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障害者権利条約モニタリング

人権モニターのための指針
専門職研修シリーズNo.17

国際連合人権高等弁務官事務所
国際連合
ニューヨーク/ジュネーブ
2010年

Monitoring the Convention on the Rights of Persons with Disabilities Guidance for human rights monitors Professional training series No. 17 New York and Geneva, 2010


本書で採用されている呼称および資料提示方法は、いかなる国、領土、都市あるいは地域、またはその当局の法的地位に関して、もしくはその国境または境界線の設定に関して、国際連合事務局の見解を何ら表明するものではない。
HR/P/PT/17

© 2010 United Nations for the English edition
© 2011 United Nations for the Japanese edition
All rights reserved worldwide
Contract PB/2010/17
United Nations and JSRPD

日本語訳 (財)日本障害者リハビリテーション協会

監修 長瀬修

掲載者注:「障害者権利条約モニタリング 人権モニターのための指針」は国連の許諾を得て、(財)日本障害者リハビリテーション協会が翻訳を行いました。国連の正式訳ではありません。
原文掲載URL:
http://www.ohchr.org/Documents/Publications/Disabilities_training_17EN.pdf

目次

序文
I.人権問題としての障害の理解
II.障害者権利条約
A.条約の必要性
B.障害の定義
C.障害者権利条約の原則
D.障害のある人の権利
E.障害者権利条約のモニタリング機構

III.障害のある人の権利のモニタリング:概説
A.モニタリングにおける障害のある人の中心的役割と参加
B.「責務の担い手」および連携機関の確認とマッピング
C.障害のある人および障害者代表団体の能力開発
D.障害者権利条約モニタリングへの二本立てのアプローチ

IV.モニタリングの実践
A.情報収集
B.法律および情報の分析
C.報告およびフォローアップ

おもな参考文献

脚注

序文

 障害のある男女および児童は、すべての社会で誰よりも片隅に追いやられ、人権の享有において独自の難題に直面することがあまりに多い。長い間、そのような難題は、身体的、精神的、知的あるいは感覚的な機能障害〔インペアメント〕が原因の、起こるべくして起こった避けられない結果であると見なされてきた。

 障害者権利条約および選択議定書の採択と発効は、そのような態度に対する挑戦であり、障害に対するこれまでのアプローチの根本的な転換を示すものである。同条約では、機能障害〔インペアメント〕を欠陥や疾病の問題と見なし、周囲が認めるその人の「欠点」に焦点を合わせることは、もはやしていない。反対に、障害を「社会病理」とし、社会が個人の違いを受け入れ、その便宜を図ることに失敗した結果であるとしている。変わる必要があるのは社会であり、個人ではない。そして障害者権利条約は、その変革のためのロードマップを提供しているのだ。

 人権モニタリングは、各国による国レベルでの障害者権利条約の効果的な実施と、自らの権利に対する障害のある人の自覚を強めるためのエンパワメントを支援し、その結果、地域を越えて、障害のある人の生活に好ましい変化をもたらすうえで、重要な役割を果たすことができる。

 人権活動を効果的に行うためには、準備と技術的手腕、そして具体的な知識が必要である。本書の目的は、国連人権専門官と、各国政府、国内人権機関ならびに非政府機関などその他の人権モニターが、障害者権利条約に従い、障害のある人の権利のモニタリングに関与するのを支援することである。本書では、障害者権利条約に記されているパラダイムシフトと、同条約によって承認されている適用範囲、基準および原則を説明する。さらに、障害のある人の権利のモニタリングに関する方法論を提案するとともに、障害のある人と活動する際に考慮すべき問題についての有用なアドバイスを提供する。

 歴史的に見て、障害のある人は人権制度において無視され、人権活動においても見過ごされてきた。このようなことはもはや受け入れられない。本書では、障害のある人々を一般的なモニタリング活動に参加させるだけでなく、必要に応じて、その権利の状況と享有に関するモニタリングにも特別な注意を払っていくことによって、人権モニタリングの関係者が、障害者のある人の視点を効果的に活動に取り入れていくよう支援する。

ナヴァネセム・ピレー(Navanethem Pillay)
国際連合人権高等弁務官

I. 人権問題としての障害の理解

 世界人口の10パーセントに当たる6億5千万を超える人々が、障害を持っていると推定されており、そのうちの80パーセントは開発途上国で暮らしている。障害のある男女および児童の中には、社会に完全に統合され、あらゆる生活分野に参加し、積極的に貢献している者もいる。しかし大多数は、差別や排除、孤立、さらには虐待に直面しているのだ。障害のある人の多くは、教育や雇用の機会を得ることなく、極端に貧しい暮らしをしている。施設でくらしている。そして、その他のさまざまな疎外要因に直面している。中には、障害のある人が、自分自身の財産を持つ権利を否定されている国もあり、また自分自身で決定を下す権利を否定されることも一般的である。障害のある人が直面する差別は、地理的境界を越えて蔓延しており、生活のあらゆる領域と社会のあらゆる部門において、人々に影響を与えている。

 2008年5月の障害者権利条約および選択議定書の発効は、「障害のあるすべての人によるすべての人権および基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し及び確保すること、並びに障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進する」(第1条)取り組みを進める、新たな時代の始まりを告げるものであった。障害のある人は常に他のすべての人と同じ権利を与えられてきたが、拘束力のある国際文書の中で、その権利について総合的に、かつ明確に述べたのは初めてである。

 障害者権利条約の制定は、障害と障害のある人に対する見方が変化したことを反映している。歴史的に、障害は個人に内在する個人的な状況であると考えられてきた。個人の欠陥としての「障害がある」状態は、通常の学校に通うことや仕事を得ること、あるいは社会生活に参加することができなくなる当然の原因と見なされてきた。障害がこのように認識される場合、社会の対応は2つのうちのいずれか1つに限られてしまう。つまり、障害のある人は、医療やリハビリテーションを通じて「治す」ことができる(医学的アプローチ)とするアプローチか、あるいは慈善や福祉のプログラムを通じて世話を受けることができる(慈善的アプローチ)とするアプローチである。このような古いモデルでは、障害のある人の生活は専門家の手にゆだねられ、どこの学校へ行くか、どのような支援を受けるか、どこで生活するかなどの基本的な決断を、専門家が下すことになる。

 過去数十年にわたり、障害に対する理解には重大な変化があった。もはや焦点となるのはその人の弱点ではない。その代わりに障害は、個人と、その人が他の人と異なる部分に対応せず、個人の社会参加を制限し、あるいは妨げている環境との、相互関係の結果として認識される。このアプローチは障害の社会モデルと言われている。障害者権利条約では、このモデルを支持し、障害を人権問題として明確に認識することにより、この考え方をさらに進めている。

 この視点によれば、障害のある人による権利の完全な行使を妨げる障壁となる社会的、法的、経済的、政治的および環境的状況を特定し、克服する必要があるということになる。たとえば、障害のある人の教育からの疎外や排除は、本人に学習能力がないために起こるのではなく、不十分な教員研修やアクセシブルでない教室に起因し、障害のある人の労働市場からの排除は、職場への交通手段の欠如や、障害のある人は働くことができないという、雇用主や同僚の否定的な態度が原因といえるかもしれない。また、障害のある人が公共活動に参加できないのは、点字などのアクセシブルなフォーマットによる電子資料がないことや、障害のある人にとって物理的にアクセシブルではない投票ブースなどが原因かもしれないのだ。

 障害を人権という視点から見るということは、障害のある人を、これ以上慈善の対象、あるいは他者の決定に従う者とするのではなく、権利保有者と見なすように、各国および社会のあらゆる部門の考え方や行動を変えていくことを意味する。権利にもとづくアプローチでは、障害のある人を含むさまざまな人による有意義な参加を可能にする状況を生み出すことによって、人間の多様性を尊重し、支援し、称賛する方法を模索していく。障害のある人の権利の保護・促進は、障害関連のサービスを提供することに限られない。障害のある人にレッテルを貼って疎外する態度や行動を、変革する手段を採用することでもあるのだ。また、障壁を撤廃し、障害のある人の市民的、文化的、経済的、政治的および社会的権利の行使を保障する政策や法律、計画を実施することもあげられる。権利の真の行使を達成するには、たとえば、障害を理由に入国を禁止する移民法、障害のある人の婚姻を禁止する法律、障害のある人に対し、十分な説明にもとづく自由な同意を得ずに医学的処置を行うことを許可する法律、精神障害あるいは知的障害を理由とした監禁を許可する法律、そして障害があることを理由に診療を拒否する方針など、権利を制限する政策や法律および計画をさしかえなければならない。これに加えて、社会経営の方法を変え、障害のある人の完全な社会参加を阻む障壁を撤廃するための計画や意識の向上、社会的な支援も必要である。さらに障害のある人には、社会への完全参加の機会と、自らの権利を主張する適切な手段を提供しなければならない。

たとえば、「障害のある人の具合が悪いところはどこですか?」と質問する代わりに、こう尋ねる。
「社会にはどのような問題がありますか? すべての障害のある人による、あらゆる権利の完全な享有を促進するために、どのような社会的、経済的、政治的および/あるいは環境的状況を変革する必要がありますか?」

たとえば、「他の人が話すことを理解できないのは、あなたの耳が聞こえないからですか?」と質問する代わりに、こう尋ねる。
「他の人が話すことを理解できないのは、他の人があなたとコミュニケーションをとる能力をもたないからですか?」

質問は、マイケル・オリバー(Michael Oliver)『障害の政治(The Politics of Disablement)』(ベイシングストーク(Basingstoke) マクミラン社(Macmillan)1990年)より引用・編集。


