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国連障害者の権利条約作業部会

仮訳 デイリー・サマリー第3巻第4号 2004年1月8日(木)

NGO 地雷生存者ネットワーク

午前セッション

開始時刻  午前10時34分
終了時刻  午後1時

コーディネーターは、WGが提案する平等と非差別に関する草案、A/AC.265/2004/WG/CRP.3/Add.2を午後セッションで討議することを提案した。午後セッション用の覚え書きには、このテーマに関する協議会の議長を務めたニュージーランド代表団のアンドリュー・ベッグ氏Andrew.Begg@mfat.govt.nz)による解説が記されている。

議長案の第15条が、本セッションの討議のたたき台とされた。

意見及び表現の自由、及び情報コミュニケーションへのアクセスの権利

米州障害協会(IAID)は、コミュニケーションと情報へのアクセスとが、全ての人々の生活で果たす主要な役割と、障害者がこの分野で日々直面する特別な問題を強調した。視覚障害があるWGのメンバーも、WGの議論に参加する際に経験する困難を語り、この問題を強調した。IAIDは、障害者の情報コミュニケーションへのアクセシビリティーを保証する議長案の第15条のような条文を、条約に入れなければならないと力説し、もしアクセシビリティーがきちんと定められなければ、多くの障害者は完全参加を達成することができないと述べた。

世界ろう連盟(WFD)は、議長案の第15条は適切ではないと懸念を表明した。同代表は、ほとんどの聴覚障害児は母国語の手話を使用することを禁じられており、そのために聴覚障害者の間で深刻な非識字問題が起こっているという例を挙げた。WFDは、聴覚障害児及び難聴児の、自然な言語の発達に関する権利を草案文書に追加することを提案した。そして、このような子ども達がバイリンガル或いはマルチリンガルになれるよう、この権利が保証されなければならないと断言した。子ども達が母国語を学ぶだけでは十分ではないからである。

WFDは更に、WGが次にあげるユネスコの文書に従って草案を作成することを提案した。その文書とは、「マルチリンガルな世界における教育」という意見書の中の、「言語、活力、危険」という題名の文書である。更にWFDは、聴覚障害者及び難聴者は、情報コミュニケーションへのアクセスの権利を最大限享受しようとするなら、通訳サービスを利用するべきであると主張した。

WFDは、議長案の第21条、23条、24条、及び27条もまた、違った視点からではあるが、この問題を採り上げていると指摘した。WFDは、新しい権利を求めているわけではなく、既存の権利を保障することを求めているだけだと強調しつつ、新しい文言を取り入れることを提案した。その場合、表現と意見の自由の実現を保証するために、聴覚障害者の生活における言語学的権利と伝達手段に関する権利が達成されなければならない。コーディネーターは、WFDに、条約に盛り込むことを希望する文言を読み上げるよう要請した。WFDはいくつかの文章を提案したが、これは最初の草案であり、更に作業を進め、もっと後の段階で文言を紹介したいと強調した。

タイは、これは条約の中心的な問題であると強調し、あらゆる人権法の中でも他に例を見ない問題の一つといえると指摘した。タイは更に、議長案の第15条の内容は、バンコク案を要約したように思われ、いくつかの重要な点が抜けていると述べた。そこでタイは、「情報通信技術(ICT)及び支援技術」という文言を追加することを提案した。タイは、もしICTについて何も言及しないなら、障害者の選択を制限することになると強調し、抜けているポイントをもう一度入れるために、WGにバンコク案の第16条及び19条を再検討することを強く訴えた。タイは、「ユニバーサル・デザイン」の概念にも注目すべきだと強く主張した。

タイは更に、「全ての人のためのデザイン」を主張しているEU案の第6条(d)が、この問題に関して有用であると指摘した。

アイルランドは、国が「情報およびコミュニケーション手段への平等なアクセスを推進する」必要を謳っているEU案の第8条、及び国に「全ての人のためのデザインと、障害者のための技術及び適切な形態の支援の開発と利用を推進すること」を義務づけた第6条に注目するよう呼びかけた。また、議長案の第15条について、アイルランドは、情報コミュニケーションにアクセスする「権利」というのがあるかという質問もした。アイルランドは、情報及び思想を求め、受け取り、伝える自由を含む、表現の自由に対する権利は既存の権利として認めた。そして「アクセスの権利」という文言よりも、「情報への平等なアクセス」というフレーズの方を提案した。

更にアイルランドは、議長案第15条1の「公的に認められた」コミュニケーション・モードの意味に関して懸念を示した。アイルランドは、これが政府に新たな言語を公認することを求める意味なのか、或いは単に政府が利用するコミュニケーション手段のリストを発行するという意味なのかどうか、疑問を投げかけた。ヨーロッパ及びその他の国々では、言語の公認の問題は、多数の微妙な政治問題を含んでいる。

次にアイルランドは、議長案の第15条2に移り、この条文の目的が、障害者からの要求の有無に関わらず、政府が全ての情報をパブリック・ドメインにして、あらゆるコミュニケーション形態により利用できるようにするということなのかどうかを問題にした。アイルランドは、これが、例えばある人がある文書を点字に訳すことを要求する場合とは別の問題であると認めた。どのようにしたら政府がこの条文を実施できるか、WGは更に念入りに検討する必要があり、アイルランドは、実施できるかどうかわからない単なる権利宣言よりも、政府がとるべき実行手段のリストを作成することの方が好ましいとした。

コーディネーターは、この問題について障害者を代表する組織からコメントを得ることが有益であると指摘した。そして、国は全ての公文書を翻訳する必要はないとの個人的意見を表明し、この条文はむしろ、障害者が文書へのアクセスを希望する際に、何らかの仕組みを通じてアクセスできるよう保証するということを意味していると述べた。コーディネーターはまた、この条約は、豊かさのレベルが様々に異なる国々を含む、できるだけ広い範囲の国々を対象としていると述べた。そのため、条約の実施には、釣り合いをとることが必要となり、例えば、条約に定められている義務を非常に「重荷に」感じ、締約をとりやめる国々が出る可能性があるため、そのような義務の明記をすることは望ましくないと語った。シエラ・レオーネは、第15条は権利と原則に関する記述を含むが、行動指針が欠けていると主張した。同代表は、議長案の第10条(2)、第13条(3)および第16条(4)を引用し、これらに矛盾があるとの懸念を示した。

宣言の作成と権利のリストの作成では十分ではないとシエラ・レオーネは主張し、締約国が実行するよう期待されることを明言し、締約国にこれに関する行動をとることを求めたパラグラフ或いは文が必要であるとした。コーディネーターは、WGは概念上は条文の目的を理解しているが、国に求められていることが実際に何なのかについては、それよりも難しい問題であると認めた。

