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国連障害者の権利条約作業部会

書誌情報
項目 内容
記事提供 NGO 地雷生存者ネットワーク

仮訳 デイリー・サマリー第3巻第3号 2004年1月7日(水)

午前セッション

  開始時刻  午前10時20分
  休会時刻  午後1時

コーディネーターは、締約国の全般的な義務に関して記した作業部会(WG)の文書A/AC.265/2004/WG/CRP.3/Add.1について、午後のセッションで討議することを提案し、同文書の第4条(1)(a)の2行目に訂正があると述べた。この部分は、「この条約で認められている権利に影響を与える」ではなく、「この条約に影響を与える」と訂正される。これは、この条約で述べられている権利の多くは既に存在していることを考えると、WGが既存の権利を更に細かく肉付けすることになるという、WGのメンバーのコメントを受けての訂正である。更に、昨日の議論をふまえ、議長はWGに「法的行為能力」の問題を提示し、数人の代表が障害者に法的行為能力がないということはあり得ないと断言した。この問題に関し、インクルージョン・インターナショナル(II)から返答があった。

シエラレオネは、介入と同意の問題を提起した。同代表は、条文案集の98頁にあるEU案の第7条(b)及び(c)と、113-114頁のバンコク案の第12条(1)及び(2)(及び代替案)を引用した。介入と同意の問題、すなわち障害者に自由に同意をする能力がないという問題については、シエラレオネはEUの条文案の方を支持した。EU案では、誰が同意をするかという問題と、介入にまつわる全ての問題ははぐらかされている。EU案の第7条(b)は、締約国は、「特に強制的な介入或いは収容などの状況において、障害者に対するいかなる残酷かつ非人道的な扱い、或いは障害者を侮辱する扱いも、禁止し、防ぐ」義務を負うと定めている。しかし、同意の問題について採り上げたり、具体的な収容施設の名をあげたりはしていない。シエラレオネは、バンコク案第12条(1)及び(2)(及び代替案)よりもEU案第7条(b)及び(c)の方を支持した。

シエラレオネに答える形で、WNUSP(世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク)は、EUの提案する第7条は同意の問題をはぐらかしており、また強制的な介入からの保護を十分に提供するものでもないという見解を示した。強制介入や強制収容などの強制的な状況における、いかなる残酷かつ非人道的な扱い、或いは障害者を侮辱する扱いも禁じる(EU案第7条(b))ことで、EUは、残酷で非人道的或いは侮辱的な扱いにはよらない強制的な介入という状況があり得るということを容認しているのである。更に、EU案は、このような慣例に関する基準や制限を設定していない。WNUSPは、自主性や多様性、また人と違っている権利に相反する強制介入に関する手続き上の基準を容認しない。法的行為能力の有無に関わる問題については、WNUSPは自己の権利を主張し、自分自身の選択の意志を表現するために支援を必要としている場合、決して本人の決断を下す権利を奪うことになってはならないと主張した。議長案の第11条(2)は、条文案集114頁のバンコク案第13条(5)(c)と似た文言であるが、バンコク案の方がより明確な言葉を使用し、支援を利用する権利に焦点を当てている。もし自分自身の選択を、支援なしでは表現できない人々に、必要な支援が提供されるなら、このような人々も可能な限り意向を表現することができ、その意向や選択を尊重してもらえるであろう。強制的な介入或いは強制的な扱いに関してWNUSPは、基準原則(SR)に対する補足を提案する際に、これらの権利を制約する文言を盛り込まないようWGが検討することを提案した。(関連するパラグラフは27と33である。)

コーディネーターは、この根本的な問題は今回のWGで解決できるような問題ではないが、WGはこれに対するアプローチを限定することはできると指摘した。コーディネーターは3つのアプローチを示した。まず、EU案は広く解釈できる表現を使っているが、同意の有無に関わらず介入が行われる際の基準や決定の仕組みを規定していない。バンコク案は、介入がある特定の状況においては可能であることを明記している。そしてWNUSPは更に規定的なアプローチを説明した、より明白な文言を求めている。

アイルランドは、強制収容に関するEU案について、WGの中で第7条(b)及び(c)には言及するが、「関連する法的保護手段を適用し」という節を含む第7条(d)を軽視する傾向があると述べ、問題点を明確にした。この条項は、強制収容にまつわる問題を扱うことを目的としている。

コーディネーターは、多くの代表が、適応可能な法的保護手段と、拘禁或いは強制介入が許される状況について詳しく述べることを望んでいると指摘した。EU案には、具体的に強制介入に関連する記述は何もない。コーディネーターはアイルランドに対し、自由の剥奪について述べているEUの案のサブパラグラフ(d)が、強制介入を含むといえるかどうかを尋ねた。アイルランドは、回答の前に協議が必要であると答えた。シエラレオネは、WGに課せられた任務は交渉を進めることであって、交渉することそれ自体ではないと指摘した。

コーディネーターは、WGが介入と同意に関して結論に達する見込みはないと断言し、特別委員会(AHC)が検討できるよう、いくつかのアプローチを確認したいとの希望を述べた。

第7条(d)が強制介入を含むかどうかの問題については、アイルランドが、更にこの問題を論ずる意志があることを表明しつつも、否定的な見解を示した。

中国は、EU案第7条(c)と議長案第13条(3)の文言を合わせることを提案した。そして、議長案第13条のパラグラフ1と2について、「意味が大変複雑」なので、新たな問題を引き起こす可能性があると主張した。