以下の言葉は、障害のある人を慈善の対象と見なす場合と権利保有者と見なす場合の違いを示している。
慈善にもとづくアプローチ 人権にもとづくアプローチ
選択肢 義務
外的コントロール 自主性
無力化 エンパワメント
弱点の矯正 環境の調整
活動の制限 活動の促進
軽視する 尊厳を認める
依存 自立
差別 平等
施設への収容 インクルージョン
分離 統合

II. 障害者権利条約
A. 条約の必要性

 障害者権利条約に先立つおもな国際人権文書では、障害のある人を含むすべての人の権利を認めている。これらの文書は、障害のある人の権利を促進し、保護する重大な可能性を提示する一方で、この可能性はいまだに完全には実現されていない! 1

 障害者権利条約は、1981年から始まった、障害のある人とその代表団体による、障害を人権問題として十分に認識してもらうための、長く苦しい闘いの終わりを告げるものである。この年は国際障害者年で、その成果として、障害者に関する世界行動計画が採択された。1993年に国連総会で採択された障害のある人の機会均等化に関する基準規則、また障害特別報告者や差別防止・少数者保護に関する小委員会による数々の報告、そして1998年、2000年および2002年の人権委員会による一連の決議は、人権にもとづくアプローチへの道を開くことに大いに貢献した。

 その他の重要な画期的な出来事としては、女性差別撤廃委員会による障害のある女性に関する一般勧告第18号(1991年)、経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会による障害のある人に関する一般的意見第5号(1994年)、および障害のある人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する米州条約(1999年)などの地域法の採択があげられる。

 障害者権利条約は、これらの法的文書にとって代わる、障害のある人の人権を認め、それらの権利を尊重し、保護し、実現するための各国の義務を明確に示した、最新の専門的かつ総合的な条約である。これによって障害者権利条約は、障害の社会・人権モデルを正式に認めているのだ。

9つのおもな国際人権文書
あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約
経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約
市民的及び政治的権利に関する国際規約
女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約
拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約
子どもの権利条約
すべての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約
障害者権利条約
強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(未発効)

B. 障害の定義

 障害者権利条約には、障害や障害のある人の厳密な定義は記されていないが、「障害」の概念について、またその概念と同条約との関係については、ある程度の指針が示されている。前文では、「障害〔ディスアビリティ〕が形成途上にある〔徐々に発展している〕概念であること、また、障害が機能障害〔インペアメント〕のある人と態度及び環境に関する障壁との相互作用であって、機能障害のある人が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものから生ずる」ことを認め、障害に対する社会的アプローチ(障害の社会モデル)を明確に支持している。障害を構成する要因として、主体の外にある障壁にはっきりと言及したことは、障害を機能上の制約があるとする考えから一歩離れた、重要な前進である。2  これに従い、第1条では、「障害〔ディスアビリティ〕のある人には、長期の身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害〔インペアメント〕のある人を含む。これらの機能障害は、種々の障壁と相互に作用することにより、機能障害のある人が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げることがある。」(強調は筆者による。)この視点からすると、障害のある人の社会参加は、それが就職であれ、就学であれ、医師の診療を受けに行くことであれ、あるいは選挙に出馬することであれ、機能障害〔インペアメント〕があるという理由ではなく、物理的な障壁だけでなく、場合によっては法律や政策なども含むさまざまな障壁が理由で、制限されたり阻止されたりするのだといえる。

 身体障害のある人にとっては、平坦でない地形、段差をつなぐ階段、重いドアや狭い通路などが、このような障壁としてあげられるだろう。たとえば、車いすを使用している人は、会議室のドアが狭すぎて車いすが通れない場合、あるいはスロープやエレベーターがない場合、会議に参加することができない可能性がある。建築基準法にアクセシビリティの規定がない場合、あるいは基準が不十分な場合も、障壁をもたらす可能性がある。

 障害者権利条約は、国内法における定義の使用を否定しているわけではない。実際、雇用あるいは社会保障などのいくつかの部門では、特に定義が必要な場合がある。しかし、そのような定義では、障害者権利条約に記されている障害の社会モデルを反映させることが重要であり、機能障害〔インペアメント〕のリストや種類、あるいは機能的制約にもとづいた定義は改正されなければならない。モニター(監視者)は国内法において、(a)精神的、知的、感覚的あるいは身体的な機能障害〔インペアメント〕との関連で差別が起こりうることを認めているかどうか、(b)機能障害〔インペアメント〕のある人と外部の障壁との間の相互作用の結果を障害〔ディスアビリティ〕と呼ぶ、社会モデルを取り入れているかどうか、そして(c)さまざまな障害〔ディスアビリティ〕の分類よりも、差別の禁止と平等の促進に焦点を当てているかどうかをモニタリングしなければならない。

C. 条約の原則

 障害者権利条約第3条では、一連の包括的な基本原則を確認している。これらは、すべての領域にわたる条約全体の解釈と実施の指針を示すものである。そして、障害のある人の権利の理解と解釈の出発点であり、それぞれの権利を評価する際のベンチマークを提供する。

一般原則(第3条)
固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む)及び人の自立に対する尊重
非差別〔無差別〕
社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョン
差異の尊重、並びに人間の多様性の一環及び人類の一員としての障害のある人の受容
機会の平等〔均等〕
アクセシビリティ
男女の平等
障害のある子どもの発達しつつある能力の尊重、及び障害のある子どもがそのアイデンティティを保持する権利の尊重

これらの原則は何を意味するのか?

 固有の尊厳とは、個々の人間の価値をいう。障害のある人の尊厳が尊重されるということは、その経験と意見が重んじられるとともに、身体的、心理的あるいは情緒的危害を恐れることなく、それらが形成されるということである。尊厳の尊重が否定されるのは、hたとえば、視覚障害のある労働者が、「目がみえません」という言葉が背中に印刷されたシャツを着ることを、雇用主から強制される場合があげられる。3

インドの障害のある女性は、尊厳の権利に対する侵害について以下のように報告した。 「これらすべてに加え、人々の態度、特に一人で出かけなければならないときや、道を渡らなければならないときに、男の人たちが示す態度があげられます。私を助けに来てくれる人たちは、それを親切心からしてくれるわけではなく、いつも、体の別の所に触れたり、あらん限りの方法で失礼なことをしたりしてくるのです。私にとってはこれは避けられないことです。道を渡るには誰かの手を借りなければならないのですから。相手にとっては、いくらでも下品なふるまいができるチャンスであり、私にできることは何ひとつありません。一人で道を出歩くときには、誰かの助けなしにはやっていけないのですから。この種の経験には、これまで何度も直面せざるを得ませんでした。一度や二度ではありません。」

出典:『障害のある人の人権のモニタリング-カントリーレポート:インド アンドラプラデシ(Monitoring the human rights of people with disabilities-country report: Andhra Pradesh, India)』(DRPI 2009年)(www.yorku.ca/drpiで入手可能)

 個人の自律とは、自分自身の人生に責任を持ち、自ら選択する自由を持つという意味である。障害のある人の個人の自律に対する尊重とは、このような人が、他の者との平等を基礎として、必要に応じて適切な支援を受けながら、人生において妥当な選択をし、私生活に対する干渉を最小限にとどめ、自己決定をすることができるということである。この原則は障害者権利条約全体に浸透しており、同意にもとづかない医学的介入からの自由など、同条約が明確に認めている多くの自由と、十分な説明にもとづく自由な同意にもとづく医療の提供という義務を支えている。この視点から見ると、たとえば精神障害のある人には、心理療法、カウンセリング、ピアサポートおよび薬物治療など、精神医療ケアの幅広い選択肢を提供するべきであり、また、個人の嗜好にもとづき、有意義な選択を行う自由を与えなければならないということになる。同様に、地雷の生存者で身体的な機能障害〔インペアメント〕のある人には、自力での移動を容易にする装具を提供し、できるだけ自立できるようにしなければならない。

 非差別〔無差別〕の原則は、あらゆる権利が、障害や人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、出身国あるいは社会的出身、財産、出生、年齢、その他の地位にもとづく区別、排除、あるいは制約なしに、すべての人に保障されるということを意味する。障害にもとづく差別とは、障害のある人による、他の者との平等を基礎とした、すべての人権および基本的自由の認識、享有あるいは行使を侵害し、あるいは無効にすることを目的とし、もしくはその効果をもたらすあらゆる区別、排除、または制約を意味し、それには合理的配慮の否定も含まれる。差別が生じるのは、たとえば、女性が障害のためにお金の管理ができないという理由で銀行口座を開くことが許可されない場合があげられる。4 差別はまた、面接を経て就職した男性が、視覚的な機能障害〔インペアメント〕があり、本を目のすぐ近くまで近づけて持たなければ読めないということをあとになって知った雇用主から、家に戻って人事担当からの確認書が届くのを待つように言われるが、そのような手紙は決して届くことはなく、男性が仕事を得ることはない、というときにも生じている。 5さらに障害のある人は、何重もの差別を経験する場合もある。たとえば障害のある女性は、障害だけでなく性による差別も経験するであろう。第3条で非差別〔無差別〕の原則を認めることによって、あらゆる形態による差別を検討することの重要性が明確に示されている。

 平等とは、差異を尊重し、不利益を解消し、すべての男女および少年少女が平等に完全参加できる社会状況を創造することを意味する。障害のある少女が両親によって学校を辞めさせられた場合、平等は否定される。好成績にもかかわらず、両親は娘の障害を理由に、教育にお金をかけても無駄だと決めつけたわけである。 6平等の達成には、ときに、精神障害や知的障害のある人が他の者との平等を基礎として意思決定をし、法的能力を行使するための支援の提供のように、追加手段を必要とする場合がある。

合理的配慮(第2条)

「合理的配慮」とは、障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整であって、特定の場合に必要とされるものであり、かつ、不釣合いな又は過重な負担を課さないものをいう。(第2条)

「配慮」とは、障害のある人の特別なニーズに配慮するための、規則、慣習、状況、または必要条件の調整であり、このような人が完全かつ平等に参加できるようにすることを目的としている。職場における配慮には、視覚的な機能障害〔インペアメント〕のある従業員のためのソフトウェアおよびキーボードの確保や改良、研修、あるいは課題をこなすための時間の延長などがある。教育においては、合理的配慮として、必要な課程を修了するための代替手段、個別指導による支援、または支援技術〔支援機器〕の提供が必要となる場合がある。

雇用主、教育機関、サービス提供者などは、合理的配慮を提供する法的義務を負う。企業や学校が、障害のある従業員や生徒に配慮するために必要な手段をすべて講じたかどうかを判断するには、「不釣合いな又は過重な負担」という概念が鍵となる。配慮の義務を合法的に免除してもらうためには、雇用主あるいは学校は、健康、安全、あるいは費用などの要素を検討し、個人のニーズに配慮した結果、過重な負担や不釣り合いな負担を組織に課すことになると証明しなければならない。

 完全かつ効果的な参加及びインクルージョンおよびアクセシビリティの概念は、公私両方の社会を、すべての人が完全参加できるように整えることを意味する。社会に完全に参加するとは、障害のある人が同等な参加者として認識され、尊重されるということである。障害のある人のニーズが、「特別」なものではなく、社会経済的秩序に不可欠なものとして理解される。完全なインクルージョンの達成には、アクセシブルでバリアフリーな物理的社会的環境が必要となる。たとえば、完全かつ効果的な参加とインクルージョンでは、政治選挙のプロセスにおいて障害のある人を排除せず、選挙会場をアクセシブルにし、選挙の手続きと資料を、理解しやすく、使用しやすい複数のフォーマットで利用できるようにすることが例としてあげられる。参加とインクルージョンの概念に関連しているのがユニバーサルデザインの考え方で、これは障害者権利条約では、「調整又は特別な設計を必要とすることなしに、可能な最大限の範囲内で、すべての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう」(第2条)と定義されている。つまり、あとになって特別な調整が必要ないように、設計の段階で、社会のすべての構成員のニーズを考慮しなければならないということだ。

 差異の尊重とは、相互理解により他者を受容することである。これには、障害を人間の多様性および人間性の一部として受容することも入る。目に見える明らかな差異があっても、すべての人は同じ権利と尊厳をもっている。したがって、たとえばバスの運転手は、身体障害のある少年が待合所のベンチから立ちあがり、バスに乗って席に着くまで、十分に時間をとってから、停留所をあとにするだろう。バスの運転手がすべての利用者に、質の高く、安全な交通手段を確保しているだけでなく、バスの時刻表でも、障害のある人やその他の公共交通機関利用者のニーズを含むさまざまな要素に配慮しているのだ。重要なのは、障害者権利条約では障害の予防を模索しているのではなく(これは医学的アプローチである)、むしろ障害にもとづく差別を予防しようとしているということだ。事故を予防し、安全な出産と母性保護を促進するキャンペーンは、治安や公衆衛生とかかわりがある。しかし、そのようなキャンペーンを障害のある人に関して推進する場合は、障害が否定的にとられ、人権にもとづくモデルを重視した、差異と多様性の尊重や差別との闘いから関心がそれてしまう。

 これらの一般原則は、障害者権利条約の中核をなし、障害のある人の権利をモニタリングする際に中心となる。

D.障害のある人の権利

 障害者権利条約は広範囲にわたる人権条約で、市民的、文化的、経済的、政治的および社会的権利の全領域を網羅している。同条約は、障害のある人のために新たな権利を設けているのではない。その代わりに、既存の人権が障害のある人にとってどのような意味をもつかを詳細に説明し、これらの権利を保護・促進する締約国の義務を明示している。障害のある人の権利の実現をもたらす環境を確保するために、同条約には、意識向上、アクセシビリティ、危険のある状況及び人道上の緊急事態、司法へのアクセス、個人の移動性、ハビリテーション及びリハビリテーション、そして統計及びデータ収集に関する条文も盛り込まれている。7

第10条から第30条まででは、障害のある人に保障される権利を扱っている
第10条-生命に対する権利
第11条-危険のある状況及び人道上の緊急事態
第12条-法律の前における平等な承認
第13条-司法へのアクセス
第14条-身体の自由及び安全
第15条-拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由
第16条-搾取、暴力及び虐待からの自由
第17条-個人のインテグリティ〔不可侵性〕の保護
第18条-移動の自由及び国籍
第19条-自立した生活〔生活の自律〕及び地域社会へのインクルージョン
第20条-個人の移動性
第21条-表現及び意見の自由並びに情報へのアクセス
第22条-プライバシーの尊重
第23条-家庭及び家族の尊重
第24条-教育
第25条-健康
第26条-ハビリテーション及びリハビリテーション
第27条-労働及び雇用
第28条-適切〔十分〕な生活水準及び社会保護
第29条-政治的及び公的活動への参加
第30条-文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加

 障害者権利条約のモニタリングの際には、障害のある人が直面する特別な状況に、これらの権利がどのように関連しているかを説明するため、以下について検討する。

〉 法律の前における平等な承認の権利では、とりわけ、障害を法的能力はく奪の根拠とすることを廃止する必要がある。たとえば、障害のある人の代理として決定を下す後見人を任命する慣習を廃止し、代わりに、障害のある人が自ら決定できるよう支援する。

〉 身体の自由及び安全の権利では、とりわけ、十分な説明にもとづく自由な同意がない限り、誰も精神障害および知的障害などの障害を理由に、精神科施設およびその他の施設に収容されることがないよう、監視する必要がある。

〉 拷問からの自由では、とりわけ、各施設が障害のある人に対し、電気ショック療法の実施や檻のベッドの使用などを最終手段として用いたり、あるいは本人の意思に反して、障害を矯正するための押しつけがましい、または元に戻すことのできない治療を課したりしているかどうかを調査しなければならない。

〉移動性の自由では、とりわけ、締約国が障害を理由に旅行関係の書類を保留にしているかどうかを調査しなければならない。

〉 教育の権利では、とりわけ、障害のある生徒や学生が、障害を理由に一般教育制度から排除されていないかどうか、生徒が必要としている合理的配慮が一般教育制度において提供されているかどうか、また、インクルージョンという目標に合致した学力および社会性の向上を最大限にするために、効果的で個別化された支援措置がとられているかどうかを調査しなければならない。

〉 健康の権利では、とりわけ、誰もが必須医薬品を利用できるかどうかだけでなく、障害のある人の、十分な説明にもとづく自由な同意にもとづいて、医療が提供されているかどうかも調査する必要がある。

〉 労働の権利では、とりわけ、労働法によって職場での差別が禁止されているかどうか、また障害のある人が必要とする可能性のある、コンピュータやインターネット技術などのアクセシブルな技術と、物理的にアクセシブルな建物を確保するための積極的な措置を講じることを、雇用主に義務付けているかどうかを調査する必要がある。

〉 適切〔十分〕な生活水準の権利では、とりわけ、ミレニアム開発目標に関連したプロジェクトなど、社会保障計画や政策枠組み、貧困削減戦略、国家開発計画を調査し、障害のある人の衣食住の権利およびその他の権利の促進と保護を必ず含めることが必要である。

〉 政治的及び公的活動への参加の権利では、とりわけ、選挙関係の資料がアクセシブルなフォーマット(点字文書や手話通訳付きのテレビ広告など)で提供され、投票ブースがアクセシブルである(たとえば、スロープが利用できるなど)よう、選挙に関するモニタリングを行わなければならない。

〉 「文化的生活に参加する権利」では、とりわけ、手話およびろう文化が明確に承認され、支持されているかどうか、そして著作権保護により、録音図書などの文化的資料へのアクセスが妨げられていないかどうかを調査しなければならない。

 市民的、文化的、経済的、政治的および社会的権利は目に見えず、相互に依存し、関連しあっている。障害のある人の権利をモニタリングするには、この相互依存性に対する理解が重要である。たとえば、施設のモニタリングには、障害の存在を理由に自由を奪われているかどうか(身体の自由及び安全の権利)、十分な説明にもとづく自由な同意なしに治療の対象となっていないかどうか(健康の権利、身体的及び精神的なインテグリティ〔不可侵性〕の権利、拷問からの自由の権利)、そして施設に収容されている人々が、十分な食料、衣類、光、衛生状況等を享有しているかどうか(適切〔十分〕な生活水準の権利)などをモニタリングする必要がある。

 経済的、社会的および文化的権利について障害者権利条約では、既に経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第2条と、子どもの権利条約第4条で認められているように、それらを漸進的に実施していくという締約国の義務を再確認している。経済的、社会的および文化的権利の完全な実現は、限られた資源による制約を受ける可能性があるという認識には、締約国が自国で利用可能な資源の最大限の範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で措置をとるよう義務付けること(障害者権利条約第4条(2)および第32条)で、解決をはかっている。

経済的、社会的および文化的権利の漸進的な実現

第4条(2)では次のように規定している。

各締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、これらの権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段〔資源〕の最大限の範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で措置をとることを約束する。ただし、この規定は、この条約に含まれる義務であって国際法に基づいて即時的に適用可能なものに影響を及ぼすものではない。

経済的、社会的および文化的権利の漸進的な実現にかかわるいくつかの局面は、モニタリングの目的として重要である。8

〉障害をはじめとするあらゆる根拠にもとづく差別は、経済的、社会的および文化的権利の実現のレベルに関わらず、常に禁止される。

〉締約国は、経済的、社会的および文化的権利のそれぞれの享有について、必要最低限なレベルを確保する即自的義務を負う。

〉締約国は、これらの権利の漸進的な実現に向けた措置を講じる義務を負う。たとえば、締約国は行動計画を開発することができるが、それには(a)経済的、社会的および文化的権利を実施する期限、(b)期限を定めた成果評価基準、および(c)成功指標を含めなければならない。

