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国連障害者の権利条約作業部会

仮訳 デイリー・サマリー第3巻第2号 2004年1月6日(火)

NGO 地雷生存者ネットワーク

午前セッション

開始時刻: 午前10:15
終了時刻: 午後1:00

平等および非差別の保証(続き)

差別および差別の様々な形態について徹底的に追及した。密かな/隠れた差別および公然とした差別、意図的な差別および非意図的な差別、消極的差別および積極的差別、肯定的な差別および否定的な差別など様々に表現されるその他の形態の差別だけでなく、直接的差別および間接的差別に焦点を当てた。メンバーはこれらの違いおよび、それらの表現同士の関係を表現するかどうか、および、どのように表現するかについて議論した。主として議長草案およびEU草案が参照された。インドが自国の草案を配布した。事務局は前日の議論を反映した一般原則に関する文書を配布した。ページ数は編纂文書のものを表している。

インドは議長草案の第2条、パート1およびパート2(a)のみを採択し、パート4は司法判断適合性のある条項で訴訟に持ち込まれる可能性があるので削除するよう主張した。差別を直接的な形のものと間接的な形のものとに分けないように忠告した。カナダは差別という結果に終わらないようにするために、因果関係から差別を定義するのが役立つかもしれないと述べた。

WNUSPは前回のセッションで提起した第2条(44ページ)に関する懸念について詳しく説明し、「障害を理由とした差別」は「明白に障害に基づいた」差別を禁止する言葉とは異なると述べた。同じ行為に対して異なる、相反した基準が適用されていて、後者では障害に立ち向かう習慣を正当化することを政府に認めている。NGOがこの問題について代わりの言葉を考えてもよい。

WFDは間接的差別は「非常によく行われている」ことで、PWDを社会から締め出す影響があるため認識しなければならないと「強く感じていた」。また、編纂文書の関連部分で言語的権利が認知されていないという懸念を表明した。

RIは、議長草案(44ページ)のように、適切な配慮ができないことは差別を意味するとバンコク草案およびインド草案に記載されているのを見て「元気づけられた」。

日本は間接的差別の例をあげるよう求めた。これに対し、議長は階段について語り、皆が利用するように作られているが、車椅子の人を締め出していると述べた。一方、「車椅子の人のアクセスはない」という掲示は直接的差別になるだろう。EU草案(61ページ)に示された直接的差別と間接的差別の違いのその他の要素は、前者はいかなる状況でも許されないが、後者は客観的に目的が正当であるとされれば許される場合がある。

WNUSPはバンコク草案に加えてEUの用語にも問題があるかもしれないと述べた。「見たところ中立的な条項」と言っているが、その意味については説明がない。スロープのない建物は「誰かがそのように建設する判断を下した」ので、直接的差別であるという例が挙げられるだろう。従って、用語を定義する必要がある。コーディネーターはさらに、直接的差別は、あるがままに説明できる状況であると述べた。一方、第3条(b)の「見たところ中立的な条項」はPWDだけでなく全ての人について言及していて、全ての人を平等に扱っているが、実際はPWDが間接的に差別を受けているという結果になっているという状況である。

韓国は間接的差別はよくあるが、その量を表し、測定するのは難しいと述べ、その方法を開発すれば役に立つだろうと提案した。

WBU は直接的差別も間接的差別も存在し、後者は平等が保証されているにも関わらず実際に権利の否定が続いている状況であると力説した。このことは、工業国を含む国の職場において女性が未だに経験している差別に現れている。この問題に関するテキストの正確性が重要である。

シエラ・レオーネは、非意図的差別はDPI日本の草案(40ページ)に反映されていると思われる間接的差別と同じかどうか質問した。この表現を説明する1つの方法には、そのような差別の撤廃のために締約国がとることのできる措置との関連があるだろう。

RIは間接的差別の分類をして区別を行う場合は、事実上、ある程度の許容できる間接的差別を許していることになり、その場合、しっかりと防御の範囲を定める事が殊のほか重要であると力説した。このことは、適切な配慮を実施できないことと差別(直接か、間接かに関わらず)とを明確に関連づけることの重要性を示している。間接的差別の防御は、その内容が何であろうと、障害の違いに適切に配慮を行う努力を行った後でのみ、「生きた」ものとなるだろう。

アイルランドはEU草案に明確に記された区別することの価値について説明した。直接的差別は明らかに受入れられない。万人に適用され、特にPWDを除外するために設計したものではないが、間違いなくその結果になる法律を作ることはかなり可能である。「運転試験」など「合法的な目的」を追求するために PWDを除外することはこの言葉の中では認められ、これは正当化できる。しかし、全ての場合、証明する責任は当事者ではなく、いつも国家にある。間接的差別は禁止されていて、その正当性を決めるのは国家ということらしい。

