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国連障害者の権利条約作業部会

特別委員会への作業部会の報告

原文英語 未編集版

国際連合

項目 内容
配布年月日 2004年1月22日
備考 国連文書番号A/AC.265/2004/WG/

目次

I. 序

  1. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する特別委員会は、その決定(2003年6月27日採択)により、「国連加盟国及びオブザーバーが特別委員会で条約草案について交渉するための基礎となる条約文案を作成しかつ提示することを目的とする作業部会」を設置した。また、特別委員会は、「作業部会は、会期間に1回、ニューヨークの国連本部で2004年初頭に10日間の作業を行う会期をもつものとし、かつ、条約文案に関する作業成果を第3回特別委員会に提示する」ことを決定した。この決定は、国連総会決議58/246(2003年12月23日)により支持された。
  2. 作業部会は、次の政府、非政府機関及び国内人権機関の代表で構成する。
  • カメルーン、カナダ、中国、コロンビア、コモロ、エクアドル、ドイツ、インド、アイルランド、ジャマイカ、日本、レバノン、マリ、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、フィリピン、韓国、ロシア連邦、セルビア・モンテネグロ、シエラレオネ、スロベニア、南アフリカ、スウェーデン、タイ、ウガンダ、ベネズエラ。 
  • ディスアビリティ・オーストラリア・リミティッド、障害者インターナショナル、障害者インターナショナル(アフリカ)、欧州障害フォーラム、国際育成会連盟、米州障害機関、ランドマイン・サバイバーズ・ネットワーク、国際リハビリテーション協会、世界盲人連合、世界盲ろう者協会、世界ろう連盟、世界精神医療ユーザー・サバイバーズネットワーク。 
  • 南アフリカ人権委員会(国内人権機関を代表)

II. 作業事項

A. 開会と期間
  1. 作業部会は、2004年1月5-16日にニューヨークの国連本部で開催された。この会期中に作業部会は、20の公式会合と多くの非公式協議をもった。
  2. 作業部会は、特別委員会議長ルイス・ガレゴス・チリボガ(エクアドル)により開会された。
  3. 作業部会は、その第1回会合(1月5日)において、特別委員会議長が協議の上でドン・マッケィ(ニュージーランド)を作業部会調整者に指名したことを支持した。
B. 議題の採択
  1. 作業部会は、その第1回会合(1月5日)において、次の議題(A/AC.265/2004/WG/CRP.1/Rev.1)を採択した。
  1. 会合の開会
  2. 議題の採択
  3. 作業の予定
  4. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約文案の作成
  5. 作業部会の結論
  6. 特別委員会への作業部会の報告の採択
  7. その他
C. 討議資料
  1. 作業部会は、その作業に当たり、次を討議資料とした。
  1. 条約の要素に関する諸提案と個人による諸提案とをまとめた提案集(2003年12月31日まで)を盛り込んだCDロム
  2. 条約の要素に関する諸提案をまとめた提案集(2003年12月19日)の印刷物

 次の国、機関及び個人が提案を提出した。

特別委員会議長
  • 議長条約文案(I-IV):障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約の要素(議長草案:2003年12月15日付)
  • 議長条約文案(V):実施に関する要素案:条約の適用、実施及び監視(2003年12月24日付)
  • 議長条約文案:前文(2004年1月7日付)
政府
  • オーストラリア:障害者の権利に関する条約草案へのオーストラリアのアプローチ(2003年12月17日付)
  • 中国:障害者の権利に関する条約:中国提案の条約文案(2003年12月11日付)
  • コスタリカ:リハビリテーションと特殊教育に関する国家評議会―障害者の人権に関する条約の起草において含まれるべきである諸側面(2003年11月20日付)
  • 欧州連合:障害者のすべての人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有に関する国際条約文についての欧州連合提案(2003年12月18日付);第2回特別委員会に提出された「国際条約の要素」(A/AC.265/2003/CRP.13/Add.2)。
  • インド:障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約―インドの条約草案(2003年12月31日付)
  • 日本:障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する日本政府のポジションペーパー(2003年12月24日付)
  • メキシコ:障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な国際条約:第1回特別委員会にメキシコが提出したワーキング・ペーパー(A/AC.265/WP.1)
  • ニュージーランド:障害者の権利に関する条約についてのニュージーランド見解(2003年11月28日付)
  • 米国:米国における障害者の権利に関する法的措置(2003年12月15日付)
  • ベネズエラ:障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約:第2回特別委員会にベネズエラ政府が提出した条約草案(A/AC.265/2003/WP.1)
国内人権機関
  • アフリカ地域ワークショップ:障害者の権利の促進に関する地域ワークショップ:新たな国連条約に向けて(カンパラ(ウガンダ)、2003年6月5-6日)
  • 英連邦及びアジア太平洋地域国際ワークショップ:英連邦及びアジア太平洋地域の国内人権機関のための国際ワークショップ(ニューデリー(インド)、2003年5月26-29日)
政府間機構/地域会合
  • 障害に関するアフリカ地域協議会議(ARCC)、ヨハネスブルク(南アフリカ)、2003年5月1-6日
  • バンコク条約草案:障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に向けた地域ワークショップ(バンコク(タイ)、2003年10月14-17日)
  • バンコク提案:障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する国際条約に関する専門家会合及びセミナー(バンコク(タイ)、2003年6月2-4日)
  • キト・セミナー:障害者の権利と開発とに係る規範及び基準に関するアメリカ地域セミナー及びワークショップ(キト(エクアドル)、2003年4月9-11日)
国連システム
  • 国際労働機関:障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する諸提案を検討するための国連特別委員会により設置された作業部会への提案(2003年12月18日付)
  • 国連児童基金:障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する国際条約に関する作業部会への提案(2004年1月2日付)
非政府機関(NGO)
  • 障害者インターナショナル:障害者の国際人権条約に関するDPIポジションペーパー(2003年2月25日付)
  • 障害者インターナショナル日本会議:条約に関するDPI日本会議ポジションペーパー(2003年6月19日付)
  • 欧州障害フォーラム:障害者の権利の保護及び促進に関する国連条約に関する諸提案を検討するための第2回特別委員会へのEDF提案(ブラッセル、2003年5月付)
  • 国際育成会連盟:障害者の権利の保護に関する条約に関する国際障害同盟会合に向けた所見、提案及び勧告(2003年2月付)、障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する包括的かつ総合的な条約の作成に関する所見(2003年12月30日付)
  • 国際障害同盟:国連障害者条約に向けて:第2回特別委員会への声明(2003年3月2日付)
  • ライツ・イントゥ・アクション―国際青年障害者ネットワーク:障害者の権利及び尊厳の促進及び保護に関する国際条約の提案に関するポジションステートメント(2003年12月16日付)
  • 世界盲人連合:国連障害者の権利に関する条約のためのマニフェスト(2003年2月付)
  • 世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP):2003年の国連特別委員会への提案と、2003年12月30日及び2004年1月5日の提案
その他/個人
  • オンライン協議(DESA主催):メキシコの提案した条約文案に対する諸見解
  • 東欧における障害者の、障害者のための、障害者による個人、団体及び機関連盟(ウクライナ、ロシア、ベラルーシ、モルドバ、ポーランド):2003年12月13日付(東欧連合)
  • 作業部会は、次の文書も討議資料とした。
    1. 議題(A/AC.265/2004/WG/CRP.1/Rev.1)
    2. 作業の予定(A/AC.265/2004/WG/CRP.2)
    3. 作業部会調整者の提案文(A/AC.265/2004/WG/CRP.3*, and Add.1 to 25)
    4. 報告案の付属書(A/AC.265/2004/WG/CRP.4 and Add.1, Add.2, Add.4 and Add.5)
    5. 作業部会の報告案(A/AC.265/2004/WG/CRP.5)

III. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約文案の作成

  • 作業部会は、特別委員会の決定に基づく同部会のマンデートが、作業部会の会合前に提出されたすべての提案を考慮して、特別委員会における交渉の基礎となる条約文案を作成し及び提示することであることに留意した。作業部会は、最終文を交渉する権限を持たず、起草委員会としての任務を課せられていない。それゆえ、作業部会は、特別委員会の更なる作業の基礎を提供するために、あり得るアプローチを同定して選択肢(提案集にある選択肢を含む。)を絞り込むことに同部会の任務があると考えた。
  • したがって、作業部会が作成しかつ提示した条約文案は、この趣旨を達成するための討議の成果を表すものであって、作業部会の特定の代表の立場を表すものではない。作業部会の諸代表は、特別委員会において多くの論点を討議することを望んでいることを明らかにした。

IV. 作業部会の結論

  • 作業部会は、その第20回会合(1月16日)において、本報告セクションIIIで述べた理解に基づいて、特別委員会の交渉の基礎として付属書を同委員会に提示すること並びに「特別委員会で検討されるべきである国際協力の論点に関する討議要約」を付録として付けることを決定した。

V. 特別委員会への作業部会の報告の採択

  • 作業部会は、その第20回会合(1月16日)において、障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約に関する第3回特別委員会への報告をコンセンサスで採択した。

    付属書

    1. 障害者の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約の条文草案(A/AC.265/2004WG/CRP.4 and Add.1, Add.2, Add.4 and Add.5)
    2. 特別委員会で検討されるべきである国際協力の論点に関する討議要約

付属書I

作業部会で採択された最終文書(CRP.4, plus CRP.4/Add.1, Add.2, Add.4 and Add.5)

障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約草案1

この条約の締約国は、

  • a) 世界における自由、平等及び平和の基礎をなすものとして、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認める国際連合憲章において宣明された原則を想起し、
  • b) 国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、すべての人はいかなる区別もなしに同宣言及び同規約に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明し及び合意したことを認め、
  • c) すべての人権及び基本的自由の普遍性、不可分性及び相互依存性と、障害のある人に対し、すべての人権及び基本的自由の差別のない完全な享有を保障する必要性とを改めて確認し、
  • d) 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約、子どもの権利に関する条約並びにすべての移住労働者及びその家族構成員の権利保護に関する国際条約2 を改めて確認し、
  • e) 障害のある人の機会均等化に関する基準規則に含まれる原則及び政策指針が、障害のある人の機会を更に平等化するための国内的、地域的及び国際的な平面における政策、立案、計画及び行動の促進、形成及び評価に影響を与えるに当たって重要であることを認め、
  • f) 障害を理由とするいかなる人に対する差別も人間の固有の尊厳を侵害するものであることを認め、
  • g) 障害のある人の多様性を認め、
  • h) 政府、機関及び関係機構による努力及び行動にもかかわらず、世界のすべての地域において、社会の平等な構成員としての参加を妨げる障壁及び人権侵害に障害のある人が依然として直面していることを憂慮し、
  • i) 障害のある人の人権及び基本的自由の完全な享有を促進するための国際協力3 が重要であることを強調4し 、
  • j) 地域社会の全般的な福利及び多様性への障害のある人の既存の及び潜在的な貢献を強調し、また、障害のある人による人権及び基本的自由の享有並びに完全な参加が、社会の人間的、社会的及び経済的な発展並びに貧困の根絶に多大な前進をもたらすことを強調し、
  • k) 障害のある人にとって、その個人の自律及び自立(自己の選択を行う自由を含む。)が重要であることを認め、
  • l) 障害のある人が、政策及び計画、特に障害のある人に直接的に関連する政策及び計画に関する意思決定過程に積極的に関与する機会を有するべきであることを考慮し、
  • m) 重度障害若しくは重複障害のある人又は人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生若しくは他の地位を理由とする複合的若しくは加重的な形態の差別を受けている障害のある人の困難な状況を憂慮し5
  • n) 障害のある人による人権及び基本的自由の完全な享有を促進するためのあらゆる努力にジェンダーの視点を組み込む必要があることを強調し、
  • o) 障害のある人の状況に対する貧困の負の影響を軽減する必要があることに留意し6
  • p) 武力紛争の状況が障害のある人の人権に特に甚大な被害をもたらすことを憂慮し、
  • q) 障害のある人がすべての人権及び基本的自由を完全に享有することができるようにするに当たり、物理的、社会的及び経済的環境のアクセシビリティ並びに情報及びコミュニケーション(情報通信技術を含む。)のアクセシビリティが重要であることを認め、
  • r) 障害のある人の人権を特に取り扱う条約が、途上国及び先進国の双方において、障害のある人の著しく社会的に不利な立場を是正することに意義深く貢献し、かつ、市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的分野への障害のある人の参加を促進することを確信して、 ここに次のとおり協定する。

条文草案第1条

〔目的〕

この条約は、障害のある人がすべての人権及び基本的自由を完全に、効果的にかつ平等に享有することを確保することを目的7 とする8

条文草案第2条

〔一般的原則〕

この条約の基本的な原則は、次のものとする。

  • (a) 尊厳、個人の自律(自己の選択を行う自由を含む。)及び人の自立
  • (b) 非差別
  • (c) すべての生活面への平等な市民及び参加者としての障害のある人の完全なインクルージョン
  • (d) 差異の尊重と、人間の多様性及び人間性の一部としての障害の受容
  • (e) 機会の平等

条文草案第3条

〔定義 9

「アクセシビリティ」10
「コミュニケーション」は、口及び耳によるコミュニケーション、手話によるコミュニケーション、触覚によるコミュニケーション、点字、拡大文字、音声装置、利用可能なマルチメディア、人による朗読その他の補完的又は代替的なコミュニケーション様式(利用可能な情報通信技術を含む。)を含む。11
「障害(ディスアビリティ)」12
「障害のある人」13
「障害を理由とする差別」14
「言語」は、口及び耳による言語並びに手話を含む。15
「合理的配慮」16
「ユニバーサルデザイン」及び「インクルーシブデザイン」17

条文草案第4条

〔一般的義務18/19

1. 締約国は、その管轄の下にある20すべての個人に対し、障害を理由とするいかなる種類の差別もなしに、すべての人権及び基本的自由の完全な実現を確保することを約束する。このため、締約国は次のことを約束する。

  • (a) この条約を実施するための立法上、行政上その他の措置をとること並びにこの条約に合致しないいかなる法律及び規則も改正し、廃止し又は無効にし、かつ、この条約に合致しない慣習又は慣行を抑制すること。
  • (b) 平等の権利及び障害を理由とする非差別の権利が自国の憲法その他の適当な法令に組み入れられていない場合にはこれを定めること並びにこれらの権利の実際的な実現を法律その他の適当な手段を通じて確保すること。
  • (c) すべての経済的及び社会的な開発政策及び開発計画の主流に障害に係る事項を据えること。
  • (d) この条約に合致しないいかなる活動又は行為も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの条約に従い行動することを確保すること。
  • (e) あらゆる人、機関又は民間企業による障害を理由とする差別を撤廃するため、すべての適当な措置をとること。
  • (f) ユニバーサルデザインに沿った商品、サービス、備品及び設備の開発、利用可能性及び使用を促進する21 こと。このような商品、サービス、備品及び設備は、障害のある人に特有なニーズを満たすため、できる限り最低限の調整及び最小限の費用を要するものとしなければならない22

2. この条約を実施するための政策及び法令を発展させ及び実施するに当たり、締約国は、障害のある人及びその団体と緊密に協議するものとし、また、障害のある人及びその団体を積極的に関与させる。

条文草案第5条

〔障害のある人に対する肯定的態度の促進〕

1. 締約国は、次のために即時的かつ効果的な措置をとることを約束する。

  • (a) 障害及び障害のある人についての社会全体の意識向上
  • (b) 障害のある人に対する固定観念及び偏見との闘い
  • (c) この条約の全般的な目的と合致するように、他のすべての者と同一の権利及び自由を共有する、社会に有用なかつ貢献できる構成員としての障害のある人に関するイメージを促進すること。
  • 2. これらの措置は、とりわけ次のことを含む。
  • (a) 障害のある人の権利への理解を育むために立案された効果的な公衆の啓発キャンペーンを開始し及び維持すること。
  • (b) 障害のある人の権利を尊重する姿勢を育成するための認識(幼年期及び教育制度のあらゆる段階におけるすべての子どもの認識を含む。)を促進すること。
  • (c) すべてのメディアが、この条約の目的に合致する障害のある人に関するイメージを伝えることを奨励すること。
  • (d) この条文に含まれる義務を実施するため、いかなる措置がとられる場合にも、障害のある人及びそれを代表する団体と協力して作業すること。

条文草案第6条

〔統計及びデータ収集23

障害のある人の権利を保護し及び促進するための適当な政策を形成し及び実施するため、締約国は、障害に関する統計及び情報並びに障害のある人による人権の効果的な享有に関する統計及び情報を収集し、分析し及び体系化することを奨励する。この情報を収集し及び管理する過程は、

  • (a) 障害のある人のプライバシーの権利、尊厳及び権利を尊重しなければならず、かつ、障害のある人から収集する情報はその人の任意に基づかなければならない。
  • (b) 個人を同定することなく統計上の形態のみに留めなければならず、かつ、権限のない情報利用及び情報の悪用を防止するための安全が保障されなければならない。
  • (c) 障害のある人、障害のある人を代表する団体その他のすべての利害関係者と協働して、データの収集が立案され及び実施されることを確保しなければならない。
  • (d) 情報を収集する目的に従って構成要素に分けられなければならず、かつ、年齢、性及び障害の種別を含まなければならない。
  • (e) 公的サービス、リハビリテーション計画、教育、住居及び雇用に関する障害のある人の利用についての詳細な情報を含まなければならない。
  • (f) 統計及びデータの収集に当たり、匿名性及び秘密性の尊重についての確立された倫理を固守しなければならない。

条文草案第7条

〔平等及び非差別〕

1. 締約国は、すべての人が法律の前に平等であり、かつ、いかなる差別もなしに法律の平等な保護を受ける権利を有することを認める。締約国は、障害を理由とするいかなる差別も禁止するものとし、また、差別に対する平等のかつ効果的な保護を障害のあるすべての人に保障する。また、締約国は、いかなる差別も禁止するものとし、また、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生、障害の原因若しくは種別、年齢又は他のあらゆる地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護を障害のあるすべての人に保障する。

2.

  • (a) 差別とは、あらゆる区別、排除又は制限であって、障害のある人が平等な立場ですべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう。
  • (b) 差別は、あらゆる形態の差別(直接的24、間接的 及び体系的な差別を含む。)を含むものとし、また、現実にある障害又は認識された障害25 を理由とする差別を含むものとする。

3. 差別は、正当な目的(その目的を達成する手段は合理的かつ必要なものである。)により、締約国が客観的かつ明白に十分な根拠を示す規定、基準又は慣行を含まない26

4. 締約国は、平等についての障害のある人の権利を確保するため、障害のある人がすべての人権及び基本的自由を平等な立場で享有し及び行使することを保障するための必要かつ適当な変更及び調整と定義される合理的配慮27を提供するためのすべての適当な措置(立法措置を含む。)をとることを約束する。ただし、このような措置が不釣合いな負担を課す場合には、この限りでない。

5. 障害のある人の事実上の平等を促進することを目的とする特別措置28 は、この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果として、いかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなってはならず、これらの措置は、機会及び取扱いの平等の目的が達成された時に廃止されなければならない29

条文草案第8条

〔生命に対する権利30

締約国は、生命に対する障害のあるすべての人の固有の権利を改めて確認し、かつ、障害のある人が当該権利を効果的に享受することを確保するためのすべての必要な措置をとる31

条文草案第9条

〔法律の前における人としての平等の承認〕

締約国は、

  • (a) 障害のある人を法律の前に他のすべての者と平等な権利を有する個人として認める。
  • (b) 障害のある人が他の者との平等を基礎として完全な法的能力(財政事項を含む。)を有することを是認する32
  • (c) 障害のある人が完全な法的能力を行使するための支援が必要な場合には、次のことを確保する。
  • (i) この支援は、その者が必要とする支援の程度に比例し、その者の状況に見合い、かつ、その者の法的能力、権利及び自由に干渉しないこと。
  • (ii) 関連のある決定は、法律で確立された手続及び関連のある法的保護の適用に従ってのみなされること33
  • (d) 自己の権利を主張し、情報を理解し及びコミュニケーションをとることに困難を経験する障害のある人が、自己に提供される情報を理解するための支援、自己決定、選択及び選好を表明するための支援、拘束力のある合意又は契約を結ぶための支援、文書に署名するための支援並びに証人として立ち会うための支援を利用することができることを確保する34
  • (e) 財産の所有又は相続、自己の財政事項の管理並びに銀行融資、抵当貸付及び他の形態の財政的信用供与の平等な利用についての障害のある人の平等な権利を確保するため、適当かつ効果的なすべての措置をとる。
  • (f) 障害のある人がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。

条文草案第10条

〔身体の自由及び安全〕

1. 締約国は、次のことを確保する。

  • (a) 障害のある人が、障害を理由とする差別なしに、身体の自由及び安全についての権利を享有すること。
  • (b) 障害のある人がその自由 35を違法に36又は恣意的に奪われないこと並びにあらゆる自由が法律で定めることなしに奪われず、かつ、いかなる場合にも障害を理由として奪われないこと37

