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第6回国連障害者の権利条約特別委員会

短報  2005年8月3日(水)

寺島彰
浦和大学 教授

特別委員会で話合われたテーマについて、非常に簡単に報告します。本報告は、正式な報告ではありません。本報告は、国連で何をしているのかに親しんでいただきたいと思って作成しております。筆者が聞き取った範囲のものであり、正確な報告は、UNのホームページ、日本政府の発表、傍聴団の報告等を参照していただくようにお願いします。

8月3日午前・午後

第17条「教育(education)」についての議論(継続)

昨日に引き続き、第17条「教育(education)」についての議論が継続された。昨日、作業部会草案以外に、オーストラリアと障害コーカスからの独自の草案が提出されたが、本日、さらに、EU案も提出された。それ以外にも、タイや日本などからコメントが文書で示され、本条の重要性があきらかになるとともに、議論をまとめることが難しいように思われた。
議長は、会議の冒頭で、作業部会草案を中心に議論することと、パラグラフを切って議論することを述べ、議論の焦点を絞ることを提案したが、それでも、オーストラリア案やEU案についての発言も多くなされ、なかなかまとめることは難しい状況になった。それぞれのパラグラフについて次のような議論がなされた。

パラグラフ1についての議論

  • 柱書について、作業部会草案では、教育の対象者が障害をもつ子供(children)になっているが、生涯にわたって教育は必要であることから、対象を人(persons)にすべきであるという点については、共通理解があった。
  • 多くの国が、柱書に教育の目的としてインクルーシヴ(inclusive)を入れるべきであるという意見であったが、教育の目的を特定のアプローチに限定してしまうことについて反対する意見もあった。
  • 柱書にある前向きに(Progressively)実現していくという記述は、特殊教育を否定された場合などには実施不可能であるため、それを削除するべきであるという意見もいくつかの国から出されたが、そのままでよいという意見もだされた。また、第4条に入れればどうかという意見もあった。
  • (a)は、このサブパラグラフを全部を削除する案や逆に残すべきであるという案が出た。
  • (b)では、free societyの意味が漠然としているのでfreeをはずすことや、この(b)自体が不要であるという意見もあった。
  • (c)に性格(personality),才能(talents)、身体能力(mental and physical abilities)が取り上げられているが、それに創造性(creativity)をいれるという提案もあった。
  • (d)では、個別教育計画(individualizing education plans)の用語についての意見が多く出され、planを program、methodまたはparticular methodとすべきであるという意見が出された。
    また、専門教育(professional education)についても記述すべきであるという意見もあった。

パラグラフ2についての議論

  • 柱書について、作業部会草案では、義務的規定になっているが、shall ensureの間にendeavorを挿入して努力規定にすべきであるという意見が日本などから出された。
    (a)については、accessible education をaccessible quality educationにすることについては共通の認識が得られた。また、effectiveを挿入するという意見もあったが、それは今後の検討となった。さらに、chooseという用語を用いることについて、主語が締約国なので、選択できるのは締約国となってしまうという意見もあったが、この文章でも障害者の選択権であると理解することが可能であろうという議長の判断であった。また、地域(in their own community)での教育を受けることについては、多くの国々が賛同しているが、現実的に難しいという国々の主張もあった。
    (b)については、障害をもつ教師に対する教育について、この部分かあるいは別の部分に記載すべきであるという意見が多く出された。
    (c)については、無料の初等義務教育の対象が子供(child)とされているところを人(persons)にすべきであるという共通理解があった。また、初等教育だけでなく中等教育も含むべきであるという意見もいくつかあったので、ここに中等教育も追加するとともに、EU草案の第4条のような記載についても今後の検討課題とするという提案があった。

パラグラフ3についての議論

タイから代替案が提出されたためそれをもとに議論が進められた。タイの案は、本パラグラフのサブパラグラフをなくし、対象者を視覚障害、聴覚障害、盲ろうの感覚障害者にしぼって一般の人々と同等の教育が受けられるようにするというものであった。

EUは、特定の障害者を記述することには反対であり、本パラグラフを削除し、バラグラフ1の柱書をeffective educationにすると主張する。

障害のリスト化は避けるほうがよいという意見がいくつか出され、タイの提案は保留とされた。

また、本パラグラフは、パラグラフ4、5とのかかわりが強いので議論を早めに切り上げて次に進むこととした。

パラグラフ4と5についての議論

パラグラフ4と5は、似ているところがあるので一緒にあつかうこととされた。その結果、オーストラリアやニュージーランドのように、両パラグラフとも削除する案や、EUのようにひとつにする案、日本のように努力規定とする案、そのまま採用するという国などその取り扱いについていろいろな意見が出された。

また、点字、手話などの取り扱いについて、点字や手話のみではなく他の代替的意思伝達手段を記載すること、手話と点字の違いを明らかにすること、代替的な意思伝達手段における専門訓練における認証制度の必要性、高等教育についての意見も出された。

なかなか議論がまとまらず、明日、障害者団体の意見を聞いた後にまとめることになった。

サイドイベント セルフアドボカシーとインクジョン(Self-Advocacy and Inclusion)

全体の様子写真1

主催は、インクルージョン・インターナショナルで第三日目の昼食時(1:00-3:00)に会議室Cで行われた。テーマは、権利(Rights)の概念について参加者と共有することであるという説明であった。

内容は、パネリストの実体験に基づき、権利の概念を具体的にイメージしていこうとするものであり、パネリストまたはその母親により障害当事者としての経験が語られた。(全体の様子写真参照)

パネリストパネリストの皆さん写真2(パネリストの皆さん写真参照)として、カナダからレベッカ・ビーニィーさんとその母親スーザン・ビーニィー、パナマからハイディ・ベックルさんとマニュエル・オカンポさん、ニュージーランドからロバート・マーチンさんとその母親、米国からスー・ウエンソンさんが参加されました。自己決定権のありかたなど非常に興味深い話が聞けました。詳しくは、インクルージョン・インターナショナルからの報告をご参照ください。