カナダは、区別は混乱を生み出していると警告した。さらに、各国は差別に関する議論は全部、間接的差別についてのもので、その結果、直接的差別については行わないように勧められているのかもしれないと述べた。最後に、「不測の事態のせいで」方針を調整しなければならなくなった具体的な例があるので、間接的差別だけでなく、差別全般について議論すべきであるという強い考えを述べた。例えば「社会の配慮を無視することで、これは、実は当のPWDにとって有害なものになるかもしれない」。法律、政策または習慣の影響および効果について試すべきである。障害者は障害がなければ享受できるであろう利益またはアクセスを拒否されているか。この点で、挙げられた直接的差別および間接的差別の例は明確でない。視覚障害者に運転免許を認めないのは直接的差別の例だろうか。

スロベニアは、幅広い差別の定義に基づいていて、PWDとの関係でその幅広い理解につながるので区別の維持を支持している。また、適切な配慮とも強い関連を持たせるというRIの提案を支持している。

米州障害協会(IAID)も区別することを支持し、人権の中に見られる解釈を指針として利用することを提案した。 国家の機関によって「積極的差別」が行われ、「消極的差別」ははっきりした意図もなく事実上存在している。例えば個人が公職に就けない場合、それは直接的差別である。しかし、障害者から社会を見ると、間接的差別は広く行われている。IAIDの代表は、階段はPWDに対する間接的差別であると論じた。法律によって公共の建物へのアクセスが規定されている場合は、不履行は直接的差別となる。間接的および消極的形態の差別は社会的および文化的環境に存在しており、官僚に提案することによってでなく、社会全体を教育することによって変える必要がある。

コロンビアは、ニュージーランドの草案でも「隠れた」差別に関する言及があり、消極的および積極的差別に加えて、別の形態の差別になるようだと述べた。将来、別の形の差別が発生することもありうる。そのため、同国は、区別は差し控え、その代わりに、これら全ての形態を含めることが可能な、幅広く開放的な差別の定義を行うというカナダの提案を支持している。

世界ろう連盟(WFD)は直接的差別に加えて、間接的差別が一般に行われていると繰り返した。 例えば、避難訓練の火災警報である。聴覚障害者または障害者に対する差別には、議員になること、投票すること、保険の資格などが認められていないことが含まれる。

インクルージョン・インターナショナルは、意思の疎通ができないことがPWDが差別される理由の1つであるが、完全なインクルージョンとは生活の選択肢を作ることであると述べた。

メキシコは隠れた差別の問題を考えて、両方の形態の差別の撤廃について明記することの重要性を強調した。米州障害協会の代表の概念的立場を全面的に支持した。差別撤廃措置を含む否定的差別と肯定的差別の区別は明確にしなければならない。メキシコは、人権高等弁務官事務所の代表がここでの言葉について指針を提供することを希望した。

タイはどれだけ「間接的差別が差別を正当化する余地を与えているか」について焦点を当て、肯定的な目的があるときの差別とは一線を画していた。差別の分類で混乱しないように、積極的措置は「別のやり方で」対処するよう強く求めた。

レバノンは、間接的差別の具体的定義がない限り、監視過程で混乱を起こす可能性があるのでこれは条約に含めるべきではないと勧告した。「AHCで議論される正確な指標および措置を提案するために、全当事者がこの問題をさらに分析すること」を勧告した。差別の例の見直しで、これらが間接的差別のもっと具体的な理解の助けになるだろう。 最後に、レバノンは肯定的差別の問題についてまた後で議論すると述べた。

世界盲ろう者連盟はどうやって「自分たちのために出来ていない社会で生活しているか」について説明した。差別と差別の結果である排除とを混同しているかもしれないと付け加えた。

障害者インターナショナル(DPI)は直接的差別と間接的差別の構成要素を決める具体的なパラメータを求めた。PWDが差別されていることさえ認識がない例もある。また、正当な理由と理解される善意の結果、差別が生まれる例もある。そのため、この条約では間接的差別について扱わなければならない。

セルビア・モンテネグロは直接的差別および間接的差別を含む、差別の全ての側面を対象とすることを要求した。間接的差別に関連した条件については、国家がこの例外を濫用しないように、締約国は条約を「誠実に」実施するという国際法の原則を解釈の基盤として始めるべきであると述べた。

ヨーロッパ・ディスアビリティ・フォーラム(EDF)は直接的差別も間接的差別も対象とする必要があると考えている。しかし、間接的差別を定義することは例外につながり、差別を正当化してしまう。従って、区別すべきではないという考えを支持している。また、適切な配慮を行わないことは差別となるという考えも支持している。