アイルランドによる議長案の第15条1に関するコメントを踏み台として、日本は「公式に認められた」という言葉に注目し、このような表現ではこの言葉の意味するところが明確でないと述べた。

バンコク案の第19条(a)について日本は、手話が国の公用語の一つとして認められるよう明確に記していると指摘し、WGは議長案の第15条1の文言が、国に手話や点字を公用語に含むよう義務づけるものかどうか、或いは、単にコミュニケーションの代替手段を認めることを義務づけるだけかどうかを明らかにしなければならないと述べた。

中国は、この条文は言語の定義と関連させつつ、詳しく検討される必要があると提案した。例えば、手話或いはその他の同様な言語の範囲を明確にしなければならない。また、議長案の第15条2については、条約が多くの異なった発展段階にある国々に適用されることを考慮する必要があるとした。

更に中国は、「適時に」という文言を採り上げ、これは曖昧すぎると考えられるので、「漸次」という言葉にするよう提案した。最後に中国は、「パブリック・ドメイン」という言葉が民間企業のことを示しているのかどうか、その意味を明確にしてほしいとの希望を述べた。中国は、用語をもっと実用に即した方法で定義する必要があるとの意見を表明した。そして、政府が「全ての情報をそのような(パブリック・ドメインの)形式で提供する必要」がないようにしたいという「要求があっても」、政府の文書は要求があり次第、すぐに提供できるようになければならないと述べた。

DPIは、重要なのは、情報にアクセスする権利の問題であると強調した。これは逆に、思想を発展させるために他者と情報交換をし、思想を表現する権利と、情報を受け取る権利を保証する。DPIはバンコク案が、障害者が自分自身で選択したコミュニケーション形式を利用してコミュニケーションを取ることができるように、障害者のニーズを考慮していることを指摘した。もう一つ有用なこととしてDPIは、マスメディアを巻き込み、これらの問題に対する社会の意識を高めることを求めるメキシコ案の主張を採り上げた。一方ニュージーランド案では、アクセシブルなコミュニケーションが、政治的な参加の権利など他の権利にどのように本質的な影響を与えるかを説明していると示した。

コーディネーターは、メキシコ案の参照箇所を示すよう要求し、コロンビアがこれを読み上げた。コーディネーターは、文書を点字に変換する技術があるかどうかを尋ね、肯定的な回答が得られたので、そのような技術の存在がこの問題の多くを解決すると思われると結論づけた。モロッコはこの技術のコストが高いことを強く訴えた。

WFDBは、情報コミュニケーションへのアクセスは聴覚と視覚の両方に障害がある者にとって不可欠であると強調した。WFDBは、全盲で点字に頼っている視覚障害者や、聴覚障害があり手話を使用している障害者を含む多様な集団である。特に発展途上国では、視覚と聴覚の両方に障害がある人々が、これらのコミュニケーション・システムの一つを身につける機会はない。このような人々は、家庭に閉じこもり、基本的な要求だけを伝えるか、或いは全くコミュニケーションできずに完全に孤立してしまっている。WFDBは、第15条1に、各自が独自のコミュニケーション・システムを開発し、自分が適切と考える言語やコミュニケーション・システムによってコミュニケーションを取る権利を盛り込むよう提案した。

IAIDは、ほとんどの人が点字による情報へアクセスすることができずにいることを示し、特に発展途上国では、全ての視覚障害者が点字を知っているわけではなく、また全ての聴覚障害者が手話を知っているわけではないことを強調した。これが日々の現実であり、国が研修制度へのアクセスの提供に積極的に関わることによって解決されなければならず、また聴覚障害者や視覚障害者が職探しをする場合は、これらの代替手段が利用できるようにしなければならない。国は必ずしも全ての公文書をアクセシブルな形に変換する必要はなく、この問題は条文にそのことを具体的に記載することで解決できる。IAIDは、障害者のための新しい情報通信技術へのアクセスは、各種プログラムを通じて利用できるようにするべきであると強調した。これはこの条文で保証されなければならず、そうでなければ完全参加の実現の可能性は低くなり、市民権の発展は幻となるであろう。

タイは、この問題に対する二つのアプローチを大まかに説明した。一つは、情報コミュニケーションへのアクセスを、表現の自由の達成手段と考えるアプローチで、バンコク案の第19条がこの好例である。もう一つは、情報コミュニケーションへのアクセスとともに、物理的な移動によるアクセスをとりあげるアプローチで、バンコク案の第16条がこの例となる。タイは更にバンコク案第2条を引用したが、この条文は、言語コミュニケーションに関わるアクセシビリティーを定義しており、全ての情報をアクセシブルにするのは、情報の創造、保存、及び普及の仕方を標準化する方法があるので、技術的に可能であると主張している。電子情報は情報形態の中心モードであり、電子情報システムに関する国際基準或いはアクセシビリティーの基準を利用することにより、点字、音声或いはマルチメディアなど複数の異なった形式で情報を出力し、伝えることができる。この条約では、情報を処理する方法をその最初の段階から規定しなければならず、これは、「選択と義務の問題」であるとタイは主張した。

ドイツは、この会議が、障害者のための技術的な進歩の適用にあたり、コスト削減の機会があることを各国に確実に気づかせる、極めてまれな機会であると主張した。更に、ドイツは新しい権利を作ろうとしないことが、不十分な権利の制定を防ぐこととともに重要であるということを再確認した。ドイツはCCPRの第19条の文言を指摘し、特にサブパラグラフ2について、コミュニケーション手段の選択の自由は、表現の自由に対する権利の中に含まれるということが国際法では既に受け入れられていると示した。

WBUは、視覚障害者の数が増えている一方で、点字を使った教育への関心が低下していることを訴えた。WBUはICTが視覚障害者に耳から読む方法を提供することを認めたが、書き言葉へのニーズもあることもまた認めた。そして政府は点字を、視覚障害者にとっての唯一の文字で書かれた原稿であることを認識する責任を負わなければならないとした。文学に関しては、著作権法が「多くの視覚障害者に門戸を閉ざした」と述べた。またWBUは、ウィーンに障害事務局が置かれたときに国連が二つの点字プリンターを寄附したが、ウィーンの事務局が閉鎖されて以来、これらは使われておらず、またニューヨークにも移されていないと一言付け加えた。

コーディネーターは、国連の開発プログラムで障害問題を扱っているかどうか尋ねた。

ディスアビリティー・オーストラリア・リミテッド(DAL)は、タイ、ドイツ、WBU及びWFLのコメントを支持した。DALは、障害者のための技術の高いコストを、ハードウェアやソフトウェアの制作に関わる企業に転嫁するよう主張した。国は既にテレコミュニケーション、メディア放送及び技術に関わる基準を撤廃し、その結果国の側のコストが削減され、また企業側は消費者層を拡大することができた。これは発展途上国でも可能である。地域のイニシアティブによって、ハードウェアについてもコスト・ダウンをもたらすことができた。DALは、情報テレコミュニケーション技術及びサービスの特定の基準にとってかわる、規制緩和或いは規則の変更に対して、体系的なアプローチを取るよう提案した。DALはまた、障害者固有の技術や研究への投資を行うよう強く主張し、この経験が長期的に見て障害者だけでなく、加齢のためにこれと同様な障害に直面する可能性がある多くの人々にとっても、役に立つことを指摘した。

DALは、情報の自由の普遍性は否定することはできないが、この問題は、合理的配慮(reasonable accommodation)の原則を適用することによって解決されうると述べた。

スロベニアは、ICTが障害を克服する新しい可能性を提供すると指摘した。手話については、スロベニアは、20カ国以上が一応は手話を認めていると述べた。

メキシコは、議論における2つの問題に注目した。一つは、障害者が自分の言葉或いはコミュニケーション・システムによって表現の自由を行使する言語権と、これらの表現形式及びその利用手段へのアクセスに関する問題であり、もう一つは、代わりのコミュニケーション手段へのアクセスを推進する手段と、情報をアクセシブルな形式で利用できるようにする方法の問題である。

南アフリカは、条約に障害者のコミュニケーションを容易にする技術に関する内容を盛り込むという他の代表による提案を支持した。その際、コストが問題となるが、WGはこれらの代表達が提案した原則が守られない危険を最小限に押さえることに専心する必要があると述べた。南アフリカ国内では、電気が無くても操作できるインターネットの利用に関して、ソフトウェアとハードウェアを利用した技術が開発されつつある。情報技術の重要性が、コストの問題によってうやむやにされてしまってはならない。南アフリカは、議長案第15条2に、特に重複障害のような、ある種の障害を排除することがないよう、全ての障害者を含むことを提案した。コーディネーターは、南アフリカ代表に、同代表が説明したインターネットに関するプロジェクトの情報を他の代表者にすぐに提供できるか、また、このような情報を共有する仕組みがあるかどうか尋ねた。南アフリカは、情報交換を完璧に行えると述べようとはしなかったが、会議でこの問題を採り上げることを希望した。

WFDは、コミュニケーションの代替手段を公用語として受け入れる問題に関するアイルランド代表の懸念についてコメントし、このようなコミュニケーション手段の公認を要求しているわけではなく、単に母国語を使うことができなければ存在し得ない表現の自由を求めているにすぎないと強調した。WFBは、スロベニアが20カ国において手話に関する法律があると述べたことを再び採り上げ、実際には30の国が何らかの法律で手話について言及していると指摘した。WFDは、バンコク案の第19条を支持し、この文言が使われることを希望した。更に、世界中の言語学者達が、手話の様々なタイプについて既に十分に定義しているので、改めて詳しく述べる必要は無いとした。

南アフリカ人権委員会は、情報コミュニケーション手段へのアクセスは、平等の実現のために不可欠であると認めた。同代表はまた、南アフリカは憲法で手話を認めていると述べ、更に、公共の情報は要求があれば別の形式で入手できると説明した。南アフリカ人権委員会の任務には、障害者が情報へアクセスする権利を含む、障害者の権利の保障が含まれる。法律で規定されていても、実際に行われていることは異なるので、第15条2を生かしながら、同委員会は「要求があり次第」というフレーズを、パラグラフの一行目の「情報を受ける権利には」と「適時に」という言葉の間に入れるよう提案した。

南アフリカは、条約に「実行可能なこと」或いは「最低限の許容範囲」を盛り込む必要性を強調した。

IIは、全ての公文書では分かりやすい言葉を使用することを強く主張した。更に、明解なスタイルで書かれ、専門用語の使用を避けた文書は誰にとっても役に立つと指摘し、これを議長案の第15条に明記すべきであるとした。

シエラ・レオーネは、議長案の第15条は、具体的すぎてはならないと唱えた。これは決議ではないので、点字に言及するべきではないというのが同代表の意見である。また、メキシコ案の第8条(a)(b)及び(c)は、政府がなすべきことについて非常に具体的に記しているが、技術については何も具体的に述べていないとして、条約にはこれらの技術のコストに関する問題を持ち込むべきではないと主張した。また、「適時に」というフレーズについては、誤用される可能性が大きいとした。そして、条文にはコミュニケーションの権利や、情報を適切なモードで受け取る権利のような、一般的な原則を盛り込み、それを受けて各国が認めるべき具体的な義務を規定すべきであるとした。

カナダは、議長案の第15条の表題における「権利」という言葉の使用に懸念を表明し、表現の自由のような、ICCPRで使われている既存の人権を使う方が分かりやすいと述べた。「権利」という用語は、他のコンテクストにおいては問題が多い。更に、「公的に認められた」というフレーズが議長案の第15条1で使われていると指摘した。また、カナダは、第15条2の「パブリック・ドメイン」に変わる言葉を探すよう提案したが、これはこの言葉が政府の権力が及ばない民間部門を意味する場合があるからである。基準の設定は前向きかつ重要なステップであるが、カナダは、実現不可能な義務の規定には、警告を発した。もし義務があまりに「重荷である」と認識されれば、「我々が成功させようと取り組んでいる」この条約にとって「有益」ではないからである。カナダはメキシコ案の第7条及び第8条が条約に役立てられると考えた。

インドは全般的には議長案第15条1に同意したが、第15条2に「人的、経済的及び技術的資源の利用が可能であれば、合理的配慮をし」という文言を追加して修正することを提案した。同代表はまた、インド案の第6条(e)及び(f)は議長案の第16条の表題と関連していると述べた。

レバノンは、タイの指摘にあるように、ICTを最低限のコストで利用できるようにするには、設計の初期の段階でそのように設定することが最も有効であると述べた。レバノンは非識字問題を採り上げ、障害者の多くが、ICT技術から利益を得られないでいると発言した。

ウガンダは、第15条は全ての視覚障害者と聴覚障害者が点字と手話を知っていると決めてかかっているように思えると述べた。発展途上国ではそうではなく、聴覚障害者や視覚障害者が点字や手話を学べるような方策を制定する必要があり、そのような方策は、第15条で意図されている権利の実現に貢献する。手話を、これを学ぼうとする障害者だけでなく、その他の人々も対象に、小学校で4年間教えるのもよい。障害者以外の人々が手話を学ぶことは、聴覚障害者が他者とコミュニケーションと取る際にしばしば直面する問題を克服するために重要である。第15条1は、重要なサービスについて言及しているが、これには制限がある。なぜなら担当者があるサービスを重要ではないと主張する可能性があるからである。そこでウガンダは、「重要な」という言葉を削除することを提案した。

タイは事務局に、世界情報サミットに関する情報を含む関連資料を送付することを申し出た。マルチメディアの標準規格のような、国際的なアクセシビリティーの基準が存在するが、カナダは、各国がこれらの基準に従うよう保証する必要性を強調した。

DPIは、言語権を具体的に定義する必要があると主張した。手話だけが障害に関連したシステムではなく、また点字は特別な符号を使うので別個の言語と考えられる。バンコク案の第19条及びメキシコ案の第7条が、これらの問題に取り組み始めている。

ベネズエラは、コミュニケーションへのアクセスにおける根本的な問題は、識字の問題であると述べた。多くの発展途上国では、非識字率が高く、中でも社会から取り残され、孤立している障害者の非識字率は更に高くなっている。ベネズエラは、聴覚障害者を対象にした、手話、読み書き及び口話の全国的な研修プログラムの重要性を強調した。そして、編纂文書104頁の、ベネズエラ案第8条を考慮に入れ、マスメディアがサービスをアクセシブルにすることを促進する戦略を開発する必要があると述べた。ベネズエラは、議長案の第15条はWGの議論で表明された懸念の全てを盛り込んでいないと主張した。

中国は、障害者のアクセシビリティーを保証するために、国が積極的にならなければならず、またその実現のための方策を制定しなければならないと指摘したシエラレオネとインドによるコメントを採り上げた。編纂文書95頁の中国の提案では、第5条(4)(5)(6)にそのような方策の要点を述べている。

午後セッション

開始時刻:  午後3時12分
終了時刻:  午後6時02分

第5条:「平等と非差別」に関する提案文書

ニュージーランド代表団のアンドリュー・ベッグ氏は午前セッションで、この文書はその週の初めに行われたWGによる議論の本質をとらえることを目的とし、それは第5条2(c)の下にある脚注と作業覚え書きに反映されているということと、前日の晩の非公式協議の参加者の最初の意見も取り入れていることを説明した。

  • パラグラフ1は議長案の第6条を基にしている。
  • パラグラフ2(a)及び(b)は、EU案の第3条と議長案の定義を基にしている。
  • パラグラフ2(c)は中国の定義を引用している。しかし、このパラグラフは障害の定義を提供することを意図していない。第5条2(c)の注意条項では、この条文で述べられていることは、差別行為を扱うことだけを目的としており、障害を定義する問題を採り上げる意図はないと明記している。WGは、障害を定義する問題と、更にその定義を条約に盛り込むかどうかについて、後日取り組む必要がある。
  • パラグラフ3は、議長による定義と、EU案第3条(b)に基づいている。
  • パラグラフ4は、EU案の第5条(d)及び議長による定義のいくつかの要素に由来している。
  • パラグラフ5は、議長による定義とEU案の第4条を基にしている。
  • パラグラフ6は、議長案の第8条に由来している。更に、パラグラフ1はICCPRの第26条に類似している。

コーディネーターは、これらのパラグラフの多くは既存の条約や法律から引き出されたものであると指摘した。パラグラフ2(a)は、CERDの第1条1と、CEDAWの第1条に似ている。OHCHRの代表が指摘したように、第5条3は、人権委員会の規定に由来している。更に、パラグラフ5はCERDの第1条4とCEDAWの第4条から引用されており、パラグラフ6は、CEDAWの第5条1に似ている。

アイルランドは、本質的に異なる見解を考慮している点で、これは全体的に優れた文書であると述べた。同代表はまた、パラグラフ1がICCPRの第6条に基づいていることから、これを原則とする考えを表明し、メンバーに対し、これをどこに入れるのが適切か検討するよう依頼した。同代表は2(a)については、既存の定義を引用しており、EU案に近いので何も問題はないとしたが、2(b)の文章については、「組織的な」という言葉を盛り込んでも内容を充実させることにはならないとした。また、2(c)と2(d)を結びつけた方がより簡潔で分かりやすくなるとし、2(d)の「認められた」という言葉は、法律文書にしては曖昧すぎるので、もっと明確な言葉を考え、「前提とされた」という言葉を使うことを検討するようメンバーに提案した。パラグラフ3については、この考え方はEU案の一部でもあるが、この文書にあるように、原則としてではなく、例外として扱うことが望ましいと述べた。同代表は、直接的な差別を正当化する理由は何もないと述べ、このパラグラフを間接的な差別に関連づけることを強く望んだ。そしてパラグラフ4及び5を支持したが、パラグラフ5の文言(「特別な」という言葉に関して)は、これまで人権法で使われてきた歴史はあるものの、変更すべきであると述べた。最後に、パラグラフ6に関して、同国代表団はメキシコとともに作業をするということを付け加えた。

モロッコは、背景をよりよく理解するために、2(b)の「組織的な」という言葉をどこから持ってきたのか説明するよう求めた。同代表は、パラグラフ4/脚注2の文言は支持した。アンドリュー・ベッグ氏は、「組織的な」という言葉は、代表者による議論を通して考えられた言葉で、コーディネーターが書いた文書から引用したのではないと答えた。同氏はこれが、状況を示すにふさわしい概念であるということで全体の意見は一致していると語った。コロンビアは、この言葉を、全ての形態の差別を扱う、意味の広い用語として、文書に取り入れることを提案した。

インドは、「差別には、あらゆる形態の差別が含まれる」というフレーズがあるので、「直接的、間接的及び組織的」という文言を2(b)に入れる必要は無いと述べた。同じ理由から、南アフリカは、差別の形態を列挙することは必要ないと同意した。

ベネズエラは、2(b)においては、幅広く解釈できる、一般的な言葉で、差別を語るべきであると述べ、「あらゆる形態の」というフレーズをパラグラフ1の最後の文に入れることを求めた。

シエラレオネは、2(b)を削除し、「あらゆる形態の差別」をパラグラフ1の最後の文に追加することを提案した。

アイルランドは、間接的及び直接的な差別を2(b)に入れることには大きな利点があり、人権を扱った文書に間接的なという言葉を明確に盛り込むことは、その言葉の意味の理解に向けて一歩踏み出すことになると述べた。同代表は、多くの点で、間接的な差別の方が直接的な差別よりも起こりやすく、「あらゆる形態」という言葉が間接的な差別にも言及するとはいえ、「間接的な」という言葉を削除すれば、間接的な差別の問題を「隠しやすくする」ことになってしまうと指摘した。

コーディネーターは、2(b)の問題は、WG内で解決できそうにないので、AHCによる更なる検討が可能なように、この問題に関する2つの見解/選択肢を記した脚注を文書に盛り込むことを提案した。同氏は、来週もし時間があれば、小グループによる検討をすることができるであろうと述べ、今後発言者はこの問題を蒸し返さないよう求めた。

シエラ・レオーネは、2(b)に関する脚注を入れることを支持し、2(c)の「認められた」という言葉の意味を脚注で説明することと、AHCがこの概念の法的な意味について検討することを要求した。

タイは、パラグラフ3を、誰が差別を正当化するのか更に詳しくすることを求め、これにより国や国の機関のどのような行為も正当化されるのかどうか尋ねた。

リハビリテーション・インターナショナル(RI)は、条約の目的に関するコンセンサスを再び採り上げ、非差別という概念は決定的に重要である一方で、これだけでは、この目的を果たすために「必要な行動指針」の全てを論じつくすことはできないと述べた。パラグラフ1は、この概念の「道具主義的及び存在論的」目的の両方を、全ての人権の完全かつ平等な享受というより高い目的を達成する手段として、また、それ自身を目的とし、かつ、権利としてとらえ、「きちんと要約して」いる。非差別の概念は、醜悪な差別形態とともに、それ以上に油断ならない一見して好意的な「笑みをたたえた」差別形態をも含む必要がある。パラグラフ2(a)及び2(b)は、ともに問題なく生かすことができる。2(a)により、我々は既存の人権主義により忠実に従うようになり、この条約と既存の条約とが、お互いの異なった考え方を受け入れて発展していく大きな可能性もあるといえる。「組織的な」という言葉を2(b)に入れることは、差別の概念を新に広げ、この規定を「障害に関わる分野でも生かす」ことになった。2(c)はカナダ代表の「差別の分類に注目することから転じて、差別という現象に目を向ける」という考え方を反映している。差別という概念は、障害者と認定されている人々と、「障害者として扱われている」人々、つまり他者の態度によって障害を負わされた人々の両方を扱うため、かなり広くとらえられなければならない。これに関し、米州障害者に関する条約(Inter-American Convention on Disability)の第1条パラグラフ2(a)に、有用な文言がある。パラグラフ3に関しては、RI代表は、「このパラグラフの提案者は、抜け道を限定することにより、障害者の権利を徐々に向上させられると楽天的に考えている」のかと質問した。同代表は、条約のどこかに、この条約はどのような点でも既存の人権基準からはずれていないという内容と、ある権利に言及し、それ以外の権利には言及していないことは、障害者の人権全ての一般的な適用に対する偏見によるものではないという内容の、条約全体に関わる条文を入れる必要があると付け加えた。同代表のパラグラフ4に関する懸念は、合理的配慮という言葉が、一般に「積極的な行動の一種としてではなく、差別という概念の直接的かつ必然的な結果として」解釈されるという事実に基づいていた。同代表はこれに関してアメリカ合衆国及びその他の国の法律を引用し、代表者達に新しい権利を設けることを避け、既存の権利を実現することの必要性を想起させ、「差別と合理的配慮をする義務との間にもっと明確な関連性を見出す」よう、機会を持つことを強調した。これは障害の分野における差別の概念に対し、「重要な意味を加え」、更に「最も有益な対処方法を」提供する。このパラグラフが差別と合理的配慮をする義務との間の関連性を規定せず、想像力に任せているという事実は問題である。更に、このパラグラフの「非差別の権利」に関する文言を書き直す必要がある。最後に、RI代表は、配慮とはその定義において適切で無ければならないので、合理的配慮という概念自体に、国が多くの緊急の優先事項に順位をつける上で各事項を比較検討し、「釣り合いをとる」十分な余地が見いだせるとし、「不均衡な負担」という用語についてもっと明確にするよう要求した。また、漸進的な達成という概念も、資金繰りに関して国の優先事項のバランスをとる際に十分な余裕を与えることに貢献するであろうと述べた。そして、もし「不均衡な負担」という文言をそのまま残すなら、それが公的機関及び民間団体に適用されるのか、またそうならばどのように適用されるのかということと、両者の相互関係について、明らかにする必要があるとした。同代表は、パラグラフ6に利用できる文言が、ECによって採択されたマラガ宣言に見つけられると示した。

世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)は、RIの見解に同意し、ある人に配慮することは他の人にとっては望ましくない場合があるので、合理的配慮は個々の事情に合わせて適用されるべきで、強制されるべきではなく、それ故、障害者がこれを望まない場合、課すことはできないという見解を何らかの形でいれるべきであると強調した。WNUSPはまた、合理的配慮は社会的な手段であって、個人を変える手段ではないということに言及するよう提案した。パラグラフ3は既存の人権法に前例を見ないもので、障害を理由に差別することは例えば性別や人種による差別よりも許容されやすいと言う見方を生む可能性がある。間接的及び直接的な差別の問題については、同代表は、間接的な差別のあらゆる例は、結果的な差別として理解することもできると指摘し、もし新しい概念を導入するのなら、更に詳しく定義する必要があると付け加えた。

カナダはパラグラフ3は重要であると述べ、これに関連して集団の安全と個人の安全とのバランスを取る問題を再び採り上げた。同代表は、例えばカナダでは、視覚障害者には運転免許が発行されず、これは公共の安全のためであるが、一方では個人的な差別と見なすこともできると述べた。そして、2(b)の間接的な差別と直接的な差別を区別することは、両者の区別がどれほど難しいかを考慮し、また一方にだけ適用される条件を支持することはできないとして、支持しないと語った。

コーディネーターは、パラグラフ3に関する脚注1を再び採り上げ、これはAHCが詳しく、また深く議論すべき問題であると述べた。

ヨーロッパ・ディスアビリティー・ファンド(EDF)は、間接的及び直接的差別の問題に関し、アイルランドに同意し、パラグラフ5から「特別な」という言葉を削除することを提案した。同代表は、合理的配慮に関するパラグラフ4は、国の積極的な行動の基準として記されるべきであると指摘し、合理的配慮ができないことは差別に当たるということを思い起こさせた。

メキシコは、パラグラフ6について手短に提案をすると述べ、この文書は二重の意味で弱い立場にあるグループ(障害、人種、及び/或いは貧困を理由に複数の差別を受けている人々)が直面する差別についても言及すべきであるとの見解を示した。同代表は更に、これらの問題に関する議論がこの条文、或いは他の条文にうまく盛り込まれるように、条文に平等な機会や平等に関する要素も取り入れられるかどうか尋ねた。そして、以前述べたように、非差別と障害者の権利と平等の推進について何らかの支配力を盛り込むことを望むと述べた。

中国は、非差別の原則をいずれも文書に具体的に示し、かつ、重複を避けるために、この条文と一般的な原則や定義に関する他の部分との調整をはからなければならないと述べた。そして、パラグラフ2に定義が盛り込まれていることと、それが他の条文でも述べられていることを指摘した。同代表は、平等の概念はパラグラフ2で触れられているだけだと示し、メンバーに、非差別だけに焦点を当てた条約では、消極的・否定的すぎるので、権利の行使が可能なようにする必要があると注意を呼びかけた。同代表は、「障害がある」という言葉を、パラグラフ1の一行目の「人々」の前に追加し、「障害者に不利な」という言葉を2(a)の最初の文の初めに追加するよう求めた。中国は2(a)が、CEDAWに見られる表現を使っていると指摘し、パラグラフ4で述べられているように、非差別は権利ではなく、原則であると繰り返した。そしてこの問題を、我々が取り組まなければならない言い回しに関する問題であると称した。

ドイツは、パラグラフ1の「全ての人々は法の前に平等である」という文言に「障害がある」という言葉を入れることに、難しい法的な問題を引き起こす可能性があるとして警告を発した。同代表は、差別に関する文言は非常に重要であるが、上記の理由により、正当化を規定したパラグラフ3での前例のない使用については、間接的な差別に密接に結びつけたものとするか或いは削除すべきであると強調した。そして、アイルランドが以前述べたように、この文書が障害を定義することではなく、障害者をCEDAWやCERDによって保護される人々と同じ立場におくことを意図しているとして、2(c)は2(b)に移すべきだと指摘した。つまり、この文書は、これらの基本的な差別行動を法的に無効とすることを意図した文書なのである。ドイツ代表は、2(c)で「前提とされた」或いは「認められた」という言葉を使用することに同意し、合理的配慮をしないことは差別と見なされるというRIの見解に同意した。同代表は、この合理的配慮という概念が、最近の研究及び国内法において説得力を持つことを指摘し、これは経済的及び社会的権利の条項にも関連づけて理解されなければならないと述べた。

日本は、他の人権に関わる条約では合理的配慮という言葉は全く使われていないので、この用語にあまりなじみがないと述べた。そして、解釈の問題として、いったい誰が、何が適切或いは妥当であると判断するのか、或いは、誰がこの配慮をする義務を負うのか明らかにするよう求めた。そしてパラグラフ5は一方的すぎるとして、日本における、障害者雇用に関する雇用率を割り当てる制度を採り上げ、目的が達成された後も、何らかの特別措置をとり続ける必要があると指摘した。

コロンビアは、メキシコ同様、代表者達に、非差別に関連するとして平等な機会の問題を心に留めるよう求め、平等な機会と平等は別々の問題であり、違うパラグラフに分けるべきであると述べた。同代表は、スペイン語では平等な機会と平等を区別することは容易であると述べた。コーディネーターは、両者の区別は英語でも可能であると答え、平等な機会という概念は今までの所、平等という概念と合わせて全体的に採り上げられているだけなので、平等な機会をこの条文で扱うか或いは別の条文を設けるか、メンバーに検討するよう求めた。

ディスアビリティー・オーストラリア・リミテッド(DAL)は、合理的配慮を怠ることは、差別に当たるという見解を支持した。DALはパラグラフ4の「不均衡な負担」という言葉は、不明瞭な概念であり、(免税を求める事例の数が増えるために)国に更に高額なコストを課すことになるという点で危険であるとして同意しかねていた。同代表は、この条項は民間部門のみを対象とすると指摘し、国にもっと柔軟性を与えられるようこれを削除することを提案した。同代表は、2(b)の「組織的な」という記述は、正当であり、条項の積極的な実施によって解決に取り組まなければならないことなので、そのまま生かすべきであると述べた。

世界ろう連盟(WFD)は、パラグラフ4の合理的配慮が何を意味するかについて様々な見解が考えられるので、メンバーは何らかの段階でこの概念を定義する責任を負うと述べた。WFDは同連盟がバリアフリーな社会を提供することを目的としており、合理的配慮は非差別の考え方と強く結びつけられるべきだとするRIに賛同の意を表した。同代表は、経済的な政策と国の予算を、合理的配慮を考慮して定めることを求めた。これは合理的配慮に関わる費用が国の予算のごく一部であり、この費用のために「どの国も破産することになってはならない」からで、同代表は、個人が社会にとって生産力のある資産となれるようにし、同時に個人の人権を保護する役割を果たす合理的配慮により、個々の障害者と社会全体が利益を得られるようにしなければならないと主張した。この点で、合理的配慮をしないことの方が、「コストがかかる」ことになるといえる。

コーディネーターは、多くの代表者が合理的配慮に関する文章についてもっと意味を分かりやすく、洗練するよう望んでいることを指摘し、この問題は更に検討する必要があると述べた。同氏は、この概念/条項を更に洗練するために、関心のある代表達に非公式に集まるよう提案した。また同氏は、この問題に関して専門知識を持つRIのジェラルド・クイン氏に、この小グループ会議をまとめるよう依頼した。アイルランドは、クイン氏の見解は有名であり、同代表団はこれに賛同はしないが、話し合いには喜んで参加すると口を挟んだ。同代表は、小グループ会議が多すぎるので、定例会議のうちの1時間を非公式協議に当てることができるかどうか質問した。コーディネーターは、いい考えであると認め、この提案を実施するかどうかは、今後の進展状況によると述べた。レバノンは、メンバーに合理的配慮については、バンコク案が定義のセクションでこの概念を論じているので、定義に関する12回目のセッションで再び採り上げることを提案した。コーディネーターは、これもよい提案であるとし、この問題を定義に関する条項で扱うことを提案した。カナダは、同国主催による小グループ会議は議論をほとんど終えたので、月曜日、クイン氏のグループは現在カナダのグループが利用している午前9時の時間帯に集まってはどうかと提案した。コーディネーターは、カナダの提案に従うよう求め、もしそれが不可能な場合は、レバノンの提案を採用するよう告げた。

南アフリカ人権委員会は、パラグラフ6が限定的すぎるとし、この文章が、固定観念や先入観と闘う適切な手段を適用できる分野の数を制限してしまっているという理由から、もっと幅広い表現を求めた。コーディネーターは、この問題に関してメキシコ及びアイルランドと協議すべきであると返答した。

ランドマイン・サバイバーズ・ネットワーク(LSN)は、社会的弱者のグループについていつ議論するのか尋ねた。これは、以前メキシコが採り上げた問題である。コーディネーターは、この点については脚注を付ける方法で対処できると述べ、非差別だけでなく、平等の問題をこの文書に盛り込むかどうかの問題に戻るよう告げた。

インドは、パラグラフ3に関するカナダの見解を支持し、パラグラフ4に「不均衡な負担」という言葉を入れることは発展途上国にとって意義があると述べた。同代表は、パラグラフ5のセミコロンの後のフレーズは不必要であり、パラグラフ6に「教えること」という言葉を入れるのはくどいと指摘した。同代表は、「コミュニティーを教育すること」をパラグラフ6から削除することを望んだ。コーディネーターは、パラグラフ6についてはアイルランド及びメキシコと協議するべきであると答えた。

障害者インターナショナル(DPI)は、合理的配慮に関するRIの意見を支持した。

韓国(ROK)は、配慮を伝統的な考え方だとし、この専門用語を未来の新しい概念として「適切な改善」に変更するようメンバーに呼びかけた。

スロベニアは、パラグラフ3が差別に対する正当化の理由をあまりに多く与えすぎているとの憂慮を示し、これを削除するか、或いは間接的な差別に明確に結びつけるべきであるというドイツの意見に賛同した。

ベネズエラは、合理的配慮が意味することを明確にするよう求めた。コーディネーターは、これはパラグラフ4の二番目の部分と関連づけて解釈すべきだと述べた。基本的には、ある特定の結果を確実にもたらすためにしなければならないことで、その措置が適切である場合を意味する。コーディネーターはジェラルド・クイン氏が召集する小グループ会議でこれが更に分かりやすくされることを期待すると述べた。

タイは、合理的配慮に関わるGAの決議を思い出すよう呼びかけ、分かりやすくするためにこの言葉をアクセシビリティー及びユニバーサル・デザインに関連づけて使用することを提案した。同代表は、メンバーに、バンコクの議論の際、「適切な改善」という言葉の方を好む人もいると述べたことを思い出させ、合理的配慮という言葉がアメリカ障害者法(ADA)で多用されていることに注目するよう促した。同代表は、特にADAに関連した、この用語に関する知識がある人々からの意見を積極的に認める姿勢を示し、パラグラフ3に関する同代表の発言を支持する人がほとんどいないことは「興味深い」と述べた。

コーディネーターは、アメリカ合衆国が会議のオブザーバーとして参加しており、この用語に関する経験があると述べた。アメリカ合衆国代表は、この用語はADA及びリハビリテーション法の両方で、障害者の雇用に関して使われていると語った。そして、この用語が(障害者が職場で働けるようにするために)特に雇用の概念において適用されていることを指摘した。ただし、大学など他の状況でも、違う言葉を使ってはいるが、やはりこれと同じ原則がとられているとのことであった。合衆国代表は、プログラムの根本的な変更はできないことや零細企業が負担するコストの問題など、合理的配慮に関しては限界があることを繰り返した。同代表は、この件に関するクイン氏の会議に喜んで協力すると述べた。コーディネーターは、代表者達の意見が役に立つので小グループ会議に参加するよう求め、タイには合衆国とともにこの問題に関して話し合い、タイが抱える問題点を具体化するよう提案した。タイは、もっと分かりやすく言ってほしいと述べ、コーディネーターは、タイが合理的配慮に関してアメリカからの情報をもっと必要としていると思われると告げた。タイは、この問題に関して、同国は全体的にアメリカの支援を求めており、ある特定の問題についてだけ支援を求めているのではないと答えた。

コロンビアは、オンライン協議からの合理的配慮の定義を読み上げ、この用語は環境の改善にとどまらず、全ての障害者に対してアクセスを容易にするということを目指していると指摘した。

アイルランドは、合理的配慮は、アメリカ合衆国の法律に加え、EUの雇用に関連した法律にも見られるとコメントし、RI及びドイツの代表がこの用語の専門家であると指摘した。アイルランド代表は、EUでは、だれもがこの用語の意味を知っているので、この用語を文書中で定義すべきかどうかに関し議論があったと述べた。しかし、結局定義は文中に盛り込まれたと同代表は語り、EUからの代表者達は、EUの法律に基づき、この概念の範囲に関する文言の草案を作成すると述べた。

コーディネーターは、これは容易な作業ではないと意見し、また、もしこの問題が小グループ会議で解決できないなら、AHCにゆだねることができると告げた。

南アフリカは、この文書は平等の問題に関して、条文の表題で言及しているのにも関わらず、詳しく述べることはされていないと指摘した。同代表は、この概念は条約の根本的な部分となるべきで、バンコク案で述べられている原則が、この概念を分かりやすく詳述していると考えられるという意見を述べた。更に同代表は、パラグラフ4の合理的配慮の定義は、南アフリカで使われている定義と似ているが、パラグラフ4の定義の方が、生活の全ての局面をより広く網羅していると指摘した。

シエラ・レオーネは、この時点で、この条文はAHCにゆだねるべきであると述べ、議論の対象となっているこれらの問題を示す手段として、基準原則の7、特にその3(a)に注目するよう呼びかけた。

WNUSPは、記載されている合理的配慮の定義は、障害者が理解するには難しく、混乱を招くということと、この言葉が何に適用されるのかを障害者が知ることが重要であるということを述べた。そして、障害者にとって何が適切かを、一体誰が決めるのかという疑問を投げかけ、これに対処するに当たって、積極的なアプローチを取ることと、そのことを条約に基本概念として盛り込むことを勧めた。

韓国は、合理的配慮に関して、「調整或いは改善」を追加するよう提案し、メンバーにもっと大きな問題に目を向けるよう勧めた。

プライバシー及び家庭を尊重する権利、家族の保護、及び婚姻の権利

コーディネーターはWGに、議長案の第16条が議論のたたき台となるが、この問題に関してはそれ以外にも参考となる文書があるということも想起させた。

インクルージョン・インターナショナル(II)は、議長案の第15条について、午前セッションで機会がなかったので、この場を借りて論じた。IIは、メンバーに、知的障害者の意見の自由がしばしば無視されていることと、施設では多くの知的障害者が暮らしているが、市民としてではなく患者として扱われているということに注目するよう呼びかけた。IIは、障害の種類に関わらず、またどこで暮らしているかに関わらず、この権利を保証することの重要性を指摘した。同代表は第16条に関しては、グループホームや施設ではプライバシーがないことを示し、代表者達に、この条文の草案作成に役立つと思われる、ヨーロッパ人権条約の第8条を参考にするよう求めた。そして、後見に関する法律が障害者から法的行為能力を奪っているとしてパラグラフ3を批判し、特に発展途上国において知的障害者が「法的支援」を受けられない状況を考慮し、この言葉をパラグラフの初めに入れるよう提案した。

南アフリカは、「プライバシーの権利」は、できれば第13条及び14条と結びつけた別の条文にするべきであると提案した。第16条は家庭のことだけに焦点をあてているからである。同代表は、議長案の「特別な権利」のセクションを、条項によって四つのフォーカス・グループ、すなわち、主題、一般原理、市民的及び政治的権利、そして経済的及び社会的権利に構成し直すことを提案した。主題のグループには、現在の文書の第3条、9条、10条及び18条が含まれる。一般原理のグループには、第6条、8条、15条の一部(アクセスに関する部分)、11条、21条、22条c、28条及び29条が入る。市民的及び政治的権利のグループには、第12条、13条14条、15条(表現の自由に関する部分)、16条(プライバシーの権利に関する部分)、17条及び19条が含まれ、経済的及び社会的権利のグループには、第20条、23条、24条、25条、26条、27条、28条及び16条(家庭、家族の保護、婚姻の権利の部分)が含まれる。同代表は、この構成により、文書の複雑性を解消することができると述べた。

コーディネーターは、議長に新な構成のコピーを渡せば役に立つであろうと述べ、自分は単に議長の草案文書を様々な問題に関する議論のたたき台として使っているだけで、構成の点に関し、草案の作成に先入観を与えるつもりは無いと述べた。そして構成の問題は、WGが各条文の内容を決定すればすぐに検討されることになると語った。

米州障害協会(IAID)は、第16条で障害がある女性の生殖に関する権利に言及すべきであると指摘した。これは、多くの障害がある女性が子どもを持たないように説得されたり、告げられたりしているからである。IIDは、聴覚障害者や視覚障害者にときどきこのようなケースが見られると述べ、これは根絶されるべきであるとコメントした。

アイルランドは、条文の内容が表題に記されている全ての要素を適切に詳述していないと述べた。そして条文の内容を拡大するか、プライバシーについては婚姻、家族及び家族関係に関する条文とは別の条文で扱うよう提案した。同代表は、ICCPRに基づいたEU案の第7条(e)、(f)に言及し、婚姻の権利はこの法律で保証されており、それは他の権利の一部ではなく、それ自体独立した権利であると指摘した。そして更にEU案の第7条(f)を綿密に検討して仕上げることを求め、CEDAWの第16条で取られているアプローチが、基準原則9の文言とともに役に立つと示した。同代表は、パラグラフ3についてIIが示した後見人法に関わる懸念に言及し、またパラグラフ4について経済的な問題を定量化することの妥当性に疑問を投げかけた。

コーディネーターはパラグラフ3について、CEDAWを考慮し、障害者が「後見人となる平等な権利」を持つと述べているものと解釈したが、「障害者の後見人」については触れなかった。同氏はアイルランドに基準原則の原則9を読むことを求めた。

アイルランドは、関連部分は、機会の拒否について述べている原則9の第二パラグラフであると指摘した。

WNUSPは、パラグラフ4について、知的障害或いは精神障害がある親を特に採り上げることは、これらのグループに関して、支援なしでは能力が無いということを暗示する/仮定する可能性があるので、不要であると述べた。

世界盲ろう連盟は、プライバシー及び家族関係に関する障害者の視点を特に採り上げ、多くの聴覚/視覚障害者が施設で暮らしており、たとえプライバシーを認められても、自分が一人きりでいるのかそうでないのかということを全く判断できない(つまり、プライバシーの感覚が分からない)と指摘した。そして、聴覚/視覚障害児達に関する問題を提起し、特に施設ではこのような子ども達は性に関わる問題を経験できず、理解できないとした。また、「我々は、なんとなくこの権利を持っているように思っている」ので、「法により、権利を持っている」という原則を認識することが重要であると述べた。

日本は、パラグラフ3を特に障害者にとって重要な内容にするため、書き直すよう提案した。そしてパラグラフ3で、障害者によっては支援がなければ後見人となることができない者もいることを明らかにするよう求めた。

DPIは、国際的な人権の枠組みでは、障害者の家族に対して権利を明確に結びつけることはしていないと指摘し、基準原則の9がこれらの問題の関わる分野に取り組んでいると述べた。またDPIは、障害者がこの権利を享受できるように人権法が強調されることが極めて重要であると語った。同代表は、自国における障害がある女性の状況と、障害がある女性はよい母親や妻になれないという社会的通念について語り、既存の人権法がこのような通念を訂正することに取り組んでいないと主張した。

ドイツは、メンバーに、言い回しに関して、基準原則の9に加えCEDAWの第16条及びICCPRの第17条を参考にするように提案したアイルランドに同意した。同代表は、基準原則9に述べられている原則は、女性に関する一般的な問題ではないので、CEDAWでは扱われていないと指摘した。そして、障害がある女性は特に性的暴力を受ける危険性が高いので、この問題(CRC第34条で扱われている)をこの条文に盛り込むよう提案した。その際、条文では女性のプライバシーの問題も採り上げるべきであると指摘した。また、パラグラフ4について、障害がある親達のニーズに関してもっと適切な表現をするよう提案した。

コーディネーターは、この条文と、強制介入を扱っている議長案の第14条との関連を指摘した。

ディスアビリティー・オーストラリア・リミテッドは、アジアの国々の家族に関する法律の差別的性質を特に採り上げ、このような国々では、ある特定のグループの養子縁組、離婚、保護監督などに関わる能力に関して、法的な差別が習慣的に行われていると述べた。そして、パラグラフ3及び4が根の深い慣例と法的差別を扱っていないことに懸念を示した。

インドは、この条文の表題にプライバシーという言葉が入っているのに、その内容では扱われていないとコメントし、女性のプライバシーに関する問題を盛り込むよう求めた。また、パラグラフ2に、「その国の政策に従って」という文言を入れることを提案した。

中国は、パラグラフ2の内容について基準原則の9に触れ、インドのパラグラフ2に関する主張に注目した。そして各国の特別な事情や政策に言及するよう求め、条文では障害者も他の人達と同様、出産する権利があるということを強調するべきであると述べ、この問題に関してコーディネーターに代替案を提供できると告げた。中国は障害者に対するドメスティック・バイオレンスが広まっていることを指摘し、このような行為は犯罪として扱われるべきだと提案した。そしてこの問題についてもコーディネーターに文書を提供できると述べた。

コーディネーターは、カナダとモロッコに次のセッションで第16条について意見を述べるよう告げた。


ディスアビリティ・ネゴシエーションズ・デイリー・サマリーは、ランドマイン・サバイバーズ・ネットワークが発行する。このネットワークは、地雷の被害を受けた6つの途上国において手足を失った者の支援網を持った、米国に拠点を置く国際組織である。このサマリーでは障害者の人権に関する特別委員会の政府間の議事録を扱っている。作業部会の会合のリポーターは、エリザベス・キッサム、ジェニファー・ペリー、およびザハビア・アダマリー(編者)である。このサマリーは、翌日の正午までにwww.worldenable.netに掲載される。日本語の翻訳(日本障害者リハビリテーション協会(dinf-j@dinf.ne.jp.))もある。作業部会の会合のサマリーの翻訳および配布に関心のある方、連絡先の情報の配信を希望する方、コメント/質問がある方は、Zahabia@landminesurvivors.orgにメールを頂きたい。

翻訳:(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター