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国連障害者の権利条約署名式関連

スピーチ:障害者の権利に関する国際条約:人権分野における更なる開放を求めて

モンティエン・ブンタン
タイ盲人協会 会長

項目 内容
会議名 国連人権理事会会議、ジュネーブ(スイス)
発表年月 2007年3月26日

ルイ・アルフォンソ・デ・アルバ大使、ドン・マッケイ大使、ルイーズ・アルブール様、シェイカ・ヘッサ・アルタニ様、 人権理事会の皆様、そして、ご来賓の方々をはじめとするご出席の皆様

本日この特別なイベントにお招きいただき、この場に参加させていただきましたことは、私にとりまして誠に光栄なことでございます。障害者の権利に関する国際条約は、2006年12月18日に採択され、今からたった4日後の3月30日に、国連加盟国による署名のために開放されます。これもまた、私にとって喜びの瞬間でありますが、ここにいらっしゃる皆様方も、同じように感じておられるものと信じております。障害分野の一員として、またその代表として、条約策定プロセス全体を通じてタイの代表を務めてまいりました私は、ためらうことなく、オープンで参加型の、アクセシブルなプロセスを通じてのみ、ここまでやってくることができたのだと、申し上げることができます。とはいうものの、私はここにいらっしゃるすべての方々と、それから世界中の方々にも、私たちの希望と夢を現実へと近づける手助けをしてくださったことに対して、心から感謝申し上げたいと思います。特に、条約策定の全プロセスを通じて、私をタイ代表に任命するという勇気ある決断をしてくださいましたタイ王国政府には、ことのほか感謝しております。

このようなプロセスは、条約の効果的な実施とモニタリングを確保するために、そして障害者が貧しい人々の中でも最も貧しく、極端に孤立し疎外された状態や、あらゆる形式の差別から真に解放されるために、今後もずっと続けられなければなりません。このプロセスを通してこそ、他の者との平等を基礎とした、障害者の人権と基本的自由の完全かつ効果的な享受を保証することができるのですから。そして何よりも重要なのは、このプロセスこそが、国連が他の人権および社会開発の局面に取り組む上でのよき基準を設定できるのだということです。

では、どのようにしたらこのようなプロセスの気運を保ち続けることができるのでしょうか?

市民社会内部で活動しながら、政府のルートを通じた活動にも参加する機会があった者として、特に障害分野における市民社会の役割をさまざまな角度から検討してみますと、市民社会は、時には他の分野と平行線をたどり、時には重なり合い、そして時にはお互いに関わり合いながら活動していかなければならないことが分かります。これからお話しますのは、そのうちのほんの数例です。

1.公教育および研修

市民社会は、障害者コミュニティ内部と一般大衆の両方に対して、情報をアクセシブルなフォーマットで普及し、教育と研修を提供するために、さまざまなネットワークやルートを通じて活動しなければなりません。このような教育と研修は、障害者の観点から行うこともできれば、政府や国連機関および他の分野との協力により行うこともできます。

2.効果的なコミュニケーション、ネットワーク作りおよび連携

市民社会は、過去数年間に渡り市民社会の活動に大きく貢献してきたインターネットのようなさまざまなコミュニケーションルートを利用したオープンフォーラムを、今後も引き続き推進していかなければなりません。このようなアプローチは、あらゆるレベルの障害者団体を対象とした既存のネットワークもしくはフォーラムを通じて、或いは新に設立もしくは開発されたネットワークを通じて、アドホックベースで行っていく場合もあるでしょう。

3.相談役としての役割

特に障害問題を専門とする市民社会は、条約やその他の障害者全般に関わる問題について、政府や国連機関およびその他の関係者の相談にのったり、助言をしたりすることにより、その知識と経験を役立てることができます。

4.提携およびネットワークを通じた直接参加

特に専門知識や技術を持っている市民社会代表は、条約の実施とモニタリングに関するすべての問題について、他の分野との相互尊重と理解に基づいた提携や共同の取り組みを通じて、同等に活動を進めることができます。このアプローチは、特に一部の政府官僚の間に、当初不快感をもたらすものと思われますが、ごく最近の過去の歴史で証明されておりますように、私たちがより積極的かつ効果的に参加することによって、よりよい成果と影響とが期待できることが、すぐに明らかになるでしょう。

5.独立型モニタリングと並行型モニタリング

以上4つの提案のすべては、提携やネットワーク作り、そして共同を肯定するものですが、私は、特に障害者コミュニティ内部の市民社会が、独立した組織としてあり続ける必要性も感じております。それによって、外部からの干渉を受けることなく、条約実施のあらゆる局面に関して、効果的なフォローアップとモニタリングが可能となるからです。これは、インテグレーションやインクルージョンが、自立と自己決定という市民社会の原則を危うくするものでは決してないということを保証するアプローチです。

この人権理事会をはじめとする従来の人権運動に関わりのある方々に対して一言申し上げるならば、障害者コミュニティ出身の私たちは、国際人権法の効果的な実施とモニタリングの方法を、皆様の知識と経験とをお借りして学ばせていただかなければならない、ということです。と同時に、皆様にも心を開いていただき、障害者の観点から人権問題に取り組む方法を学んでいただければ、幸いでございます。私たち障害者が、他の方々との平等を基礎として、すべての人権と基本的な自由を完全に享受しようとする場合、アクセシビリティやユニバーサルデザイン、リハビリテーション、合理的配慮などが、どれほど重要な意味を持つかを、分かっていただきたいのです。そして、なぜこれまで他のどの人権法も、障害者にそのような権利の享受を確保することができなかったのかを、皆さんがすぐに理解してくださることを期待しています。

できましたら、国連および国連機関には、本条約を署名、批准し、実施する国の数が最大になるよう、加盟国に向けて明確かつ肯定的なメッセージを送ることにより、ファシリテーターとしての役割を効果的に果たしていただきたいと思います。このような活動は、さまざまな出版物を利用したり、地域的・国際的なワークショップやセミナーを実施したりすることによって続けられるでしょう。更に加盟各国は、特に同地域における国家間での二国間協力および/もしくは国際協力を通じて、条約実施の成功に向けてお互いに助け合っていかなければなりません。

最後になりましたが、条約の最後に近い部分を引用して、私の話を終えたいと思います。

第49条 この条約の本文は、アクセシブルな形式で利用できるものにしなければならない。
選択議定書第17条 この議定書の本文は、アクセシブルな形式で利用できるものにしなければならない。

これら2つの条文は歴史的意義を持つもので、この条約の目標が、オープンで参加型の、アクセシブルなプロセスを通じてのみ達成されるということを象徴的に表す条文として、はじめて意図的に、このような国連文書の中に設けられました。このようなプロセスは、まず条文の本文からはじめられなければならないからです。私は、国連とすべての関連機関が、これらの条文の原理を積極的かつ漸進的に受け入れ、これをすべての文書、出版物、施設およびサービスに適用していくことを願っております。そして何よりも、国際障害コーカスで最もよく知られているこの言葉、「私たち抜きで私たちのことを決めないでください」を、心に留め続けてください。

ご清聴ありがとうございました。