南アフリカは、障害者の完全統合のためには、全ての形態の差別の撤廃について規定する明確な区別が必要であるというアフリカ地域協議の結果を引用した。差別の形態には、文化的慣習に隠されて、肯定的差別として進められているものもある。強制的に不妊手術を施される精神障害の女性のように、明らかな形態の差別もある。

マリはテキストについての問題の議論が細かくなりすぎていると警告した。その結果、CEDAWのように留保がつけられることになるかもしれない。従って、マリは全ての形態の差別について幅広い定義が可能なカナダ案を支持している。

リハビリテーション・インターナショナル(RI)は、直接的差別か間接的差別かを区別する目印をつけるのが目的ではないと述べた。多くの形態の間接的差別があって、それには意図的なものも非意図的なものもあるだろう。PWDがふるい落とされるよう意識的に職務要件を設定する雇用者は、意図的に間接的差別を行っている(「扱いが異なる」間接的差別)。または、雇用者が意識しないでPWDをふるい落とす機能を持つ資格を選んでいるかもしれない(影響が異なる間接的差別または消極的差別)。間接的差別の効用は、意図的(積極的)でも、そうでなく(消極的)ても、そのような隠れた形の差別に挑むことが可能になることである。健康の権利を支えるはずの法律および政策が、PWDを排除するための口実として広く使われている例は多い。間接的差別の概念は、これらに挑戦するのに役立つ。医療の検査はPWDをふるい落とすために定期的に利用されている。これは、意図的な形の間接的差別である。差別の概念を広げて間接的差別を含むことと、隠れた形の差別を正確に明らかにすることのバランスをきちんととる必要がある。どのように境界線を引こうと、これは防御を認めるという犠牲を払うことになる。適切な配慮と差別の間に関連があり、肯定的措置の十分な余地を切り開けることを条件として、防御の境界線がきちんと引かれていて、客観的で、「主観の兆しもない」限り、この犠牲は払う価値があると少なくとも一応、RIは信じている。

ベネズエラは一般原則として非差別の制定を求めた。多くの異なる種類の差別があるため、定義をするのは不可能だった。そのため、その代わりに、特定の形態について明記することなく幅広い一般的な用語で非差別を特定することを勧めた。差別はまた文化的な問題でもある。ベネズエラは非差別の原則に関する第2条(b)を引用した。また、議長草案の第1条にはキト草案に加えて中国、メキシコ、ベネズエラの提案の要素が含まれていないと述べ、 これらの提案に留意するようコーディネーターに訴えた。

WNUSPは、隠れた形の間接的差別を含む、間接的差別と直接的差別の間の区別をすることは防御の「価値に見合わない」と述べた。「計画的で意図的な隠れた形の差別は警告の対象にはすべきでない」と力説した。

中国は隠れた、直接的、間接的などの用語をさらに明確にする(そうすると、問題はさらに複雑になり、さらなる差別につながるかもしれない)よりも、区別しない方が良いと提案している。

コーディネーターは、差別の定義をできるだけ幅広いものにしようという幅広いコンセンサスがあると述べた。差別をもっと詳しく説明する案を支持する国もある。明らかになった取り組み方の違いは要約され、AHCに提示されるだろう。

一般的な原則

コーディネーターは草案テキストA/AC.265/2003/WG/CRP.3を提出し、一般的な合意の部分を示す言葉および意見の合わない部分(国際協力、自決、違っている権利)を示す脚注を添えた。いくつかの点で、最終テキストを作成するつもりのものではないと繰り返した。

モロッコは、全ての形の差別の撤廃および国際協力を第1条に含めるよう提案した。アイルランドは、前者の提案に関してはモロッコに合意し、後者については「留保」を繰り返した。それは、どのみち、第1条には適合しないだろうとした。EUテキストに記載された機会の平等が含まれていないと述べた。第2条では、多様性を「尊重する(valuing)」といった主観的な用語を避けるよう勧めた。

WNUSPは使われている言葉はその陰にある概念ほど重要ではないと述べ、これらの用語、特に自治および自決の定義を求めた。自律(Autonomy)/自決(Self determination)は自分自身の選択を焦点とするもので、3つの要素で構成される。
1. 自分の選択をする法的権利。これは保証されなければならない。
2. 自分自身の選択をする権利の剥奪に結びつくかもしれない経済、社会、文化的な強制の要素がないこと。
3. 確認された権利が実際に実現できるように保証する、意味のある選択肢の利用の可能性。

LSNは、国際協力を一般的な原則の1つとするよう勧告した。中国は第2条を修正して新たに原則2(e)「機会の平等」を加え、既存の原則2(a)に「の保護」を加えるよう提案した。中国はより積極的な言葉を要求した。自律という言葉は「国家または地域社会の自治」を意味し、状況によっては政治的な含みがあるかもしれないので使用に懸念を示した。シエラ・レオーネは、議長草案の第1条では同じ見出しの中に両方とも使われていることを指摘し、原則と目標の間の区別の説明を求めた。これが終わった後、自治および国際協力のような概念がどこに属するのかの議論を進めることができる。ディスアビリティ・オーストラリアは第1条に「平等で効果的な享有」を加え、原則の定義を求めた。国際協力は、財源の移譲よりも幅広く目標および原則に含める必要がある。マリは国際協力に加えて「PWDに対する全ての形の差別の撤廃」を第1条に加えるよう提案をした。

日本は機会の平等を第2条に加えるという中国の提案を支持し、自己決定および自律という言葉の問題はどちらも検討する必要があると述べた。インクルージョン・インターナショナルは自己決定は自律よりもずっと強力であるという立場をとり、この部分は後の自律の議論に回すよう提案した。多様性それ自体はそれほど意味はないが、違っている権利は、PWDの要求は異なっているという事実に基づいている。最後に、2(e)の子どもに関する言葉は高齢者にも言及すべきである。

インドは、当面の資源の問題を考えると、原則の中で権利の実現の漸進的な促進を認めるべきであると述べた。「尊重する(valuing)」をもっと客観的な「多様性・・・に敬意を払う(respecting)」に替える。

コロンビアは、一般的な原則および目標を区別するというシエラ・レオーネの提案を支持した。後者は測定できるものでなければならない。原則はテキストに発想を与えるので、国際協力は原則の中に置くべきである。完全で平等な権利の享有の保証に「促進および保護」を加えた。

RIは、シエラ・レオーネの懸念に対処するために、2(e)に「年齢に関わらず」を加えることを提案し、EUにおける異なる種類の障害を含めるための前例を挙げた。原則にどのように「従うべきか」について第2条の表現の説明を求めた。

タイは違っている権利を全面的に支持した。用語は再定義できると述べ、さらに自己決定の定義をするよう求めた。他の言葉について、国際法でも行われたことがある。

スロベニアは2(a)では自己決定よりも自律の方が良いと述べた。後者は国際法では非常に厳密な意味を持っているからである。2 (b)については、機会の平等を加える案を支持した。2(d)については、多様性の認識がどのようにPWDを助けるのか尋ねた。

午後セッション

開始時刻: 午後3:11
終了時刻: 午後6:04

一般的な原則(続き)

メキシコは「差別の撤廃」をテキストの第1条に含めるよう求め、メキシコの提案の第1条の用語またはリハビリテーション・インターナショナル(RI)もしくはマリの提案した用語を使用するよう勧めた。また、EU草案で提案されているように、男女平等への言及に加えて、第2条に「機会の平等」の原則を含むよう提案した。これにより、女性、男性、少女、少年が対象となる。国際協力を原則に含める案を支持し、テキストに幅広い要素を含めるよう提案した。

南アフリカ人権委員会はパラグラフ2(a)は尊厳の尊重と対立するものとして人間の尊厳に言及するよう提案した。パラグラフ 2(b)にはさらに積極的な構成が必要(例えば「平等の推進および非差別」)であり、パラグラフ2(e)には「全ての人の平等」について示すよう提案した。この分野では、適切な配慮およびバリアフリーの社会など積極的な措置を行い、障害の原因を除くことが必要であると述べた。

カナダは第1条に「全ての形態の差別の撤廃」を含め、2(b)では差別については既に議論されているので言及しないようにすべきだと述べた。パラグラフ(d)の「の価値 (in value of)」は取り去るべきではないと述べ、WGのメンバーと同様、自決および違っている権利の概念を捉える言葉を見つけることができるだろうと楽観していた。一つ目の概念を捉えるのに「差異への配慮」を、二つ目の概念を捉えるのに「自分自身の選択を行う能力」を使うよう提案した

コーディネーターはカナダや他の代表たちに、自己決定および差異の権利の表現に関して話し合うため非公式な会合を持つよう求めた。カナダは会合を準備することに合意し、コーディネーターは、これは内容ではなく言葉の問題なので、解決策が見つかるだろうと述べた。

世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)は第2条に関するタイの表現の一部と見解を支持し、これらの原則は「強力な形で」表現すべきであり、個人の選択と判断を下す権利に関する表現を含めるべきであると述べた。

コーディネーターは「自治(autonomy)」は英語の表現の問題だけのなので、WGが回避する方法を見つけて欲しいと述べた。

レバノンは「機会の平等」は基本原則の1つにすべきであり、「国際協力」は目標または原則の部分に含めるべきではないが、国家と国際機関などその他の機関の協力を明確に定義する他の部分に含めることが必要な要素であるという見解だった。

コーディネーターは「機会の平等」はメンバーから概ね支持されているので、書き直した草案の第2条にぴったり当てはまる要素であると述べた。

世界盲人連合(WBU)は多様性および自決は両方とも重要な要素で草案に入れるべきであるが、別のものだと述べた。第2条eに関してはRI およびタイの見解を支持し、テキストでは子どもや高齢者についても言及した方が高齢者にとって「障害を見つける」のが容易になるのでそうするべきであると述べた。バリアフリーの社会およびユニバーサル・デザインについて文書に言及されていないと指摘し、まだ共通の表現がない場合はこれらの概念を捉えるために別の言葉を使うことができるかもしれないと述べた。また、文書には「社会におけるPWDの完全参加」または「生存権」についての言及がないと指摘した。

コーディネーターはコメントに同意し、テキストは反対の無かった分野を反映していると述べた。また「バリアフリーの社会」は原則ではなく、目的を達成するための手段であると述べた。

タイは、午前のセッションで指摘したように 「アクセシビリティ」は「機会の平等」の後に含めるべきではないかと述べた。環境、交通、通信のような分野では、アクセシビリティはユニバーサル・デザインおよび合理的配慮によって達成される可能性があると述べた。

ベネズエラは第1条に関して午前のセッションで指摘した意見を繰り返し、国際協力への言及も含めるべきだと述べた。この用語は資源だけでなく、技術の移転、技術援助、経験、支援にも関係があると語った。第2条aに「自己決定」を含めることは、政治的な意味が言外に含まれるので支持せず、自律を使うべきであると述べた。人は好んでPWDになるのではないので「障害を尊重する(valuing of disability)」というのは曖昧であるという理由から、第2条の削除を求めた。「差異の権利」を含めることも自己差別または自己隔離をしていると解釈される可能性があり、条約の目的と矛盾し、PWDを別に扱うことを許してしまうので支持しなかった。また、誰も皆、特別の必要があるので「特別の必要」も含めてはならないと述べ、第2条eで、年齢による差別をせずに全てのPWDが平等であると言うことによって、人間の発達の全段階/年齢について言及するよう求めた。 

日本はバリアフリーの社会という概念を原則と考えることを希望し、バリアを除去するために様々な措置をとらなければならないから、これは目的を達成するための単なる手段ではないと指摘した。これは目的の達成に密接に関係していると述べ、バリアの種類には少なくとも物理的、法的、文化/情報的(点字、手話の不備)および態度的(固定観念)の4つがあると指摘した。

ドイツはEUと相談する前に意見を述べるとし、「違っている権利」に言及する目的は障害が美しいと言うことではなく、PWDが文化に同化する義務があるかどうかや、人間の尊厳という背景の中で考えられるべきかどうかの問題に関するものであると述べた。同化の問題はPWDの権利の限界であると述べた。そのような限界が、見た目が違っている、または、プロテーゼを使っていないという理由で手話を締め出し、身体障害者を公的な場から追い出すのかもしれないと述べた。

特別の権利

議論の組み立てについての提案

コーディネーターは編纂文書の76-136ページにある特定の権利の保証についての議論に移るようWGに提案し、この長く複雑な分野についての議論を分けて進める方法の1つは、まず議長草案のパート2(絶対的な、市民的/政治的状況における権利)の周辺で議論を組み立て、それからパート3(漸進的に実施/実現される、社会的および経済的状況における権利)の周辺で組み立てることであると述べた。ウェブに基づいた編纂文書を使っている人がやり易いように、発言するときはテキストについてできるだけ正確に言及するようメンバーに注意した。

アイルランドはコーディネーターの提案した議論のやり方が1つの草案(議長草案)だけを優先させることになるとして、何度も懸念を表明した。議長のテキスト(メキシコ草案およびバンコク草案に加えて)は新たな権利を生み出し、既存の権利を書き換え/策定し直すものであり、それは条約の目的ではないと懸念を示した(すなわち、これがPWDに権利があることを初めて認めるものではない)。EU草案に概略が示された4つの指針となる原則を利用するよう求め、メンバーに対し、EU草案の初めの部分に記載されている非差別、自律、参加の問題について検討するよう求めた。EUテキストについて議論することを希望し、EUテキストに関し他の代表が直面した問題があったら聞きたいと述べた。ニュージーランドはこれに同意し、特にこの部分はバリアの克服について記すべきであり、それを反映したものにタイトルを変えるべきであるだろうと述べた。権利の実現を保証するために各国はどんな措置をとることができるか考察すべきであり、これによってアイルランドの問題は解消されるだろう。カナダは、想定される権利ではなく、既存の権利を保証するための措置に焦点を当てるべきであるという意見に同意した。世界ろう連盟 (WFD)も同意見で、他の法律文書にある既存の権利はPWDには実現可能ではないと指摘し、全ての子どもは子どもの権利条約(CRC)に参加するという規定にも関わらず、聴覚障害の子どもが遭遇する可能性のある表現の自由の問題について述べた。条約がこれらの特定の権利を実施する方法に焦点を当てられるように、この点についてPWDの特定の権利を要求した。日本はこの取り組み方法に同意し、メンバーが各条に触れたらば、EU草案と議長草案の妥協点を見つけることができるかもしれないと述べた。条約がより実際的および効果的になるように、締約国がとる特定の措置についてこの部分に明記するよう求めた。

