音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

アクセシビリティと技術
(抄訳)

障害者権利条約(CRPD)第5回締約国会議
2012年9月12日‐14日
ニューヨーク 国連本部

出典:
ENABLE会議日報
9月12日 ラウンドテーブル1
(Enable Daily Bulletin from the Conference, 12 September: Opening session, elections, and Roundtable 1)より一部抄訳

会議ではシリトン・ワイラトパニジ氏(Sirithon Wairatpanij)(タイ)が議長を務めた。講演者は、河村宏氏(DAISYコンソーシアム)、フランシス・ウェスト氏(Frances West)(IBM)、インマクラーダ・プラセンシア‐ポレロ氏(Inmaculada Placencia-Porrero)(欧州委員会)及びショーン・クルーズ氏(Sean Cruse)(国連グローバル・コンパクト)であった。

河村氏は、DAISY(アクセシブルな情報システム)の技術(フォントサイズの拡大、読み上げ速度の調整、スクリーンリーダーによる読み上げとテキストのハイライトの同時進行、理解しやすいテキストなど)を解説する2件の発表を行った。DAISYは教育の場で有用であるとの説明があり、マルチメディアコンポーネントの同期が、あらゆるタイプの学習者の支援に役立つとのことであった。DAISYはまた、印刷資料を読むことができない人々や、資料が外国語で書かれている場合の災害リスクの軽減にも利用できる。

ウェスト氏は、アクセシビリティと技術というテーマについて、市場の視点から論じた。高齢化社会に加えて、障害のある人々も新たな市場と考えられるというのだ。アクセシブルな解決策の創造は、障害のある人々に有効であるだけでなく、アクセシブルな商品の市場が拡大していくにつれて、ビジネスとしても期待できる。IBMでは、顧客と従業員の両方が、支援技術に対するニーズを抱えている、とウェスト氏は述べた。あらゆるタイプの障害のある人々が利用できる、従業員の連携を促進するアクセシブルなアプリケーションが、IBMによって作成された。

プラセンシア‐ポレロ氏は、欧州連合(EU)と障害者権利条約(CRPD)の関係(EUとその加盟国は、障害者権利条約(CRPD)の実施に関して共同責任を負う)を説明することから始めた。現在、18の法的行為に、障害のある人々のアクセシビリティ/権利に関するEUの法的権限が示されている。プラセンシア‐ポレロ氏により、最近の動向が多数明らかにされた。その中で「ECワークプログラム2012」は、EU内での商品及びサービスのアクセシビリティの改善を目的としている。しかし、アクセシビリティの改善に何が必要なのかを理解するには、長年にわたりデータ不足が障害となっている。

クルーズ氏は、グローバル・コンパクトの概要を説明した。これは、国連内の戦略的政策イニシアティブで、企業が守るべき10の原則(人権に関する原則、労働基準に関する原則など)を示したものである。グローバル・コンパクトでは、加盟企業が行ってきた障害のある人々に関する取り組みについての調査を最近実施した。クルーズ氏は、障害のある人々を採用し、継続的に雇用することで、企業は大きな利益を得られるため、これを促進するべきであると述べた。さらに、官民共同業務への参加を企業に奨励し、グローバル・コンパクトのウェブサイト(unglobalcompact.org)を、そのような活動にかかわる企業のリソースとして役立てるべきであると語った。クルーズ氏はまた、企業によるそのような前向きな活動の促進を実現できる環境の創造に、政府が果たす役割も強調した。

セネガル、南アフリカ、ナイジェリア、エルサルバドル、エジプト及びタンザニアの代表らは皆、国内で政府による障害のある人々のためのアクセシブルな技術の導入を妨げている障壁として、財源不足について語った。カナダ、スウェーデン、ドイツ、メキシコ及びニュージーランドの代表らは皆、アクセシブルな技術の導入により、障害のある人々の生活が向上したと強調した。タイの代表は、アクセシビリティを障害者権利条約(CRPD)だけでなく、すべての国連プログラムにおいてテーマとしなければならないと述べた。

質疑応答では、河村宏氏が、多種多様なDAISYソフトウェアが無料で利用できること、また、それらはオープンソースであることを強調した。企業はソフトウェアの配布に関して、オープンスタンダードを維持している。DAISYの最新バージョンは、EPUBフォーマットと互換性があり、動画とテキストを同期させることができる(アクセシビリティに関する質問への回答)。プラセンシア‐ポレロ氏は、低料金あるいは無料で利用できる支援リソースが多数あると強調した。そして、明確なアクセシビリティ規則の設定、アクセシビリティ基準のモニタリングと強化の仕組みの確立が重要であると強く主張した。ウェスト氏は、情報通信技術のコストは近年劇的に減少しており、現在ますます多くの企業が、主流の製品にアクセシブルな技術を取り入れようとしているため、コストは引き続き低下していくと指摘した。

公式声明はPaperSmartで、ウェブキャストのアーカイブはEnableのウェブサイトで、利用可能。
http://papersmart.un.org/crpd/programme