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障害者の権利に関する条約における日本政府署名に伴う政府仮訳に関する意見

日本障害フォーラム(JDF)

項目 内容
発表日 2007年10月16日

 昨年12月、国連総会において全会一致で採択され、今年3月より署名に開放されている障害者の権利に関する条約(以下、権利条約)に関して、9月28日午後(日本時間9月29日未明)、日本政府は閣議決定を経てついに署名を行った。署名は条約の国内における実施のための批准への大きな一歩となり、今後の国内法制の整備に向けた取り組みがますます求められるものである。

 署名に伴い、日本政府の仮訳が公表された。仮訳は、政府内において内閣法制局や各省庁と意見交換を行いながら、担当省庁である外務省がまとめるものである。よって、政府の権利条約の解釈が仮訳に反映される。そして、国内制度や施策の検討の上で重要となる政府の公定訳の基になるということで、私たちJDFは大きな関心を注いできた。

 仮訳についての細かい指摘については現時点では差し控えるが、結論から言うと、権利条約の根底を支える理念や歴史的・社会的意義についての政府の認識が不十分すぎるという指摘をせざるを得ない。早急な再検討を求めるものである。

 権利条約は「障害」や「障害者」を根本から捉え直しているパラダイム(枠組み)の転換を図る意義を持つ。権利条約の根底に流れる理念とは、障害とは、個人的なものではなく、社会および環境との関係から生まれるものであり、あらゆる分野において、障害のない人との実質的な平等を図るために、今まで障害者を排除してきた社会の側の変化を求めるものなのである。障害者は権利の主体であり、障害者のことを障害者抜きに決めないという原則が確認されている。しかるに、政府仮訳にはこうした視点と背馳している部分も少なくなく、このままでは権利条約の趣旨・規定に沿った国内法・制度整備に大きな支障になりかねない。

 私たちJDFは、政府仮訳のすべての問題点を検討し、政府に修正を求めていく。そして、対案の提示等を含めた準備にJDF全体を上げて取り組んでいく。最終的に国会で承認をうけることになる政府の公定訳に、私たちの意見が取り入れられるまで、ねばりづよく活動することをここに表明する。

 すでに署名をおこなった政府は、私たちとのあらゆる種の交渉に対する扉をつねに開いておく義務がある。権利条約は第4条で障害者団体との緊密な協議と関与を保障すべきであると規定していることから、今後速やかに、政府公定訳作成の場を設け、その議論と決定の過程にJDFの参加を保障することを求める。これまで5年に渡る条約の交渉過程において、日本政府はJDFとの定期的な意見交換を行い、また政府代表団にもJDF推薦の障害当事者を顧問に加えるなど、障害者NGOとの緊密な協力関係のもと進めてきたという経過がある。こうした点を評価するからこそ、Nothing about us, without us! (私たち抜きに私たちのことを決めるな!)の精神を忘れることなく、政府は私たちとともに歩むべきであることをあらためて求めるものである。

(財)日本障害者リハビリテーション協会注:
2007年10月16日、衆議院第二議員会館において、障害者の権利条約推進議員連盟総会が、日本政府が障害者の権利に関する条約(以下権利条約)の署名を受けて開催された。日本政府の署名に伴い、日本政府から仮訳が公表され、この仮訳について、日本障害者フォーラム(JDF)から、「障害者の権利に関する条約における日本政府署名に伴う政府仮訳に関する意見」が総会に提出された。

障害者権利条約推進議員連盟 総会の様子
障害者権利条約推進議員連盟総会の様子

会場の様子
会場の様子