音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

第6回国連障害者の権利条約特別委員会

短報  2005年8月5日(金)

寺島彰
浦和大学 教授

特別委員会で話合われたテーマについて、非常に簡単に報告します。本報告は、正式な報告ではありません。本報告は、国連で何をしているのかに親しんでいただきたいと思って作成しております。筆者が聞き取った範囲のものであり、正確な報告は、UNのホームページ、日本政府の発表、傍聴団の報告等を参照していただくようにお願いします。

8月5日午前・午後1

第19条 「アクセシビリティー(ACCESSIBILITY)」についての議論

最初に議長から次のようなこれまでの議論のまとめがあった。

  • 19条には、他条と重複する内容が多くある。それについて、条項を分散してなくしてしまうという意見と、逆にさらに細かくするという意見がある。特に、19条と20条は多くの重複があり、その取り扱いについて検討がされてきた。アクセシビリティーを入れることには問題はないが、どこに入れるかという問題である。また、文章のバランスを考える必要がある。
  • 本条には、リスト化が多く、そのためにインクルーシィヴではなくエクスクルーシィヴになっているという批判もある。というのは、リスト化するとリストに入っていないものは実施しなくてよいということになる傾向があるからである。
  • アシスタントとサポートの適切な組み合わせを考える必要についても指摘があった。その後、各国からの意見が提出された。その内容をまとめると次のようになる。
  • 20条との重複については、いくつかの国は、一般的な内容にしてもっと短い条項にすべきであるという意見を述べたが、逆に内容を加えるという意見も多かった。
  • 19条をもっと前にもっていくという国もあった。
  • 20条から先に検討したらどうかという国もあった。
  • アクセシビリティーとユニバーサルデザインを第2条の原則に移したらどうかという意見があり、NGOもそれに賛成した団体がある。
  • 権利が強調されるべきであるという意見もあった。
  • アクセシビリティーに関して、建物だけではなく情報も含むべきであるという主張もあった。
  • 柱書に手段を書くべきだという意見もあった。
  • 公共の建物だけを対象にするのか、民間の建物も対象にするのかに多くの焦点があてられたが、ヨルダンが指摘したように誰が使うかを問題にすべきというだという大方の合意を得られた。
  • 公共交通を含むべきとの意見文言あった。
  • 国際的基準をつくる必要性についての指摘もあった。
  • obstacleという用語をbarrierにすべきという意見もあった。 本条の議論で注目されるのは、日本障害フォーラム(JDF)が初めて意見表明をしたことある。傍聴団の長瀬さんが、JDFを代表して、次の二点について述べた。
    (1)本条は、民間所有の又は民間開発の建物、設備又はサービスに及ぶべきであり、緊急に取り組む必要があること、
    (2)IDCの条文案の、難聴者が「音声コミュニケーションを利用できるようにする効果的な方法」ならびに文字通訳者に関する記述を本条第2項に盛り込まれるべきこと。

8月5日午後2

第20条 「個人の移動(PERSONAL MOBILITY)」についての議論

議長のコメントでは、作業部会草案草案のcは、第4回特別委員会において第4条に移されたこと、本条に関して第19条と統合するという案や一部を19条に移動させる案があること、リスト化についての懸念もあったが逆にリストを増やすという意見もあったとのことである。
その後、参加国から次のような意見が出された。

  • 加盟国は、有効な技術を低価格で障害者が利用できるようにすること。
  • 漸進的な対応について問題視する国も多かったが、これは、システムの整備問題であり、緊急には実現できないのではないかという意見が議長から出された。
  • リスト化の問題に関しては、内容別に項目を分ける方法も提案された。
  • 19条とのすみわけに関しては、19条がより一般的な概念を記述し、20条は、移動に関するアクセシビリティーを記述すればどうかという意見もあった。
  • 移動の権利といっても、幅広い。たとえば、障害故に市民権を獲得できない場合、パスポートがとれないために外国にいけないということも含まれるであろう。

8月5日午後3

第21条 「健康とリハビリテーションに対する権利(RIGHT TO HEALTH AND REHABILITATION )」についての議論

最初に議長からこれまでの経過について説明があった。それによれば、本条についても、いくつかの内容を他条に移動すべきであるという意見がある。例えば、医学リハビリテーション以外のリハビリテーションは、別の条に記述するというような提案がである。
 本日は、ロシア、UKとセリビアモンテネグロが発言したころで議論は終了。

※帰国しますので、短報はこれで終わりです。すこしでも皆様のお役に立っていれば幸いです。
少しコメントを付け加えさせていただきます。今回、はじめて全難聴から3人の参加がありました。強力なロビー活動により、障害コーカスの草案に、放送と通信に関するアクセスについて付け加えていただきました。これらの内容は、小生が委員長をしております放送協議会放送通信バリアフリー委員会の懸案事項であります。障害コーカスの提案は、作業部会草案にとりいれられる可能性が高く、全難聴の高岡さん、瀬谷さん、清成さんの行動力に敬意を表すとともに感謝申しあげます。