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2017年6月7日 JDF日本障害フォーラム(JDF)主催
国連障害者権利条約 障害者権利委員会報告会 発表資料

障害者権利委員会第17会期の概要と特徴―カナダの審査、日本の審査見通し

長瀬修 JDF条約推進委員会副委員長・立命館大学生存学研究センター教授

条約の批准状況

 昨年、2016年に採択10周年を迎えた障害者権利条約の批准数は現時点(2017年6月3日)で173に達している(国連加盟国ではないEUやクック諸島、パレスチナを含む数字。独自に国内法に位置付けた台湾=中華民国は含まれない)。最新の批准国は2017年3月29日に批准したスリナム(南米、旧オランダ領)であり、その前は2016年12月6日に批准した朝鮮民主主義人民共和国である。
 193の国連加盟国のうち、未批准国数は23である。署名のみ行っているのは、ブータン、カメルーン、チャド、フィジー、アイルランド、キルギス、レバノン、リビア、モナコ、ソロモン諸島、セントルシア、トンガ、米国、ウズベキスタンの14か国である。署名も批准も行っていないのは、ボツワナ、赤道ギニア、エリトリア、リヒテンシュタイン、セントクリストファー・ネーヴィス、ソマリア、南スーダン、タジキスタン、東チモールの9か国である。
 なお、オバマ政権が署名を行ったものの批准の権限を持つ上院での投票の結果、批准が承認されなかった米国は共和党政権下であり、しかも条約に消極的な共和党が上院の過半数を占めているため、批准の見通しは当面ない。

日本の審査見通し

 現時点において提出済で審査を待つ国家報告(政府報告)を提出順に並べてみると、日本は41番目である。審査は原則として、報告の提出順に行われる。以下は第17会期用に障害者権利委員会のサイトに掲載された暫定議題(CRPD/C/17/1、2017年1月5日)に基づく審査待機リストである。ただし、同議題の審査待機リストには掲載されているトルクメニスタンは第13会期(2015年3月・4月)に審査が終了しており、誤記と思われるため除外している。なお、国名の後のカッコ内はすでに審査の会期が確定している場合に、その会期名を示している。
 (1)英国「18*:選択議定書に基づく調査が行われたため審査は一時、延期された」、(2)ルクセンブルク「18」、(3)モンテネグロ「18」、(4)モロッコ「18」、(5)ハイチ「19*:本来ならば18会期だが延期された」、(6)ラトビア「18」、(7)パナマ「18」、(8)スロベニア、(9)ブルガリア、(10)ネパール、(11)オマーン、(12)スーダン、(13)ロシア、(14)セイシェル、(15)キューバ、(16)ポーランド、(17)マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、(18)マルタ、(19)ミャンマー、(20)フィリピン(21)南アフリカ、(22)アルジェリア(23)ニカラグア、(24)セネガル(25)ルワンダ、(26)ノルウェー、(27)サウジアラビア、(28)トルコ、(29)ニジェール、(30)バヌアツ、(31)イラク、(32)クウェート、(33)ギリシャ、(34)インド、(35)ベネズエラ、(36)アルバニア、(37)エストニア、(38)ジブチ、(39)フランス、(40)ラオス、(41)日本、(42)スイス、(43)シンガポール、(44)ジョージア(旧グルジア)
 仮に今年の14本審査体制(4週の春に8、3週の夏に6)が維持されると想定すると、日本の審査は2020年の春の第23会期となる。しかし、現時点で二つの不確定要素がある。審査の時期を早めるものと遅らせるものである。
 早める要素は、第17会期冒頭で国連人権弁務官事務所から示された来年からの年10週間の審査体制である。本年秋の国連総会でこの予算が認められればという条件付きではあるが、委員会開催期間延長の可能性は高いと思われる。これが実現すれば、現在のペース(各週2本)でも年に20本の審査が可能となる。さらに、委員会は週平均2.5本の審査を求める総会決議(68/268:人権条約機関制度の効果的な機能の強化および向上、2014年4月21日)第26段落(a)の圧力にさらされている。仮にそのペースが実現しなくても年20本以上の審査が行われる可能性がある。
 遅らせる要素は、簡易報告手続き(事前質問事項への回答をもって国家報告の提出と見なす2回目以降の審査制度)に基づく審査が来年から開始され、そうした審査は、優先的に行われることである。これは2回目以降の審査において、まず委員会が事前質問事項を作成し、それに対する回答をもって国家報告と見なすものである。前述の国連総会決議68/268が冒頭で推奨している方式であり、他の委員会でも取り入られている。この手続きに同意した国のうち、第2回・3回の統合報告の締め切りが早い順に、スペイン(初回審査は2011年)、ペルー(2012年)、ハンガリー(2012年)、エルサルバドル(2013年)、の4か国への事前質問事項が第17会期で作成された。簡易報告手続きに基づく事前質問事項の採択は、第17会期で初めて開始されている。
 今後の審査のペースは、①秋の国連総会での予算決定と同決定を受けての会期延長、②2018年以降の各会期における簡易報告手続きによる審査数の影響を見極める必要がある。