インドは、強制介入に関して代表者達が懸念を示したことを評価した。しかし、もし障害者がインフォームド・コンセントを与えることができないなら、強制介入が阻止されるという状況に関しては、憂慮すると述べた。インドは、この問題に関し、重度の障害者の待遇に関する権利を保護する手段として、バンコクの主張に対する支持を表明した。

IIはEU案の第7条(b)は弱すぎると主張した。IIは、第7条(b)では、侮辱的な扱いに至らない場合、強制介入や強制収容は全く禁止されないと指摘した。IIは誰も強制収容される理由はなく、また強制介入を受ける理由もないと述べた。この姿勢は、この条約の中で明確に記されなければならない。

カナダは、代替案の決定をめぐって、議長案の第12条に基づき医療的な介入を考慮して論ずる立場と、EU案を支持して論ずる立場の二つに、WGが二分されつつあるのではないかと問いかけた。

コーディネーターは、介入に関して別の条文を設ける可能性を提議した。コーディネーターはこの問題に関する3つの立場を指摘した。つまり、同意なしの介入を禁止するが、ただし同意をすることができない場合は、だれかがその人のために決断を下すとする立場、或いは個人による選択は、個人或いは他者の最善の利益のためには、国家主体によって覆すことができるとする立場、そして法律に従った介入が許されるが、条約では正確にその意味について規定しないという立場である。WGはこれら3つのアプローチのそれぞれを反映した文言を、AHCに提出しなければならない。

WNUSPは、もし条約が障害者に対する強制介入を行うことを適切であるとする立場をとるのなら、この条約は、「障害者の権利条約」から「障害者の権利の侵害を許可する方法に関する条約」に変更されるであろうと明言した。自己選択の問題を扱った第11条に関しては、人が自分自身の選択を行う権利を奪うことが許されるどのような状況も、この条約に定めることは容認できないとした。WNUSPはWGが述べた平等、自主性、人と違っている権利、非差別などの原則に基づく考え方によるアプローチを支持し、どのように例外を作るかを考えようとすることなく、これらの原則を適用することを求めた。WNUSPは、強制介入の手続きを保証するどのような文言も容認しないと明言した。

コーディネーターは、WNUSPの見解と、人が自己決断できない場合は国家が介入できるようにする必要があるとする国家代表者達の見解との間に根本的な不一致を認め、WGはAHCが検討するためにこれらの異なるアプローチを確認しなければならないと述べた。

IIは、人々は様々なコミュニケーションの手段を持っており、単に別のコミュニケーションの形式を使っているからといって、その決断能力について疑うべきではないと述べた。IIはWNUSPの立場を支持した。

アイルランドはEUが強制介入や強制収容を支持しているわけではないということを明らかにした。そして、EUは障害者のコミュニティーへの統合を支持し、どのような状況においても、残酷で非人道的な扱い、或いは障害者を侮辱するような扱いを許さないと述べた。

タイは、強制介入に懸念を訴える、主張を同じくする代表を支持することを繰り返した。タイは、どのような形式の強制介入に対しても保護を提供することを支持した。また、この問題は教育など他の分野においても見られる問題であると述べた。

日本は、原則としてどのような強制介入も強制収容も許されるべきではないと指摘した。しかし、現実には、強制介入が必要となる例外的なケースがあり、例えば、個人が自分自身或いは他者を傷つける危険がある場合などが想定されるとのことであった。しかしそのようなケースにおいて、悪用を避けるための厳しいガイドラインを設けることが重要であり、条約には、議長案の第14条(2)(a)に述べられている、司法救済手段に関する内容を盛り込まなければならないと述べた。

ドイツは、均整の原則を述べた1999年のECによる勧告に注目するよう奨めた。すなわち、保護手段が必要な場合は、関係者の能力の度合いに応じるべきであり、個人のおかれた状況と関係者のニーズに合わせるべきであるということだ。

コーディネーターは、過去には介入を歓迎する考え方があったと述べた。そして、現在のアプローチでは、必要がない限り介入すべきではないというのがコーディネーターの意見であった。それ故、条約に介入に反対する考え方を盛り込むことは今後の問題解決に役に立つと思われると語った。

スロベニアはコーディネーターに賛同し、また、均整の原則に関するドイツの意見を支持した。日本によるコメントを踏み台として、スロベニアもまた強制介入及び強制収容が実際に行われる場合は、障害者の人間としての尊厳を十分に尊重した扱いをしなければならないと指摘した。

強制介入及び収容に関して認められるニーズについて、数人の代表から発言があり、WNUSPが、アメリカ合衆国では実際それが法的な基準となっていることを指摘した。しかし、その基準が重要な保護を何も提供せず、当を得た基準というには不十分で、この基準の実施が賞賛に値するとはいえないと付け加えた。更に、この基準は、時には「温情主義の態度」をとることが許されると主張する障害者の感情やその生活の現実に合致していないということであった。韓国は、視覚障害者のために、文字で書かれた文書に言及するときには条文を読み上げる必要があると繰り返した。

