その脚注に書かれているように、本条が子供の権利条約第23条をもとにしているために、子供の権利条約の引用のようになっていることについての是非についてである。
 権利条約23条からの引用であれば、重複して取り上げる必要はないとする国がほとんどであったが、その対応については、さまざまな意見が出された。EU、ニュージーランド、メキシコ、イスラエル、カナダなど多くの国は、本条を独立条とすることに懸念を示し、一般的な項目として前文(第4条)に記述したり、施設居住については15条にすべきであり、健康について24条に記述するというように内容を各所に書き分けるべきであると主張する。イエメンは、16条のみで取り扱われると他の条項が障害児を対象としていないように受け取られる可能性があるとして同様の主張をしている。

 また、チリ、韓国、フィリピンなどは、16条は独立条とするものの、子供の権利条約と同じものを記述するのではなく、非差別、強制施設収容禁止、出生前後の保護、教育を受ける権利、虐待禁止などを記載すべきであるという意見であった。障害者団体であるDPIラテンアメリカも同様の意見であったが施設収容は、ラテンアメリカの一部の国々ではむしろそれが障害児童を守る唯一の方法である場合もあるのであまり強いトーンで主張しないということであった。
 最終的な結論としては、障害児のメインストリーミングの重要性に関しての共通認識があること、16条が不十分であるという共通の認識が得られたこと、虐待の防止や、遺棄、出生時の保護など権利条約独自の価値を追加する必要があること、独立条とするかどうかは、第15条bisと同じようにファシリテーターに依頼し文言を見直してもらうということになった。

8月2日午後2

「教育(education)」についての議論

 オーストラリアの政府代表者ローズマリーさんがファシリテーターをしており、作業部会草案が提出されている(UNのHP参照)。かなりボリュームのある条で、脚注も多いため、パラグラフ毎に検討していくことになったが、全体に対して、オーストラリアから別の草案が提案された(会場に配布)。また、障害者団体である障害コーカスからも独自の草案が提出された。
 どの作業部会草案を採用するか、あるいは、折衷するのかなどの意見が出され、また、さらに追加すべき内容についても提起されたが、議論は明日3日朝に再開されることとなった。

サイドイベントの様子

 注)サイドイベント-Experiences from the United States and the Inter-American Human System of Human Rights
 米国政府の支援を受けてMental Disability Rights Internationalという精神障害者 と知的障害者を支援するNGOが実施しているラテンアメリカに対する障害者の権利擁 護のための支援内容についての説明がありました。
 米国政府は、支援機器、移送、地 域での自立生活、雇用、教育などにおける障害者の権利擁護などについてインターアメリカというプロジェクトによりラテンアメリカを支援しているとのことです。