第17会期の概要と特徴

 3月20日(月)午後3時から4月14日(金)午後6時まで開会された。冒頭で石川准、ロバート・マーティン(ニュージーランド)、ヴァレリー・ニキティッチ・ルクレデフ(ロシア)など新たな委員6名が委員としての宣誓を行った。なお、事前質問事項の策定を行う会期前ワーキンググループの第7会期が3月13日から20日午前まで開催された。
 審査はこれまでで最多の8か国、モルドバ(ヨナス・ラスカス:リトアニア)、イラン(モンティエン・ブンタン:タイ)、キプロス(スティグ・ラングバルド:デンマーク)、ボスニアヘルツェゴビナ(ラズロー・ガボー・トバシー:ハンガリー)、ヨルダン(ダンジャン・タチッチ:セルビア)、アルメニア(ラスカス)、ホンジュラス(カルロス・アルバート・パラデユッサン:コロンビア)、カナダ(テレジア・デゲナー:ドイツ)が行われた。カッコ内は審査で中心的な役割を果たす、国別報告者名と出身国である。
 すでに第4号まで作成された一般的意見は第5号として第19条:自立した生活及び地域社会に関して策定作業中である。また、第6号として第5条:平等と無差別の策定も開始された。次回第18会期には、その策定に向けた一般的討論の日が設けられる。
 今会期から新たに始められた「簡易報告手続」に基づく事前質問事項作成については前述したので、繰り返さない。これは前述の国連総会決議68/268が冒頭で推奨している方式であり、他の委員会でも取り入られている。

カナダの審査

 第17会期に審査が行われたカナダは2007年3月30日の署名開放日に署名を行い、2010年3月に批准している。国家報告の提出は2014年2月に行われた。国内人権機関のカナダ人権委員会は2016年7月にレポートを権利委員会に提出している。事前質問事項が策定、公表された2016年8月・9月の第16会期に向けての情報提供である。
 事前質問事項作成と建設的対話をはじめ、カナダの審査において障害者組織を含む市民社会組織を代表し中心的な役割を果たしたのは、カナダ市民社会レポートグループ(以下、グループ)である。
 グループは第16会期に向けて、2016年8月に「カナダの事前質問事項のための質問案」を作成、提出した。グループは、この審査のために結成されていて、メンバーはARCH障害法センター、貧困なきカナダ、カナダ地域生活協会、カナダろう協会、カナダ障害学センター、カナダ全国盲人協会、カナダ労働者会議、カナダ障害者協議会、ディスアビリティ・ライツ・プロモーション・インターナショナル、女性障害者ネットワーク、自立生活カナダ、MADカナダ、オンタリオ負傷労働者ネットワーク、ピープル・ファースト・カナダという障害分野を超えた多様な14組織から構成されていた点に大きな特徴がある。
 グループは、第16会期にカナダ政府資金によって6名の代表をジュネーブに送っている。事前質問事項を採択するセッションにおけるロビー活動は、パラレルレポートの作成と建設的対話時のロビーイングと並んで重要な役割を果たす。なお事前質問事項に向けてパラレルレポートを提出したのは、グループを含め全部で5組織である。その中にはグループに含まれている組織もある。つまり、グループに加わりながらも独自に提出した組織もある。
 グループは、2017年2月に事前質問事項への独自の回答を建設的対話に向けたパラレルレポートとして提出した。作成には上記の14組織に加えて新たに、カナダアルツハイマー協会、カナダリハビリテーション・労働協議会、マギル大学児童期障害の参加と知識伝達の3団体が加わった。認知症者の組織が障害者組織に加わっているのは国際的にもまだ稀であり、特に注目された。認知症コミュニティの代表がジュネーブで障害者権利条約に関するブリーフィングをしたのはカナダが初めての可能性が高い。
 パラレルレポートは重要事項として、冒頭で平等及び無差別(第5条)、法の前の平等な承認(第12条)、自立した生活及び地域社会への包容(第19条)、教育(第24条)、労働及び雇用(第27条)、国内における実施及び監視(第33条)の計6条を取り上げている。その後、各事前質問事項に逐条で回答した。勧告案(総括所見案)は記述してある条文とそうでない条文がある。
 なお、建設的対話に向けてグループを含め12組織がパラレルレポートを提出した。グループに加わっている組織が独自に出した場合もあるのは、事前質問事項作成に向けたレポートと同様である。カナダ人権委員会も2017年2月に建設的対話に向けたレポートを、勧告案をより多く含む形で提出した。
 カナダの場合、審査に関連して、審査前にすでに具体的な成果があった点は注目される。それは、グループの質問案を反映し、事前質問事項のトップに掲げられた選択的議定書の批准に関する政府の動きである。カナダ政府は、選択的議定書を2017年中に批准するための手続きを開始すると、2016年12月に障害者組織に対して明らかにしたのである。

カナダ総括所見概要

 最近の総括所見は長くなる傾向にあり、カナダの総括所見(CRPD/C/CAN/CO/1, 2017年5月8日)は5000語以内という内規を超えて、6400語を超えている。それに伴い、勧告の内容も詳細にわたっている。なお、7つの条文に関して、2015年9月に採択された持続可能な開発目標(SDGs)への言及があり、注目される。
 肯定的側面として選択的議定書の批准に向けた動き、カナダ人権法とカナダ人権憲章における人権保障と障害差別禁止規定、アクセシブルな政府情報の提供ポリシー、仙台防災枠組2015-2030の承認、マラケシュ条約批准などが挙げられた。
 第1条(目的)から第4条(一般的原則)については①第12条第4項の留保の撤回、②連邦政府が全カナダ的取り組みのリーダーシップをとるための条約実施の行動計画の策定と実施、③各州・準州の法律が条約実施に役立つようにするための仕組みの確立、④州・準州との連携強化のために連邦の障害担当部局の強化、⑤司法と警察対象の意識向上と能力強化プログラム実施を求めた。また、⑥障害者組織との協議の場を公的、継続的に設けることを求めたほか、⑦認知症者を含む障害者組織の権利擁護における役割を強化するための方策実施を求めた(ここにはグループの事前質問事項案の影響が見られる)。
 第5条(平等及び無差別)については、①各分野を超えた戦略策定、②SDGsの目標10(不平等の解消)実施との連携、③法律や政策を通じた、複合的で交差性の差別への取り組み(女性・女児障害者や先住民障害者、移民障害者へのアファーマティブアクションによる取り組みを含む)と、救済の提供、④合理的配慮に関する規定の策定、⑤適切な先住民障害者へのサービス提供による自殺防止を求めた。
 第6条(障害のある女子)については、障害女性・女児に関する一般的意見第3号に基づき、①連邦のジェンダーに基づく暴力対策戦略に障害女性・女児が明確に位置付けられること、②女性障害者への偏見に関する対策、③先住民の女性障害者の教育確保、④SDGsの目標5(ジェンダー)実施との連携を求めた。
 第7条(障害のある児童)については、①障害児、特に先住民の障害児に対する差別に関する情報収集、②障害児施策予算の確保、③先住民の障害児への教育確保、④障害児の最善の利益確保のためのガイドライン導入、⑤障害児の人権確保政策の確立を求めた。
 第8条(意識の向上)については、①条約と一般的意見等の条約関連文書の手話や分かりやすい表現、点字等のアクセシブルな形態での提供、②一部の州ですでに実施されているように、11月を先住民と障害月間として認知し、推進すること、③自閉症者の尊厳を推進する障害者の人権モデルを採択すること、④知的障害者の社会参加と本人活動(セルフアドボカシー)を推進するための戦略策定、⑤多様なジェンダーアイデンティティの理解促進実施、⑥障害者の人権に関する啓発戦略策定を求めた。
 第9条(施設及びサービス等の利用の容易さ:アクセシビリティ)については、アクセシビリティに関する一般的意見第2号に基づき、①現在のアクセシビリティに関する法律と計画に関する見直し、②カナダ人権憲章など基本的文書を分かりやすい表現で準備すること、③公共交通機関での難聴者、ろう者、盲人、盲ろう者への情報サービスの充実、④フランス語の字幕放送充実、⑤SDGsの目標9(インフラ)、目標11(都市と人間の居住地)実施との連携を求めた。(本条の総括所見には、グループの勧告案の影響が非常に大きい)。
 第10条(生命に対する権利)については、①死への援助を求める人が緩和ケアなど死以外の選択肢が持てるようにすること、②死への援助を求める個別の事例に関する詳細な情報収集規則策定、③障害者が外的プレッシャーにさらされないように独立した監視体制確立を求めた。
 第11条(危険な状況及び人道上の緊急事態)については、①亡命希望者や難民である障害者の権利に関する調査実施、②亡命希望の障害者と難民障害者へのアクセシブルな情報提供、③国際援助機関関係者に対する障害者の権利に関する能力強化、④「人道的行動への障害者のインクルージョン憲章」(イスタンブール人道サミット成果文書)の承認を求めた。
 第12条(法律の前にひとしく認められる権利)については、①連邦政府が州、準州と協力して法的能力を認めるための枠組みを構築するためのリーダーシップを発揮することと、銀行法などにおいて、支援付き意思決定の規定を設けることを求めた。
 第13条(司法手続の利用の機会)については、①精神障害者と知的障害者の証言をはじめ、被害者権利法を実施するための研修を司法関係者に対して行うこと、②点字、手話通訳など司法分野におけるアクセシビリティ基準の追加、③司法における障害者への年齢と性別を考慮した配慮指標の作成、④条約の権利に関する研修を司法関係者、警察、刑務所職員に対して導入することを求めた。
 第14条(身体の自由及び安全)については、①非自発的拘禁に関する政策の見直し、②刑事手続きにおいて裁判を受ける権利確保のための連邦、州、準州の最小限の義務規定の策定、③刑務所にいる障害者へ合理的配慮に関するガイドライン作成、④カナダ人権委員会や週単位の人権委員会と協力して、刑務所にいる先住民障害者や移民障害者の状況を把握することを求めた。