〉締約国は、経済的、社会的および文化的権利の享有を損なう退行的な手段あるいは措置を講じることを禁止される。

E. 障害者権利条約のモニタリング機構

障害者権利条約には、国内および国際的なモニタリング機構の両方が盛り込まれている。

 国内レベルでは、第33条において、同条約の実施とモニタリングにかかわる3つの仕組みを定義している。第一に締約国は、実施に関連する事項を取り扱う1つまたは2つ以上の担当部局〔フォーカルポイント〕を政府内に指定しなければならない。第二に締約国は、異なる部門および段階における活動を容易にするため、政府内に調整のための仕組みを設置し、または指定することに十分な考慮を払わなければならない。そして第三に締約国は、同条約の実施を促進し、保護し、および監視〔モニター〕するために、1つ、または2つ以上の独立した仕組みを含む枠組みを、設置または指定しなければならない。

 国際レベルでは、第34条で、障害のある人の権利に関する委員会の設置を規定している。これは、いくつかの機能を果たす、独立した専門家からなる委員会である。第一に、締約国と国内のモニタリング機構や市民社会団体などのその他の利害関係者から定期的に提出される報告書をもとに、同委員会は締約国と条約実施に関する建設的な対話を行い、結論となる所見とともに、条約実施を改善、強化するためのフォローアップ活動に関する勧告を発表する。第二に同委員会は、数日間にわたる全体討議を開催し、これを一般に公開し、障害者権利条約について提起された一般的な議題を議論する。第三に同委員会は、障害者権利条約の特別な規定や、同条約実施の際に発生した特定の問題を明らかにするために、一般的意見として知られる正式な声明を発表する場合がある。第四に選択議定書では、同委員会に対し、選択議定書を批准した国による条約規定の侵害の被害者であると主張している個人からの苦情(通報として知られる)を受理する権限を与えている。委員会は、関係国からのコメントを踏まえ、苦情を検討した後、その見解を表明する場合がある。第五に、選択議定書では同委員会に対し、深刻な、または組織的な障害者権利条約の侵害を示す信頼できる情報を受理した場合、締約国において調査を開始する機会も与えている。

 人権モニター9は、これらの機構とその機能を認識しておかなければならない。モニタリング活動では、以下を行う場合がある。

〉国内モニタリング機構に障害者権利条約の実施状況に関する情報を提供する。

〉上記委員会に、締約国との建設的な対話に必要な情報を提供する。

〉障害者権利条約の下での個人の権利の侵害の可能性を確認する。これにより、当該国が選択議定書を批准している場合、その規定に従い、上記委員会と連絡をとるための基礎を築くことができる。

〉障害者権利条約に対する深刻な、あるいは組織的な侵害に関する信頼できる情報を確認する。これは、当該国が選択議定書を批准している場合、その規定に従い、上記委員会による調査の実施を促すため、同委員会に提出される場合がある。

〉障害者権利条約の実施を強化するために国内モニタリング機構ならびに上記委員会によって出された勧告のフォローアップを行う。

III. 障害のある人の権利のモニタリング:
概説

 締約国、国内人権機関、障害者団体およびその他の市民社会団体、ならびに関連のある権限を有する国連事務所による確固たるエビデンスベースの報告書は、障害者権利条約の下で保障されている人権が実行に移され、障害のある人の生活に真の変化をもたらすことに貢献するだろう。モニタリングの手順を検討する前に、あらゆるモニタリング活動の指針となる以下の要素に留意することが重要である。

A. モニタリングにおける障害のある人の中心的な役割と参加

 障害のある人とその代表団体10は、障害者権利条約の策定と協議において、「私たちのことを私たち抜きで決めないで!」というスローガンの下、重要な役割を果たした。障害者権利条約では、この役割を継続させなければいけないことを認め、障害のある人にかかわる意思決定過程において、このような人々と「緊密に協議し」かつこのような人々を「積極的に関与させる」ことを、締約国に義務付けている(第4条(3))。特に障害者権利条約では、「市民社会、特に、障害のある人及び障害のある人を代表する団体は、監視〔モニタリング〕の過程に完全に関与し、かつ、参加する」(第33条(3))ことを義務付けている。これは、過程と内容の両方について言えることで、過程に関しては、障害のある人がモニタリング活動に参加しなければならないということ、たとえば、障害のある人をモニターにすることがあげられる。また内容については、障害のある人は自分の状況に関してエキスパートであるという事実を認め、その意見と経験とをモニタリング報告書の中心としなければならない。

 さらに、障害のある人の人権の状況をモニタリングする取り組みでは、特定のグループ内で、さらなる疎外を生むことにならないようにすることも重要である。障害のある人の権利のモニタリングでは、障害種別や社会の違いを越えて焦点を当てていかなければならない。つまりモニタリングには、身体的、精神的、知的あるいは感覚的な機能障害〔インペアメント〕など、すべての種類の障害〔ディスアビリティ〕と、そのような障害のある男女および少年少女、そしてあらゆる社会経済的・民族的経歴、年齢、職業の者を含めなければならないのだ。たとえば、貧しい者やホームレス、あるいは施設に収容されている者も対象としなければならないのである。

B. 「責務の担い手」および連携機関の確認とマッピング

 障害のある人の人権のモニタリングにかかわる者にとって重要な第一段階は、モニタリング過程におけるさまざまな関係者を確認し、マッピングすることである。モニターは、障害のある人に関する責任を負う省をはじめとする、関係のある「責務の担い手」を確認しなければならない。これにはたとえば、法務省、法務長官や、社会保護、雇用および就労、文化およびスポーツ、保健衛生を担当する省庁などがある。障害者権利条約では民間団体にも言及していることから、モニターは、経営者団体や労働組合についても、モニタリングにおけるパートナーとして、さらには障害のある人の権利を尊重する責任を担う関係者として、認める場合がある。

 また、障害種別や社会の違いを越えて焦点を当てていくという目標に留意し、モニタリングの対象となる地域の、障害者団体(DPO)も確認しなければならない。たとえば、これらの団体の中には障害種別を越えた会員からなるものもあることに注意する。一方で、視覚的な機能障害〔インペアメント〕や心理社会的障害〔ディスアビリティ〕、あるいは障害のある女性や退役軍人のような特別な集団など、特定の機能障害〔インペアメント〕のある人たちの代表団体もあるだろう。モニターはまた、これら以外の多種多様なパートナーとのコミュニケーションネットワークも設立・促進しなければならない。このようなパートナーには、さまざまな地域および部門(大学、研究機関、NGO、労働組合、専門家集団、政府間機関など)に由来し、多様な人々に焦点を当てているもの(女性、子ども、および先住民族と活動している団体など)もある。国連の各部門、機関、基金およびプログラムで構成される関連機関相互支援グループ(Inter-Agency Support Group)では、障害者権利条約に関する国連の活動の調整に努めている。11 このためモニターは、これ以外の国連機関あるいは世界銀行に対し、モニタリングのパートナーや情報源となってもらうために連絡をとることを検討する場合がある。

C. 障害のある人および障害者代表団体の能力開発

 多くの場合、DPOとのかかわりには、これらの団体における障害のある人が、人権の原則と概念を理解するための能力開発も含まれるであろう。言いかえれば、能力開発はモニタリング活動の一部であり、これを補完するものである。あらゆる事例において、能力開発活動はすべての人に完全にアクセシブルでなければならない。パートナーであるDPOとそのメンバーは、モニターに対し、完全なアクセシビリティを確保するために講じるべきさまざまな措置に関する情報を提供することができるだろう。

能力開発およびモニタリング活動におけるアクセシビリティへの配慮に関するチェックリスト
1. 印刷物(例 研修マニュアル、モニタリングの手順に関する情報、同意書、アンケートなど)
☑ 完全参加に必要なあらゆるフォーマットおよび言語による資料の制作の確保(例 点字版、大活字版、電子版、手話、読みやすくわかりやすいフォーマットなど)
2. 視覚的支援(例 コンピュータを使用したスライド発表、写真、図、地図、ビデオテープ)
☑ これらの支援手段を通じて、情報に関する十分な説明がアクセシブルなフォーマットで伝えられるようにする。(例 テキストとともにコンピュータによるスライド発表で表示される画像の説明を提供する。)
3. 口頭によるコミュニケーション(例 対面会議および電話会議、講習会、オーディオテープ、モニタリング面談)
☑ 十分な時間を取り、必要な通訳/ファシリテータを手配し、ろう者、盲ろうの人、知的障害のある人、あるいは拡大代替〔補助代替〕コミュニケーションを使用している人が、相手の話の内容を理解し、かつ、自分自身の考えを伝えることができるようにする。(例 手話通訳、リアルタイム字幕、コミュニケーションアシスタントなど)
4. 会場(例 会議、講習会、面談の会場)
☑ 移動装置使用者のためのアクセスを確保する。(例 階段、狭い通路、こみあった部屋を避ける。)
☑ アクセシブルなトイレが利用できるようにする。
☑ 参加者が、費用対効果の高いアクセシブルな交通手段により、会場に到達できるようにする。
☑ 参加者が会場に到達できるよう、複数のフォーマットによる適切な看板、および/あるいは参加者を会場に案内する人を用意する。(例 点字による案内、出迎え係など)
☑ アクセシビリティの要件を確認するために、パートナーのDPOと緊密に協議することを忘れない。活動に参加する人(々)の特別なニーズが満たされるよう、可能な限り参加者と直接協議する。
これらの配慮はすべてを網羅してはいないことに注意する。モニターは、ケースバイケースでアクセシビリティに対処することを覚えておかなければならない。