WFD(世界ろう連盟)は、障害を理由に強制介入或いは強制収容を行う根拠は何もあり得ないことを主張し、WNUSP及びIIの見解に対する支持を表明した。例えば、人が意識不明に陥った場合、それは本質的に障害に関連した問題ではないからである。人は誰でも意識不明になる可能性があるのである。WFDはEU案の第7条は弱すぎると感じていた。

セルビア及びモンテネグロ(SM)は、EUの資料をWGで検討することに対する支持を表明した。SMは、日本が述べたように、もし強制介入が必要なら、強い保護手段がとられなければならないと繰り返した。SMは虐待されている障害者を保護し、このような障害者が法的な保護を受けられるようにするという考え方を支持した。

タイは、バンコク案の第13条(5)は、障害者がどのような状況においても自分自身で決断することを支援するのを目的としていると繰り返した。同代表は、このパラグラフに述べられている仕組みを条約に盛り込むべきだと主張した。

DPI(障害者インターナショナル)は、強制介入及び収容は、人や当局がそれ以上は侵すことのできない、障害者の権利に対する侵害の最たるものであると主張した。そして障害者自身が選択をすることが重要であるとした。

ニュージーランド(NZ)は「門戸開放」政策が採られる場合、開かれたドアが大きくあいたままであることがよくあると警告した。NZは能力を推し量ることの重要性を強調し、もしあるやり方が健常者に適用されないなら、それは障害者にも適用されるべきではないと指摘した。

コーディネーターは、この問題の重要性を鑑み、WGはこの問題を扱う別の条文を設けることを検討する必要があると述べた。

WNUSPは、障害者が障害を理由に、拘禁されないようにしなければならないと述べた。これは制限されてはならない基本的な権利である。WNUSPはまた、自分自身を傷つける可能性があるといって拘禁を正当化することは温情主義であると指摘した。更に、障害を理由に収容施設や病院に拘禁することは、刑務所での生活と同じ様な困難を引き起こし、人に利益をもたらすようなことではないとし、人が他人に危害を加えると論じて拘禁を正当化することは、適正な手続きを軽視していると述べた。WNUSPは障害者も全ての人々と同様の責任を負うと主張し、障害者の無能力を主張して拘禁の弁明をすべきではないと述べた。

IIはWNUSPの立場を支持し、世界中の収容施設で暮らす人々は、未だに、市民としてではなく患者として扱われていることがよくあると付け加えた。頭を剃られたり、檻の中で生活したりしている入所者もおり、これは小規模のグループ・ホームでも起こりうると語った。

世界盲ろう連盟は、障害者が、言葉がうまく伝わらないために刑務所に入れられてしまったり、誤診により収容施設に入れられてしまったりすることがよくあると指摘した。コミュニケーションのシステムがないために家庭に閉じこめられてしまっている者もいるとのことで、それ故、強制介入に注目することは、この条約の非常に重要な局面であるとした。

DPIは、法的手続き及び拘禁に関わる分野で自由を保障する必要性を強調した。そして自由の権利に関しては、WGは、障害者の移住、亡命、健康やリハビリテーションへのアクセスなどのニーズも考慮しなければならないと述べた。

日本は、議長案の第14条(2)(b)は具体的すぎると主張した。更に、もし第14条がパラグラフ5の「国際的な基準」を引用しているのなら、これは「適切な」という言葉を前につけ、「適切な国際基準」とするべきであると指摘した。

自由の剥奪の問題に関してアイルランドが、EU案の第7条(d)に注目するよう呼びかけ、EUは保護手段の問題に関する議論を広く受け入れると述べた。

ヨーロッパ・ディスアビリティー・フォーラム(EDF)は、この重要な問題に関するWNUSP及びIIによるコメントに対する支持を表明した。自由の権利は障害者の基本的な権利であり、この権利は、拘留や監禁からの自由だけを意味するのではなく、保護からの自由をも含む。この権利は世界中で様々な程度により制限されている。これは新しい権利ではなく、法的、政治的及び市民的な権利である。EDFは、障害者に既存の権利を完全に享受する機会を提供するために、これらを適切な形に作り直さなければならないと指摘した。

シエラレオネは、議長案の第14条を修正することなく、パラグラフ(3)(4)及び(5)を削除し、これらの条項を議長案の第11条に入れることを勧めた。コーディネーターは、これは有益な提案であると認めた。

カナダは議長案第14条(1)の、拘留と監禁に関して詳しく説明した文言を採り上げ、どうしてこの文言が詳しくされたのかについて説明がないかぎり、ICCPRの第9条の表現から逸脱するのは望ましくないと主張した。カナダは、介入に関する別の条文を設けるというコーディネーターの提案に賛同し、更に、均整の概念がこの議論においては有益であると同意した。また同代表は、議長案の第14条(4)にある「司法手続き」に異議を唱えた。カナダでは“judical(司法)”は”courts(裁判所)”を示す一方、“administration(行政手続き)”には”tribunals(審判所)”が関与する。これらは別個の制度なのである。第14条(5)に関連してカナダは、権利の概念の反復に対する懸念を示した。カナダは、新しい権利を設けることは望んでおらず、むしろ既存の権利を完全に実現することを保障する方法を提供したいと考えている。おそらく第14条(5)の「権利」という言葉が、実際には「手段」となるべきだと思われる。