 第16条(搾取、暴力及び虐待からの自由)については、①連邦のジェンダー暴力対策戦略が女性障害者を暴力から守る規定を含むこと、②障害児を虐待や暴力から守るために、障害児の親への支援とサービスの強化、③障害者にサービスを提供する連邦、州、準州の施設とプログラムの監視の仕組みの設置を求めた。
 第17条(個人をそのままの状態で保護すること)については医療従事者や代理決定者が障害者を非自発的な断種・不妊手術から守るよう求めた。
 第19条(自立した生活及び地域社会への包容)については、①地域社会で自立した生活をする権利を確立するための国家ガイドラインの策定、②住宅政策における障害の人権モデルの採用と、精神障害者と知的障害者向けの住宅提供、③州・準州政府による施設閉鎖と自立生活支援の提供、④アクセシビリティ法制と計画がサービスのアクセシビリティをも含むこと、⑤先住民社会での知的・精神障害者へのサービス提供を求めた。
 第21条(表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会)については、①アメリカ手話とケベック手話の公的言語としての認知、②分かりやすい表現を用いるなどして、情報へのアクセス促進、③政府と民間のウェブサイトのアクセシビリティ確保、④障害者権利条約の複数の手話への翻訳を求めた。
 第23条(家庭及び家族の尊重)については、①障害児の親が親としての役割が果たせるように、支援とサービスが利用できるようにすること、②障害児が家庭的環境にいられるように支援することを求めた。
 第24条(教育)については、①カナダ全土においてインクルーシブで良質な教育に関する政策を採用すること、②すべての障害者が教育を受けられるようにすること、③教員のインクルーシブ教育と手話の研修、④教育における合理的配慮の提供戦略策定、⑤SDGsの目標4(教育)実施との連携、⑥バイリンガル(手話と書記言語)校における手話学習環境の確保による教育へのインクルージョンを求めた。
 第25条(健康)については、①すべての障害者が中絶をはじめとするすべての保健サービスが利用できるようにすること、②性と生殖に関する健康についてのアクセシブルな情報提供、③保健関係者が障害者の権利を認識するための研究実施、④中絶をはじめとする保健サービスをトランスジェンダーや多様なジェンダーの人を含む障害者が利用できるようにすることを求めた。
 第27条(労働及び雇用)については、①インクルーシブで合理的配慮のある労働環境での就労に関する方針策定、②女性障害者と若年障害者に合理的配慮のある就労機会を提供する戦略策定、③強制力のあるアファーマティブアクションの実施、④SDGsの目標8(経済成長と雇用)実施との連携を求めた。
 第28条(相当な生活水準及び社会的な保障)については、①障害者とその家族に適切な生活水準を保障するための方策実施、②カナダ貧困削減戦略が女性障害者、先住民障害者、障害児のいる家庭の複合差別と貧困に対応すること、③SDGsの目標1(貧困削減)実施との連携を求めた。
 第29条(政治的及び公的活動への参加)については、精神障害者と知的障害者の選挙過程への参加促進を求めた。
 第31条(統計及び資料の収集)については、年齢、性別、障害種別、直面する障壁などによって分類されたデータの収集と更新を障害者組織との協議のうえで行うことを求めた。
 第32条(国際協力)については、①障害者組織が国際協力事業の企画、実施、モニタリング、評価に実質的に参加するできることと、②SDGs のすべての目標実施との連携を求めた。
 第33条(国内における実施及び監視)①パリ原則にのっとった独立した監視枠組みの設置、そしてカナダ人権委員会の独立した監視枠組みへの指定、②独立した監視枠組みへの適切な予算配分と障害者組織の関与を求めた。
 重要なフォローアップ事項として、1年以内に報告を求めたのは、①第12条第4項の留保の撤回(第8段落)と、②第5条に関する、法律や政策を通じた、複合的で交差性の差別への取り組み(女性・女児障害者や先住民障害者、移民障害者へのアファーマティブアクションによる取り組みを含む)と、救済の提供(第14段落)である。
 委員会は総括所見に含まれる勧告の実施、政府と議会への情報提供を求めた。また、2回目以降の定期報告作成における障害者組織をはじめとする市民社会の関与を求めた。さらに、本総括所見を広く障害者に対して周知するよう求めた。
 次回報告は第2回と第3回を統合して、2020年4月11日までに提出を求めた。

総括所見におけるSDGs重視

 カナダへの総括所見(CRPD/C/CAN/CO/1)を見ると、7つの条文に関して、関連するSDGsの目標への言及がある。具体的には、平等・無差別に関する第5条(目標10:不平等の解消)、女性障害者に関する第6条(目標5:ジェンダー)、アクセシビリティに関する第9条(目標9:インフラ、目標11:都市と人間の居住地)、教育に関する第24条(目標4:教育)、労働・雇用に関する第27条(目標8:経済成長と雇用)、生活水準・社会保障に関する第28条(目標1:貧困撲滅)、国際協力に関する第32条(全目標)である。

(敬称略)

*本稿は第17会期の前に執筆した、長瀬修「障害者権利委員会第17会期の概要と特徴―カナダの審査」『DPI』第32巻第4号、2017年1月8日、38‐41頁を大幅に増補改訂したものである。

**本研究はJSPS科研費「障害者の権利条約の実施過程に関する研究」(25380717)助成を受けたものである。