2. 締約国は、障害のある人が自由を奪われた場合には、次のことを確保する。

  • (a) 人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、及び障害に基づくニーズを考慮して、障害のある人を取り扱うこと。
  • (b) 自由の剥奪の理由に関する十分な情報を利用可能な形態で障害のある人に提供すること。
  • (c) 次のことのための法的その他の適当な支援の速やかな利用を障害のある人に提供すること。
  • (i) 自由の剥奪の合法性を裁判所その他の権限のある独立のかつ公平な機関において争うこと(この場合には、その者は、いかなるこのような訴えについても、速やかな決定を受けるものとする。)。
  • (ii) 自由の剥奪について定期的な審査を求めること。
  • (d) 違法に自由が奪われ又はこの条約に違反して障害に基づいて自由が奪われた場合には、障害のある人が賠償を受けること。

条文草案第11条

〔拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由〕

  • 1. 締約国は、障害のある人が、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けることを防止するため、すべての効果的な立法上、行政上、司法上、教育上その他の措置をとる。
  • 2. 特に、締約国は、障害のある人が十分な説明に基づくその自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けることを禁止し、かつ、当該実験から障害のある人を保護するものとし、また、いかなる実際上又は認知上の機能障害をも矯正し、改善し又は緩和することを目的とする強制的な介入及び施設収容化から障害のある人を保護する38

条文草案第12条

〔暴力及び虐待からの自由〕

  1. 締約国は、障害のある人が、住居の内外において、暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的搾取及び性的虐待を含む。)の危険に一層大きくさらされていることを認める。したがって、締約国は、住居の内外におけるあらゆる形態の暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的搾取及び性的虐待を含む。)から障害のある人を保護するため、すべての適当な立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置をとる。
  2. このような措置は、いかなる実際上又は認知上の機能障害をも矯正し、改善し又は緩和することを目的とする強制的な介入及び施設収容化並びに拉致を禁止し、かつ、これらから障害のある人を保護しなければならない。
  3. また、締約国は、とりわけ、障害のある人及びその家族に対する支援(情報の提供を含む。)を確保することを通じて、暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的搾取及び性的虐待を含む。)を防止するためのすべての適当な措置をとる。
  4. 締約国は、暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的搾取及び性的虐待を含む。)を防止するため、障害のある人を他の者から分離して収容する官民双方のすべての設備及び計画が効果的に監視されることを確保する。
  5. 締約国は、いかなる形態の暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的搾取及び性的虐待を含む。)であっても、障害のある人がその被害者である場合には、その者の身体的及び心理的な回復並びに社会的再統合を促進するためのすべての適当な措置39をとる。
  6. 締約国は、暴力及び虐待の事件の発見、報告、付託、調査、処置及び事後措置を確保するものとし、また、保護サービスの提供及び適当な場合には司法の関与を確保する。

条文草案第13条

〔表現及び意見の自由と、情報の利用〕

締約国は、点字、手話40及び障害のある人が選択した他のコミュニケーション様式41を通じて、障害のある人が表現及び意見の自由を行使することができることを確保するためのすべての適当な措置をとる。また、締約国は、障害のある人が、他の人と平等な立場で、情報を求め、受け及び伝えるためのすべての適当な措置をとる。この措置は次のことを含む。

  • (a) 多様な種別の障害を考慮して、障害のある人に対し、その要請に応じ、適時に、追加の費用を伴わず、かつ、その選択した利用可能な形態42及び技術を用いて、公共の情報を提供すること。
  • (b) 障害のある人が代替的なコミュニケーション様式を公の対話において使用することを是認すること。
  • (c) 代替的及び拡大的なコミュニケーション様式を使用することができるように障害のある人を教育すること。
  • (d) 障害のある人に適した新たな技術(情報通信技術及び支援技術を含む。)の研究、開発及び生産に着手し及びそれを促進すること。
  • (e) 障害のある人による情報の利用を確保するための他の適当な形態の援助及び支援を促進すること43
  • (f) 公衆にサービスを提供する民間主体が、その情報及びサービスを障害のある人にとって利用可能かつ使用可能な形態で提供することを奨励する44こと。
  • (g) マスメディアが、そのサービスを障害のある人にとって利用可能なものにすることを奨励すること。

条文草案第14条

〔プライバシー、住居及び家族の尊重〕

1. 障害のある人(施設内で生活する障害のある人を含む。)は、そのプライバシーに恣意的又は違法に干渉されないものとし、また、このような干渉については法律の保護を受ける権利を有する。この条約の締約国は、住居、家族、文通45及び医療記録についての障害のある人のプライバシー並びに個人的事項を決定する際の障害のある人の選択を保護するための効果的な措置をとる。

2. この条約の締約国は、婚姻及び家族関係46に係るすべての事項において、障害のある人に対する差別を撤廃するための効果的かつ適当な措置をとるものとし、特に、次のことを確保する。

  • (a) 障害のある人が、そのセクシャリティを経験し、性的その他の親密な関係を持ち、かつ、親たることを経験する平等の機会を否定されないこと。
  • (b) 婚姻をすることができる年齢の障害のあるすべての男女が、両当事者の自由のかつ完全な合意に基づいて婚姻し及び家族を形成する権利
  • (c) 障害のある人が子どもの数及び出産間隔について自由にかつ責任をもって決定する権利47 (他の者との平等を基礎とする48。)並びに障害のある人がこの権利を行使することができるために必要な情報、生殖及び家族計画に関する教育並びに手段に利用することができる権利。
  • (d) 子どもの後見、監督、管財、養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度についての障害のある人の権利。これらの権利を保障するため、締約国は、障害のある親が子どもの養育についての責任を遂行するに当たり、その者に適当な支援を与える49
  • (e) 子どもがその親から分離されないこと。ただし、権限のある当局が、司法の審査に従うことを条件として、適用可能な法律及び手続に従ってその分離が子どもの最善の利益のために必要であると決定するときは、この限りでない。子どもは、障害のある親から、その障害を直接的又は間接的な理由として分離されない50
  • (f) 障害のある人のセクシャリティ及び婚姻並びに障害のある人が親たることに対する否定的理解及び社会的偏見を変更することを目的とする認識を促進し、かつ、このことを目的とする情報を提供すること。

条文草案第15条

〔地域社会における自立した生活51及びインクルージョン〕

1. この条約の締約国は、障害のある人が自立した生活を営み、かつ、地域社会で完全に暮らすことができるための適当かつ効果的な措置をとる。この措置は次のことを含む。

  • (a) 障害のある人が、その居所及び生活形式を選択する平等な機会を有することを確保すること。
  • (b) 障害のある人が、施設への収容及び特定の生活形式を義務づけられないことを確保すること52
  • (c) 地域社会における生活及びインクルージョンを支援するために並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な居宅サービス、在宅サービスその他の地域社会支援サービス(人的支援を含む。)を障害のある人が利用することができることを確保すること53
  • (d) 公衆向けの地域社会サービスが、平等を基礎として障害のある人に利用可能であり、かつ、そのニーズに適合することを確保すること。
  • (e) 障害のある人が、利用可能な支援サービスに関する情報を利用することができることを確保すること。

条文草案第16条

〔障害のある子ども54

1. 締約国は、その管轄の下にある障害のある子どもが、障害に基づくいかなる差別もなしに、他の子どもと同一の権利及び基本的自由を享有することを確保することを約束する。

2. 締約国は、障害のある子どもの尊厳を確保し、その自立及び自律を促進し、かつ、その社会への積極的な参加を推進する条件の下で、障害のある子どもが十分なかつ人間にふさわしい生活を享受することを確保することを約束する。

3. 締約国は、インクルーシブ・ケアについての障害のある子どもの権利を認める。この権利は次のことを含む。

  • (a) 適当かつ包括的なサービスの早期提供
  • (b) 利用可能な資源を条件として、資格のある子ども及びそのケアに責任を有する者にまで支援を及ぼすこと。この支援は、申請に基づくものであって、支援を受ける資格のある子どもの状況、及びその親又はケアを行う他の者の事情に適したものとする。

4. 障害のある子どものニーズを認めて、本条3に基づいて及ぼされる支援は、障害のある子どもの親又はそのケアを行う他の者の財源を考慮して、可能な場合はいつでも無償で提供される。また、この支援は、最大限に可能な社会的統合及び個人的発達(障害のある子どもの文化的及び精神的な発達を含む。)を実現することに資するように、障害のある子どもが教育、訓練、保健サービス、包括的な[リ]ハビリテーションサービス、雇用準備及びレクリエーション機会を効果的に利用することができ、かつ、享受することを確保するように立案されるものとする。

5. 障害のある子ども及びその親、又は障害のある子どもの法的責任を負う若しくはそのケアを行う他の者は、適当な情報、照会及びカウンセリングを提供されるものとする。このようにして利用可能とされる情報は、それらの者に対し、それらの者が十分かつインクルーシブな生活を営む潜在能力及び権利についての肯定的な見方を提供しなければならない。

条文草案第17条

〔教育55

1. 締約国は、教育についての障害のあるすべての人の権利を認める。この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、障害のある子ども56の教育は次のことを指向するものとする57

  • (a) 人間の潜在能力、尊厳の意識及び自尊の意識の完全な発達並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重の強化
  • (b) 障害のあるすべての人が自由な社会に効果的に参加することができるようにすること。
  • (c) 子どもの人格、才能並びに精神的及び身体的な能力の可能な最大限度までの発達
  • (d) とりわけ、教育を個人の特殊事情に合わせることにより、子どもの最善の利益を考慮すること。

2. この権利を実現するため、締約国は次のことを確保する。

(a) 障害のあるすべての人が、自己の属する地域社会において、インクルーシブかつ利用可能な教育を選択することができること(幼年期及び就学前の教育の利用を含む。)58
(b) 必要とされる支援(教員、学校のカウンセラー及び心理学者の専門的研修59、利用可能な履修課程、利用可能な教育の媒体及び技術、代替的及び拡大的なコミュニケーション様式、代替的な学習計画、利用可能な物理的環境、又は障害のある学生の完全な参加を確保するための他の合理的配慮を含む。)を提供すること。
(c) いかなる障害のある子どもも、その障害を理由として、無償のかつ義務的な初等教育から排除されないこと。

3. 締約国は、一般教育制度が障害のある人のニーズを十分に満たしていない場合には、特別の又は代替的な学習形態60を利用可能なものにすることを確保する。いかなる特別の又は代替的な学習形態61も、

  • (a) 一般教育制度で提供される同一の基準及び趣旨を反映しなければならない。
  • (b) 一般教育制度への障害のある子どもの参加を最大限可能な程度まで認めるようにして提供されなければならない62
  • (c) 一般制度か特別制度かを十分な説明に基づいて自由に選択することを認めなければならない。
  • (d) いかなる意味においても、障害のある学生のニーズを一般教育制度において満たすことに引き続き努める締約国の義務を制限するものであってはならない。