特定の権利の実施

コーディネーターは既存の権利はPWDに適用できるという合意があるようだが、問題はその実施方法であると発言した。代表の多くが同時に頷いた。

コロンビアは特定の権利は全部1つの章で扱うよう提案し、おそらくこの部分に一般的な権利を再び述べる「価値はない」だろうと述べた。

米州障害協会(IID)は、一般的/制限的条約を作らないように、特定の権利(政治的、市民的、経済的、社会的、文化的)の中に含むべき権利を網羅したリストを作業部会が立案するよう提案した。女性および子どもなどのグループの特定の経験/違反に注意するよう求めた。

WNUSPは、既存の権利の異なる表現への言い換えに対する注意について語るときに気をつけなければならないと述べた。理由は、これらの発言が、歴史的に見て社会的に無視され、または、除外されてきたグループのような障害者に不利益を与えることになる可能性のある状況があるからである。条約には、以前の法律文書には存在しないかもしれない場合は、適切な言葉を使って、既存の規約との関連でPWDの生きた現実を表現しなければならない。コーディネーターは、各国は規約の義務に縛られているので、この条約はこれらの義務を変更することはできないが、前にWNUSPが述べたように、PWDの体験から、その実施方法に意味と内容を与えることができるかもしれないと答えた。ディスアビリティ・オーストラリア・リミティッド(DAL)はこれに同意し、権利を書き直す上でCRCおよびCEDAWなどの他のテーマ別条約を損なわずその経験を利用するべきだと述べた。シエラ・レオーネは特定の権利に障害者など特定のグループの経験を反映させる必要について指摘し、既存の権利の実施のし方について述べた。全ての草案およびILOの指針を考慮して、扱いやすい権利のリストを作成することによってできるかもしれない。その後、HCがどれを実施するかを決めることができるだろう。アイルランドはこれに対して、リストに目を通して、一つ一つに「是非」の判断を下すのは難しいだろうと述べた。インクルージョン・インターナショナルは、以前に1979年のCEDAW(第11条)でも同じ問題が話し合われて、このときは間接的に権利がリストに挙げられたと指摘し、これが本条約の解決策になるかもしれないと述べ、メンバーが重要と考える権利について話し合うよう求めた。それがリストに入れるべきかどうかの判断につながるだろうと述べた。その後、スウェーデンはCEDAWは2、3の条項について行っただけだと指摘し、新しいやり方で進むことができると述べた。コーディネーターはインクルージョン・インターナショナルの発言は具体的な良い提案であると述べ、実施方法は他の草案に加えてEU草案の全体的な取り組み方法であると指摘した。全体的な合意が得られたので、議長草案の第11条の議論に移った。

第11条: 「法の前に人として認められる権利」

タイは第11条1を支持した。アイルランドは議長草案の第11条とEU草案の第5条a との共通点を指摘し、適切な配慮(議長草案11.2)はEU草案と同じように別の見出しで扱い、「認識」と同じパラグラフに入れないよう提案した。シエラ・レオーネは第5条a と第11条は似ている点に同意した。

セルビア・モンテネグロは、11.1と11.2は2つの別個の問題であるというアイルランドの意見に同意し、コーディネーターもこれらは別の問題である点に同意した。WNUSPはこれに反対し、11.1と11.2は関連した問題だから一緒にすべきであると述べた。選択する権利を取り上げるのはPWDの助けにならず、人間の尊厳および自治(バンコク草案)を支えるように効果的に権利を行使するための支援を提供することがPWDの助けとなるからである。このことは後見の問題に関連しており、PWDの中心的な問題であると述べた。

WNUSPは同条の代案を提案した。「生活の全ての分野における個人的な事項について、全ての障害者は自分自身で判断を下す権利を有する。締約国はこの権利の認識および実施を約束し、その権利の行使および享有の障害となる可能性のある経済的、社会的、文化的要素を除去し、意義のある選択に必要な経済的、社会的、文化的機会の利用を保証する積極的な措置を行う。」

