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障害者権利条約に関連した動き

国連グローバルキャンペーン "デリバー・ナウ "開催

障害者NGO事務局長、国連ミレニアム開発目標・母子保健パネルに参加

井筒 節
国連人口基金(UNFPA)ニューヨーク本部 

2007年9月28日

2007年9月26日、第62回国連総会2日目の国連ニューヨーク本部にて、国連パネル「2015年までに7700万人の命を救う:女性と子どもの健康を目指して」が開かれました。これは、大規模な国際母子保健キャンペーンである「10,000,000 人の母と子の命を救うために!~グローバルキャンペーン "デリバー・ナウ "~」(http://www.delivernow.org/)立ち上げイベントの一部として開催されたもので、多くの国連職員、政府代表者、NGO職員などが参加しました。

母子保健パネルの様子

本パネルでは、ストルテンベルグノルウェー首相、ムワナワ サ ザンビア大統領夫人、アシャーローズ・ミギロ国連副事務総長、トラヤ・オベイド国連人口基金(UNFPA)事務局長、マーガレット・チャン世界保健機関(WHO)事務局長、クル・ゴータム国連児童基金(UNICEF)事務局次長、アパラジタ・ゴゴイWhite Ribbon Alliance for Safe Motherhood調整官と共に、Inter-American Institute on Disability & Inclusive Development(IID)のロサンジェラ・ビーラー事務局長が障害者NGO代表として、パネリストに加わりました。

国連をはじめとする国際社会は、2000年の国連ミレニアム・サミットにおいて189カ国の代表者(147の国家元首を含む)によって採択された8個の国連ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)を優先課題とし、これらの達成に向けて努力を続けています(目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅、目標2:普遍的初等教育の達成、目標3:ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上、目標4:幼児死亡率の削減、目標5:妊産婦の健康の改善、目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止、目標7:環境の持続可能性の確保、目標8:開発のためのグローバル・パートナーシップの推進)。

中でも本パネルのテーマである母子保健(目標4及び5)は、私たちの生命に直接関わる重大な課題です。今も、世界では1分に1人の母親が妊娠・出産で命を落とし、3秒に1人の子どもが死亡しています。すなわち1年間に1000万を超える母子が命を失っているのです。更に、これらのほとんどは発展途上国で起きており、スウェーデンの妊産婦死亡が約3万人に1人であるのに対し、アフガニスタンやシオラレオネでは7人に1人という大きな先進国―発展途上国格差が存在しています。

本パネルでは、ノルウェー首相が母子保健の現状を紹介し、この問題に対する10億ドルの拠出を発表した後、UNFPAやWHOといった国連機関トップを含む各パネリストが、母子保健に対する政治的意思と資金、人々の認識、そして実際の行動の重要性を訴えました。

自らも障害をもつロサンジェラ・ビーラーIID事務局長は、自らの妊娠・出産体験をもとに、母子保健問題においても、医療サービスや教育、交通手段などに、障害者を含む誰もがアクセスできるようにすることが重要であると強調しました。特に、昨年、国連総会にて障害者権利条約が成立したことにふれながら、世界に暮らす6億5千万人の障害者ぬきに、貧困削減やMDGs4及び5の達成は不可能であること、母子保健サービスにおいても物理的なアクセシビリティーを確保し、母子保健を含む開発においては、障害者やその他の弱者を視野に統合した政策とプログラムが必要であることを訴えました。

今後、障害者権利条約を実際の行動に移していく上で、今回のようにMDGsをはじめとする国際社会の優先事項に障害をめぐる問題を統合していくことは戦略的に重要です。また、特にハイレベルの会合に障害者が積極的に参加していくことで、認知度を高め、また、ハイレベルで政治的影響力をもつ人々の認識を高めることで、政治的コミットメントを高めることができるかもしれません。更に、今回、本パネルを通して、UNFPA、WHO、UNICEF、そして国連事務局や各国政府スタッフは、自らのトップと共に並んだ障害をもつ母親であるパネリストの存在を通して、母子保健という国際的重要課題解決のための努力の中に、障害者が当たり前に含まれていることを意識的にも、無意識にも改めて認識することとなりました。このような機会を少しずつでも増やしていくことで、人々の認識が高まり、意識がより向上し、具体的な変化が生まれていくことを期待してやみません。

UNFPAのイニシアチブのもと、国連事務局経済社会局やWHOなどの国連ファミリーの協力のもと実現したこの国連本部における大規模且つハイレベルイベントへの障害の統合は、新たな希望を与えてくれる小さな一歩となるものと信じています。

(尚、本国連パネルにつきましては、http://www.un.org/webcast/2007.htmlの9月26日スペシャル・イベントの箇所から、ウェブ・キャスト映像をご覧いただけます。)

尚、以上は筆者個人の考えに基づくものであり、UNFPAの公式見解をまとめたものではありません。(井筒 節)
国連人口基金(UNFPA)のウェブサイト
http://www.unfpa.org/