RIは、議論で何が問題となっているのかを明確にした。自由の損失は、法的手続きによって正規に要求できる。国による拘禁のプロセスでは、拘禁という行為ではなくて、その状況が問題となるのである。国による拘禁のプロセスは医学的な決定を装う。RIの代表は、犯罪によって自由を失う場合と国による拘禁により自由を失う場合には違いがあることを認め、多くの点で犯罪による場合の方が、最大限の保護が提供されるとしている。例えば、犯罪により自由を失う場合は、刑罰を受ける期間は限定され、有限であるが、国による拘禁の場合は期間が不確定であることが多く、また一生涯続く可能性もある。国による拘禁を正当化するためには2つの根拠があり、一つは、障害者が本人自身或いは他者を傷つける危険があることで、もう一つは、障害者が治療を必要としているということである。これらの理由がしばしば不正に利用され、守られずにいるのである。例えば、治療の必要性を理由にしながら、実際はその治療を行うことなく障害者から自由を剥奪する傾向がある。

南アメリカ人権委員会は、議長案第14条(4)は、障害者をテーマとし、これについて述べている第10条に盛り込む方がよいと提案した。

第14条(5)に関し、中国が「国内或いは国際的な基準」というフレーズを指摘し、様々な国が独自の国内法を持つので文章の解釈に差が出る可能性があると指摘した。中国は、条約で使われる文言に焦点を当てるよう強く訴え、またこの意図により、議長案の第11条、13条及び14条を一つにまとめることを提案した。

WBUは、自由と安全は条約の重要な論点となると強調した。また、WGは文字で書かれた文書へのアクセス手段を追加するべきだと述べた。つまり、一般市民を対象とした文書は、文学及び公共の情報を含めどのような文書でも、視覚障害者を対象とした形にしなければならないということである。WFDは、WGのメンバーが司法手続きにおいて障害者の権利をどのように保護するかという問題を提起したことを想起し、これはWGがその実施方法を文書に書き留めることによって解決できる問題であるとした。

WNUSPはカナダ代表がICPPRの文言に言及したことを指摘し、障害を理由にした拘禁は本質的に専制的であるという議論を提議した。そしてこれとは別に、やはりICPPRに述べられている移動の自由に対する権利というアプローチを提案した。この権利は、おそらくより明確に、私的な環境及び家庭における拘禁について扱うものと考えられる。

新たな権利の創造に関するタイのコメントに答える形で、スウェーデンはこれに反対する理由を、国の義務を拡大することを望まないからではなく、障害者は他の人々とは違うという考え方を排除することを主要な目標としているからだと明確に述べた。スウェーデンは障害者が健常者と同じ権利を持つことを強調した。

レバノンは、保護の問題はあまりにデリケートな概念なので、悪用されやすいと主張した。更に、監禁という概念を、家庭にまで広げる必要があると付け加えた。EUの案に均整に関する文言を盛り込む提案については、レバノンは、多くの国が、能力を構成するのは何かを定義する際に、客観性を維持することができない可能性があると述べた。

中国は、障害者にとって重要な権利を排除することを呼びかけてはいないと強調した。障害者は、CATを含むこれ以外の条約で謳われている、障害者の権利を享受すべきである。障害者は、法の前に平等である権利と、人としての安全と自由に対する権利を享受すべきである。これらの権利は誰にとっても重要であるが、特に障害者にとっては重要である。中国は、WGが既存の法律を複写するべきではなく、この条約を具体的で、焦点を絞ったものとするべきであると強調した。

ニュージーランド(NZ)は、WGが安全に対する権利に取り組んでいることが明らかではないことから、個人の自由と安全に対する権利についての議論に懸念を表明した。障害者の中には、証人として信用されないために、身の安全に関わる法的な手続きを拒否されている者もいる。

午後セッション

開始時刻  午後3時25分
終了時刻  午後6時

このセッションでは、全般的な義務に関する第4条に関して、コーディネーターによって提案された文書に焦点が当てられた。同文書は第二回会議室文書(A/AC.265/2004/WG/CRP.3/Add.1)として回覧されたが、これは前日のWG内の議論と、関心のある代表者による小グループでの非公式テーマ協議会の議論を反映した内容であった。AHCに提出する、第4条の2つのパラグラフの文言の提案に加え、代替案とその意味を示す脚注をつけたCRP(上記文書)には、AHCには提出されず、交渉を容易にするためにWG内部でのみ使われる「作業ノート」も入っていた。コーディネーターは、現在しなければならない仕事は、AHCによる折衝の基本となる条文案を提出することであり、最終的な条文を作成することではないということを代表者達に再び思い出させた。

ロシア連邦は、パラグラフ1で述べられているように、領土内に暮らす非市民に対して、締約国の義務を拡大することを求め、これは特にヨーロッパにおいては重要な問題であると指摘した。コーディネーターは、非市民である障害者は、一般の非市民と同様に扱われるべきだと提案したが、しかしこれは、括弧内および脚注に記されているように、AHCに提出すべき複雑かつ重大な問題であるとも述べた。

日本は、同文書について自国の専門家と協議する必要があると述べ、これをもっと後の段階で再び検討することを提案した。そして、パラグラフ1の(a)は重要であるが、しかしどのような政府も、その規定を実施するに当たっては柔軟性と時間を必要とし、このため徐々に時間をかけて実現することが「必要な要素」であるとした。同代表は、「作業ノート」のポイント1及び4を、条約の中のどこかに草案として盛り込むべきであり、また脚注2を、この文書の全般的な義務のセクションの一部とするべきであると主張した。

