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第8回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年8月18日(金)

(午前)中村尚子:立正大/JD(日本障害者協議会)

(午後)JDF(日本障害フォーラム)条約委員会

午前(中村尚子)

ニューヨークの様子

 5日目の朝、9時から30分ほど、日本政府とJDFのブリーフミーティングが行われた(詳細は、別途報告参照)。

 定刻の10時になっても席はあまり埋まっておらず、開会はきょうも遅れぎみ。10時35分開会。

 冒頭、議長から今後のすすめ方について説明があった(かなりの時間をとった)。本日からの議事は、前文、および現在の草案各条項について、意見のある国は事前に書面を提出し、それに沿って意見が出た部分について協議する。ただし、大きな意見の違いが予想されている[  ]で囲まれた部分をのぞくこと。また、その意見に賛成の意見を述べることは控え、反対意見は挙手をし、委員会とは別の場で提案者と話し合って合意点を導き出してほしい。反対意見がなければ「合意」とみなして次へすすむ。1条に充てる時間は30分見当。[  ]のついている部分については、別途時間をとる。

 しかし、議事そのもののすすめ方に対する意見がつづいたり、提案への賛成意見を述べる国、[  ]の部分について発言する国、最初に提出されている箇所とは違う文言について発言する国など、なかなか議長の思惑通りにはすすまない。また提案がペーパーになっていない口頭のみの意見は問題外であったが、事務局には届けたが印刷されなかったとか、翻訳が微妙に、あるいは明らかに違うなど、手続き上の行き違いや不備を訴える発言もつづいた。各国の提案を一冊にまとめてほしいという要望が出されたが、事務上、かなり難しいということで、議長の快諾は得られなかった。発言ごとにペーパーが配られ、しかもNGO席までは回ってこないので、それをもらいにいくのも一苦労であった。

 以下、意見のあった条文。

[前文]

  • s項 「武力紛争」のあとに「外国による占領」を入れる【スーダン】
  • u項 を削除。この条約は国家が個人に対して守るべき義務を定めたもので、個人の義務・権利ではない【ノルウェー(EU)】 本条約がめざす権利に対して、やや曖昧な記述である【カナダ】
  • p項 障害のある子どもに関するここの記述は、子どもの権利条約の記述とは異なる【シリア】→出典をしらべることになった
  • O項 女性と少女への暴力等についての記述のうち、「少女」は18歳までは家庭の保護の下に置かれるから、この記述は問題【シリア】
  • IDC~障害のある先住民のことを書き入れたい

 このようなかたちで、午前中は第1条から第7条まですすんだ。出された意見は以下のアドレスに掲載されている。
http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc8contgovs.htm

[第1条]文言修正が中国とバチカンなど
[第2条 定義]
<コミュニケーション>
「ノンバーバルコミュニケーション」を入れてほしい【IDC】
<障害にもとづく差別>
日本政府が[直接差別]にほかに間接差別という表現を記述することに反対し、間接差別を削除するよう主張した。「あらゆる形態の差別」に含み込まれるというのがその理由。しかし、[ ]をとって本文に、というのがここまでの合意であるとの認識が議長から示された。この部分については、個別の協議に。
<合理的配慮>
「不釣り合いな負担」への異議(オーストラリア)、言語のちがいによる含意の相違
<ユニバーサルデザイン・インクルーシブデザイン>
その含意について。しかし、議長はこれまで何度も議論してきたのではないかと反論。
[第4条 一般的義務]社会権のうち、即時的に実施すべき場合がある旨の文言を削除して、すべて漸進的実現でよいとする中国の意見もあったが、議長はこれまで何度も議論してきたのではないかと反論。このほか、カナダやアフリカ諸国からペーパーで提案あり。
[第5条 平等と非差別]EU、ICCPR(自由権規約)第26条に沿う内容であるべき。文書提案あり
[第6条 女性、第7条 子ども]EUやバングラデシュからの書面提案の他、いくつかの国から発言。

午後(JDF(日本障害フォーラム)条約委員会)

マッケイ:今回の特別委員会で議論を終わらせることを目的として、インフォーマル・コンサルテーション(非公式協議)を行なってきた。しかし今朝の議論で分かったのは、簡単な分野だと思ったところが実はそうではなかったということ。過去に何度も話し合ってきたところをまた繰り返し、うまく議事が進行したとはいえなかった。用語に関しては各国が批准しやすいように作っていかなければならない。さもなければ、条約自体が完成しない。各国提案がある場合には、提出期限を今日の18時とし、それをすぐにWEBサイトでアップしたい。それを各自見て検討の上、週末を挟んで考えて来て欲しい。そして来週月曜から議論が進むようにしたい。条約を批准するためにとても重要であると思う提案があれば、今日の18時までに事務局に出すこと。とにかくこの第8回特別委員会で議論を終わらせなければならない。

エジプト:今回で議論を終わらせるために協力したいが、今日の18時というのは厳しい。月曜の朝までにして欲しい。

マッケイ:月曜の朝では厳しい。18時が厳しいということであれば19時にする。

エジプト:今、インフォーマルを行なうということであれば、とにかく難しい。

シリア:エジプト同様、今日18時に締め切るというのは、問題があると思う。今回のセッションで終わらせることは重要だが、18時で終わらせるのはフェアじゃない。月曜の朝までにして欲しい。

マッケイ:もしインフォーマルが行なわなければ、締め切りが18時でもいいというような意見も出たように思う。議長としては、すでに書かれている文言を見てもらって、そこにまた手を加えて欲しいということ。もう議論は尽くしてきた。性と生殖などに関しては未だ対立点もあり、まだコンサルテーションが必要な部分もあるが、まとまっているところもある。

イエメン:議長提案は受け入れがたい。もしインフォーマルが行なわれなくても、時間が必要。提案提出の期限は、月曜の朝がやはり適切。

マッケイ:会議をどのように進めるかを決めることが、今の段階では重要。時間をあけると、また新しい提案が出てきてしまう。

EU:議長案を支持する。議論を進めることが重要。

マッケイ:国連の外部からの攻撃などにより、WEBサイトの調子が良くないようで、今夜以降e-mailで提案を受けることは技術的に難しい。締め切りを金曜の深夜にしたい。

韓国:この第8回目のセッションで終わらせるためにも、議長提案に従うべき。エジプト、シリアの懸念も分かるが、議長提案の深夜12時の締め切りがいいと思う。そうすればWEBサイトに掲載することができ、e-mailで送る手間が省ける。

ブラジル:議長提案を支持したいが、モニタリングや定義については、まだインフォーマルを続けたほうがいい。

マリ:議長提案は困難である。何らかの形で条約をまとめなければならないが、条約の内容に関するものは、きちんと話し合うべき。

カナダ:今夜12時という議長提案がいい。

ヨルダン:深夜12時に延長してくれた議長の柔軟な対応に感謝する。一方で、今の状態でこの特別委員会では、文言などについてもまとまっていないと思う。

マッケイ:気持ちは分かるが、あと来週で使えるのは30時間しかない。とにかく時間がない。

セネガル:アフリカグループを代表して、議長提案を支持したい。今日の深夜12時まででいい。

シリア:言葉の問題もある。情報は英語で出入りしているので、翻訳などに時間がかかる。

エジプト:深夜12時までに仕上げなければならないと思うが、ブラジルの懸念のとおり、いくつか会合を同時並行で行なわなければならない。

マッケイ:今日のインフォーマル・ミーティングは中止。提案の提出期限は、今日の深夜12時。提案の数はなるべく少なく。韓国・ヨルダンの「定義」に関する18時から21時までのインフォーマル・ミーティングは行なう。月曜日には万全の状況で望んで欲しい。明日の16時から、モニタリングに関するミーティングがメキシコのイニシアチブで行なわれる。

日本:直接・間接差別に関する、インフォーマル・ミーティングを行なう。月曜の朝8時から9時まで。

マッケイ:多大なプレッシャーを感じながら作業しているのは分かる。しかし提案は極力少なくして欲しい。今日はこれで終わり。また月曜日に。月曜は「前文」から始める。