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第8回国連障害者の権利条約特別委員会

短報 2006年8月21日(月)

玉村公二彦
奈良教育大/JD(日本障害者協議会)

個別交渉する各国政府代表

 今日は午前10時30分に開会した。

 まず議長から、週末、国際モニタリングや定義に関する非公式協議が進んだこと、各国政府による150もの条約の文言に関する提案が事務局に寄せられたこと、条約交渉が最終段階に入っており、この週末には作業を完了させたいことなどが話された。

 その上で、議事の進め方について、論争となっている重要な条項は除いて(ブラケット部分)、前文から通覧し、各国の提案を紹介して反対意見があるか否かを確認し、反対意見がある場合には、提案国が反対国と非公式な協議を行い、24時間以内に解決して文書で議長へ提出するという方法が提案された。

 各国政府より特に提案のなかった第10条(生命に対する権利)、第14条(身体の自由及び安全)、第22条(プライバシーの尊重)については拍手で議決された。

 事務局から各国政府の提案集成が配布された(以下のウェブサイトからダウンロードできる(http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc8contgovs.htm)。

 議論されたのは、以下の条項である。

 前文(g)(n)(o)(p)(q)(s)(u)(v)、第1条(目的)、第2条(定義)[差別][言語][合理的配慮][ユニバーサルデザイン・インクルーシブデザイン]、第3条(一般原則)、第4条(一般的義務)、第5条(平等及び非差別)、第6条(障害のある女性)、第8条(啓発)、第9条(アクセシビリティ)。

 そして、第12条(法の前の平等)の議論の際、第11条についてスーダン、リビアなどのアラブグループから議論が出された。第11条(危機のある状況)についてはブラケットがあり、複雑な問題をはらむとして提案集成には入れられていないことが説明されたが、アラブグループからは少なくとも提案集成に入れるように強い要求があった。

 午後は、議長から、提案集成を、問題を多く含む部分(ブラケット)の提案をいれて作り直すことが示された。提案を事務局に送ったが、提案集成には記載されていないものもあることが審議の中で指摘された。

 午前からの継続で、第11条(危機のある状況)について、スーダンがアラブグループ共通の立場として「外国からの占領を含む」という文言を提案。反対国、アメリカ、カナダ、日本など。現在のレバノン情勢を反映した政治的な意味を含むものであろう。

 第12条(法の前の平等の承認)、第17条(人のインテグリティの保護)については、角ブラケット部分があり、議論は先送りされた。

 以下、第13条(司法へのアクセス)、第15条(拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由)、第16条(暴力と虐待からの自由)、第18条(移動の自由と国籍)が順次審議された。

 第19条(地域社会における自立した生活及びインクルージョン)では、ロシアが提案を撤回し、修正部分がなく、拍手で議決された。

 さらに、第20条(個人の移動)、第21条(表現及び意見の自由と情報へのアクセス)、第23条(家庭及び家族の尊重)、第24条(教育)、第25条(健康)、第26条(ハビリテーションとリハビリテーション)、第27条(労働及び雇用)、第28条(十分な生活水準と社会[保護])が審議され、第30条(文化的な生活、リクリエーション、余暇及びスポーツへの参加)では、カナダとロシアが提案を取り下げ、この条項は拍手で議決された。続いて、第31条(統計及びデータ収集)も、EUが提案を取り下げ、議決された。

 最後に、第32条(国際協力)、第33条(国内実施及びモニタリング)が審議された。国内実施及びモニタリングでは、日本政府の提案(パラ2の「独立した仕組みを国内で」という文言の削除など)には非常に多くの反対があった。

 午前、午後をとおして、6条項を議決したのは、今回が初めてであり、条項の議決の雰囲気によってさらに合意形成にはずみがついていると思われる。今後、24時間以内に、それぞれの提案国と反対の意見の国とが協議し、書面でその合意事項を提出することになっており、明日以降、ブラケット部分の審議も含めてさらに条約のつめが進むこととなろう。なお、修正版の提案集成は本日中にウェブサイトに掲載されるとのことであった。