4. 締約国は、感覚的な障害のある子どもが、適当な場合には手話又は点字の教育を受けること及び手話又は点字で履修することを選択することができることを確保する。締約国は、手話又は点字に通じた教員の雇用を確保することにより、感覚的な障害のある学生に対する良い教育を確保するための適当な措置をとる63

5. 締約国は、障害のある人が、他の者との平等を基礎として、高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習を利用することができることを確保する。このため、締約国は障害のある人に適当な支援を与える。

条文草案第18条

〔政治的及び公的活動への参加〕

締約国は、障害のある人の政治的権利を差別なしに認め、かつ、次の措置をとる。

(a) 障害のある人が、直接に又は自由に選んだ代表を通じて(障害のある市民が投票し及び選挙される権利を含む。)並びに投票の手続及び設備が次のことになるように確保することにより、政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができる環境を積極的に促進すること。
  • (i) 適当であり、利用可能であり、かつ、理解しやすいこと。
  • (ii) 秘密投票を通じて障害のある市民が投票する権利を保護すること。
  • (iii) 必要な場合には、投票する際の支援を障害のある市民に提供することを認めること。
(b) 障害のある人が公務の遂行に効果的かつ完全に参加することができる環境を積極的に促進すること。これは次のことを含む64
  • (i) 政党、市民社会及び公の行政の活動及び運営に平等に参加すること。
  • (ii) 国内、地域及び地方において障害のある人を代表するため、障害のある人の団体を結成し及びこれに加入すること。
(c) 障害のある人及びその団体が、その他の者及び団体との平等を基礎として、あらゆる意思決定過程、特に障害のある人に関する意思決定過程に参加することを確保すること65

条文草案第19条

〔アクセシビリティ(利用可能性)〕

1. この条約の締約国は、障害のある人が自立した生活を営みかつあらゆる生活面に完全に参加するための能力を確保するため、障壁を同定しかつ撤廃するための適当な66措置をとるものとし、また、構築された67環境、輸送機関、情報及びコミュニケーション(情報通信技術を含む。)その他のサービス68のアクセシビリティを確保するための効果的な措置をとる。このような措置は次のことを含む。

  • (a) 公共69 の建物、道路その他の公共の目的に利用される設備(学校、医療設備、屋内外の設備及び公営の職場を含む。)を構築し及び改築すること。
  • (b) 公共の輸送機関の設備、コミュニケーションその他のサービス(電子サービスを含む。)を開発し及び改良すること。

2. また、この条約の締約国は、次のことのための適当な措置をとる。

  • (a) 公共の建物及び設備における点字表示を整備すること並びに読みやすくて理解しやすい表現形式を整備すること。
  • (b) 公共の建物及び設備のアクセシビリティを推進するための他の形態のライブ支援70及び仲介者71(案内者、朗読者及び手話通訳者を含む。)を提供すること。
  • (c) 公共の設備及びサービスのアクセシビリティに関する最低限の国内的な基準及び指針の実施を展開し、公表し及び監視すること。
  • (d) 公共の設備及びサービスを提供する民間主体が、障害のある人のあらゆる側面のアクセシビリティを考慮することを奨励すること。
  • (e) 入手可能な価格の技術を優先させて、新しい支援技術の調査、開発及び生産に着手し及びこれを促進すること。
  • (f) 基準、指針及び支援技術の開発に当たっては、ユニバーサルデザイン及び国際協力を促進すること。
  • (g) アクセシビリティに関する基準及び指針が開発されていく場合には、障害のある人の団体が協議を受けることを確保すること。
  • (h) すべての利害関係者に対し、障害のある人が直面するアクセシビリティに関する事項についての訓練を提供すること。

条文草案第20条

〔人のモビリティ72

この条約の締約国は、障害のある人の最大限可能な自立を伴った移動の自由を確保するための効果的な73措置をとる。この措置は次のことを含む。

  • (a) モビリティのための高品質な補助具、機器、支援技術、ライブ支援及び仲介者を障害のある人が利用することができることを推進すること(これらを入手可能な費用で利用可能なものにすることを含む。)。
  • (b) モビリティのための補助具、機器及び支援技術のためにユニバーサルデザインを促進すること並びにこれらを生産する民間主体が障害のある人のモビリティのあらゆる側面を考慮することを奨励すること。
  • (c) モビリティのための新たな補助具、機器及び支援技術の調査、開発及び生産に着手し、及びこれを促進すること。
  • (d) モビリティに関する技術の訓練を障害のある人及び障害のある人と共に働いている専門職員に提供すること。
  • (e) 障害のある人が選択する方法で及び場合に、かつ、入手可能な費用で、障害のある人の移動の自由を容易にすること。
  • (f) モビリティのための補助具、機器及び支援技術その他の形態の支援及びサービスについての情報を障害のある人に提供すること。
  • (g) 障害のある人のモビリティの問題についての意識を促進すること。

条文草案第21条

〔健康及びリハビリテーションに対する権利74

締約国は、障害のあるすべての人が、到達可能な最高水準の健康を享受する権利を、障害を理由とする差別なしに有することを認める。締約国は、障害のあるいかなる人もこの権利を奪われないことを確保するために努力するものとし、また、障害のある人が保健サービス及びリハビリテーションサービスを利用すること75を確保するためのすべての適当な措置をとる。特に、締約国は、

  • (a) 障害のある人に対し、他の市民に提供されるものと同一の範囲及び水準を持つ保健サービス及びリハビリテーションサービス(性と生殖に関する保健サービスを含む。)を提供する。
  • (b) 障害のある人が特にその障害を理由として必要とする保健サービス及びリハビリテーションサービスを提供するために努力する。
  • (c) これらの保健サービス及びリハビリテーションサービスを、自己が属する地域社会に可能なかぎり近くで提供するために努力する76
  • (d) 保健サービス及びリハビリテーションサービスが、任意に利用可能で安全な休息介助(レスパイト)場所並びにカウンセリング団体及び支援団体(障害のある人が提供する団体を含む。)の提供を含むことを確保する。
  • (e) 特に子ども及び高齢者の二次的な障害を防止しかつ当該障害から保護するための計画及びサービスを提供する77
  • (f) 研究並びに障害のある人に資する新たな知識及び技術の開発、頒布及び適用を奨励する78
  • (g) 保健及びリハビリテーションについての障害のある人のニーズを満たすために必要なすべての学問分野において、十分な数の保健職員及びリハビリテーション職員(障害のある職員を含む。)の育成を奨励するものとし、また、その者が十分な専門訓練を受けることを確保する。
  • (h) この条約の原則に沿って、すべての保健職員及びリハビリテーション職員に対し、障害についての感性を高め、かつ、障害のある人の権利、尊厳及びニーズを尊重するための適当な教育及び訓練を提供する79
  • (i) ケアの質、開示並びに障害のある人の人権、尊厳及び自律の尊重を促進する公的及び私的な保健ケアに関する倫理綱領が国内で定められることを確保するものとし、また、公的及び私的な保健ケア及びリハビリテーションの設備及び施設のサービス及び状況が十分に監視されることを確保する。
  • (j) 障害のある人への保健サービス及びリハビリテーションサービスの提供並びに保健又はリハビリテーションについての障害のある人の個人情報80の共有は、十分な説明に基づくその者の自由な同意を得た後にのみ生じること81を確保するものとし、また、保健職員及びリハビリテーション職員が障害のある人にその関連のある権利を十分に説明すること82を確保する。
  • (k) 希望に基づかない医療及び医療関連の介入及び矯正手術が障害のある人に強制されることを防止する83
  • (l) 平等を基礎として、保健及びリハビリテーションについての障害のある人の情報のプライバシーを保護する84
  • (m) 保健及びリハビリテーションに係る法令及び政策の形成における並びに保健サービス及びリハビリテーションサービスの立案、給付及び評価における障害のある人及びその団体の関与を促進する85

条文草案第22条

〔労働の権利86/87/88

締約国は、障害のある人の労働の権利を認める。この権利は、障害のある人の平等の機会及び取扱いを促進するため、障害のある人が自由に選択し又は引き受けた労働を通じて生計を立てる機会を含む。締約国は、この権利を保護するための適当な措置をとる。この措置は次のことのための措置を含む。

  • (a) 障害のあるすべての人に開かれ、インクルーシブであり、かつ、利用可能な労働市場及び労働環境を促進すること89
  • (b) 障害のある人が、技術指導計画、職業指導計画、職業斡旋サービス、支援機器、職業訓練及び職務継続訓練を効果的に利用することができるようにすること。
  • (c) 開かれた労働市場における障害のある人の雇用機会及び昇進を促進する90こと(自営の機会、自己の事業をおこす機会、並びに職業を求め、それに就き及びそれを継続する際の支援を含む。)。
  • (d) 使用者91が、積極的差別是正措置、奨励制度及び割当制度92等を通じて、障害のある人を雇用することを奨励すること。
  • (e) 職場及び労働環境における障害のある人の合理的配慮を確保すること93
  • (f) 障害のある人が開かれた労働市場における労働経験を習得することを促進すること。
  • (g) 職業リハビリテーション、職場定着及び職場復帰を促進すること。
  • (h) 雇用、職務継続、昇進、労働条件(同一価値の労働についての同一報酬及び平等の機会を含む。)及び苦情処理94に関し法律を通じて障害のある人を保護する95こと並びに障害のある人による労働の権利及び労働組合の権利の行使を確保すること。
  • (i) 障害のある人が公共部門における雇用についての平等な機会を有することを確保すること。
  • (j) 職場及び労働市場における障害のある人の貢献、技能、功績及び能力の承認96を促進すること並びに職場及び労働市場における障害のある人に対する固定観念及び偏見と闘うこと。

条文草案第23条

〔社会保障及び十分な生活水準97/98

1. 締約国は、障害のあるすべての人に対し、社会保険99を含む社会保障の権利及びこの権利を障害に基づく差別なしに享有する権利を認め、かつ、この権利の実現を保護し及び促進するための適当な行動をとる。この行動は次の措置を含む。

  • (a) 障害のある人が、障害と関連のあるニーズにとって必要なサービス、機器その他の支援を利用することを確保するための措置100
  • (b) 障害のある人、特に障害のある女性及び少女並びに障害のある高齢者がすべての社会保障計画及び貧困削減戦略を利用することを確保するための措置並びにすべてのこのような計画及び戦略において障害のある人のニーズ及び視点を考慮するための措置
  • (c) 困窮状況で生活している、重度の101及び重複した障害のある人並びにその家族102が、障害と関連のある費用(十分な研修、カウンセリング、財政援助及び休息介助(レスパイト)を含む。)を賄うための国の援助を利用することを確保するための措置(これは自己を発展する意欲を阻害するものとなってはならない。)103
  • (d) 障害のある人が、政府の住宅供給計画を利用することを確保するための措置(障害のある人に一定数割り当てられた政府の住宅供給104 を含む。)
  • (e) 障害のある人が、その所得に関して、税金を免除されることを確保するための措置105
  • (f) 障害のある人が、障害に基づく差別なしに、生命保険及び健康保険に加入することができることを確保するための措置106