世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)は、パラグラフ2は、障害者の国のレベルでの参加を促す具体的な仕組みに関する国家の義務について、より明らかに詳しく記した議長案の第29条を短くしたバージョンのように思えると口を挟んだ。同代表は、パラグラフ2が第29条に取って代わるものかどうかを尋ね、障害者は条約の実施に関わるだけでなく、彼らに影響を与える政策決定や評価にも関わるべきだと主張した。そして更にこの点に関する内容が付け加えられるよう求めた。コーディネーターは、第29条はもっと後の段階で討議される予定で、パラグラフ2の記述は、条約の実施に関わる政策決定問題を採り上げることを目的としており、第29条で扱っている条約の遵守を監視することとは異なると述べた。

リハビリテーション・インターナショナル(RI)は、パラグラフ1で差別に焦点を当てていることが、条約の目的を狭めていると指摘した。同代表は、2番目の文を、「障害者の権利に影響を与える:」に置き換えることを提案した。また、同代表は、既存の国際的な人権に関する法律文書に従った形で、障害者とその救済を主流とする概念を追加することを要求した。

シエラレオネは、公共及び民間の両方に適用できるよう、1(d)の「公共の」という言葉を削除し、更に「収容施設」という言葉の前に、「その領土内或いはその管轄下における」という文言を追加することを要求した。

アイルランドは、本国及びEUとの協議の前に、いくつか予備的なコメントをした。それは、脚注3は包括的過ぎるということと、市民的及び政治的権利に関する国際規約に定められている権利についての議論を再開させる可能性があるということである。また、1(a)には、EU案の5(c)に述べられているように、国内の政策及びプログラムを「見直す」義務を追加する必要があると述べた。一方、1(a)の「慣習や慣例を廃止すること」は、国家の権力の範囲内だけで保障できるようなことではないので、更に検討を必要とするとも指摘した。そして1(b)はEU案には盛り込まれなかったが、議長案(第4条2(b))では、「原則」ではなく「権利」を扱っているという点で大きく異なっているとし、1(d)についてと、「公共の」機関という文言を削除しようという他国の提案については、民間の機関を国際的な人権法の手にゆだねる意義を、更に検討する必要があるとした。最後に、アイルランド代表は、EU案に何も該当する部分がないパラグラフ2の原則とその配置に関する質問をした。コーディネーターは、公共及び民間の機関に対する国の義務にはレベルの違いがあり、このことは(d)及び(e)でこれらの機関をそれぞれ別々に扱っている事実から認められると明確に述べた。そして、アイルランドが本国との協議を予定している点と、更なる検討の必要性に関しては、この文言をWGで再検討することはできないので、AHCに更なる議論をゆだねることを繰り返した。

メキシコは、同文書は総合的であるが完全ではないと述べ、パラグラフ1の一行目の、「保障する」の前に「推進する」という言葉を追加し、また、「十分な」という言葉を「人権の享受」の前に追加することを求めた。同代表は、パラグラフ1が条約の目的を狭めているというRIの主張に同意した。そして、2(c)は権利の保障に限られるべきではなく、記載されている目的の達成のための積極的かつ前向きな行動についても触れるべきであると述べた。これはメキシコ案の第3条パラグラフ1及び2(d)で強調されていることである。同代表は、国の義務に関連して、障害者の自己決断と社会への完全参加の概念を盛り込むことを要求し、単なる支援や慈善という形式ではなく、知識や経験の交換のような国際協力の要素が、必ずしも第4条では無くてもよいが、条約の最初の方の条文の一つに含まれるべきであると述べた。

南アフリカ人権委員会は、非差別は重要な義務及び原則ではあるが、これを強調しすぎているというメキシコの主張に同意した。そして権利を推進し、意識を高め、監督活動を行うという国の義務に関する文言をこの条文に盛り込むことを要求した。

ヨーロッパ・ディスアビリティー・フォーラム(EDF)は、RI及びWNUSPの意見を支持した。同代表は、「必要な支援が受けられるようにする」という文言を、パラグラフ2の最後に追加することを求め、EU内部では、障害者の参加を促進するため、障害者及び障害者団体と国との対話に関する規定があることを想起した。特に、ヨーロッパ雇用における平等な待遇に関する指令(2000年)を引用し、EUがEU内で守られている方針にここでも同様に従うことを期待した。

ランドマイン・サバイバーズ・ネットワーク(LSN)は、南アフリカ人権委員会の意見に注目し、WGにバンコク案の第34条(条文案集の53頁)や議長案の第29条(条文案集の58頁)を参照するよう呼びかけ、このセクションに監督に関する文言を入れる提案を支持した。同代表は、漸次実現するというのは、経済的、社会的及び文化的権利にのみ適用されるべきことであると述べ、WGに、この点に関する基準として、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(CESR)の第2条(1)を参照するよう訴えた。そして経済的、社会的及び文化的権利の実現は、国際協力によって達成されるのではなく、国際協力というのは、多くの国々がこれらの権利の実現を成し遂げる際、これを支援する手段であることを明確に示した。