D. 障害者権利条約モニタリングへの二本立てのアプローチ

 障害のある人の権利のモニタリングには、以下の二本立てのアプローチ12が必要である。

〉第一に、モニタリングでは、効果を上げるために、障害のある人の権利に特に焦点を当てることを正当とする場合がある。たとえば、議会が障害者権利条約の批准を検討している場合、既存の法的枠組みが同条約に準拠しているかどうかを特に分析すること、そして既存の法律および政策の実施をモニタリングすることが適切であろう。同様に、インクルーシブ教育に関する特定の課題(非分離型の学校、アクセシブルな校舎、適切なカリキュラム、十分な研修を受けた教師)では、障害のある児童生徒の教育の権利に特に焦点を当てたモニタリング活動を正当とする場合がある。

〉第二に、モニタリングでは、障害のある人が生まれながらに他の者と異なると考えるアプローチを促進してはならない。したがって、障害のある人の権利のモニタリングは、一般的な人権モニタリング活動に統合されるべきである。たとえば、拷問からの自由のモニタリングでは、刑務所だけでなく精神障害者施設も対象とするとともに、刑務所に収容されている障害のある人についても注意を払わなければならない。開発プロジェクトのモニタリングでは、他のターゲットグループと同じ立場の受益者としての障害のある人に対するプロジェクトの影響を検討しなければならない。重要なのは、多くの国内人権機関、障害者団体およびその他の市民社会団体と国連事務所が、紛争地あるいは紛争のあった地域で活動しているということである。そのような状況においては、障害のある人は特に弱者となり、緊急避難の際や紛争の結果住む場所を失った場合、特別な困難に直面したり、物理的環境の障壁に直面したり、個別の人的支援ネットワークから排除されたりする可能性がある。したがって、紛争中、緊急時、および紛争後の人権モニタリングにおいて、障害のある人の権利を検討することが重要となる。

IV. モニタリングの実践

 モニタリングは、情報収集から法律および情報の分析、文書化および報告、是正処置およびフォローアップ、そして最終的には評価に至るまで、さまざまな段階から構成されている。これらの活動は「モニタリングサイクル」と呼ばれるサイクルの中で密接に関連しあっている。本章では、(a)情報収集、(b)法律および情報の分析、および(c)文書化および報告/是正処置とフォローアップに焦点を当てる。

A. 情報収集

1. 文書ベースの情報

 障害のある人による権利の享有に関する情報収集は、通常、情報源を確認することから始まる。モニターはさまざまな情報源を検討しなければならない。

〉憲法、法律および規則はおもな情報源である。さらにモニターは、国会喚問や報告書など、その他の情報源を検討する場合もある。

〉法律の実施にかかわる国家政策および計画ならびに予算

〉裁判所や国内人権機関などの司法機関および準司法機関による判決

〉メディアによる報道、大学あるいはその他の研究所、市民社会団体による調査研究

 モニターは、印刷された情報源(例 公文書集)、法律および判例法のデータベースの電子検索、障害に関するメディアの報道をモニタリングするための電子検索エンジンを利用できる。

 憲法の規定、法律、規約および規則などの法律に関する情報収集の結果、法律により障害のある人がどの程度差別されているか、また障害のある人の権利がどの程度促進されているかを理解する手段が得られる。政策(必ずしも拘束力があるわけではない国家戦略あるいは指令)に関する情報収集は、法律制定から障害者権利条約の実施へと進めていく政治的意思があるかどうかを理解するうえで不可欠といえる。同条約を批准した国では、法律と政策のモニタリングにおいて、少なくとも二種類の論点が提起される。

〉多くの国が障害に関する法律と政策を、障害者権利条約批准前から採択しているという事実を踏まえ、それらの法律および政策が同条約と合致しているかどうかを見直すことがモニタリングの第一段階となる。この見直しにより、たとえば禁止事項の違反など、規範に関して同条約とのギャップが認められたり、同条約と矛盾する法律が確認されたりする場合がある。

〉国内法および政策が障害者権利条約と合致している場合は、それらが各計画その他の手段を通じて、実際にはどのように実施されているのかをモニタリングすることが重要である。

 計画に関する情報収集により、法律で認められた障害のある人の権利の実現を促進するために、実践的かつ経済的な措置が講じられるようにすることができる。「計画」という言葉の意味は広く、条約実施のためにとられる多くの手段を示すことができる。たとえば、開発計画あるいは貧困削減計画などで、その場合、モニターはそのような計画に障害のある人が含まれているか、また障害のある人の権利を支援するものであるかどうかを確認しなければならない。

 さらに、計画のモニタリングには、予算のモニタリングも含めなければならない。締約国に課せられた義務には、障害のある人の権利を促進するため、前向きな手段を講じ、かつ、それを効果的に行うための経済的・人的資源の配分を義務付けているものもあるからである。13 予算分析は、アクセシビリティ、障害のある人による意思決定のサポート、インクルーシブ教育、医療サービス、社会保護および国内モニタリング機構など、障害のある人に対する支援の問題に関連している場合がある。予算分析に従事するモニターは、国の障害行動計画における財政支援の公約や、教育、公共事業あるいは社会問題を担当する省の予算、そして国内人権機関の予算についても調査する場合がある。予算分析で留意すべき問題には以下のようなものがある。

〉障害のある人に与えられている権利の実現にかかわる財務費用の分析は行われているか?

〉問題となっている権利の実現に必要な要件を満たすために十分な資金が割り当てられてきたか?

〉ある特定の分野において、障害のある人の権利を促進するために割り当てられている金額は、その分野の全支出額に比べてどのくらいになるか? たとえば、教育予算の何パーセントが、障害のある人のためのインクルーシブ教育の確保に当てられているか?

〉予算配分と実際の支出との違いはいくらか? 未消化分はあったか、あるいは予算に関する公約が守られないことがあったか?

〉予算は時間の経過とともに増加したか?

〉障害のある人のために計上される予算の配分と消化は、特定の省あるいは計画に限られているか? その場合、どのようなタイプか?

 裁判所、国内人権機関およびその他の司法あるいは準司法意思決定機関が判決を下した、障害問題にかかわる訴訟事例の収集と調査は、これらの機関がどのように特定の状況に権利保障を適用し、また、法律、政策および計画を解釈・強化しているかを示すエビデンスを提供する。訴訟事例のモニタリングにより、障害者権利条約および障害のある人の権利に関する法律の実施と、障害のある人にとって、司法がどの程度アクセシブルか、あるいはアクセシブルではないかを理解するうえで役立つ情報を提供することができる。また、判決がその後実行されているかどうかを調べることも重要である。たとえば、裁判所が不当に解雇された障害のある人の復職命令を出しても、雇用主がその人を二度と呼び戻さなければ、救済されることはないのだ。

 メディアによる報道、大学その他の研究所および市民社会団体による調査研究も、非常に役立つ可能性がある。特に、メディアを通じての情報収集は、障害のある人に対する社会の態度をモニタリングするうえで役立つといえる。社会の態度は、社会文化的価値のバロメーターとなり、人々の行動の選択方法や他者への対応方法に影響を与える。14 障害という特別な分野においては、否定的な態度が、固定観念化、レッテル化、そして差別へとつながった。このような見方は、障害のある人の人権の享有を促進あるいは阻止するうえで、重要な役割を果たす。社会の態度が、障害のある人や障害のある人の社会貢献に対する認識に与える重大な影響を認め、障害者権利条約では、一つの条文をすべて使って、意識の向上と、障害のある人に関する固定観念や偏見および有害慣行と闘う締約国の義務をうたっている(第8条(1)(a)-(b))。世論を反映し、かつこれに影響を与えるという、メディアが果たす重要な役割を考慮し、障害者権利条約では締約国に対し、すべての媒体〔メディア〕機関が、同条約の目的に合致するように障害のある人を描写するよう奨励する措置を講じることを義務付けている(第8条(2)(c))。このように、社会の態度をモニタリングすることは、障害のある人の人権の状況を理解するうえで重要である。

メディアのモニタリング

〉 メディアは障害のある人に関する報道をしているか?
〉 その場合、どのメディアが報道しているか? メディア製品のどの部門で行っているか?
〉 障害のある人は犠牲者として描写されているか、それとも権利保有者として描写されているか?
〉 メディアは障害のある人の視点に立っているか?
〉 言葉遣いとイメージは適切か?
〉 メディアのメッセージは固定観念を強化するか、それとも無効にするか?
〉 障害のある人に関するメディアの報道には、時間とともに変化があったか? その場合、どのように(例 報道量の増加あるいは減少、異なるアプローチなど)変化したか? どの要因が変化に貢献したのか?
〉 それは現実生活を正確に描写しているか?
〉 メディアは障害のある人にとってアクセシブルか?

2. その他の情報源:「私たち抜きで私たちのことを決めないで」

 書類上の法律および政策規定と現実の人々の日常生活との間には、大きなギャップがあることが多い。このため、文書ベースの資料を、障害のある人の体験談や見解に関する情報で補足する必要がある。そこで、障害のある人、障害者団体、政策決定者、サービス提供者およびその他の人々との面談により、法律と政策がどのように実施され、締約国がどの程度まで障害のある人の権利を尊重し、保護し、達成しているかについて、情報収集することが考えられる。15

 障害のある人にとっては、自分たちの声を届けることが重要である。個別体験のモニタリングでは、知的障害、身体障害、精神障害および感覚障害など、すべての障害種別を含め、さまざまな社会経済的および民族的背景、年齢、職業、多様な規模のコミュニティ、都市および農村出身の、男女や少年少女による参加の機会を確保する戦略を採用し、できるだけインクルーシブにすることを心がけなければならない。また、このような人たちが直面する複雑な現実に対処するために、個別体験のモニタリングの範囲を広くし、人権(市民的、文化的、経済的、政治的および社会的)にかかわる全領域を網羅し、公私両方の領域において問題解決に当たることも必要である。

 個別体験をモニタリングするもっとも効果的な方法は、対面式の面談である。面談では、障害のある人に、権利の否定や権利へのアクセスに関するもっとも重要な問題について確認し、発言する機会が与えられるので、量的にも質的にも優れたデータが得られる。16

 障害のある人に「関する」調査研究が、長い間当人の同意を得ることなく実施されてきたことを考え、モニターは面談を受ける者から十分な説明にもとづく自由な同意を得なければならない。またモニターは、必要に応じて、面談を受ける者のプライバシーと安全、そして提供される情報の秘密を守らなければならない。状況によっては、家族、介護者、もしくはその他の人々が同席することなく、会話の内容が漏れない場所で面談を行わなければならない。家族、介護者、もしくはその他の人々が、障害のある人の人権侵害の体験に責任を負っている場合があるからだ(例 他の人が、身体的あるいは心理的虐待に責任を負っている場合、あるいは、いくつかの社会で認められる障害を恥とする考え方により家族が責めを負うことを避けるために、障害のある人が家を離れることを禁止していた場合など)。面談を受ける者が、自由に、報復を恐れることなく発言できることが重要である。

3. 障害のある人との活動

 障害のある人の権利のモニタリングでは、2つの一般的な問題に留意しておかなければならない。第一に、目的は「障害」ではなく、障害のある人の「権利」のモニタリングだということを覚えておく。したがってモニターは、障害のある人の身体的あるいは知的な機能障害〔インペアメント〕が、その権利の享有にどのように影響を与えたかではなく、社会が何を実施し、何を実施してこなかったがために、権利の完全な享有が妨げられているのかを問わなければならない。たとえば、教育の権利のモニタリングでは、その人に視覚や聴覚、あるいは精神の障害があるという理由ではなく、不十分な教員研修、否定的態度と偏見、あるいはアクセシブルでない学校が、この権利を障害のある人が完全に享有できない理由となっている可能性が高いと考える。

 第二に、必ず障害のある人と直接かかわりをもって活動する。ほとんどの社会で障害のある人が無視されていることを考慮し、障害者代表団体に対し、当事者と面会するための支援を求める。さらに、たとえ介護者、医療専門家、家族やその他の人々が当事者の代わりに発言することを主張したとしても、このような人々ではなく、障害当事者と直接話をすることが重要である。当事者と直接話をするには、支援機器の使用、手話通訳者あるいは介護者を必要とする場合がある。このためモニターは、面談を受ける者のメッセージが、不正確あるいは不完全な形で伝えられたり、誤解されたりする可能性があることを知っておかなければならない。(例 介護者と当事者との関係、当事者が支援機器に慣れているかどうかに注意する。)介護者らが信頼のおける支援者で、貴重な情報を提供できるとしても、これを前提としないことが重要である。障害のある人の世話をしていると主張する者であっても、故意に、あるいは無意識に、虐待している場合もあるからだ。

 この先の項では、特に障害のある人と面談をする際のエチケットに関する指針を提供する。17

一般に…
〉障害のある人に紹介されたときには、握手が文化的に許容されている場合は握手をする。手の使用に制約がある人、あるいは義手の人でも、握手をする。
〉支援者を介してではなく、当事者に直接話しかける。
〉言葉遣いは重要である。「障害のある(disabled)」「ハンディキャップのある(handicapped)」「犠牲者(victim)」「…に苦しんでいる(afflicted with)」「病弱な(invalid)」「正常な(normal)」「患者(patient)」あるいは「車いすに縛り付けられている(wheelchair-bound)」などの表現は避ける。「勇気のある(courageous)」「勇敢な(brave)」あるいは「感動的な(inspirational)」などの言葉の多様は避ける。障害者権利条約によれば、好ましい用語とは、「障害者(disabled person)」ではなく「障害のある人(persons with disabilities)」、「障害者の権利(disability rights)」ではなく「障害のある人の権利(rights of persons with disabilities)」である。同条約では、「精神障害(mental disability)」および「知的障害(intellectual disability)」という用語を使用しているが、「心理社会的障害(psychosocial disability)」という用語を好む者もいる。障害のある人がある特定の用語の使用を好む場合、それが軽蔑的あるいは尊厳の侵害と見なされない限り、その人の意思を尊重する。 〉「あなたが言おうとしていることは、わかります(I see)」「何を言っているのか、聞こえています」「こちらを歩いて下さい」「急がなくては(I have to run)。遅れているので」などのフレーズを使うことを決まり悪く思ってはいけない。これらは普通の表現で、相手の気分を害する可能性は低い。
〉助けを申し出る場合は、申し出が受け入れられるまで待つ。
〉相手に会う前に相手のニーズについて考える。相手が車いすを使用しているのなら、スロープでアクセスできる部屋を見つけるようにする。介助者がいるなら、もう一人入れるだけの十分な広さの部屋を見つける。
〉障害ではなく、権利の享有に焦点を当てながらインタビューをする。
〉障害のある人が、障害があるという理由だけでヒーローであるとか、勇気があるかのように思いこんだり、ふるまったりしない。これは差異を強調することになる。障害のある人にも、障害のない人と同じように長所と短所がある。
難聴あるいは耳が聞こえない人との面談では…
〉相手の肩をたたいたり、手を振ったりして、注意をひきつける。
〉手話使用者との面談では、手話通訳者を使用する。
〉通訳者ではなく、相手に直接話しかける。
〉聴力を一部失った人と面談する場合、自分がどこに座ったらいちばんよいのかを尋ねる。
〉読唇術を使う人の場合、顔をまっすぐに向け、ゆっくり、はっきりと話す。唇の動きを誇張したり叫んだりはしない。顔の表情やジェスチャー、ボディランゲージは理解の助けとなるので、表情豊かにする。
〉話をするときは、光源と向かい合う場所で、手や食べ物を口から離しておく。
視覚障害のある人との面談では…
〉常に自分と自分以外の同席者を紹介する。
〉握手をするときには、「握手をしましょうか?」と声をかける。
〉椅子をすすめるときは、相手の手を椅子の背もたれか肘かけの部分に置く。
〉会話を続けるか、終わらせる必要があるかを、相手に知らせる。
〉相手がよく知っている場所での面談ではない場合、点字による情報や特別な物理的配慮が必要かどうかを考える(エレベーター内に点字による階数表示をつける、階段にコントラストがはっきりとしている色をつけるなど)。
言語障害のある人との面談では…
〉できれば、短く答えればよい、短い質問をする。
〉わかったふりをしない。必要に応じて質問を言いかえる。
〉手話通訳者をつけたり、面談を受ける者が通訳者に支払う費用を負担したりすることは可能か?
車いすや松葉杖を使用している人との面談では…
〉相手の車いすに寄りかからない。車いすはその人のボディスペースの一部である。
〉できれば座るなどして、インタビューをする相手と目の高さを同じにする。
〉面談する場所がアクセシブルであることを確認する。以下の項目をチェックする。

☑ 障害のある人専用の駐車場
☑ スロープあるいは段差のない入口
☑ アクセシブルなトイレ
☑ 面談が一階で行われない場合は、エレベーター
☑ 車いす使用者用の低い冷水機と電話
〉面談を受ける者には、場所に関して問題がないかどうかを事前に尋ね、アクセシビリティについて話し合い、必要に応じて代替プランを立てる。
知的障害のある人との面談では…
〉十分な面談時間を取る。
〉はっきりと話し、やさしい言葉を使い、専門用語の意味を説明し、必要に応じて質問を言いかえる。
〉短く、しかし的確な質問をし、要件/ニーズを明らかにする。
〉やさしい言葉に直し、絵や図を使用した書類など、アクセシブルなフォーマットでの情報を、相手が必要としているかどうかを事前に検討する。
〉面談を受ける者に支援者がいる場合は、

☑ 支援者ではなく、面談を受ける者に直接話しかける。
☑ 必要な場合、支援者に質問をしてもよいかどうか、面談を受ける者に尋ねる。
☑ 支援者には同席を求めるが、面談を受ける者に影響を与えてはならないことを明示する。

B. 法律および情報の分析

 モニターが十分な情報を収集し終えたら、次の段階はそれを分析し、締約国が障害のある人の権利に関する義務を果たしているかどうかを検討することである。これを行うためには、障害者権利条約に定められている権利を「尊重」「保護」および「実現」する義務に照らし合わせることが役に立つ。以下の項では、この点に関して、障害のある人の権利をモニタリングする方法の例をいくつかあげる。これらはごく一部であり、すべてを網羅したリストではないことに注意する必要がある。モニターは、時間をかけて障害者権利条約の関連条文を読み解き、それにしたがって「尊重/保護/実現」の枠組みを適用していかなければならない。

1. 法の前における平等な承認と法的能力の権利
一般的なモニタリングのための質問:
障害のある人は、法的行為能力を享有しているか?
尊重の義務:
事例:国連人権専門官は、性的暴力の被害者であると申し立てた障害のある女性の証言資格を裁判官がはく奪した事例のモニタリングを行った。裁判官は、この女性の障害を考慮すると、信頼できる証人とはいえないと反論した。裁判官によるこのような行動は、人権の尊重という締約国の義務を明らかに侵害するものである。

〉障害のある人が他の者との平等を基礎として法的能力を享有する権利を承認する法的な保障はあるか?
〉このような法的な保障には、たとえば精神障害あるいはその他の障害を理由に差別をもたらす可能性のある例外があるか?(例 「精神異常」あるいは「精神障害」のある者に関する例外に言及した規定)
〉障害のある人の法的行為能力が、障害を理由に、全面的にあるいは一部はく奪される法的メカニズムはあるか?(例 障害のある人の全面的な、あるいは部分的な後見人として、代理を務め行動する別の人物が任命される法的手続き)
〉法律では、障害のある人が他の者との平等を基礎として法的行為を行うことを認めているか?(例 結婚、離婚、銀行口座の開設、銀行貸付、抵当およびその他の形態の金融上の信用へのアクセス、投票、裁判所における権利擁護、訴訟への証人としての参加、財産の所有または相続、遺言書の作成、自分が受ける治療の管理)
保護の義務:
〉締約国は、障害のある人を、法的能力行使の権利の濫用からどのように保護しているか? 締約国は、障害のある人による法的能力行使における支援の濫用を防ぐための適切かつ効果的な対策を確立しているか?
〉障害のある人が法的能力を行使する権利を否定された場合、どのような救済策が利用可能か?(例 サービス提供者が本人の意思表示を有効として受け入れることを拒む場合、障害のある人が治療を受ける際に、いかなる状況においても、家族や後見人の同意が必要とされる場合)

実現の義務:
〉締約国は、障害のある人に法的能力の行使に必要な支援を提供するため、法的に認められた仕組みを含む法律、政策および計画を制定してきたか?
〉締約国は、障害のある人が法的手続きに直接参加し、法的行為能力を行使するために支援が必要な場合、手話、点字、あるいはやさしい言語の利用の促進などを通じて、これを提供しているか?

事例:モニターは、障害のある人が施設で生活するよう強制されてきた事例を報告した。自立した生活〔生活の自律〕の権利では、地域での自立生活を支援するため、障害のある人による居住地およびその他の地域のサービスへのアクセスを確保することを、締約国に義務付けている。そうしなければ、実現の義務に違反することになるのだ。
2.自立した生活〔生活の自律〕及び地域社会へのインクルージョン
一般的なモニタリングのための質問:
障害のある人に、他の者と平等な選択の自由をもって地域社会で生活する権利があるか?
尊重の義務:
〉障害のある人が、居住地およびどこで誰と生活したいかを、他の者との平等を基礎として選択する権利を認める法的保護はあるか?
〉障害のある人が特定の生活様式を強制されないようにする法的保護はあるか?
保護の義務:
〉障害のある人が家族あるいは他の者によって、特定の生活様式を強制されないようにする法的保護はあるか?

〉障害のある人の自立した生活を阻む障壁に挑むために利用できる法的メカニズムと救済策はあるか?
〉締約国は、地域社会で自立した生活を送る権利の実施を促進し、モニタリングするための措置を講じてきたか?
実現の義務:
〉障害のある人による、地域社会における生活およびインクルージョンを支援するために必要な、さまざまな在宅サービスおよびその他の地域社会支援サービス(パーソナル・アシスタンスを含む)へのアクセスを確保するための法律、政策および計画はあるか?
〉一般住民向けの地域社会サービスや施設〔設備〕を、障害のある人が他の者との平等を基礎として利用できるようにし、かつ、そのニーズに応じたものとする法律、政策および計画はあるか?
3.アクセシビリティ
一般的なモニタリングのための質問:
障害のある人は、物理的環境、輸送機関、情報通信技術〔情報通信機器〕および情報通信システム、その他の公衆に開かれている施設〔設備〕およびサービスへの、他の者との平等を基礎としたアクセスを享有することができるか?

尊重の義務:
〉あらゆる物理的環境、輸送機関、情報通信技術〔情報通信機器〕および情報通信システム、その他の公衆に開かれている施設〔設備〕およびサービスへの、他の者との平等を基礎としたアクセスを確保するための法的保護はあるか?
〉締約国は、アクセシビリティに関する最低基準と指針を開発してきたか?
〉最低基準と指針は、農村と都市の双方において適用されているか?
〉締約国は、アクセシビリティを阻む障壁を生む何らかの行動、慣習、あるいは慣例に関与しているか?

アクセシビリティへの障壁は、以下のようなさまざまな形態を取る可能性がある。
〉物理的障壁-環境、特にインフラストラクチャーに見られる障壁。(例 車いすには小さすぎる公衆トイレの個室)
〉情報に関する障壁-情報の形態とコンテンツの両方について、障壁が発生する可能性がある。(例 スクリーンリーダーを使用して読むことができないフォーマットによる電子文書は、視覚障害のある人にはアクセシブルではない。やさしい言葉を使用していない情報は、多くの知的障害のある人にとってアクセシブルではない。手話で伝えられない、あるいは手話通訳者がいない場合の口頭による情報は、ほとんどの聴覚障害のある人々にとってアクセシブルではないと言える。)
保護の義務:
〉締約国は、民間主体(例 レストラン、劇場、食料品店、タクシー会社およびその他の公衆向けに施設〔設備〕やサービスを提供する企業)が、障害のある人のために、アクセスを阻む既存の障壁を撤廃し、また新たな障壁を作らないようにする法的措置を講じてきたか?
〉アクセスができないときに、障害のある人が利用できる法的救済策と法的メカニズムはあるか?
〉締約国は、アクセシビリティに関する最低基準と指針の実施を促進し、モニタリングするための措置を講じてきたか?
実現の義務:
〉締約国は、障害のある人のためのアクセシビリティに従事する関係者に訓練を行っているか?
〉締約国は、点字表示および読みやすく理解しやすい形式の表示、その他のタイプのライブ・アシスタンス〔人又は動物による支援〕および媒介者(例 案内者、朗読者および手話通訳者)を提供するための手段を講じてきたか?
〉締約国は、インターネットを含む新たな情報通信技術〔情報通信機器〕および情報通信システムへのアクセスを促進する措置を、早い段階から講じてきたか?
4.教育の権利
一般的なモニタリングのための質問:
障害のある人は、あらゆる段階においてインクルーシブな教育へアクセスすることができるか?
尊重の義務:
〉法律では、インクルーシブな教育の権利を明確に承認しているか?
〉締約国は、障害のある生徒が一般教育を受けることを禁止しているか?
〉締約国は、分離型の学校制度を維持し、障害のある生徒の分離型の学校への通学を義務付けているか?
〉障害のある生徒は、障害を理由に、特定の教科を学ぶよう強制されたり、特定の授業を取ることができなかったりするか?
〉障害のある生徒は、学校への入学を許可される条件として、何らかの治療を受けることを義務付けられているか?
保護の義務:
〉締約国は、障害のある人が一般教育制度から排除されるのを防ぐための法的措置およびその他の措置を講じてきたか? 〉締約国は、民間教育施設に対し、障害のある人の教育制度へのインクルージョンを阻む障壁を撤廃するために、その施設と技術のアクセシビリティを確保する手段を講じることを義務付けているか?
実現の義務:
〉障害のある少女は、教育の権利の享有において、複合差別に苦しんでいるか?
〉締約国は、障害のある生徒に対し、インクルーシブな教育の目標に則して、個別化された支援を含む支援を提供する手段を講じてきたか?
〉締約国は、学校、その他の教育施設および技術のアクセシビリティを確保するための手段を講じてきたか?
〉締約国は、手話または点字についての適格性を有する教員(障害のある教員を含む)を雇用するための手段を講じてきたか?
〉締約国は、インクルーシブな教育の確保を援助することができる教員およびその他の専門家に対する訓練を行い、またこれを義務付けているか?
5.身体の自由及び安全の権利
一般的なモニタリングのための質問:
障害のある人は、障害を理由に自由を奪われているか?
尊重の義務:
〉障害のある人は、他の者との平等を基礎として、自由および安全の権利を享有しているか?
〉法律は、障害があることだけを理由に、あるいはその他の要因と組み合わせた理由により、(刑務所、精神病施設、あるいはその他の施設内で)自由を剥奪することを許可しているか?
保護の義務:
〉締約国は、家族などの第三者に対し、障害のある人を障害を理由に施設に収容することを禁止しているか? 〉締約国は、障害を理由に自由を奪われている障害のある人を救済する策を提供しているか?
実現の義務:
〉締約国は、合法的に(例 刑事訴訟の結果)自由を奪われている障害のある人に、合理的配慮を提供しているか?
搾取、暴力及び虐待からの自由のモニタリング
障害のある人が、通常サービスを提供されるべき医療施設などの施設内で、またはサービスを通じて、受けてきた虐待を考慮し、「搾取、暴力及び虐待からの自由」に関する第16条では、締約国に対し、施設〔機関・設備〕と計画のモニタリングを特に義務付けている。

「3.締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待の発生を防止するため、障害のある人向けのすべての施設〔機関・設備〕及び計画が、独立した当局により効果的に監視〔モニター〕されることを確保する。」

C. 報告とフォローアップ

 モニタリングのサイクルには、文書化と報告、そして是正処置とフォローアップも含まれる。これらの2つの段階では、参加の原則と、障害のある人とその代表団体のモットー、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」に留意することが重要である。これは、実行可能な場合、モニターが障害のある人ならびにその代表団体に対し、報告では個人に影響を与える人権の状況が適切かつ正確にまとめられているか、そして是正処置の勧告におおむね同意するかを確認しなければならないということを意味する。これは、障害者権利条約に参加の原則が明確に盛り込まれていること、そして障害のある人があまりに長い間、自分たちに影響を与える意思決定過程から排除され続けて来たことを考慮すれば、重要である。モニターはまた、障害者団体(DPO)と障害に関する活動をしているNGO(サービス提供者を含む)との違いを認識しなければならない。DPOの立場については、特に各団体の見解が一致していない場合、慎重に配慮するべきである。

 しかしモニターは、参加の義務と、人権活動の実践的・政治的配慮とをはかりにかける必要もある。たとえば国連による人権活動の現場では、場合によってはモニタリング報告書を一時的に内々にとどめておいたほうがよいことがある。ときとして障害者団体の間で、報告内容に関して、あるいは是正処置やフォローアップの手段に関して、意見が異なる場合があるからだ。参加は常に全体的な目標であるが、その一方で、最終的にはモニタリングを引き受けた機関が、報告書の内容、結論および勧告に責任を持つということを忘れてはならない。

 したがってモニターは、参加の原則と権限の尊重、データおよび証人の秘密保持、犠牲者の保護とのバランスを取らなければならず、その難しさは軽視されるべきではない。だが、障害のある人とその代表団体の側は、そのようなプロセスに参加させてもらえるという非常に強い期待感を抱いていることが多い。モニターは参加のプロセスを文書化することを検討し、結論と是正処置勧告の根拠となる十分な理由を必ず示すようにするとよい。

おもな参考文献
出版物とレポート

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African Union of the Blind and Cameroon National Association for the Blind. Study on the rights of persons with disabilities in Cameroon. 2007. 146 p. Available at: www.yorku.ca/drpi

Degener, Theresia. Disability as a subject of international human rights: law and comparative discrimination law. In The human rights of persons with intellectual disabilities: Different but equal. By Herr, S., L. Gostin and H. Koh, eds. Oxford, Oxford University Press, 2003. pp. 151.184.

Disability Rights Promotion International. Phase I report: Opportunities, methodologies, and training resources for disability rights monitoring. Toronto, Disability Rights Promotion International, 2003. 70 p.
Available at: http://www.yorku.ca

Human rights. Yes! Action and advocacy on the rights of persons with disabilities. By Lord, J. and others. Minneapolis, Human Rights Resource Center, University of Minnesota, 2007. (Human rights educations series topic book 6)
Available: http://www.umn.edu Selected bibliography

Katipunan ng Maykapansanan sa Pilipinas, Inc. and Disability Rights Promotion International. Monitoring the human rights of persons with disabilities; Preliminary report Philippines. 2009.
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Linqvist, B., M. Rioux and R. Samson. Moving forward: Progress in global disability rights monitoring. Toronto, Disability Rights Promotion International, 2007.
Available at: http://www.yorku.ca

Oliver, Michael. The politics of disablement.
Basingstoke, Macmillan, 1990.

Quinn, G. and T. Degener. Human rights and disability: The current use and future potential of United Nations human rights instruments in the context of disability. New York and Geneva, United Nations, 2002. (HR/PUB/02/1)
Available at: http://www.ohchr.org

Rioux, Marcia. On second thought: constructing knowledge, law, disability and inequality. In The human rights of persons with intellectual disabilities: Different but equal. By Herr S., L. Gostin and H. Koh, eds. Oxford, Oxford University Press, 2003. pp. 287.
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UNICEF and the Victor Pineda Foundation. It's about ability: An explanation of the Convention on the Rights of Persons with Disabilities. New York, UNICEF, 2008.
Available at: http://www.unicef.org

_____ It's about ability: Learning guide on the Convention on the Rights of Persons with Disabilities. New York, UNICEF, 2009.
Available at: http://www.unicef.org

United Nations, Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights and Inter-Parliamentary Union. From exclusion to equality: Realizing the rights of persons with disabilities. Handbook for parliamentarians. Geneva, United Nations, 2007.
(Professional training series No. 14)
Available at: http://www.ohchr.org

United Nations. Convention on the Rights of Persons with Disabilities: Advocacy Toolkit. 2008. Available at: http://www.ohchr.org

United Nations official documents (available at: www.ods.un.org)

United Nations. General Assembly. Thematic Study by the Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights on enhancing awareness and understanding of the Convention on the Rights of Persons with Disabilities. (A/HRC/10/48)

_____ Interim report of the Special Rapporteur on torture and other cruel, inhuman or degrading treatment or punishment.
(A/63/175)

_____ Report of the United Nations High Commissioner for Human Rights on progress in the implementation of the recommendations contained in the study on the human rights of persons with disabilities. (A/HRC/4/75)

ウェブサイト
United Nations, Enable: http://www.un.org/disabilities/.

Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights:
http://www.ohchr.org/.


脚注:

 G.クィン(G. Quinn)およびT.デゲナー( T. Degener)『人権と障害:障害に関する国連人権文書の現在の使用状況と将来の可能性(Human Rights and Disability: The current use and future potential of United Nations human rights instruments in the context of disability)』(ニューヨーク/ジュネーブ 国際連合 2002年)(HR/PUB/02/1) 本調査から、国連条約機関および市民社会団体は、障害のある人の権利を保護・促進するために、既存の人権文書とモニタリング機構を最大限利用してはこなかったとの結論に至った。

 たとえば、障害のある人の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)に記載されている障害の概念に関する説明を参照。「『障害(disability)』は、世界のすべての国のすべての人口で起きている数多くの異なる機能的制約を要約した言葉である。人は身体的・知的・感覚的な損傷(impairment)、医学的状態、精神病により障害を持つかもしれない。(第17項)」

 この例は、DRPI(ディスアビリティ・ライツ・プロモーション・インターナショナル)とKAMPI(フィリピン障害者連合)による、フィリピンの障害のある人の権利をモニタリングするプロジェクトの一環として実施されたインタビューからの引用である。このインタビューは『障害のある人の人権のモニタリング:フィリピン仮報告書(Monitoring the human rights of persons with disabilities: Preliminary report Philippines)』(www.yorku.ca/drpi/resources.htmlで入手可能)の作成に貢献した。

 この例は、DRPI(ディスアビリティ・ライツ・プロモーション・インターナショナル)、アフリカ盲人連合(African Union of the Blind)、ケニア盲人連合(Kenya Union of the Blind)、障害のある人の権利、教育およびアドボカシーセンター(Centre for Disability Rights, Education and Advocacy)による、ケニアの障害のある人の権利をモニタリングするプロジェクトの一環として実施されたインタビューからの引用である。このインタビューは『ケニアにおける障害のある人の権利の状況(2007年):報告書(State of disabled people's rights in Kenya (2007): Report)』(www.yorku.ca/drpi/Kenya.htmlで入手可能)の作成に貢献した。

 注4参照。

 注4参照。

 『障害のある人の人権に関する調査に記載されている勧告の実施進捗状況に関する国連人権高等弁務官報告書(Report of the United Nations High Commissioner for Human Rights on progress in the implementation of the recommendations contained in the study on the human rights of persons with disabilities)』 (A/HRC/4/75 第19項)

 経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の一般的意見第3号、締約国の義務の性質(1990年)も参照。

本指針の目的を考慮し、「人権モニター」には、国連人権専門官と、その他の政府間機関、地域機関あるいは市民社会団体、国内人権機関のスタッフ、人権擁護者、およびその他の人権モニタリングに従事している個人あるいは組織を含むものとする。

10 障害者の代表団体は、「障害者団体」と自ら名乗ったり、あるいは"DPO"という略称を使用することがある。

11 障害者権利条約関連機関相互支援グループ(IASG)は、2006年9月に国連主要執行理事会(the United Nations Chief Executives Board)によって設立された。IASGは、障害者権利条約と選択議定書の促進および実施を支援する国際協力機構である。そのメンバーには、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、経済社会局(DESA)、国連開発計画(UNDP)、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、国際 労働機関(ILO)、国連人口基金(UNFPA)、国連地雷対策サービス部(United Nations Mine Action)および国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などがいる。

12 この言葉は、障害のある人の平等な権利を確保するために、一方ではあらゆるイニシアティブ/プロジェクトにおける障害の主流化を、もう一方では、障害に特化したイニシアティブ/プロジェクトを進め、両者を組み合わせていくアプローチを意味する。一部のドナーがこのアプローチを国際開発・援助政策において採用している。

13 一般的な内容については、ジム・シュルツ(Jim Shultz)『果たすべき約束 経済的、社会的および文化的権利を促進する手段としての公共予算の利用(Promises to keep. Using public budgets as a tool to advance economic, social and cultural rights)』(メキシコ フォード財団(Ford Foundation)およびFundar 2002年)、および『尊厳の重視 人権促進のための予算分析活用ガイド(Dignity counts. A guide to using budget analysis to advance human rights)』 (Fundar 国際教育研究所 国際予算プロジェクト(Institute of International Education and International budget Project)2004年)を参照。

14 ティファニー・J・マッコーイ(Tiffany J. McCaughey)およびダグラス・C・ストローマー(Douglas C. Strohmer)『障害のある人に対する態度の非間接的評価としてのプロトタイプ(Prototypes as an indirect measure of attitudes toward disability groups)』 アメリカリハビリテーションカウンセリング協会会報(Rehabilitation Counseling Bulletin)第48巻第2号(2005年1月)p.89

15 さまざまな国での障害のある人および障害者代表団体との活動を通じ、DRPI(ディスアビリティ・ライツ・プロモーション・インターナショナル)では、特に障害のある人にかかわる法律、政策および計画に関するデータ収集に役立つテンプレートを開発した。このテンプレートは、あらゆる種類の権利(市民的、文化的、経済的、政治的および社会的)に関するデータの収集を目的としている。またこれは、評価手段としても役立ち、法律と政策に見られる現実とのギャップを容易に確認できるようにする。これには、障害者権利条約をはじめとする主要な国際人権条約の関連規定への相互参照表がついている。テンプレートはDRPIのウェブサイト(http://www.yorku.ca/drpi/resources.html)で入手できる。

16 パートナーとなる障害者団体との連携により、DRPIはこのような面談事例の収集、分析および報告を容易にするモニタリングツール(面談ガイドブックおよびその他の現場文書)と研修資料(研修コースと支援マニュアル)を開発した。これらの資料はDRPIのウェブサイト(http://www.yorku.ca/drpi/)で入手できる。

17 資料はビクター・ピネダ(Victor Pi?eda)『メディアにおける障害のある人の描写(Portraying people with disabilities in the media)』ランドマイン・サバイバーズ・ネットワーク メディアアドボカシーハンドブック(Landmine Survivors Network Media Advocacy Handbook)(障害メディア研究所(Disability Media Institute)2006年)より引用した。