2. 締約国は、障害のある人自身及びその家族のために、十分な生活水準(十分な食料、衣類、住居及び清浄な水107の入手を含む。)についての及び生活条件の不断の改善についての障害のあるすべての人の権利を認め、かつ、この権利の実現を保障し及び促進するための適当な行動をとる。

条文草案第24条

〔文化的な活動、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加108

1. 締約国は、障害のあるすべての人が文化的な生活に参加する権利を認め、かつ、次のことを確保するためのすべての適当な措置をとる。

  • (a) 障害のある人が、自己の利益のためばかりでなく、その地域社会を豊かにするために、創造的、芸術的及び知的な潜在能力を育成し及び活用する機会を有すること。
  • (b) 障害のある人が、すべての利用可能な形態(電子文書、手話及び点字を含む。)並びに音声装置及びマルチメディアの形態を通じて、文学作品その他の文化的作品の入手を享受すること。
  • (c) 障害のある人が、すべての利用可能な形態(字幕及び手話を含む。)を通じて、テレビ番組、映画、演劇その他の文化的活動の鑑賞を享受すること。
  • (d) 障害のある人が、文化的な講演又はサービスがなされる場所(例えば、劇場、美術館、映画館、図書館、飲食場等)の訪問を享受し、かつ、可能な限度において国の文化的に重要な遺跡の訪問を享受すること。

2. 締約国は、国際法の規定を尊重すると同時に、知的財産権を保護する法令が障害のある人による文化的な作品の入手機会を妨げる不合理又は差別的な障壁とならならないことを確保するため、すべての適当な行動をとる。

3. ろう者は、他の人との平等を基礎として、その独自の文化的及び言語的なアイデンティティの承認及び支持を受ける権利を有する109

4. 締約国は、障害のある人が、他の者との平等を基礎として110 、レクリエーション、余暇及びスポーツの活動に参加する権利を認め、かつ、次のことのため、適当な措置をとる。

  • (a) 障害のある人が、地域的、国内的および国際的なスポーツ活動の主流に参加することを奨励し及び促進すること 。111
  • (b) 障害のある人が、スポーツ活動を企画し及びそれに参加し、かつ、他の参加者に利用可能な支援について同一の指導、訓練及び資源を受ける機会を有することを確保すること。
  • (c) 障害のある人がスポーツ及びレクリエーションの開催地に訪れることができること並びに障害のある子どもが教育制度内のスポーツ活動関係に平等に参与することができることを確保すること。
  • (d) 障害のある人が、レクリエーション、余暇及びスポーツ活動に係る団体の関係者によるサービスを利用することができることを確保すること。

条文草案第25条

〔監視112

国内的実施の枠組113

  1. 締約国は、この条約の実施に関連する事項についての中心的な活動機関を政府内に指定するものとし、また、多様な部門及び多様な段階において関連のある活動を推進するため、調整機関の設置又は指定について正当に考慮する。
  2. 締約国は、その法的及び行政的な制度に従って、この条約で認められた権利の実施を促進し、保護し及び監視するための枠組114 を国内で維持し、強化し、指定し及び設ける。

付属書II

特別委員会において検討されるべきである国際協力の論点に関する討議要約

作業部会は、障害のある人に関する国際条約の観点から国際協力の役割に関する討議を開催した。

この条約の実施は主として国内の責任であることが認められた。この条約の規定の国内的遵守は国際開発援助を受けることを条件とすべきでないことに合意があった。

この点に関して、作業部会の数名の構成員は、国際協力がこの条約の目標及び趣旨を実現するための国内的努力を支援し、その実施を助長するための一つの重要な手段と考えられるべきであるとの見解を表明した。この文脈において、国家間の国際協力、国際連帯及び国際パートナーシップの精神がこの条約に反映されるべきである。

作業部会の数名の構成員は、国際協力が、経済的資源ないし経済的援助の移転として解釈されるべきではなく、情報と最良の実行の交換、科学的な調査研究、訓練、意識向上、障害者団体間の協力、技術開発、能力構築等の要素を含むように広範な意味で分析されるべきであると考えた。また、国際協力は、専門機関及び金融機関をはじめとして、二国間、地域間及び他の多国間の場において実施されるべきであるとされた。

作業部会の構成員の中には、自らは国際協力に積極的に携わってはいるが、法的拘束力のある文書の文脈において、国際協力又は開発援助に関する国際的義務を創出することに特に懸念を表明した者もいる。他の構成員の中には、この論点が国際協力に関するいかなる現行の型をも超える義務を課すものとして解されるべきではないと考えた者もいる。

作業部会の構成員の中には、障害のある人に対する差別を撤廃することに資するために、障害の側面を国際協力の活動及び合意の主流に組み入れるという新世紀の課題を認めた者もいる。この点に関して、一部の代表は、主たる責任が被供与国にあることを認めると同時に、開発援助が分配される方法に関して供与国と被供与国の双方が責任を共有するという見解を表明した。他の構成員の中には、この言明について合意しなかった者もいる。

今後行われる交渉では、国際条約の内容について合意された規定に従って、特別委員会は、その作業への貢献として提示された種々の見解や具体的な提案文書を考慮して、国際協力の論点を検討することを望むかもしれない。

特別委員会は、次のような他の国際文書及び国際条約における国際協力に関する既存の傾向を考慮することを望むかもしれない。

  • 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(第2条(3)、第22条、第23条)
  • 子どもの権利に関する条約(前文、第4条)
  • 障害のある人の機会均等化に関する基準規則(規則第22)
  • 経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の一般的意見第5
  • 環境諸条約
  • 腐敗防止条約
  • オタワ地雷禁止条約

国際協力の配置については、次の選択肢が検討された。

  • 前文
  • 一般的原則
  • 一般的義務
  • 個別条文
  • 個別条文(一般的義務、前文又は一般的原則のいずれかの規定)

この論点がこの条約の目的の中に含まれ得ると提案した作業部会の構成員もいれば、否定した構成員もいた。

一部の構成員の中は、この論点はこの条約において取り扱われるべきでなく、あるいは含まれるべきでないとした。一人の構成員は、国際協力の事項が国連総会で検討されるべきであるとの見解を表明した。

作業部会は、上述した見解に関する誤解を避けるように、また、この条約の文脈における国際協力の範囲を明確化するように、国際協力に関するいかなる語句も慎重なものであり、かつ、均衡のとれたものにすべきであることに合意した。

脚注   

1. 作業部会の数名の構成員は、この条約草案に関する代替的な構成及び名称を提案した。特別委員会は、この条約草案の構成及び名称を更に検討することを望むかもしれない。

2. 作業部会の構成員の中には、この条約がその他の列記された国際規約及び条約と同じ地位を有しないことを根拠にして、この条約に言及すべきでないと考えた者もいる。他の構成員の中には、この条約が効力を生じており、それゆえ列記されるべきであると指摘した。

3. 作業部会の構成員の中には、前文において国際協力に言及すべきでないと考えた者もいる。他方で、国際協力に関する論点がこの条約で取り扱われるべきか否か、また、その場合には国際協力はどこに含まれるべきか、という点について最終的な合意が得られることを必要とすべきであると考えた者もいる。この論点に関する討議の要約は作業部会報告付属書2に付されている。

4. 次の代替案も検討のために提案された。「すべての国、特に途上国における障害のある人の生活状況を改善するため、国際協力が重要であることを認め」。

5. 社会保障及び十分な生活水準に関する条文草案第23条1(c)の注を見よ。

6. 作業部会の構成員の中には、このパラグラフの文言を留保した者もいる。

7. 作業部会の構成員の中には、この条約の趣旨の一つとして国際協力を含めるべきであると提案した者もいる。他の構成員の中には、国際協力はこの条約の趣旨を達成するための手段であって、趣旨それ自体でない、と提案した者もいる

8. 特別委員会が検討することを望むかもしれない代替案は、「この条約は、障害のある人の権利を保護し及び促進することを目的とする」である。

9. 特別委員会は、この条文の検討に際して、ここに含まれている諸概念の具体的な定義に関して、特別委員会及び作業部会に提示された多様な提案を考慮することを望むかもしれない。

10. 「アクセシビリティ」の定義の必要性及びそのいかなる定義の内容も、アクセシビリティに関する条文草案第19条についての、特別委員会での討議の成果に拠る。

11. 特別委員会は、(表現及び意見の自由に関する条文草案第13条とは別に)「コミュニケーション」の定義が必要であるか、また、それが必要な場合には当該定義の内容はどのようなものにするか、を検討することを望むかもしれない。

12. 作業部会の多くの構成員は、条約が障害(すなわち、すべての種別の障害)のあるすべての人の権利を保護すべきであることを強調して、「障害」という語は広く定義されるべきであると提案した。構成員の中には、障害の複雑性や条約の範囲を制限する危険性を考慮すれば、この条約には「障害」の定義を含めるべきでないとの見解を表明した者もいる。他の代表の中には、国際的文脈で用いられている既存の定義(世界保健機関の国際生活機能分類を含む。)を指摘した者もいる。定義が含まれる場合には、障害の医学モデルでなく、障害の社会モデルを反映する定義とすべきであることに一般的な合意が得られた。

13. 作業部会の構成員の中には、この定義を含めることが「障害」の定義よりも一層重要であると考えた者もいる。他の構成員の中には、この定義は必要でないとの見解を表明した者もいる。

14. この定義は、平等及び非差別に関する条文草案第7条において取り扱われている。特別委員会は、この定義の条約における最良の配置を検討することを望むかもしれない。

15. 代表の中には、別の条文草案が言語は手話を含むと明記しているとの見解を表明して、この定義を条文草案に含める必要性について疑問を呈した者もいる。他の代表の中には、この定義が必要であるとの見解を表明した者もいる。

16. この概念に関する定義は、条文草案第7条に含まれる定義のほかに討議されなかったが、作業部会はこの定義を含める必要性を検討した。

17. これらの定義は議論されていないが、作業部会は、これらの定義が有用であると考えた。

18. バンコク条約草案と特別委員会議長条約草案の双方とも、ここに救済に関するパラグラフを含めていた。作業部会の構成員の中には、このような規定を市民的及び政治的権利に関する国際規約が含んでいる一方、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約が含んでいないことに留意した者もいる。したがって、両規約に含まれている諸権利を詳しく述べる条約の中に、このような条文を含めることは困難かもしれない。特別委員会は、この論点について更に検討することを望むかもしれない。