コーディネーターは、第11条の最初の文は、規約<訳注: 国際人権B規約-市民的及び政治的権利に関する国際規約>にPWDにとって極めて重要な問題である「完全な行為能力」を加えて言い換えたものであると指摘した。アイルランドは、これは新たな概念の追加、既存の権利の変更/新たな権利の創造を行ったテキストの例であり、支持しないと述べた。スウェーデンもこれに同意した。RIは、これは権利の変更ではなく「人間であることの概念を認識したいのであれば、この方法で続けるのは極めて論理的である」と述べた。問題はこの完全な行為能力に例外を設けるべきかどうか、例外をどう扱うべきかである。RIはEUの均衡の概念を利用することを提案した。インクルージョン・インターナショナルは「完全な行為能力」は漸進的な権利ではなく市民的/政治的権利であると指摘し、コーディネーターはこれに同意した。

カナダは「完全な行為能力」の追加には子どもは考慮に入っていない(カナダでは子どもは完全な行為能力を持っていない)と語り、11.2は幅広く解釈される可能性があり、強制的な言葉ではなく寛大で柔軟な言葉(「奨励する」(encourage)という言葉を使う)使うべきだと述べた。このことは、この言葉が重度の障害者について規定する国家の能力を損なわないことを保証するだろう。重度の障害者は行為能力を当然持っていると我々は思い込んでいるが、持っていないかもしれない。

インクルージョン・インターナショナルは第11条を「重要な要素」かつ「革命的な提案」と呼び、ヨーロッパの政府の80%に自国の「時代遅れの後見法」を廃止させ、誰も能力を奪われることがないことを保証し、この権利の行使を支援する後見法をもっと近代的なやり方(補助法)に替えるだろうと述べた。ドイツは争点は差別であり、提案は国家の義務に焦点を当てたものなので、この点でEUの提案についてもう一度見たいと考えていた。つまり、各国は資格剥奪に関する法律および後見法に従った慣習を再検討し、再評価する必要があるという意味である。

メキシコは、第11条はメキシコ草案の第10条(編纂文書の100ページ)に似ていると指摘して、テキストにこの項に10 b、c、dを加えるよう求めた。スウェーデンはカナダ およびアイルランドの懸念に同意し、11.2は関係はあるとは言え、多くの問題を一緒にしすぎていると指摘した。WFDは11.2を「否定的過ぎる」とし、「PWDが汚名を着せられて」しまうと述べ、問題の表現を肯定的なものにするよう勧めた(権利のアクセシビリティを保証し、その権利を実施するために必要な全ての支援を保証する)。

インドは、11.1の2つ目の文は必要でなく、「完全な行為能力」は重度/複数の障害を持つ者にとって重要であると述べた。3つ目のパラグラフで「支持(advocacy)」という言葉は使用する必要がないと述べた。

EU草案の第5条aは、議長草案の第11条に示された規約の実施に関して何か新しいものを付け加えるものかという問いに、アイルランドはそうであると答え、規約では人間が存在していることを単に認めているだけであり、法の前での人として認めることは最低限のことであると述べた。第5条aは規約を越えるもので、既存の法律を並べ替えたり、書き換えたりすることなく、PWDは生まれながらの人間であると規定し、慣習を克服するためにこれによって積極的で前向きな手段を提供している。コーディネーターが、5aによってPWDに完全な行為能力が与えられるのか尋ねると、アイルランドは当該国の法律制度(年齢を考慮して)および、この権利を行使するのに支援が必要なPWDもいるかもしれないので、完全な行為能力が何を意味するかによるだろうと答えた。しかし、権利は存在し、取り上げることはできないだろうと述べた。

南アフリカ人権委員会は、権利を保証する責任を国家に負わせるよう、11.2の再検討を提案した。

第12条: 「生存権」

コーディネーターはEU草案の第12条に同様の規定があるかどうか尋ねた。アイルランドはないと答え、「これは偶然ではない」と述べた。シエラ・レオーネは今は第12条は飛ばして先に進むよう提案した。コーディネーターは、これは本条約の中だけでなく他でも複雑な分野であると同意した。世界盲ろう者連盟は、PWDが長生きしないことが多いので、発展途上国ではこの権利が否定されることが多いと述べた。これは一般的な人権であるとし、削除しないよう提案した。コーディネーターはこの権利が重要であることに同意し、後で議論すると述べた。

第13条: 「拷問およびその他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いまたは体罰を受けない権利」

WNUSPは13.2はPWD、特に心理社会的な障害を持つ者、または持っていると思われる者に対して一般的に行われていることなので非常に重要であると述べた。これは、自律および自分で選択することに関連していると指摘し、望む場合はある種の診療、治療があって、役に立つ可能性があると述べた。しかし、望まない場合は、彼らは乱暴だと思われたり、それが障害を引き起こし、または悪化させたり、苦しみをもたらしたりする可能性がある。また、このことは、違っている権利、そのままでいる権利、医学的および肉体的に損なわれない権利に関係があると述べた。