インドは、1(b)を2つの部分に分け、後半は1(e)と一緒にまとめるべきであると提案した。そして経済的、社会的及び文化的権利は「不可欠であり」、この条文に反映されなければならないとし、南アフリカ人権委員会とメキシコが提案するように、この文書には積極的な行動に関する内容も取り入れなければならないと述べた。

コロンビアは、データ収集と統計の資料を引用することを望んだ。国がその義務を果たすためには、障害の傾向と原因を理解する必要があるというのだ。同代表は、障害の予防や条約の監督に関わる内容に加え、国家予算及び資金源に関する内容が条文に盛り込まれるべきであると述べた。コーディネーターは、統計の問題は既に提起されており、障害者のプライバシーを侵害するという理由から、数人の代表がこれを条文に盛り込むことに反対しているが、この大きな問題は再検討されるであろうと述べた。

マリは、パラグラフ1の一行目の、「推進と保護」という言葉の使用に関するメキシコの意見を支持し、実施には司法も関わっていることから、1(a)の一行目に「司法手段」という言葉を追加することを求めた。同代表は、1(a)の「慣習や慣例を廃止する(こと)」の義務について質問し、慣例によっては何百年も続いており、全てが必ずしも障害者を傷つけるものではないことから、国はこの実施のためにどのような手段をとることができるか尋ねた。同代表は、「廃止する」を「調和させる」に置き換えることを提案した。

ディスアビリティー・オーストラリア・リミテッドは、バンコク案第5条にあるように、条文に救済条項を盛り込み、改善することを提案した。同代表はまた、バンコクの条文案第8条で論じられている、根の深い固定観念と偏見に関する文言を入れることを希望した。

アイルランドは、EDFがEU雇用における平等な待遇に関する指令に注目させたことに感謝し、EUがNGOとの対話に参加していることを確認した。同代表は、上記指令と現在の草案である文書のパラグラフ2との違いを強調し、同文書は個人的に見て、AHCに提出するには「準備が整っていない」とした。同文書を簡潔にする必要性を考慮し、アイルランド代表はコーディネーターに草稿を作成し、改訂するプロセスについて質問した。

コーディネーターは、ここでの議論と、文書の内容に関する賛成或いは反対の割合を考慮し、適切にまとめると述べた。そして提案された文書に拘束力はなく、議論の基礎として使われるだけであると注意したが、しかし、各提案を文書に盛り込むと文書が大変長くなってしまうので、これには限りがあるとした。コーディネーターは、参加者に、条約の後の部分でも懸念事項は採り上げることができ、特にこの条文が条約の全てというわけではないことを忘れないよう呼びかけた。そして各代表の草案は不完全であっても、それが議論に反映されるよう最善を尽くすということを思い出させた。アイルランドはコーディネーターの説明に感謝し、参加者に、条文をあまり変更しすぎないよう、また条項に内容を詰め込みすぎないよう慎重に対応することを強く訴えた。

ニュージーランドは、障害者との連携の原則に言及した同国文書のパラグラフ28が、必ずしもこの条文に盛り込まれる必要はないが、全般的な義務として明記されるべきであると主張した。同代表は、障害者が参加すべきであるというのは明らかであるが、リストにあまりに数多くのその他の関係者が追加されると、パラグラフ2で指摘されている点が弱くなってしまう可能性があると述べた。

韓国は、パラグラフ2に「その他の組織」を含むことを躊躇すると表明し、ここでは障害者の参加を強調すべきだと述べた。同代表は、「前向きの」及び「積極的な」という言葉を、パラグラフ2の「参加」の前に挿入することを求め、パラグラフ1の一行目に「推進する」を追加することを支持した。

中国は、パラグラフ1を、方針原則の問題と称し、差別について語るのは否定的すぎると述べ、もっと肯定的な角度からの権利の推進を要求した。中国は、「障害者の権利の実現を保障する手段をとる」という文言を、2番目の文の代替案として勧めた。同代表は、障害者の権利の実現に深く関わっているという理由で、社会的及び経済的発展における国の義務に言及すべきであるという他の代表の意見に同意した。中国は、これらの具体的な国の義務に関して、「障害問題に関わる費用を国の経済的及び社会的な発展政策及びプログラムに組み込む」ことを含んだ新しい文言を提案した。

スウェーデンは、「全般的な義務」という副題に関して懐疑的な態度を示した。そして、論理的な立場から見ると、文書の主題に対して先入観を持たせないように、副題を設けない方がよいとした。同代表は、数人の代表が、他の条文の内容をほとんど全てこのセクションに含むべきだと述べたことを指摘し、その場合この条文が他の部分とどう異なることになるのかと問いかけた。そして、もし国の義務全てを全般的な義務のセクションに記載するのなら、この仕事は難しくなってしまうであろうと述べた。また、差別が別個の問題ではないという点に同意し、書き換える必要があると語った。

コーディネーターは、このセクションを買い物リストのようにする意向は、具体的な義務の列挙へと議論が移るに従って改善されると期待すると述べた。特に障害者とその組織からの数人の代表が、副題・題名をつけることにこだわったので、これはそのまま残し、副題や題名を文書の一部としてつけるかどうかについて、AHCによる決断にゆだねることになった。