19. 経済的、社会的及び文化的権利の漸進的な実現についての論点は、作業部会の議論において、数名の代表から提起された。国際人権法に適合するのであれば、この概念は、この条約の一部の権利(経済的、社会的及び文化的権利)に適用されるが、他の権利(市民的及び政治的権利)には適用されないことに作業部会は留意した。特別委員会は、この論点をこの条約に組み込むための最良の方法を検討する必要があろうが、子どもの権利に関する条約が示している前例に留意することを望むかもしれない。この討論は、他の条文に関しても行われた。

20. 「その管轄の下にある」という文言は、特別委員会において周到に吟味される必要があろう。この文言は、子どもの権利に関する条約第2条から引用されたものである。この文言は、とても包括的であり、たとえば、市民でない者に対して保障されない諸権利が市民でない障害のある人にまで適用され得ることを含意するのかもしれない。あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する条約第1条(2)は、一つの代替的なアプローチを提供しているかもしれないが、それはとても排他的であり、市民でない障害のある人はこの条約のいかなる保護も享受しないことを含意するのかもしれない。

21. 特別委員会は、「促進」という語に代えて、国家に対してより強い義務を課す語を用いるか否かを検討することを望むかもしれない。

22. 特別委員会は、「ユニバーサルデザイン」又はその近似の類義語たる「インクルーシブデザイン」が、ここで及びこの条約中に用いられるべきか否かを検討することを望むかもしれない。また、特別委員会は、このパラグラフが条文草案第4条の一部に留まるべきか、条文草案第19条に組み込まれるべきか、又は、別の条文において独自の位置づけが与えられるか、を検討することを望むかもしれない。

23. この条文草案を含めることに関して、作業部会内では、多様な見解が見られた。複数の理由により、強く支持した代表もいる。データ収集は、障害のある人の機会均等化に関する基準規則(規則13)における一つの勧告である。この条文草案を含めることにより、諸国は、障害のある人のための給付計画を実施するために、障害のある人のニーズに対してより効果的に応え得るであろうし、また、その該当者の状況を正確に評価し得るであろう。また、国連総会決議A/58/132は、そのパラグラフ9及び10において、データ及び統計の論点を取り扱っている。この条文草案では、プライバシーの権利の尊重が基本となる。
 他方で、複数の理由により、この条約文に統計及びデータに関する条文を含めることに反対した代表もいる。この立場の者は、プライバシーの権利の尊重と情報が悪用される危険とを懸念し、このような条文が人権条約に属するとは考えなかった。このような立場の者は、統計が政策手段として有用でなく、また、財源が障害のある人に関する計画に費やされるよりもデータ収集に費やされると考えた。障害のある人のみを対象とした調査でなく、調査の主流化がなされるべきであるとされた。
 また、この条文草案の見出しを変えるべきであると提案した代表もいる。一つの提案として、「統計及びデータの収集及び保護」があった。障害に関し収集されるいかなるデータも、障害のある人の人権を侵害してはならないという考え方は明白であった。

24. 作業部会の構成員の中には、この条約は直接的差別と間接的差別の双方に明確に言及すべきであると考えた者もいる。他の構成員の中には、両形態の差別の区別は十分に明白でないと考えた者もいる。そのような者は、パラグラフ1の「あらゆる形態の差別」とパラグラフ2(a)の差別の「効果」の双方が、間接的差別の概念を包摂していると考えた。

25. 特別委員会は、この用語の範囲について検討し、この用語が、障害のある人が自分自身について認識する場合と社会が障害のある人を認識する場合とのどちらに適用されるか、を検討することを望むかもしれない。

26. このパラグラフは、中核的な国際人権諸条約のいずれにも見られないものだが、この概念は、それらの条約体の法解釈において発展してきたものである。自由権規約委員会は、たとえば、市民的及び政治的権利に関する国際規約第26条に関する一般的意見にこの概念を含めた。作業部会は、特別委員会の検討のために、三つの選択肢を討議した。1) このパラグラフを条約本文に含めるべきでない。2) このパラグラフは、間接的差別の禁止の例外としてのみ、含められるべきである。3) このパラグラフは、あらゆる形態の差別に適用すべきである。これらの選択肢に加えて、作業部会の構成員の中には、このパラグラフの末尾に「並びに国際人権法に合致する」という表現を加えることを提案した者もいる。特別委員会は、「合理的配慮」という用語を検討する場合には、次の諸点を検討することを望むかもしれない。

27. 作業部会は、非差別原則の遵守を確保するために、この条約には「合理的配慮」のような概念が必要であると考えた。
 この概念が多様な部門(たとえば、雇用や教育など)に難なく適用され得ることを確保するために、また、法的伝統の多様性を尊重するために、この概念を一般的で柔軟性のあるものにする必要があることに対して、作業部会で広範な合意が得られた。
 また、「合理的配慮」に帰するところになるものを決定する過程は、(それが個人に特有な配慮の必要を意識的に取り扱うべきであるという意味で)個別化されるべきであるとともに、その過程では個人とその関係のある主体とが相互に協力するべきである。ある主体がいかなる特定の「合理的配慮」をも受け入れるように個人に強制することは許されないと解される。しかしまた、一定の幅のある「合理的配慮」――各々の合理的配慮は当然合理的なものであるが――が利用可能な状況においては、個人は自己に好ましいものを選択する権利を有しないと考えられた。
 使用者及びサービス提供者が合理的配慮を提供しない理由として「不釣合いな負担」を援用することは、国の資金の使用可能性によって制約されるべきであるとの一般的な合意があった。
 作業部会の構成員の中には、「合理的配慮」の欠如がそれ自体差別を構成するとの提案を支持した者もいる。この見解を支えるものとして、社会権規約委員会の一般的意見5を強調した者もいる。
 作業部会の構成員の中には、「合理的配慮」の概念が関係国内法令の下で実現され又は形成される方法を、この条約は命ずるべきでないと考えた者もいる。特に、そのような者は、国の責任を主として規定するための国際的な法的文書が、民間主体の側の「合理的配慮」の欠如を非差別原則の侵害として構成することは不適切であるとの見解を表明した。

28. 「特別措置」という語は、他の国際人権条約で用いられている。特別委員会は、この語を障害の文脈で用いることの適切性について、また、代替的な語が用いられ得るか否かについて討議することを望むかもしれない。

29. 特別委員会は、障害の文脈における特別措置が時間的に制約されるべきものか、あるいは、より永続的なものであるべきか、を討議することを望むかもしれない。

30. この条約が生命に対する権利に関する条文を含むべきか否かについて、また、その場合には、その内容をどのようなものにするかについて、作業部会内で多様な見解が表明された。

31. この条文草案の討議において、作業部会の構成員の中には、この条約には、武力紛争下における障害のある人の権利保護に関する別個の条文草案を含めるべきであると提案した者もいる。この条文草案は、子どもの権利に関する条約第38条(4)でとられたアプローチと類似するものである。また、このような条文は、特定の危険にさらされている集団の権利保護をより広範に扱え得ると提案した者もいる。

32. このパラグラフは、子どもが完全な法的能力を有することが一般に受け入れられていないことを認めて、したがって、障害のある子どもの場合もそうでないことを認めることを意図したものである。法的能力の点からみると、障害のある人は障害を理由とする差別なしに取り扱われるべきである。

33. パラグラフ(c)は、障害のある人がその法的能力を行使するための支援の提供を認めるものであって、たとえ障害のある人がその法的能力を行使する際に支援が必要な場合にも、完全な法的能力があるとの想定に基づくものである。パラグラフ(c)(ii)は、法的保護が適用されなければならないという例外的な環境においてのみ適用されることを意図している。特別委員会は、このパラグラフが十分に明確なものであるか否か、また、法的能力を行使できない障害のある人を保護する最良の方法がどのようなものであるか、を検討することを望むかもしれない。別個のパラグラフが、このために必要とされるかもしれない。作業部会の構成員の中には、障害のある人のために他の者が法的能力を行使する場合には、その者の決定が障害のある当事者の権利及び自由に干渉すべきでない、と提案した者もいる。

34. パラグラフ4(訳者注:(d))の後半部分は、法律の前での平等な人として障害のある人を認めること以上に、より一般的に適用されるものである。特別委員会は、このパラグラフの条約における最も適切な配置を検討することを望むかもしれない。

35. 自由権規約委員会の法理(たとえば、一般的意見第8を見よ)は、諸国が自由の剥奪を大変狭く解釈して、刑事裁判制度のみに適用していることに留意している。しかし、身体の自由及び安全についての権利は、刑事事件かその他(たとえば、精神病若しくは知的障害、放浪癖、麻薬常用癖、教育目的又は入国管理等)の事件かを問わず、自由のすべての剥奪に適用する。特別委員会は、1) 民事事件と刑事事件とが別々に取り扱われるべきか否か、2) この条文草案は民事事件上の自由の剥奪について更に詳しく述べるべきか否か、3) 刑事事件に関して、手続事項を取り扱うこの条文草案を強化する必要があるか否か(市民的及び政治的権利に関する国際規約第9条も見よ)、を検討することを望むかもしれない。

36. 特別委員会は、パラグラフ2の用語が民事的強制収容を禁止するものか否か、又は、民事的強制収容が禁止されるべきか否か、を討議することを望むかもしれない。

37. 特別委員会は、障害のある人の障害を理由とする逮捕及び拘禁を永続化させる法令及び手続を改正することを国家に義務づける規定の追加を検討することを望むかもしれない。

38. 作業部会の構成員の中には、強制的な介入及び施設収容化が「拷問からの自由」若しくは「暴力及び虐待からの自由」又は両者の下で、取り扱われるべきであるか否かについて多様な選択肢を示した。また、構成員の中には、強制的な医療的介入及び施設収容化が、適当な法的手続及び保護に基づく場合には許容されるべきであると考えた者もいる。

39. 作業部会の構成員の中には、このパラグラフが法的救済に関する明確な規定を含むべきであると提案した者もいる。

40. 作業部会の構成員の中には、この条文草案が、ろう者が情報、コミュニケーション、サービス、参加及び教育にアクセスする際の自然言語としての手話への言及を含むべきであると考えた者もいる。

41. 特別委員会は、この条文草案で用いられるべき最も適当な用語を検討することを望むかもしれない。「コミュニケーション様式」、(パラグラフ(a)で使用されている)「形態」、(パラグラフ(c)で使用されている)「代替的及び拡大的なコミュニケーション様式」は、それぞれ相互に関連する意味であるが、同一の意味でない。

42. 特別委員会は、このパラグラフの中に、平易な言語又は読みやすい形態等のような特定の形態への言及を含めるべきか否か、を検討することを望むかもしれない。

43. 特別委員会は、このサブパラグラフを、点訳者、字幕筆記者、筆記者、手話及び触覚を用いるコミュニケーションの通訳者、朗読者等のようなライブ支援及び仲介者の提供及び訓練を扱うように広げることを検討することを望むかもしれない。

44. 特別委員会は、「奨励する」がパラグラフ(f)及び(g)で用いられるべき最良の語であるか否か、を検討することを望むかもしれない。

45. 特別委員会は、「文通」という語に代えて、より広い語である「コミュニケーション」を用いるべきか否かを検討することを望むかもしれない。

46. 特別委員会は、「婚姻及び家族関係」が制限的過ぎる表現であるか否かを検討することを望むかもしれない。

47. 作業部会の構成員は、障害のある人に対する不妊手術の禁止が子どもの数及び出産間隔を決定する権利に暗に含まれていることに合意したものの、構成員の中には、この論点はきわめて重要であるため特別委員会がその禁止を明記することを検討すべきであると考えた者もいる。

48. 作業部会の理解では、この条文草案は、家族の人数に関する締約国の国内政策について取り扱うものでなく、この点につき、障害のある人が公衆と異なって取り扱われるべきないことを単に規定するものである。それゆえ、特別委員会は、このパラグラフにおいて「他の人との平等を基礎として」という表現が必要であるか否かを検討することを望むかもしれない。

49. 特別委員会は、締約国が「適当な支援を与える」ための資源を保障することが困難であると表明した一部の代表の懸念に照らして、このサブパラグラフの第2文の表現を検討することを望むかもしれない。

50. 特別委員会は、このサブパラグラフの第2文のための他の案を検討することを望むかもしれない。この案には、「直接的又は間接的な」という文言を削除すること、この文言を「のみ」に置き換えること、又は、この文に関する肯定的な案(たとえば、「締約国は、障害のある人に対し、その子どもと共に暮らすことができるようにするための適当な支援を与える」等)による置換が含まれる。

51. 作業部会の構成員の中には、この条文草案の見出しと柱書きの「自立した生活」という語が、多くの国の文化的規範を反映しておらず、この語が障害のある人がその家族から分離されるべきであることを示唆しているとの懸念を表明した。特別委員会は、代替的な案を検討することを望むかもしれない。

52. 作業部会の構成員の中には、この原則を受け入れる一方、締約国がこの原則を例外なしに保障することは難しいと考えた者もいる。他の構成員の中には、この論点はサブパラグラフ1(a)で取り扱われているので、このサブパラグラフが余分であると考えた者もいる。

53. 作業部会の構成員の中には、締約国が、サブパラグラフ1(c)及び(d)で言及されているサービスの利用可能性を確保すること、特にサブパラグラフ1(c)における人的支援の提供を約束することを確保することが困難であると考えた者もいる。

54. この条文草案のパラグラフ2、3及び4は、子どもの権利に関する条約第23条を基礎としている。子どもの権利に関する条約は、その第23条で障害の事項について特に詳しく述べているが、他の条文では障害の事項を取り扱っていない。他方で、この条約草案は、条文草案第16条で子どもの事項について特に詳しく述べているが、その他の条文草案ではまさに障害について取り扱っている。それゆえ、このような相互関係において、この条文草案第16条が子どもの権利に関する条約第23条を再現することは、障害のある子どもが直面する問題を十分に取り扱わないことになるかもしれない。したがって、特別委員会は、障害のある子どもに影響を及ぼす事柄であって、子どもの権利に関する条約で取り扱われていない事項を取り扱うように、この条文草案を再度検討することを望むかもしれない。たとえば、障害のある子どもが性的虐待や搾取を被りやすい弱い立場に置かれていること、難民生活を送る障害のある子どもや障害のある孤児が弱い立場に置かれていることなどが含まれ得るだろう。

55. 特別委員会は、この条文草案が、他の条文草案の訓練に関する規定とともに、訓練をより強調して取り扱うべきか否かを検討することを望むかもしれない。

56. 特別委員会は、この条文草案の規定が障害のある「人」に言及しているため、この柱書きが「子ども」にのみ焦点を合わせるべきか否かを検討することを望むかもしれない。

57. この条文草案のパラグラフ1は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条(1)と、子どもの権利に関する条約第29条(1)とを活用したものである。このパラグラフは、これらの条文を完全に引用するものでなく、むしろ障害のある人に特に関連する要素を選び取ったものである。特別委員会は、このアプローチを更に検討することを望むかもしれない。

58. この条文草案は、インクルーシブかつ利用可能な教育を選択する権利を定める内容である。障害のある学生のニーズが十分に満たされていない普通学校にその学生が行く義務を創りだすことを意図していない。特別委員会は、このパラグラフの表現が十分に明確なものであるか否かを検討することを望むかもしれない。

59. 特別委員会は、この条文が一般教育制度における障害のある教員の雇用(たとえば、インドの条約草案第10条(d)を見よ)、障害のある人が教員になることを妨げる法的障壁の除去、及び、障害のある子どもの必要についての教員間の意識向上をも含むべきか否か、を検討することを望むかもしれない。

60. 「学習」という用語は、「教育」という用語と同一の意味でない。特別委員会は、どちらが最も適切な用語であるかを検討することを望むかもしれない。このパラグラフにおける一つの代替的な用語は「提供」であろう。

61. 作業部会の構成員は、このパラグラフの一つの重要な要素が選択であると考えた一方、その構成員の中には、教育についての権利がより重要であると考えた者もいる。他の構成員の中には、この選択において子どもの利益を一層強調することが好ましいと考えた者もいる。
また、専門的教育サービスと一般教育制度との関係を提示する様々なアプローチが確認された。作業部会の構成員の中には、一般教育制度における障害児の教育が通則で、専門的教育サービスは例外であるべきだと考えた者もいる。他方、構成員の中には、あるアプローチが他のアプローチよりも望ましいという想定をしないで、専門的教育サービスは一般教育制度が不十分である場合に提供されるのみならず、むしろいつでも利用可能であるべきだと考えた者もいる。たとえば、構成員の中には、ろう児及び盲児が自己の集団において教育を受けることを認める必要性を強調した者もいる。後者のアプローチをとる場合であっても、作業部会は、一般教育制度か専門的教育サービスかを選択する個人の能力を制限することなく、障害のある学生が一般教育制度を利用できるようにするための明確な義務を国家がなお負うべきであると考えた。

62. このサブパラグラフの意図は、一般教育制度と専門的教育サービスとが互いに相容れない選択肢ではないことと、利用可能な選択肢の幅があることを確保することにある。

63. 作業部会の構成員の中には、たとえばろう児が手話で教育を受けることを認めるために、感覚的な障害のある子どもに特有なこのパラグラフを維持することが望ましいとした者もいる。他の構成員の中には、このパラグラフが、代替的なコミュニケーション様式を必要とするかもしれないあらゆる子どもを含むものにまで広げられるべきか疑問を呈した者もいる。いずれの場合においても、手話、点字その他の代替的なコミュニケーション制度は、教育で用いられる場合には必ず、その国の書記言語又は音声言語を教えることの代わりではなく、それに加えられるべきものであることに合意があった。特別委員会は、この論点が、表現及び意見の自由に関する条文草案第13条で取り扱われ得るか否かについても検討するかもしれない。

64. 特別委員会は、このパラグラフにおいて、国家及び非国家機関に適する多様な水準の義務を検討することを望むかもしれない。

65. 特別委員会は、このパラグラフ(c)を、条文草案第4条(2)の類似規定と共に検討し、両規定が必要であるか否かを検討することを望むかもしれない。また、特別委員会は、両パラグラフと、国際労働機関第169号条約(第6条(b))及び障害のある人の機会均等化に関する基準規則(規則14)とを比較することを望むかもしれない。

66. 作業部会の構成員の中には、このパラグラフ及びパラグラフ2の柱書きについては「漸進的な」という用語が好ましいと考えた者もいる。他の構成員の中には、この条約の他の条文との一貫性について懸念を示した者もいる。特別委員会は、代替的な諸案を検討することを望むかもしれない。

67. 特別委員会は、「構築された」の代わりに「物理的な」という語を、この文脈における類似語として用いるべきか否かを検討することを望むかもしれない。

68. 特別委員会は、このパラグラフの柱書きで言及された設備及びサービスを包括的に列挙するという論点(「コミュニケーション環境」への言及が好ましいか否かを含む。)を更に検討することを望むかもしれない。

69. 特別委員会は、この条文草案の諸規定の範囲、特にパラグラフ1(a)及び(b)並びに2(a)、(b)、(c)及び(d)を検討することを望むかもしれない。作業部会は、公共の建物、設備及びサービスの概念が公共利用を目的とする民間所有の又は民間開発の建物、設備及びサービスにも広げられるべきか否か、また、障害のある人の利用を確保するために民間所有者又は民間開発業者に対して締約国の義務がどの段階まで及ぶのか、について疑問を呈した。作業部会の構成員の中には、この条文草案における締約国の義務が民間所有の又は民間開発の建物、設備又はサービスに及ぶべきであるとの見解を表明した者もいるが、他の構成員の中には、この条文草案の含意を一層検討することを望んだ者もいる。

70. 「ライブ支援」は、案内者や朗読者のような人的支援と、介助犬のような動物支援とを含む。特別委員会は、より自明の用語があるか否かを検討することを望むかもしれない。この語は、条文草案第20条(a)でも用いられている。

71. 「仲介者」は、支援する者でなく、むしろ特定の障害種別集団に情報を伝達する導管として活動する者(たとえば、聴覚障害者については手話通訳者)を意味する。この語は条文草案第20条(a)でも用いられている。

72. この条文草案の見出しは、市民的及び政治的権利に関する国際規約12条(a)における移動の自由についての広範な権利と区別するため、人のモビリティとされた。特別委員会は、この条文草案の諸要素(特にサブパラグラフ(a)、(b)及び(c))の配置を検討することを望むかもしれない。

73. 作業部会の構成員の中には、「漸進的な」又は「適当な」という語が好ましいと考えた者もいる。他の構成員の中には、この条約の他の条文との一貫性について懸念を表明した者もいる。特別委員会は、代替的な諸案を検討することを望むかもしれない。

74. 作業部会の構成員の中には、「リハビリテーション」は「医療的なリハビリテーション」以上のものを含むものであって「医療化」されるべきでないことから、「リハビリテーション」と「健康」とを集合的に扱うことは不適切であり、別個の条文で取り扱うことが良いであろうと考えた者もいる。リハビリテーションは、医療上、身体上、職業上、コミュニケーション上及び心理社会上のサービス並びに日常生活の技能及びモビリティの訓練を含む。ここで用いられている「リハビリテーション」という語は、しばしば「ハビリテーション」(失われた技能の再獲得ではなく、以前に有していなかった技能の獲得)と呼ばれる過程を含む。特別委員会は、定義に関する条文草案3条の中にこのような解釈を含めることを望むかもしれない。労働及び教育を目的とするリハビリテーションは、労働及び教育の関係条文草案において扱うことが最良であるかもしれない。

75. 作業部会の構成員の中には、入手可能性と、障害を理由とする差別のない、健康保険への障害のある人の加入とが、この条約で取り扱われるべきであると提案した者もいる。

76. 専門性の程度を考慮しつつ、保健ケア及びリハビリテーションサービスが可能な限り地方分権化されるべきであることについて、一般的な合意が作業部会にあった。また、作業部会の構成員の中には、地域社会に根ざしたリハビリテーション計画(リハビリテーションを継続するための地域社会及び家族との協力作業を含む。)が確保されるべきであると提案した者もいる。

77. 障害の予防に関する論点については、作業部会の構成員の間には対立する見解が見られた。ある者は、この条約がすでに障害を持った人の権利に関するものであって、その者の障害の効果又は進行を最低限に抑えることと更なる二次的な障害の予防とについてのみ言及すべきであるとした。他の者は、障害の予防はそれ自体で含まれるべきであるという。

78. 作業部会の構成員の中には、(生物)医学的、遺伝学的及び科学的な研究分野と、その実用性と、障害のある人の人権を前進させるためのその活用とについて特に言及すべきであると提案した者もいる。

79. このパラグラフの目的の一部は、障害のある人にサービスを提供する保健職員及びリハビリテーション職員が、より迅速な医学的判断を行うことにではなく、障害が個人の生活に及ぼす継続的効果を理解することを確保することを意味する。

80. プライバシーの論点は、プライバシーの権利に関する条文草案第14条においても取り扱われている。

81. 十分な説明に基づく自由な同意は、このパラグラフのみならず、この条約草案に広く適用されている。特別委員会は、次の文言がこのサブパラグラフに含まれるか、又は、条文草案第3条の定義となるように広げられるか、を検討することを望むかもしれない。「十分な説明に基づく決定は、平易な言葉その他の利用可能な形態で、治療及びリハビリテーションの目的及び性質、結果並びに危険が知らされた上でのみ行うことができる。」

82. 作業部会の構成員の中には、このパラグラフが権利を明快に説明すべきであると考えた者もいる。

83. 作業部会の構成員の中には、強制的な医療的介入及び施設収容化は、適当な法的手続及び保護に基づいてのみ認められるべきであると提案した者もいる(条文草案第11条も見よ)。

84. 作業部会の構成員の中には、このサブパラグラフは冗長であり、削除されるべきであると提案した者もいる。

85. 法令及び政策の形成における並びにサービスの立案、提供及び評価における障害のある人の関与は、この条文草案以上に広範な適用可能性を有する。作業部会の構成員の中には、これは一般的義務に関する条文草案第4条の下で取り扱われるべきであると提案した者もいる。

86. 特別委員会は、この条約の下での労働の権利を実施し及び監視する際の国際労働機関の潜在的な役割を検討することを望むかもしれない。

87. 作業部会の構成員の中には、この権利を充足する場合には障害のある女性の特別の環境を取り扱う必要があるとの論点を提起したものもいる。

88. 特別委員会は、この条文草案で表現されている広範な用語が、この条約草案の他の条文草案の詳細な規定と一貫性を有しているか否かを検討することを望むかもしれない。また、特別委員会は、この文脈において、障害のある人の訓練に関する規定をより詳しく述べることについて更に考える余地があるか否かを検討することを望むかもしれない。

89. 特別委員会は、この文脈において、この規定の意味と「インクルーシブ」という語の定義とを更に明確に説明すべきか否かを検討することを望むかもしれない。また、この文脈において、特別委員会は、障害のある人の職場への交通機関が、条文草案第19条が定める職場の利用に関する規定の下で取り扱われるか否かを検討することを望むかもしれない。

90. 特別委員会は、このサブパラグラフの冒頭で、「活発な労働市場政策を追求する」という表現の追加を検討することを望むかもしれない。

91. 特別委員会は、この文脈において、使用者としての政府の特別の責任を特定することの適切性を検討することを望むかもしれない。

92. 特別委員会は、この条文草案におけるあり得る措置として割当制度に特に言及することの適切性を検討することを望むかもしれない。

93. 作業部会の構成員の中には、雇用の文脈において、合理的配慮を行う義務が特に重要であることを強調して、この条約における合理的配慮に関する他の条文草案に加えて、労働の権利の下で合理的配慮に関する一層詳細なパラグラフが入念に仕上げられるべきであると考えた者もいる。

94. 特別委員会は、この案を、職場における隠された差別(たとえば、障害のある人を雇用から排除する効果を有する不必要な資格を定めること等)から障害のある人を保護することを考慮するために検討することを望むかもしれない。

95. 特別委員会は、ここで労働条件を列記することは疎漏な制限となるかもしれないか否かを検討するかもしれない。

96. 特別委員会は、障害のある人の技能に関する公式の承認を包含する承認の考えを展開することを望むかもしれない。

97. 作業部会の構成員の中には、「社会保障」の意味が諸国で広く異なること並びに十分な生活水準についての権利の範囲が社会保障よりも一層広いものであることに留意した者もいる。特別委員会は、この論点について更に検討することを望むかもしれない。

98. 作業部会の構成員の中には、これらの規定を実施するための締約国の能力について懸念を表明した者もいる。特別委員会は、この条約の他の条文において漸進的な実現の概念の一般的適用に言及したパラグラフがない場合には、この権利に漸進的な実現の概念を含めることを検討することを望むかもしれない。

99. 特別委員会は、「社会的支援」の概念を含めることを検討することを望むかもしれない。

100. 作用部会の構成員の中には、この規定を、障害のある人が必要とするモビリティ、移転、聴覚又は視覚に関する技術的補助具その他の特別器具を明記するように強化すべきであると考えた者もいる。特別委員会は、この論点が人のモビリティに関する条文草案第20条において十分に取り扱われているか否かを検討することを望むかもしれない。

101. 作業部会の構成員の中には、「重度の」という語の使用について、その定義が困難であることとそれが偏見を抱かせるものであることのいずれかを理由として疑問を呈した者もいる。特別委員会は、この語を削除するか否かを検討することを望むかもしれない。

102. このサブパラグラフの規定が障害のある人の家族にまで及ぶべきであるか否かについて、また、「家族」がどのように定義されるかについて、作業部会の間には多様な見解があった。特別委員会は、これを条約の一般的な適用との関連で更に検討することを望むかもしれない。

103. 特別委員会は、このサブパラグラフの規定が障害のある人全般に適用されるべきものである否かを検討することを望むかもしれない。

104. 特別委員会は、この条約草案において「一定数割り当てられた政府の住宅供給を含む」という表現が適当であるか否か、を検討することを望むかもしれない。作業部会の構成員の中には、それが規範的過ぎて、政府の住宅供給政策の利用を確保するために締約国がとる措置を制限するかもしれないとの見解を表明する者もいた。また、作業部会の構成員の中には、民間が提供する住宅の差別のない利用も明記されるべきであると考えた者もいる。

105. 作業部会の構成員の中には、このサブパラグラフが規範的過ぎるとの見解を表明した者もいる。

106. 特別委員会は、多くの諸国では概して民間部門の領域にある保健業務に関し、締約国が決定することができる範囲を検討することを望むかもしれない。

107. 特別委員会は、「清浄な水」への言及を更に検討することを望むかもしれない。作業部会の構成員の中には、「清浄な水」は経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の下で保障されている権利でないことを根拠として、これを削除すべきであると考えた者もいる。他の構成員の中には、「清浄な水」への言及が、障害の治療及び予防にとって決定的に重要であり、「基礎的サービス(ベーシックサービス)」を含めるように強化されるべきであると考えた者もいる。

108. 特別委員会は、この条文草案の下で、アクセシビリティの概念に関する議論が展開されるべきか否か、また、それがどのように展開されるべきか、を検討することを望むかもしれない。

109. 特別委員会は、この規定が別の条文草案の下でより適切に配置されるか否かを検討することを望むかもしれない。

110. 作業部会の構成員の中には、このパラグラフから「他の人との平等を基礎として」という文言を削除して、その代わりに、サブパラグラフ(b)、(c)及び(d)に、これらの権利の享有を妨げる差別的な障壁(環境的障壁と社会的障壁の双方)を除去するための締約国の義務を含めるべきであると考えた者もいる。他の構成員の中には、スポーツ、レクリエーション及び余暇に係る団体及び設備がたいてい民間部門内にあることから、「他の人との平等を基礎として」という文言が維持されるべきであるとの見解を表明した者もいる。特別委員会は、この論点を更に検討することを望むかもしれない。

111. 作業部会の構成員の中には、スポーツ活動の主流に障害のある人を据えることが重要であると強調した者もいる。他の構成員の中には、この義務は、障害のある人のニーズ及び能力に沿うように分離されたスポーツ活動及び団体並びに主流のスポーツ行事に含まれない障害のある人に特有なスポーツを促進することとの均衡性を保つ必要があると示唆した者もいる。特別委員会は、これらの見解をどのように組み込むことが最良であるかを検討することを望むかもしれない。

112. 作業部会には、条約草案の国際的監視に関する論点を検討する時間がなかった。しかしながら、作業部会の構成員の中には、障害のある人にとって国際的監視はきわめて重要な論点であることを示唆した者もいる。しかし、他の構成員の中には、この点について留保した者もいる。

113. 作業部会は、この規定案の文言を詳細に討議しなかった。作業部会は、特別委員会がこの論点を更に討議して、既存の国連人権条約監視機関の作業に関する継続的な再検討を考慮に入れることを望むかもしれないことに留意した。

114. 作業部会は、この条約の実施を促進し、保護し及び監視する過程における国内人権機関の役割に関連するいくつかの論点について合意に達しなかったが、作業部会の構成員の中には、国内人権機関がとりわけ次の任務を遂行すると考えた者もいる。障害のある人及び公衆にこの条約の規定についての意識を促すこと、この条約との合致を確保するために国内の法令、政策及び計画を監視すること。この条約又は国内法令の影響に関する研究に着手し及びそれを推進すること。障害のある人に与える影響を評価するための制度を開発すること。この条約の不遵守についての苦情申立てを処理すること。

訳者注”persons with disabilities”は、作業部会報告付属書I・IIでは「障害のある人」と訳し、それ以外の箇所では「障害者」と訳した。

翻訳:長瀬修・川島聡