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特別報告(1)「障害と開発」ハイレベル会合、インチョン戦略等に関わる動向について

寺島 彰 (JDF国際委員長)

報告をする寺島彰氏

 本日は、最近のJDFの国際関係の動きについて報告させていただきたいと思います。

1.ポストMDGs(2015年以降の開発の枠組み)

 ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)は、国連が設定している開発分野における国際社会共通の目標です。2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられました。
 MDGsは、2015年までに達成すべき8つの目標、21のターゲット,60の指標を掲げています。
 8つの目標とは、①極度の貧困と飢餓のを撲滅、②普遍的な初等教育の達成、③ジェンダー平等の推進と女性の地位向上、④乳幼児死亡率の削減、⑤妊産婦の健康状態の改善、⑥HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止、⑦環境持続可能性を確保、⑧開発のためのグローバル・パートナーシップの推進であり、ターゲットとしては、ターゲット1A:2015年までに1日1ドル未満で生活する人口比率を半減させる、2015年までに、全ての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにするというようなターゲットが設定されています。
 しかし、この8つの目標には障害者のことは書かれていないわけです。そこで、障害者のことについて2015年以降の開発目標に入れるということを障害者団体は、世界的に取り組んできました。
 特に、2013年9月23日国連総会の中で行われた「障害と開発」に関するハイレベル政府間会合(ニューヨーク)は、非常に重要な会議で、2015年までにMDGsを達成するための取り組みを協議すると共に、MDGsを土台に、21世紀のグローバル課題への対応を助ける「ポスト2015開発アジェンダ」についても話し合われました。藤井幹事長が政府代表団の一員として参加しました。JDF・日本財団共催サイドベント「災害と障害:日本からの教訓」を実施しています。
 このハイレベル政府間会合に向けて、JDFでは、外務省との話し合いをし、また、日本政府に要望書を出すなどをしています。また、この会議に向けたアジア・太平洋地域会議に市民社会グループを通じて要望を提出しています。
 外務省からの情報では、障害にかかわる内容も一つの項目として、取り上げられるのではないかと聞いています。
 現状は、加盟国間の交渉が行われており、その後、「ポスト2015開発アジェンダ」国連総会決議されることになっています。

2.世界防災会議(国連防災世界会議)

 国連防災世界会議は、国際的な防災戦略について議論する国連主催の会議であり、90-99年の国連国際防災の10年の中間年の94年5月に第1回の国連防災世界会議が横浜で開催され、「より安全な世界に向けての横浜戦略」が採択されました。
 2003年12月23日に第58回国連総会において、日本のイニシアティブのもと、141カ国より共同提案された「国連防災世界会議」に関する決議案が全会一致で採択されました。その結果、国連総会決議に基づいて行われる「国連主催」の会議となりました。日本がホスト国になっています。
 第2回会議は、2005年に、神戸で開催されました。21世紀の新しい国際防災戦略について検討され、2005年から2015年までの国際的な防災の取組指針である「兵庫行動枠組」が策定されました。
 第3回国連防災世界会議は、「兵庫行動枠組」の後継枠組の策定が行われる予定で、2015年3月に、東日本大震災の被災地である仙台市で開催されます。被災地の復興を世界に発信するとともに,防災に関する我が国の経験と知見を国際社会と共有し、国際貢献を行うために機会としてとらえられています。
 JDFは、東日本大震災後、いち早く、「JDF東日本(東北関東)大震災被災障害者総合支援本部」を2011年3月18日に設置し、同現地での障害者の救済・支援など、本部を中心にさまざまな取り組みを行ってきました。「いのちのことづて」の映画も制作しています。
 国際関係におきましても、総合支援本部を中心に、2012年10月31日ESCAPハイレベル政府間会合における「災害と障害者に関するスペシャル・イベント」、2013年5月19-23日における国連国際防災戦略(UNISDR)防災グローバルプラットフォーム会合(ジュネーブ)での発表、2013年9月24日 JDF・日本財団共催 サイドベント「災害と障害:日本からの教訓」(再掲)の開催、2013年10月29日 UNISDR駐日事務所、日本財団、JDF共催 国際防災の日記念障害者と防災シンポジウム「誰もが住みやすいまちづくりに向けて」の開催などを実施してきました。
 今回の震災において、災害に障害者がいかに弱者であるかということがわかりました。災害において障害者をいかに守るか、どう支援するのが良いか、わたしたちの経験を、今後も、世界に発信していく必要があると考えています。
 今後、世界国連国際防災会議にむけての取り組みを強化していく予定です。
 なお、情報提供ですが、2014年4月21日-24日(予定)にRIが「災害と障害に関する地域会議・専門家会議」(仮称)を開催する予定です。

3.アジア・太平洋地域

(1)アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)

 1983-92年の「国連障害者の十年」が終了後も、アジア・太平洋地域は、国連アジア太平洋経済社会委員会(以下、ESCAP)による、「アジア・太平洋障害者の十年」を継続してきました。その結果、アジア・太平洋地域は、他の地域にはない発展を遂げてきました。  「第二次アジア・太平洋障害者の十年」の最終年を間近に控えた、2010年6月、「第二次アジア・太平洋障害者の十年(2003-2012):びわこミレニアム・フレームワークの実施状況評価に関する専門家・関係者会議」が開催され、「第二次アジア・太平洋障害者の十年」の達成状況が評価されるとともに、「アジア太平洋障害者の十年」を延長すること、そして、その進展状況を測定可能な指標を用いて国家および地域レベルで追跡できるようにすること等の提案が行われました。
 2010年10月には、ESCAP「第2回社会開発委員会」において、「新アジア・太平洋障害者の十年」の実施を総会に諮ることが決議されました。また、2011年12月開催されたESCAP「アジア・太平洋障害者の十年(2003-2012)の実施状況の最終評価のためのハイレベル政府間会合にむけた地域ステークホルダー会議」において、新十年の進捗状況を測定可能な指標を用いて評価することのできる「アジア太平洋障害者の権利を実現するためのインチョン戦略(以下、インチョン戦略)」の草案等が提案されました。
 「インチョン戦略」は、2012年10月29日-11月2日に大韓民国のインチョンで開催されたハイレベル政府間会合で、「アジア・太平洋障害者の十年(2013-2022)」(以下、新十年)の実施を宣言した閣僚宣言とともに採択されました。そして、同宣言とインチョン戦略は、2013年4月25-5月1日に開催された第69回ESCAP総会において承認されました。(決議69/13)インチョン戦略は、「新十年」の行動計画で、優先度の高い目標および指標を達成することに重点を置いており、実施のスピードを早め、進捗状況の測定を容易にするために、①貧困の削減と雇用改善、②政治と政策決定への参加の促進、③物理的環境、公共交通機関、知識、情報、コミュニケーションへのアクセスの向上、④社会的保護の強化、⑤障害児に対する早期介入と教育の拡大、⑥ジェンダーの平等と女性のエンパワメントの確保、⑦障害者を含む災害時の危機回避と対応の確保、⑧障害者に関するデータの信頼性と比較可能性の改善、⑨障害者権利条約の批准、実施の促進と国内法との整合、⑩国際協力、域内協力、および、小地域における協力の推進という10の目標、27の下位目標、62の指標(42の中核指標、20の補足指標)を設定しています。
 インチョン戦略は、そのの実施状況を社会開発委員会などにおいて協議することを求めているため、各国政府の取り組みが明確になるという点で画期的な戦略であると考えられます。
 また、インチョン戦略では、加盟国政府および準加盟国政府に対して技術的な助言と支援を提供し、「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)」が完全かつ有効に実施されるように促進するために「アジア太平洋障害者の10年」に関する地域ワーキンググループが設立されました。ワーキンググループには、政府と市民社会グループ15団体ずつで構成されており、日本も一員になっていますし、主要な国際障害者団体もメンバーになっています。
 ワーキンググループは加盟国政府および準加盟国政府に対して、インチョン戦略の実施に向けた進捗状況について検証すること、アジア太平洋地域に暮らす障害者の状況がどのように変化しているかについて調査することなどの役割を担っています。
 また、ハイレベル政府間会合で、「国連ESCAPアジア太平洋障害チャンピオン賞」の授賞式が催され、JDF藤井克徳幹事会議長が10名の受賞者の一人として選ばれました。
 さらに、先ほど申し上げた、JDF主催のスペシャルイベントが開催されました。
 いまのところ、ワーキンググループやチャンピオン賞受賞者の活動はみられませんが、今後、このような制度や人を活用してアジア・太平洋の障害者の権利の強化に働きかけていかなければいけないと考えています。

(2)アジア太平洋障害フォーラム(APDF:ASIA PACIFIC DISABILITY FORUM)

 APDFは、アジアおよび太平洋地域において、インクルーシブでバリアフリーな、かつ障害をもつ人びとの権利に基づく社会を実現すべく、障害をもつ人びとの権利に関する国連条約の起草および採択の促進を目的に活動しています。
 JDFもAPDFに加盟しています。松井前事務局長、筆者が副会長をしています。
 アジア太平洋障害フォーラム(APDF)は、2年毎に総会と会議を開催しています。今年の会議は、ESCAPハイレベル政府間会合に合わせて、2013年10月26-30日にインチョンで開催されました。
 初日の総会では、役員の改選があり、新会長に韓国障害フォーラム会長のパク・キヨンソク氏が選出されました。これまで、事務局は、日本の(公財)障害者リハビリテーション協会にに置かれていましたが、事務局長の交代に伴い、韓国障害者リハビリテーション協会への移管されることになりました。
 また、2014年の総会・会議は、ベトナムでの開催を検討したいという提案が、ベトナム障害者団体連合会代表があり、2014年11月26-29日APDF会議がハノイで開催されることになりました。2日目からの会議では、全体会では、基調講演、パネルディスカッション、トークセッションがありました。また、分科会では、①障害者権利条約、②アクセシビリティ、③精神障害、④発達障害と親の会の運動、⑤デフカルチャー、⑥女性障害者、⑦保護と権利擁護、⑧自立生活、⑨アートの9つのテーマで議論を深めました。
 今回のAPDF会議には、JDFがツアーを企画し、JDFの会員に呼び掛けたところ、日本から全体で約60名が参加していただきました。

4.障害者権利条約批准後

(1)締約国会議

 同条約の第40条に「締約国は、定期的に会議を開催して条約の実施に関して検討する」と記述されており、2008年以来、締約国会議が6回開催されました。今年は、6回目で、ケニアが議長国になっており、テーマは、「十分な生活水準を確保する:障害者権利条約の枠組みのなかでの障害者のエンパソコンワメントと参加」でした。本日の参議院本会議で承認されれば、我が国も批准国としてこれに参加していくことになります。この会議には、認可されたNGO団体も参加することができます。日本政府への働きかけとともに、会議への参加など、障害者団体の役割がより高まってくると考えられます。このような会議での意見の反映に取り組んでいく必要があると考えています。

(2)障害者権利委員会

 同委員会は、障害者権利条約の実施状況をモニタする組織で、障害者権利条約の批准国が権利条約批准後2年以内(それ以降は4年毎)に提出する報告書に基づき、各国の権利条約の実施状況を審査したり、または、それに関する話し合いをします。この会議には、政府からの報告と共に、市民団体からのパラレルレポートが提出されます。今後は、障害者権利委員会への働きかけも重要になってくると考えています。
 また、(リーさんからのお話にもありましたが、)権利委員について、現在、アジア地域からは、現在、韓国、タイから委員が選出されていますが、わが国の障害者の代表が委員として選出されるよう取り組んでいかねばならないと考えています。政府への働きかけ、ロビー活動などに取り組む必要があると思います。(9人)