世界盲人連合は、障害者のための及び障害者の条約であるという理由から、この条約に障害の予防を盛り込むことに再び反対を主張した。また、パラグラフ2にある市民社会及びその他の機関の参加に関する文言は、障害者と異なり、これらの組織が歴史的に常に障害問題について発言してきた過去を持ち、参加の権利を持っていたことを考えれば、「少し行き過ぎて」いるとも述べた。このパラグラフの内容はそのままにするというのが同代表の意見であるが、それはあくまで、これが障害者に門戸を開放し、初めて自分達自身に関する問題について発言できるようにしているからである。同代表によれば、この会議はNGOにとって文書について議論する貴重な機会であり、次回では「我々にとって遅すぎる」ということだ。

モロッコは、障害の予防には第一、第二及び第三段階の3種類があると指摘した。そして、そのうち、第二及び第三段階が障害者に関連しており、この点が、条約で謳われなければならないと述べた。障害者は国民であり、全ての国は国勢調査を行うので、データバンクが国に障害者のニーズに関する情報を提供することができる。モロッコは、1(a)に「締約国に対し、国の予算に、部門レベルでの障害者のための費用を含むことを要求する」という条項を追加することを提案した。

ベネズエラは、メキシコとモロッコ同様、「推進する」という言葉をパラグラフ1の最初の文に入れるべきであると発言し、データ収集の問題は、障害者のニーズを評価し、その対応を企画するために、障害者を対象に行う調査について論じている、ベネズエラが提案する条文案の第3条で扱われていると指摘した。同代表は、障害に関する統計の編集を求め、障害及び障害者の市民としての能力は、二つの別々の問題であると述べた。そして、パラグラフ1における差別に関する記述の繰り返しは不必要であると付け加えた。

スロベニアは、脚注1を監督に関するセクションに移すことを提案し、統計収集を監督に関するセクションの最初の部分に入れるよう指摘した。同代表は、パラグラフ2で政府とNGOの協力について触れることを支持した。

WNUSPは1(a)の慣習及び慣例の問題を採り上げ、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第27条を引用した。第27条は、文化及び慣習に配慮することは国の義務であると述べている。同時に、家族やコミュニティーによる障害者の監禁のような、多くの国々に関わる慣例にも注目する必要がある。この条約により、これ以上続けられるべきではないこのような慣例に取り組む方法を見出さなければならない。この義務は、個人による慣例は文化的な基盤を背景に行われる場合とそうでない場合とがあるということを認め、教育を通じ固定観念から開放された環境を推進することにより実現できる。NGOと国の協力に関して強く規定する条項が必要とされる。また、統計の問題に関しては、障害を理由に生命や自由、自主性を奪われる可能性がある場合でも、プライバシーの問題が懸念される。この点に関して、国は障害者に不利益をもたらすよう個人情報を利用することがある。つまり、このような状況では、個人情報を記録する政策によって、障害者の生きる権利或いは生存の権利の容認に悪影響がもたらされるのである。社会における社会的グループとしての障害者に関する統計は、そのニーズを満たすために評価される必要がある。しかしデータ収集がもし行われるなら、それは障害者の人権と参加に焦点を当てたものでなければならず、障害者の治療状況或いは障害の状況に関するデータ収集は許可されるべきではない。

ジャマイカは、パラグラフ2で、複数の組織を区別していることに反対を唱えて忠告し、「彼らの」という言葉を「障害者及び障害者の代表及びその組織」に置き換えることを提案した。同代表は、WGのメンバーに、政府代表にも障害者がいるということを心に留めておくよう求めた。これについてはコーディネーターも配慮するよう呼びかけた。コーディネーターは、パラグラフ2は最低限の必要条件と見るべきで、これが限度であるとか、最大限の必要条件であると考えるべきではないとの考えを示した。

南アフリカは、障害者と綿密に協議することは強調しすぎると言うことはあり得ないと述べ、南アフリカでは障害者の積極的な参加の歴史により、国による有意義なイニシアティブを実現することができたと指摘した。同代表はパラグラフ2に、障害者の参加に関する記述を取り入れる提案を支持し、義務に関してはその「行動提案」が重要であるとして、パラグラフ1の最初の文中に「推進する」という言葉を入れるメキシコの提案に同意した。

タイは、パラグラフ2を、国にとって最低限必要な条件と見なし、この点で他者の関与を排除するものではないという見解に同意を示した。同代表は、たとえ他の組織がこれまでのように関与し続けるとしても、障害者と障害者団体の参加を強調するべきであるという意見を述べた。そしてパラグラフ1の最初の文に「推進する」という言葉を入れ、更に積極的な文言とするメキシコの案を支持した。同代表は、全般的な義務のセクションは、具体的すぎてはならないと忠告し、同代表団は、統計の収集が障害者の不利益を永続させるために利用されるのではないかと憂慮していると述べた。しかし、もし不利益を永続させないのなら、統計を含むことに何ら問題はないということであった。

ドイツは、差別問題に関するスウェーデンとアイルランドの意見を支持し、差別だけが問題ではないと言うことを示すために、人権と障害に関する研究を行うよう付け加えた。そしてパラグラフ1は「完全な人権」に言及すべきで、また、「差別を撤廃する」という文言を入れるべきであると述べた。同代表は更に、この分野における研究によれば、障害者にとって救済問題が極めて重要であり、それ故、この条文では新しい権利を作ることなく、経済的、社会的、及び文化的権利に関する国際規約第2条(a)を基本として、この問題を反映させる必要があると指摘した。

コロンビアは、障害の予防に関する概念とデータ収集は条約の一部とするべきであると述べた。同代表は、予防に関して以前にあげたポイントを明確に示し、これは社会的な危機管理の問題であり、世界銀行から提出された新しい概念であると発言した。同代表は、障害と貧困をもたらす及び/又は悪化させる要因として自然災害を引用し、政府が調査を実施するときは、障害者を迫害しようとしているのではなく、その生活の質を高めようとしているのだと指摘した。

中国は、条約の草案作成において、2つの根本的に異なる見方があることを指摘した。一つの見方は、差別という視点で(CEDAW、CERD)、もう一つは、人権の推進と保護という視点である。この指摘は、草案の作成に関わるものである。また同代表は、AHCがWGの設立基盤であり、AHCの名がWGの正式な名称であるとも語った。従って、もしAHCが非差別の視点に立って条約の草案を作成するなら、CEDAW或いはCERDを参考にし、もしそうではないなら、他の規約を参考にするということになる。同代表は、12日前、人権と社会的発展の見地に立って活動すべきであるというWGの任務を繰り返した決議をGAが採択したことをメンバーに喚起した。この目的のために、同代表は、現在の文書の方向性に見られる問題点、すなわち、障害者の権利の保護及び推進に言及せず、非差別という方向に傾いている点を指摘した。コーディネーターはこれに答え、明らかにパラグラフ1をふくらませる必要があることと、このパラグラフを差別問題以外も扱うよう範囲を広げるというメキシコの意見に対し多くの支持があったことを述べた。

セビリア及びモンテネグロは、スウェーデンの意見に同意し、題名をつけるのは、「要望のリストを提出する」ことになるので、問題があるとし、見直しを求めた。同代表は、パラグラフ1の最初の文には賛成しているが、他の多くの代表が提案した、「推進する」という言葉を加えることについては、反対はしないと述べた。また、同代表は、1(b)に関するアイルランドの主張に同意し、パラグラフ1の二番目の文に、「この目的のために/この趣旨で」と付け加えることを求めた。そして、政府とNGOの協力が重要であると述べ、いくつかの国家代表団に、障害者の代表がいることを歓迎した。また、データ収集問題は、人権に関わる立場からすると、障害者にとって有利にも(例えば、雇用率の問題など)不利にもなる可能性があるので、慎重に扱われるべきであると指摘した。最後に、同代表はこの条文は長くなりすぎないようにすべきだと警告した。

アイルランドは、全体的にパラグラフ1に内容を詰め込みすぎているとし、これは有用ではないと述べた。そしてパラグラフ1をふくらませるべきだという全体の意見に反対し、条約の全ての内容を一つの条文に盛り込むことの問題性を指摘した。同代表は、ただ一つの原則だけではなく、様々な原則に注意を払う手段を試みる必要性があると考えた。また、パラグラフ1の二番目の文に、セルビア及びモンテネグロの提案する追加文言を加えることに同意した。

レバノンは、自国の経験をふまえ、障害者の社会参加に関する条項をこのセクションの一部とするべきであるというRIの主張に同意を示した。同代表はまた、1(a)に、司法及び経済的な手段と国家予算に関する記述も入れるべきであると付け加えた。更にパラグラフ2に監督に関する内容を加え、パラグラフ1の二番目の文の代わりに、「この目的のために」という言葉を加え、パラグラフ1の最初の文の「保障する」の前に「推進する」という言葉を加えるよう提案した。

コーディネーターは、もし適切な文言が作成できれば、データ収集に関する条項を盛り込むことができると提案した。コロンビアはこの提案に対し前向きな回答をし、興味のある代表者達は、プライバシーの侵害に関わる文言の原案を作成するため、非公式に集まるよう呼びかけた。アイルランドが、現在の条文案にそのような条文をうまく入れられるかどうか、またどこに入れられるかわからないという警告を発しつつも、文言作成に参加する意志を表明した。

WNUSPは、代表者達に、人権法における差別に関する定義は全て、目的と影響の両方に言及しており、障害者はここでの提案の影響を検討し、実際の経験に基づいてこれを評価しなければならないと想起させた。同代表はまた、データ収集に言及する際は、「不利」という言葉を使うのは、この言葉の主観的な性質から、適切ではないと付け加えた。

世界盲ろう連盟は、統計の問題は国の義務の問題ではなく、障害者団体の問題であると考えると述べた。


ディスアビリティ・ネゴシエーションズ・デイリー・サマリーは、ランドマイン・サバイバーズ・ネットワークが発行する。このネットワークは、地雷の被害を受けた6つの途上国において手足を失った者の支援網を持った、米国に拠点を置く国際組織である。ネットワークは、障害者の権利条約特別委員会の国際的な経過を報道する。この作業部会の報道は、エリザベス・キサム、ジェニファー・ペリー、ザハビア・アダマリー(編者)が行なう。このサマリーは、翌日の正午までにwww.worldenable.netwww.rightsforall.orgにオンラインで掲載され、日本障害者リハビリテーション協会(dinf-j@dinf.ne.jp)が日本語に、米州障害インスティチュート(iidisab@aol.com)がスペイン語に翻訳している。他の言語に翻訳したい場合、またコメント、質問はザハビア・アダマリー宛て(Zahabiaadamaly@hotmail.com)にメールを頂きたい。

翻訳:(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター