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第8回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年8月14日(月)

(午前)玉村公二彦:奈良教育大/JD(日本障害者協議会)、JDF(日本障害フォーラム)条約委員会

(午後)中村尚子

午前(玉村公二彦)

二階席から。政府代表団、NGO傍聴団でぎっしりである

 第8回のアドホック委員会がいよいよ始った。政府代表席はもちろんのこと、周囲の傍聴席もぎっしりで、冒頭のマッケイ議長によると、NGOの登録者数は800人、これは政府関係者よりも多いとのことである。


議事開始(議事の進め方)

 議長は、先に「手紙」に書いたように、今回の特別委員会は、内容や文言をあれこれいじるのではなく、最終の合意文書に仕上げることが目標であると、何度も強調していた。ここで合意された条約案は、ドラフティング・コミッティー(起草委員会)で、公用語の使い方や全体に矛盾がないかという観点でチェックを受け、最終的には第61回国連総会提出されることになるとのことであった。まだいろいろ難しい問題もあり、調整が必要な部分については、問題を感じている国どうし、見解が違う国どうしが非公式に会合をもって、事前に調整し、その結果をもって、特別委員会で発言するシステムをとるという説明があった。

モニタリング

 午前中は、こうした議事進行についての提案のあと、モニタリングについての条文案が提案された。これはメキシコが中心になって事前に協議した結果であり、第34条から第42条の9箇条にわたるかなりの長文で、既存の人権条約において課題となっているモニタリングのあり方から学んだ構成になっている。まず、メキシコから案にいたる経過と実施メカニズムの性格、機能、メンバー、行政的な問題、条項の概要についてブリーフィングがあり、モニタリングについての議論が開始された。

 形になったのは初めてなので、時間をかけて議論がつづいていた。議論を受けて、マッケイ議長は、新たなモニタリング機構の設立については、一部懸念が表明されたが(重複すること、負担が大きいこと)、賛成の意見も多いことを指摘し、既存のモニタリングシステムの効率性の問題、重複の問題、いくつかの条約体設置反対論(設立そのものに反対、他の条約体に組み込む)を考慮しつつ、条約体をもたないという選択は他の人権条約より地位が低くなることを指摘した。モニタリングの議論は、午後に継続された。

午後(中村尚子)

「国際モニタリング」のつづき

 午前に引き続き、ファシリテータであるメキシコから提案された国際モニタリングに関する条項案について、各国が意見を述べた。

 なお、ファシリテータテキストの条項は次の通り。

  • 第34条 障害者権利委員会
  • 第35条 政府報告
  • 第36条 報告審査
  • 第37条 個人通報
  • 第37条bis 調査
  • 第38条 締約国への訪問
  • 第39条 締約国と委員会の共同
  • 第40条 本委員会と他の条約体との関係
  • 第41条 委員会報告
  • 第42条 締約国間会議

 条項案にみられるように、ファシリテータ案は、既存の人権条約に設置されたモニタリングシステムのほとんどを組み込もうとするものである。他の人権条約によることなく、障害のある人々の権利の独自性に焦点を当てて、この条約にふさわしいモニタリングシステムをつくるべきであるとする考え方のもとに提案されている。午後は、時間のすべてを費やして、この案に関する討論を行った。

 ほとんどすべての政府代表が、基本的にはファシリテータ案を支持するものであった。その理由として、モニタリングシステムなくしては条約の内容を実現することはできない、既存の人権条約のモニタリングシステムを利用するといったことでは障害のある人々の権利は保障できないという発言をする国々が目立った。また、モニタリングシステムが国連と各国に負担を強いており、これを改革しようという時期にあるために、新しい「委員会」を立ち上げることは得策でないという意見が従来からあったが、そうした現状は認識しつつも、それだからといってこの条約のモニタリングシステムが否定されるものではないという意見も多かった

 そうしたなかで、モニタリングシステムを否定する発言が、アメリカ、中国、スーダンあった。また、国連改革との関係での現実性への疑義(コスタリカ)、個人通報制度を義務づけると留保が増えるのではないか(キューバ)、個人通報の部分はオプションとすべきである(タンザニア)などの意見、さらに第三世界の条約の実行においては、国際協力の内容と関わらせて議論すべきであるとの意見があった。この議論において、日本政府は新たな条約体をつくることに関する「情報不足」を理由として、慎重に検討すべきであると発言。各国のコストを勘案すべきである、国連の予算も限られているという曖昧な姿勢に終始した。

 最後にIDCの発言の時間があった。国際モニタリング機構が必要である、条約委員会に障害者が過半数以上参加すべきである、重複はさけるべきである。これまでの条約体は障害者にたいする専門性がなく、質も低い。

 あすは、質問に答えるかたちをとって、議長から国際モニタリングについての提案がなされる予定。議長は、積極的にインフォーマルな会合を開くことを呼びかけた。(中村・玉村)

日本政府国連代表部高瀬公使主催の懇親会