アイルランドは、この権利EU草案の第7条で扱われていて、議長テキストのパート3とあまりかけ離れたものではないと指摘した。日本はEU草案の第7条b、c、dの概念と言葉はPWDの診療および施設収容に関連しているので重要であると述べ、国家の義務に行動志向で取組んでいるのでこれはテキストに含めたいと語った。また、法的な予防措置への言及も求めた。これらの線に沿って、インクルージョン・インターナショナルは機関としての経験を伝え、どうすると、スタッフの扱いおよび薬物治療が、時には虐待の形の1つと見られてしまう可能性があるかについて述べた。知的障害がある事実を変えることはできないが、他の人の行動が障害を悪化させてしまうかもしれないと繰り返した。

シエラ・レオーネはEU提案の第7条a、b、cを議長草案の第13条1、2、3の後に加えるよう提案した。

脆弱性の要素を含めること

この部分にPWDの脆弱性に関する言及を加えることについて議論が行われた。シエラ・レオーネはメキシコ草案の第9条に注目するよう求め、PWDの脆弱性に関する言及をCRCのように前文の中に入れられるのではないかと述べた。自分の国では戦争の結果、障害者となった人々(両手の切断など)はCRCに概説されているやり方と同じように扱われなければならないと指摘した。コーディネーターは自分も第9条には強い印象を受けたと述べた。スウェーデンは脆弱性の概念はPWDによる人権の完全な享有を実施することとは反すると述べ、PWDは脆弱であるとみなすという声明には反対し、より積極的な表現および、代わりにこの部分に権限付与への言及を含めるよう求めた。WFDはこれに同意し、この考えは「必要のない汚名」を着せることであると述べ、CRCにあるように、脆弱なグループについて言及するのは受入れられると述べた。ドイツも、「脆弱性(vulnerability)」の代わりに「危険に曝された(at risk)」という言葉を使うべきであると述べ、女性の障害者は暴力の「危険に曝されている」ので本条約では彼らの体験を考慮して欲しいと述べた。

ランドマイン・サバイバーズ・ネットワーク(LSN)は、PWDが様々な虐待に直面していることは明白であり、性的虐待や精神障害者の施設収容など、様々な形の虐待を対象とすべきであると述べた。提案されたテキストの中にはこの点で弱いものがあると述べ、虐待および搾取に関するCRCの条項を適応させるように求めた。LSNはこれに関するテキストを提出できると述べ、コーディネーターは関心を示した。カナダはこれに関して、バンコク草案の第12条2 (編纂文書の114ページ)を見るようにWGに求めた。インクルージョン・インターナショナルは同条を「時代遅れの現状の後見法」とし、「自分たちが変えたいと思うもの」であると言った。支援については支持したが、これらの人々の行為能力を制限することには反対した。ドイツはインクルージョン・インターナショナルに同意し、その代わりにEU草案の第7条d への支持を表明した。WNUSPはEU草案の第7条dを含めるというドイツの提案には賛成せず、後見法を変更する必要についてのインクルージョン・インターナショナルの考えを支持し、議長テキストの第14条はEU草案の7dに似ていると述べた。「自分たちがPWDであることで自由」が剥奪されているという現状に対する拒否を呼びかけ、いかなる法的な予防措置もこれを救済することができないと述べた。EU草案の第7条eは施設収容を禁止しておらず、国家にとっての明確な義務となっていないと指摘した。全体的に、本条約が、障害という状況の中で既存の人権に中身を与え、国家に自分たちの義務がわかるように、より具体的な何かを生み出すことを求めた。国家の一般的な義務に加えて特定の権利に関する条項を支持した。

コーディネーターは、PWDが自由な、説明を受けた上での同意を行えないような状況がこれまであったか尋ねた。WNUSPは、標準規則に制限を加えるようなやり方で権利を策定しないよう力説した。


ディスアビリティ・ネゴシエーションズ・デイリー・サマリーは、ランドマイン・サバイバーズ・ネットワークが発行する。このネットワークは、地雷の被害を受けた6つの途上国において手足を失った者の支援網を持った、米国に拠点を置く国際組織である。このサマリーでは障害者の人権に関する特別委員会の政府間の議事録を扱っている。作業部会の会合のリポーターは、エリザベス・キッサム、ジェニファー・ペリー、およびザハビア・アダマリー(編者)である。このサマリーは、翌日の正午までにwww.worldenable.netに掲載される。日本語の翻訳(日本障害者リハビリテーション協会dinf-j@dinf.ne.jp.)もある。作業部会の会合のサマリーの翻訳および配布に関心のある方、連絡先の情報の配信を希望する方、コメント/質問がある方は、Zahabia@landminesurvivors.orgにメールを頂きたい。

翻訳:(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター