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福祉避難所の確保・運営ガイドライン

平成28年4月
内閣府(防災担当)

目次

はじめに

 東日本大震災では、犠牲者の過半数を高齢者が占め、また、障害者の犠牲者の割合についても、被災住民全体のそれと比較して2倍程度に上ったといわれている。
 高齢者や障害をもった方々など特別な配慮が求められる方々にとっては、直接の被害だけでなく、必ずしも生活環境が十分に整備されたとはいえない避難所で、長く生活することを余儀なくされた結果として、健康を害し、復旧・復興に向けての生活再建フェーズへの移行に困難を生じているケースも見られる。
 本ガイドラインは、平成25年8月に策定された「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を受けて、東日本大震災の教訓を考慮し、「福祉避難所設置・運営に関するガイドライン」(平成20年6月)を実質的に改定・修正する形で作成したものである。
 取組指針及び本ガイドラインの活用を通じ、地方公共団体や関係機関の福祉避難所に対する理解が進み、確保・設置が推進され、災害時に配慮を要する被災者へのよりよい対応が実現することが期待される。
 また、平時の取り組みなくして災害時の緊急対応を行うことは不可能であるとの認識に立ち、福祉避難所についても、市町村を中心として、平時から取り組みを進めていただきたい。

1 福祉避難所の意義と目的

1.1 福祉避難所の定義と対象

1.1.1 福祉避難所とは

 福祉避難所については、災害対策基本法施行令に、災害対策基本法による避難所の指定基準の一つとして、以下のように規定されている。
 「主として高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下この号において「要配慮者」という。)を滞在させることが想定されるものにあつては、要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合するものであること。」(災害対策基本法施行令第20条の6第5号)

 内閣府令で定める基準は、次の通り(災害対策基本法施行規則第1条の9)。

  • 高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下この条において「要配慮者」という。)の円滑な利用を確保するための措置が講じられていること。
  • 災害が発生した場合において要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制が整備されること。
  • 災害が発生した場合において主として要配慮者を滞在させるために必要な居室が可能な限り確保されること。

1.1.2 要配慮者とは

 福祉避難所の対象者として想定されているのは、法律上「要配慮者」ということになる。要配慮者は、「災害時において、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」(災害対策基本法第8条第2項第15号)と定義されている。よって、福祉避難所の事前指定やその準備は、これらの人々を対象として備えておく必要がある。「その他特に配慮を要する者」として、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者等が想定される。これらの人々は、一般的な避難所では生活に支障が想定されるため、福祉避難所を設置し、受け入れ、何らかの特別な配慮をする必要がある。

1.1.3 福祉避難所の利用の対象となる者

 身体等の状況が特別養護老人ホーム又は老人短期入所施設等へ入所するには至らない程度の者であって、避難所での生活において、特別な配慮を要する者であること。具体的には、高齢者、障害者の他、妊産婦、乳幼児、病弱者等避難所での生活に支障をきたすため、避難所生活において何らかの特別な配慮を必要とする者、及びその家族まで含めて差し支えない。なお、特別養護老人ホーム又は老人短期入所施設等の入所対象者はそれぞれ緊急入所等を含め、当該施設で適切に対応されるべきであるため、原則として福祉避難所の対象者とはしていない。(出典:災害救助法 運用と実務 第一法規 平成26年 304頁)
 上記を原則としつつも、地域や被災者の被災状況に応じて、さらに避難生活中の状態等の変化に留意し、必要に応じて適切に対処する必要がある。なお、災害時における要配慮者を含む被災者の避難生活場所については、在宅での避難生活、一般の避難所での生活、福祉避難所での生活、緊急的に入所(緊急入所)等が考えられる。

1.2 東日本大震災の教訓を受けて ~広域で甚大な災害における福祉避難所の課題~

1.2.1 福祉避難所の課題

 東日本大震災では、岩手・宮城・福島の3県で約41万人、全国で約47万人が避難生活を余儀なくされた。避難所の解消は、岩手県で7か月、宮城県で9か月、福島県では2年9か月かかっており、避難生活の長期化が顕著であった。多くの高齢者や障害者、妊産婦、乳幼児等が被災し、福祉避難所の事前指定は十分とは言えず、また対応体制も満足できるものとは程遠かった。また被災地が広域に及び、相当数の避難所が立ち上がったため、十分な専門的支援を供給できなかった。
 福祉避難所については、阪神・淡路大震災における取り組みを総括した「災害救助研究会」(厚生労働省平成7年)が、「大規模災害における応急救助のあり方」において「福祉避難所の指定」を初めて報告した。それ以降、必要性は認識されているものの、事前指定への取り組みは地域でバラつきがあり、平成19(2007)年能登半島地震、中越沖地震において、福祉避難所が一定の機能を実現し、災害時要配慮者支援に貢献した例もあったものの、全体として十分な成果が得られないまま、東日本大震災が発生した。
 本ガイドラインでは、事前指定を進めるために、「指定可能性のある施設のリストアップ」を行い、協力を要請するように示しているが、東日本大震災においては、要配慮者の支援に関し、次のような課題があったことも指摘されている。それぞれ関連箇所の記載を参考に、行政と協力要請先で協働してこれら課題の解決策を考えることが、広域で甚大な災害も見据えた福祉避難所の事前指定の推進につながると考えられる。

○ 支援者の課題(第1章 5.2参照)
 福祉避難所を支える支援者の確保が不十分であった。

○ 移送の課題(第1章 5.3参照)
 広域に避難することを余儀なくされ、交通手段・燃料の確保が困難であった。

○ スクリーニングの課題(第2章 1.1参照)
 どの被災者に福祉避難所へ避難させるかの判断が難しかった。

○ 多様な要配慮者への対応の課題(第2章 3.2参照)
 多様なニーズを持つ被災者にきめ細かく対応することが困難であった。

2 ガイドラインの活用方法

 本ガイドラインは、地方公共団体の福祉避難所の確保・運営に関係する部局が活用することを想定している。
 本ガイドラインは、災害発生前と災害発生後の両者において、次のような機能を果たす。
 災害発生前においては、福祉避難所の確保・運営に関して、地方公共団体のとるべき対応についてのチェックリストとしての機能である。災害発生直後からの実施内容について整理し、そのための準備や取り組みをチェックするものであるとともに、地方公共団体が独自のガイドラインやマニュアルを作成する際の参考になるよう努めた。
 災害発生後においては、地方公共団体が福祉避難所の確保・運営を行うための指針としての機能である。災害発生直後からの実施内容を整理することにより、市町村が全体像を把握して、迅速・的確な対応をとることができるよう努めた。
 本ガイドラインは、多くの地方公共団体で活用されるよう、現時点で考えられる標準的な項目について記載している。このため、各地方公共団体においては、本ガイドラインを参考にしつつ、それぞれの地域の特性や実情、庁内体制、既存関係計画等を踏まえて、災害発生前から、必要となる対策について検討し、独自のガイドラインやマニュアルを作成しておくことが期待される。
 マニュアルには、さらに具体的な実施内容、実施時期、組織体制・担当部署、都道府県と市町村の役割分担を明記するとともに、関係協定・関係書式等を入れ込んでおき、その1冊を見れば基本的な対応は可能になるようにしておくことが望ましい。また、災害後における復旧・復興対策の進捗状況や評価を行うにあたっては、対応すべき項目ごとの実施時期を入れておくことも有効と考える。

転載者注:原本には、この「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」の各章の関係を示したフローが掲載されていますが、HTML化には時間を要するため、現在は、まだ作業をしていません。JDFいわて支援センターのサイトに、ワード版と機械的にHTML化した文書が掲載されていますので、そちらをご参照ください。
http://jdf.himawari-iwate.org/jdfiwate_20160420.html

第1章 平時における取り組み

1 福祉避難所の対象となる者の把握

1.1 福祉避難所の対象となる者の概数の把握

□ 市町村は、福祉避難所の指定・整備数を検討するための基礎資料として、福祉避難所の対象となる者の概数を把握する。

  • 福祉避難所の対象となる者としては、①身体障害者(視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者等)、②知的障害者、③精神障害者、④高齢者、⑤人工呼吸器、酸素供給装置等を使用している在宅の難病患者、⑥妊産婦、乳幼児、病弱者、傷病者、が考えられる。
  • 上記のうち、既存統計等で人数の把握が可能なものについては、その情報を活用する。また、民生委員・児童委員、身体障害者相談員、知的障害者相談員からの情報や、障害者団体からの情報についても活用し、把握する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所の対象は、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者等避難所生活において何らかの特別な配慮を必要とする者とし、その家族まで含めて差し支えない。ただし、特別養護老人ホーム、老人短期入所施設等の入所者は、当該施設で適切に対応されるべきであるので、原則として福祉避難所の対象とはしないが、緊急かつ一時的に当該対象者が福祉避難所へ避難することを妨げるものではない。

○ 平時においては上記により概数を把握し、これを最大規模の対象数として捉え、その人数の避難を可能とすることを目標に、福祉避難所として利用可能な施設の把握及び福祉避難所の指定・整備を行うものとする。

1.2 福祉避難所の対象となる者の現況等の把握

□ 市町村は、災害時において、福祉避難所の対象となる者を速やかに福祉避難所に避難させることができるよう、平時から対象者の現況等を把握することが望ましい。

  • 先の「1.1 福祉避難所の対象となる者の概数の把握」で対象とした者のうち、現況等の調査が可能と考えられる者、具体的には、①身体障害者(視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者等)、②知的障害者、③精神障害者、④高齢者(一人暮らし、高齢者のみ世帯等)、⑤人工呼吸器、酸素供給装置等を使用している在宅の難病患者、については、福祉部局が保有する情報を活用し、調査が可能であると考えられる。
  • 把握する情報は、①住所、②氏名、③身体の状況、④家族構成(同居の有無を含む)、⑤介助者の状況(昼間・夜間)、⑥緊急時の連絡先、⑦本人の居室の場所、を基本とし、その他の項目については必要に応じて調査を実施する。
  • 利用できる既存の台帳等が存在する場合はその活用を図る。
  • 関係部局間等での情報共有にあたっては、福祉避難所の対象となる本人又は家族等の理解を得た上で、どの程度の情報を開示して差し支えないかを確認して、情報を整理し共有しておく。

□ 災害時において、安否確認、避難情報の伝達、避難誘導支援、福祉避難所の設置等の対策に活用することができ、また、平時からの対策を検討・実施するために、把握した情報はデータベースとして整備しておく。また、最新の情報を保持するために、定期的に登録情報の確認・更新を行う。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所の対象者に関する情報の管理体制、関係部局等との情報共有の体制について検討し、体制を整備しておく。

○ 個人情報の取り扱いについては、情報の漏洩・不正使用を防止するための措置を講じるなど、十分に配慮する。

○ 災害時に速やかに活用できるよう、データのバックアップが図られているか確認しておく。

○ 災害時に被災者台帳を作成した場合には、上記の情報について整理して被災者台帳に記載又は記録する。

2 福祉避難所の指定

2.1 福祉避難所として利用可能な施設の把握

□ 市町村は、福祉避難所として利用可能な施設を洗い出す。利用可能な施設としては、以下の施設が考えられる。以下の施設については「バリアフリー」「支援者をより確保しやすい施設」を主眼において選定する。

  • 一般の避難所となっている施設(小・中学校、公民館等)
  • 老人福祉施設(デイサービスセンター、小規模多機能施設、老人福祉センター等)
  • 障害者支援施設等の施設(公共・民間)
  • 児童福祉施設(保育所等)、保健センター、特別支援学校
  • 宿泊施設(公共・民間)

□ 福祉避難所として利用可能な施設について、所在地、名称、所有者・管理者、使用可能なスペースの状況、施設・設備の状況、職員体制、受入可能人数などを調査し、整理する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所として利用可能な施設としては、社会福祉施設等のように現況において要配慮者の避難が可能な施設のほか、一般の避難所のように、現況では福祉避難所としての機能を有していない場合であっても、機能を整備することを前提に利用可能な場合を含むものとする。

○ 各施設について、福祉避難所とする場合の長所と利用にあたっての課題としては、次のような点が考えられる。

◆社会福祉施設(入所施設)
(長所)物資・器材、人材が整っている。
(課題)避難者の受入によって、施設の入所者の処遇に支障をきたすことを防ぐため、専門職能を持った支援者の派遣を要請するなどの対策をする必要がある。

◆デイサービスセンター等通所施設
(長所)災害時においてライフラインの停止などにより本来の通所施設としての機能が停止する場合には、福祉避難所として機能することができる。
(課題)時間経過に伴って復旧・復興が進むと、本来の通所施設としての機能に戻さなければならず、避難が長期化するような場合には、福祉避難所機能の早期解消を図るなどの対策が必要である。

◆宿泊施設
(長所)宿泊機能は既に確保されている。
(課題)必ずしもバリアフリーになっておらず、また、脆弱性の高い被災者の避難生活支援を提供する人材の確保・派遣対策が必要である。

◆小・中学校や公民館等
(長所)一般の避難所としての指定が進んでおり、福祉避難所スペースの確保の交渉がしやすい。
(課題)器材の準備や人材の確保などで立ち上げに時間がかかってしまうため、高齢者福祉施設協議会等に依頼することによって、福祉避難所としての機能を確保するなどの対策が必要である。開設期間が長期化した場合、本来の施設の機能を果たすことに支障が出る可能性があるため、福祉避難所機能の早期解消を図るなどの対策が必要である。

○ 平時に福祉避難所の指定に至らない場合であっても、災害時において緊急的に受け入れを要請する可能性があることから、指定状況にかかわらず利用可能な施設の情報についてはデータベースとして整備しておく。

○ 災害時に速やかに活用できるよう、データのバックアップや共有化が図られているか確認しておく。

○ 都道府県の施設であっても、直ちに指定対象から除外して考えるのではなく、都道府県と適切に連携する。

○ 過去には、デイサービスセンターの静養室に福祉避難所を設置した例もある。この場合、機能訓練室や食堂等への影響がなく、本来の通所施設機能への影響が限定的であることから、通所施設の再開が比較的容易である点が特徴的である。

2.2 福祉避難所の指定

2.2.1 福祉避難所の指定要件、指定目標の設定

□ 市町村は、福祉避難所の対象となる者の数や現況等を踏まえ、福祉避難所の指定要件、指定目標を設定する。これらについては各地方公共団体が定めるものであるが、例えば、以下の要件が考えられる。

○ 施設自体の安全性が確保されていること。

  • 耐震性が確保されていること。[地震]
  • 原則として、土砂災害特別警戒区域外であること。[土砂災害]
  • 浸水履歴や浸水予測等を踏まえ、浸水した場合であっても、一定期間、要配慮者の避難生活のための空間を確保できること。[水害]
  • 近隣に危険物を取り扱う施設等がないこと。

○ 施設内における要配慮者の安全性が確保されていること。

  • 原則として、バリアフリー化されていること。
  • バリアフリー化されていない施設を指定する場合は、障害者用トイレやスロープ等設備の設置、物資・器材の備蓄を図ることを前提とすること。

○ 要配慮者の避難スペースが確保されていること。

  • 要配慮者の特性を踏まえ、避難生活に必要な空間を確保すること。

□ 福祉避難所の対象となる要配慮者の状態に応じて適切に対応することができるよう、例えば、以下のように、福祉避難所の機能を段階的・重層的に設定することも考えられる。

○ 福祉避難所(としての機能)

  • 障害の程度等により、地域住民と同じ空間あるいは地域における福祉避難スペース(室)では避難生活が困難な要配慮者を、施設・設備、体制の整った施設に避難させることを想定。
  • 老人福祉施設、障害者支援施設等の施設、保健センター等を想定。

○ 地域における福祉避難スペース(室)(としての機能)

  • 災害時にすぐに避難できる福祉避難スペース(室)として、一般の避難所(小・中学校、公民館等)等の中に、介護や医療相談等を受 けることができる空間を確保することを想定。専門性の高いサービスは必要としないものの、一般の避難所等では、避難生活に困難が生じる要配慮者が避難。

□ 福祉避難所の指定目標については、要配慮者や同居家族の生活圏やコミュニティとのつながりに配慮し、設定することとするが、少なくとも、地域における福祉避難スペース(室)については、小学校区に1箇所程度の割合で指定することを目標とすることが望ましい。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 一般の避難所の整備状況や地域の要配慮者の状況等を総合的に勘案し、指定要件、指定目標を設定する。

○ 福祉避難所の対象となる者の数は常に固定しているものではないので、福祉避難所の指定・整備にあたって要配慮者1人当たり面積を設定する必要があると判断した場合は、指定目標を設定する際の目安として定めておく。(なお、1人当たり面積については、目標値も実際の面積も地方公共団体により様々であるが、概ね2~4㎡/人が多い。)

○ 中越地震の際には、小千谷市総合体育館のトレーニングルーム等の部屋を、実質的に福祉避難スペース(室)として確保した事例もあり、状況に応じた様々な方法で福祉避難所機能を積極的に確保すべきである。

2.2.2 福祉避難所の指定

□ 市町村は、福祉避難所として利用可能な施設に関する情報及び福祉避難所の指定要件等を踏まえ、福祉避難所として指定する施設を選定し指定する。

□ 民間の社会福祉施設等の場合は、福祉避難所の指定に際して、市町村と当該施設管理者との間で十分調整をし、福祉避難所の指定に関する協定を締結する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所の設置・運営に関して、福祉避難所として指定する施設との間で協定を締結しておく。

○ 協定には、設置手続き、福祉避難所での支援の内容・方法、費用負担等について明確にしておく。

○ 特別養護老人ホーム等の入所居住型施設については、災害時において福祉避難所として利用した場合に、入所者の処遇に甚大な支障が生じないかどうか確認する。

○ あらかじめ指定した福祉避難所のみでは量的に不足すると見込まれる場合は、公的宿泊施設、旅館、ホテル等と協定を締結し借り上げるなど事前に対応する。

○ 福祉避難所における要配慮者の支援に必要な物資・器材や、専門的な技術を有する人材の確保、要配慮者の移送手段の確保についても、関係団体・事業者との間で協議をしておく必要がある。

○ 災害時において速やかに福祉避難所を開設し、要配慮者を保護できるよう、平時から、都道府県、市町村、社会福祉施設等関係団体などの間で情報交換や事前協議を図っておくことが重要である。

○ 市町村内の福祉避難所で対応困難になった場合、広域の福祉避難所等に一時的に要配慮者を避難させることも想定されることから、近隣の都道府県及び市町村並びに関係団体との協力関係を構築しておく。

3 福祉避難所の周知

3.1 福祉避難所の周知徹底

□ 市町村は、あらゆる媒体を活用し、福祉避難所に関する情報を広く住民に周知する。特に、要配慮者及びその家族、自主防災組織、支援団体等に対して、周知徹底を図る。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 災害対応機関や関係機関、医療・保健・福祉サービス提供機関・事業者等に周知を実施する。

○ 広報活動や訓練を通して、広く住民に福祉避難所について周知を図り、理解と協力を求める。要配慮者とその家族に対しては、広報活動のほか、民生委員や保健師の活動、支援団体を通じて周知を図る。

○ パンフレットやハザードマップ等を作成するにあたっては、点字、音声、イラストを用いたり、文字を大きくするなど、要配慮者が理解しやすいよう工夫を図る。

○ 福祉避難所は、より専門的な支援や援護の必要性の高い避難者のために確保されるものであり、一般の指定避難所で生活可能な避難者に対しては、対象としない旨についてあらかじめ周知しておく。

○ 災害規模や状況に応じて、また、支援者の到着が間に合わない等、福祉避難所の開設には「ずれ」が生じ、災害発生後初日に開設が間に合わないケースもあることを併せて周知する。

4 福祉避難所の整備

4.1 福祉避難所の施設整備

□ 市町村は、施設管理者と連携し、当該施設が福祉避難所として機能するための必要な施設整備を行う。

  • 段差の解消、スロープの設置、手すりや誘導装置の設置、障害者用トイレの設置など施設のバリアフリー化
  • 通風・換気の確保
  • 冷暖房設備の整備
  • 情報関連機器(ラジオ、テレビ、電話、無線、ファクシミリ、パソコン、電光掲示板等)
  • その他必要と考えられる施設整備

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 在宅酸素療法を必要とする呼吸器機能障害者などを受け入れる場合は、電源の確保が必要である。また、介護、処置、器具の洗浄等で清潔な水を必要とすることから、水の確保が必要となる。

○ 避難所において、要配慮者の不安を取り除くとともにニーズを把握するためには、情報を確実に伝達したり、コミュニケーションを確保することが重要となる。要配慮者に対して円滑な情報伝達ができるように、多様な情報伝達手段を用意することが必要であり、各避難所には最低限、ラジオとテレビ、筆談用の紙と筆記用具を準備しておくとともに、文字放送対応テレビやファクシミリの確保にも努める。(「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」第2 発災後における対応 9 被災者への情報提供等及び10 要配慮者からの情報提供も参考とすること。)

5 物資・器材、人材、移送手段の確保

5.1 物資・器材の確保

□ 市町村は、施設管理者と連携し、福祉避難所における必要な物資・器材の備蓄を図る。

【物資・器材の例】

  • 介護用品、衛生用品
  • 飲料水、要配慮者に適した食料、毛布、タオル、下着、衣類、電池
  • 携帯トイレ(主として洋式便器で使用)、ベッド、担架、パーティション
  • 車いす、歩行器、歩行補助杖、補聴器、収尿器、ストーマ用装具、気管孔エプロン、酸素ボンベ等の補装具や日常生活用具等

□ 市町村は、物資・器材の備蓄のほか、災害時において必要とする物資・器材を速やかに確保できるよう、物資・器材の調達先リストを整備し、災害時に活用できるようにしておく。また、関係団体・事業者と協定を締結するなどの連携を図る。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 物資・器材の備蓄については、災害発生当初の段階ですぐに物資・器材を調達することは困難であると想定されることから、一定程度の備蓄に努めることとし、あわせて災害時において速やかに調達できるよう、協定締結など事前対策を講じておく。

○ 原則として、資器材の確保はレンタルによって行う。

○ なお、トイレについては「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」を参考にすること。

5.2 支援人材の確保

□ 市町村は、要配慮者の避難生活を支援するために必要となる専門的人材の確保に関して支援の要請先リストを整備するとともに、関係団体・事業所と協定を締結するなど、災害時において人的支援を得られるよう連携を図る。

□ 災害時における福祉避難所へのボランティアの受入方針について検討しておく。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所は、一般の避難所に比べて、脆弱性の高い高齢者等の被災者が多くなるため「当事者における避難所運営への期待が難しい」「地域の自主防災組織等の支援についても大きな期待は難しい」という基本的な状況があり、支援人材の確保は重要である。

○ さらに、福祉避難所に避難する避難者は、災害による生活環境の変化によって、健康被害を受けやすく、災害直後は状態が安定していた避難者であっても、状態が悪化して支援が必要になることが考えられる。そのため、避難者の状態を継続的に観察する専門職の視点が欠かせず、専門職を中心とした支援人材の確保が重要となる。平時より施設等と連携を図り、災害時の受け入れ拠点・活動支援体制について、取り決めを行っておくべきである。

○ 専門的人材の確保については、自治体間の相互応援協定による職員派遣のほか、社会福祉協議会等の関係機関、社会福祉施設の職員やそのOB、障害者・高齢者等の支援団体、専門家・専門職能団体等と平時から連携を確保しておく。

○ 医師や看護師等の医療関係者や、社会福祉士や精神保健福祉士等の専門職種については、別途、全国単位や都道府県単位で職能団体が独自の人的支援スキームを設けているものもあることから、都道府県と連携し、これらを適切に活用し、対応することも有効である。

○ 福祉避難所の事前指定先が学校や公民館などの「平時は福祉施設でない」施設である場合は、都道府県の福祉施設協議会等との協定の締結を実施し、災害時には福祉避難所の設置・運営等に関して、委託・支援を実現することが現実的である。

○ 福祉避難所の設置施設に運営を委託した場合、その施設による運営を基本とするが、その場合でも、施設自身の通常の運営に支障をきたさないよう、外部からの支援を検討することが望ましい。

5.3 移送手段の確保

□ 市町村は、地域における福祉避難スペース(室)から福祉避難所への移送(福祉避難所間での移送)、あるいは福祉避難所から緊急に入所施設等へ移送することに関して、要配慮者の状態に配慮した適切な移送手段を確保できるよう、福祉車両、救急車両、一般車両等の調達先リストを整備する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 自宅から福祉避難所への避難、一般の避難所から福祉避難所への避難等については、原則として、要配慮者及びその家族が、自主防災組織、民生委員、支援団体、地方自治体職員等による支援を得て避難することとする。

○ 地域における福祉避難スペース(室)で対応が困難になった要配慮者を、福祉避難所に移送する場合や、緊急に入所施設等へ移送する場合については、福祉避難所として指定した施設の管理者等と協議し、方針や計画の策定、移送手段の確保策を検討しておく必要がある。

○ 福祉避難所の設置を予定したときには、避難所と福祉避難所間(避難所から福祉避難所へ、また、福祉避難所から避難所へ)の対象者の引き渡し方法等についてあらかじめ定めておくことが望ましい。 

○ 東日本大震災は広域災害であり、また複合災害でもあったため、地域に避難所を求めることが難しく、広域に避難することを余儀なくされた。この際に、被災した道路もあったことに加えて、福祉避難所までの移送体制も十分ではなく、バス等の交通手段やガソリン等の燃料の確保、避難支援者の移送の課題等が発生した。このような場合でも要配慮者の移送手段を確保するために、市町村においては、バス会社や協会との協定を結ぶ等の積極的な対応が期待される。また、福祉避難所として想定される施設が保有する車両等を借り上げるための協定の締結も考えられ、その際には燃料確保や費用面での条件を話し合っておく必要がある。

6 社会福祉施設、医療機関等との連携

6.1 福祉避難所の設置・運営にかかる連携強化

□ 市町村は、専門的人材の確保や器材等の調達、緊急入所等に関して、社会福祉施設、医療機関等の協力が必要となることから、あらゆる機会を通じて平時から連携を図っておく。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 平時から社会福祉施設や医療機関等との連携を図るため、積極的に情報共有の場を設けることが重要である。

○ 社会福祉施設等の関係団体・事業者間での協力体制の構築も重要であることから、団体・事業者同士の協定締結など、事業者間の連携強化を促進する。

○ 災害時において、福祉避難所での感染症の発生・拡大の防止、及び発症した場合の適切な対応を図るため、事前に医療機関等と協定を締結するなど、平時から医療機関等との連携強化を図る。

6.2 緊急入所等への対応

□ 在宅での生活の継続が困難な要配慮者や一般の避難所あるいは福祉避難所での避難生活が困難な要配慮者については、緊急入所、緊急ショートステイ等で対応する必要がある。このため、都道府県、市町村は、緊急入所等が可能な施設を把握し、整理する。

□ 社会福祉施設と事前に協議を行い、要配慮者の緊急入所について協定を締結するなどの連携を図る。

□ 要配慮者の症状の急変等により医療処置や治療が必要になった場合は、医療機関に移送する必要があることから、平時から医療機関及び関係団体との連携を図っておく。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 緊急入所等については、受入可能施設の情報を整理・更新しておく。また、施設管理者と十分に調整の上、あらかじめ協定を締結しておくなどの準備をする。

○ 市町村内の社会福祉施設で緊急入所等が対応困難になった場合を想定し、都道府県と連携し広域での緊急入所等の対応(方針や移送手段等)を検討しておく。

7 福祉避難所の運営体制の事前整備

7.1 災害時要配慮者支援班の事前設置等

□ 市町村は、防災担当部局と福祉部局を中心とした横断的な組織として、災害時要配慮者支援班を設置する。必要に応じて、自主防災組織、支援団体、社会福祉施設等福祉関係者、保健師、医師、看護師等の保健・医療関係者、民生委員、ボランティア等をメンバーとする協議会等を設置する。

□ 災害時において福祉避難所の速やかな開設及び運営を行うことができるよう、あらかじめ福祉避難所担当職員を指名したり、福祉避難所担当職員の指名ができない場合は福祉避難所担当課・係を定めておくなどの体制を整えておく。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 平時から福祉避難所に関する取り組みを進めるため、災害時要配慮者支援班を設置しておく。また、福祉避難所を設置した場合は、福祉避難所の設置・運営の実務は福祉避難所設置施設に委託することが想定されるが、人的・物的支援等の調整を担う行政担当者として、あらかじめ福祉避難所担当職員を指名しておくとよい。

○ 災害時要配慮者支援班は、平時は、防災関係部局や福祉部局で横断的なPT(プロジェクト・チーム)として設置され、災害時は、災害対策本部中、福祉関係部局内に設置されることが想定される。

○ 災害時要配慮者班は、避難所全体を担当する災害対策本部の避難所支援班(及び平時のこれに相当する体制)との十分な連携をして対応すべきである。

7.2 福祉避難所の運営体制の事前整備

□ 福祉避難所については、設備、体制の整った社会福祉施設等を想定しているため、当該施設の体制を基本にすることとし、市町村は福祉避難所担当職員の配置、専門的人材やボランティアの確保・配置を行うことにより、その体制の充実を図るために、平時から関係機関との連携強化を図るものとする。

□ 地域における福祉避難スペース(室)は、一般の避難所(小・中学校、公民館等)等の中に、介護や医療相談等を受けることができる空間を確保したものを想定していることから、市町村は、一般の避難所の避難所運営組織の中に、地域住民、有資格者や専門家等(看護師、保健師、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、理学療法士、ヘルパー、民生委員・児童委員、身体障害者相談員、知的障害者相談員、地域福祉推進委員等)から構成される要配慮者班を設置することとし、事前に要配慮者班を設置するよう自主防災組織等に対して指導する。あわせて、災害時において有資格者等を確保し要配慮者班として活動してもらえるよう、事前に関係団体・事業者と協定を締結するなど、協力を依頼する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所の運営にあたっては、施設の運営体制を阻害することがないよう、施設管理者や施設職員と十分に協議し、対応する必要がある。

○ 一般の避難所における要配慮者対応については、各避難所に要配慮者班を設け、避難所内に要配慮者用の窓口を設置し、要配慮者からの相談対応、確実な情報伝達と支援物資の提供等を実施することになる。

8 福祉避難所の設置・運営訓練等の実施

8.1 訓練、研修等の実施

□ 市町村は、職員、自主防災組織、地域住民、要配慮者及びその家族、社会福祉施設等、幅広い関係者が参加し、学ぶ機会を設けるため、要配慮者支援対策に関する研修会、勉強会を開催する。

□ まち歩きや防災点検などワークショップや図上訓練を通じて、地域における要配慮者支援のあり方などについて検討する機会を設ける。

□ 行政職員、地域住民、要配慮者、社会福祉施設等、幅広い関係者が参加する実践型の福祉避難所の設置・運営訓練を企画し、実施する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所の設置・運営訓練については、災害時を想定した関係者による図上訓練など災害発生後から福祉避難所の開設、運営までの具体的な手順を確認できるようなものにする。訓練は定期的に行うこととし、参加者は幅広く募集する。

○ このような訓練を通じて、実施体制やマニュアル等を検証し、その改善・充実に役立てるなど、福祉避難所の設置・運営等にかかる対策の検討・立案に役立てる。

○ 様々な要配慮者の特性と、それに応じた接し方について、避難所の運営管理者となりうる者を対象とした研修を実施する。

8.2 知識の普及啓発

□ 市町村は、災害時において円滑に福祉避難所が設置・運営できるよう、平時から要配慮者本人やその家族、支援者、福祉・保健・医療関係者等に、要配慮者対策や防災対策、福祉避難所の目的やルール等に関する知識を普及する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 広報紙やホームページの活用、パンフレットやハザードマップの作成、生涯学習の場の活用、イベントの開催など、あらゆる機会を通じて知識の普及啓発を図る。

○ 要配慮者の避難誘導、避難生活に際しては、要配慮者に対する一般の被災者の理解と協力が不可欠であることから、あらゆる機会を通じて、学習や交流の場を設けることも重要である。

第2章 災害時における取り組み

1 福祉避難所の開設

1.1 福祉避難所の開設及び要配慮者の受入

□ 市町村(市町村に当該救助事務を委任している場合。以下本章において同じ)は、災害が発生し又は発生のおそれがある場合で、一般の避難所に避難してきた者で福祉避難所の対象となる者がおり、福祉避難所の開設が必要と判断する場合は、福祉避難所の施設管理者に開設を要請する。併せて、地域における福祉避難スペース(室)を開設する。

□ 福祉避難所を開設したときは、職員はもとより、要配慮者及びその家族、自主防災組織、地域住民、支援団体等に速やかにその場所等を周知する。

□ 受入体制が整い次第、福祉避難所の対象となる者を受け入れる。

□ あらかじめ指定した福祉避難所では不足する場合は、公的宿泊施設、旅館、ホテル等の借り上げ等により実施する。

□ 概ね10人の要配慮者に1人の生活相談員等を配置する。また、要配慮者に配慮したポータブルトイレ、手すり、仮設スロープ、情報伝達機器、パーティション等の器物、日常生活上の支援を行うために必要な紙おむつ、ストーマ用装具等の消耗機材を確保する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 災害救助法が適用された場合において、概ね10人の要配慮者に1人の生活相談員(要配慮者に対して生活支援・心のケア・相談等を行う上で専門的な知識を有する者)等の配置、要配慮者に配慮したポータブルトイレ、手すり、仮設スロープ、情報伝達機器等の器物、日常生活上の支援を行うために必要な紙おむつ、ストーマ用装具等の消耗機材の費用について国庫負担を受けることができる。

○ 福祉避難所の対象者は固定的ではないので、対象者をあらかじめ把握していないときには勿論、あらかじめ把握しているときにも、被災直後の混乱期から一定期間を経過した後には、避難所に対象者が避難していないか調査する。

○ 目の前の被災者をその状況に応じ、災害発生後の限られた移送手段や限定的な福祉避難所確保数の中で、適切な避難所へ誘導するためには、ある程度の専門性が必要となるが、災害発生直後はそのような専門性をもった人的資源を得ることは難しい場合があり、東日本大震災においても、判断に迷うことが多かったといわれている。最近の研究においては、特別な知識がなくとも、スクリーニングすることができる判断基準が示されており、これらを活用し、災害時の判断基準とするための取り決めや訓練等の実現が期待される。

【スクリーニングの例】

 区分判断基準避難・搬送先例
概要実例
1治療が必要
  • 治療が必要
  • 発熱、下痢、嘔吐
  • 酸素
  • 吸引
  • 透析
病院
2日常生活に全介助が必要
  • 食事、排泄、移動が一人でできない
  • 胃ろう
  • 寝たきり
福祉避難所
3日常生活に一部介助や見守りが必要
  • 食事、排泄、移動の一部に介助が必要
  • 産前・産後・授乳中
  • 医療処置を行えない
  • 3歳以下とその親
  • 精神疾患がある
  • 半身麻痺
  • 下肢切断
  • 発達障害
  • 知的障害
  • 視覚障害
  • 骨粗しょう症
個室 注1
4自立
  • 歩行可能、健康、介助がいらない、家族の介助がある
  • 高齢者
  • 妊婦
大部屋

注1:個室とは、体育館以外の教室等を指す。
日本赤十字看護大学 国際・災害看護学領域 小原真理子氏 資料をもとに作成した例

2 福祉避難所の運営体制の整備

2.1 避難所担当職員の派遣、要配慮者班の設置

□ 市町村は、福祉避難所を開設したときは、福祉避難所担当職員を派遣する。当面は24時間対応が必要な場合も考えられることから、必ず福祉避難所担当職員の交代要員を確保する。大規模災害発生当初には、福祉避難所に派遣する職員を確保できない場合があるため、施設管理者等の協力を得て対応を図る。

□ 市町村は、自主防災組織や福祉関係者、避難支援者等の協力を得つつ、避難所の要配慮者班に従事する者の確保に努める。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所については、施設管理者に福祉避難所の管理運営等を委託することになるが、市町村は当該施設の入居者の処遇に支障を生じたり、施設の運営体制を阻害することのないよう、必要な支援を行う。

○ 地域における福祉避難スペース(室)については、福祉避難所担当職員を派遣し、避難所の管理運営にあたらせる。 また、一般の避難所の避難所運営組織の中に要配慮者班を設置している場合は、避難所の管理運営にあたるとともに、要配慮者班とも連携を図る。

2.2 福祉避難所の運営体制の整備、活動支援

□ 福祉避難所の設置及び管理に関しては、施設管理者に委託することになることから、市町村は、都道府県と連携し、福祉避難所と災害対策本部等との連絡調整、ボランティアの調整等を行う福祉避難所担当職員を配置するとともに、福祉避難所への専門的人材やボランティアの配置を行う。

□ 市町村は、事前に把握している有資格者や専門家等の情報、事前協定締結団体・事業者及び他の地方公共団体への職員派遣の要請により、有資格者等を確保し、地域における福祉避難スペース(室)に要配慮者班を設置する。要配慮者班は要配慮者からの相談等に対応するとともに、避難所では対応できないニーズ(例:介護職員、手話通訳者等の応援派遣、マット・畳等の物資・備品の提供)については、市町村の災害時要配慮者支援班に迅速に要請する。市町村では対応できないものについては、速やかに都道府県、国等に要請する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 大規模災害時、スペースや支援物資等が限られた状況においては、避難者全員又は要配慮者全員に対する機会の平等性や公平性だけを重視するのではなく、介助者の有無や障害の種類・程度等に応じて優先順位をつけて対応する。そのため、平時から市町村の災害時要配慮者支援班、避難所の施設管理者、避難所の要配慮者班は、要配慮者への確実な情報伝達や物資の提供等の実施方法について確認しておく。

3 福祉避難所における要配慮者への支援

3.1 福祉避難所の避難者名簿の作成・管理

□ 市町村は、福祉避難所に避難している避難者の名簿を作成する。避難者名簿は、随時更新する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所に避難している要配慮者の状況等を把握するため、避難者名簿を作成する。福祉サービスの利用意向、応急仮設住宅への入居、住宅の再建意向について継続的に把握する。

3.2 福祉避難所における支援の提供

□ 市町村は、福祉サービス事業者、保健師、民生委員等と連携を図り、福祉避難所に避難している要配慮者に対して必要な福祉サービスを提供する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 災害により身体的・精神的負担を受け、症状・状態が悪化する可能性もあることから、福祉避難所に避難している要配慮者の状態には十分に注意し、支援関係者間の情報共有を図る必要がある。

○ 福祉避難所において、要配慮者のニーズを把握し、適切に対応できるよう手話通訳者、要約筆記者、点訳ボランティア、音訳ボランティア等の人材の確保や福祉用具等の確保を図る。

○ 福祉避難所の避難者は、災害前は自宅で暮らしていたことが前提となる。福祉サービスの提供にあたっては、避難者が被災前に有していた自立する能力を損なわないような形で支援を行う。

○ 福祉避難所におけるホームヘルパーの派遣等、福祉各法による在宅福祉サービス等の提供は、福祉各法による実施を想定している。(災害救助法による救助としては予定していない。)

○ 東日本大震災においては、要配慮者のニーズにきめ細かく対応することが難しく、支援が行き届かなかったといわれている。過去の他の災害においても、多様なニーズをもつ要配慮者への支援には課題が指摘されている。このため、災害時に医療や福祉ニーズが想定される要配慮者を可能な限り平時に把握して対応を検討することが重要となる。また当事者と、その家族や支援者等による自助・共助の取り組みに寄り添い、多様なニーズに応えるための配慮に平時から取り組む必要がある。

3.3 緊急入所等の実施

□ 市町村は、在宅での生活の継続が困難な要配慮者や一般の避難所あるいは福祉避難所での避難生活が困難な要配慮者について、緊急入所、緊急ショートステイ等により適切に対応する。

□ 要配慮者の症状の急変等により医療処置や治療が必要になった場合は、医療機関に移送する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 緊急入所等が対応困難になった場合は、都道府県において緊急入所施設の確保・調整等の対応を図る必要がある。

4 福祉避難所の解消

4.1 福祉避難所の統廃合、解消

□ 市町村は、福祉避難所の利用が長期化し、避難所によって避難者数にばらつきが出るなどした場合は、避難所の統廃合を図る。

□ 福祉避難所の統廃合についての理解と協力を求めるため、避難している要配慮者及びその家族に十分に説明する。

□ 福祉避難所としての目的を達成したときは、必要な原状回復を行い、福祉避難所を解消する。

◆ 実施にあたってのポイント・留意点

○ 福祉避難所からの早期退所を促す方法として、福祉仮設住宅等への入居のほか、関係部局と連携を図り、高齢者世話付き住宅(シルバーハウジング)への入居又は社会福祉施設等への入所等を積極的に活用する。

付属資料

付属資料① 事例

1 平常時における取組事例

福祉避難所の避難者の判断基準の策定(東京都武蔵野市)

 避難者を避難所、おもいやりルーム、福祉避難所、医療機関に振り分ける基準を示している。それぞれの避難者を適切な避難場所に振り分けることによって、避難者の医療・保健衛生・福祉の維持を行う。
 早期の対応、継続的な判断基準などの必要性を考え、専門職以外の方でも対応できるような形が望ましいと考えている。医療系のトリアージのように特別な資格や技術を必要としなくても、簡易的な方法で市職員や住民等が入居者をトリアージできる方法について検討している。

資料:内閣府「避難行動要支援者対策及び避難所における良好な生活環境対策に関する取組事例集」平成26年

情報共有のための書式類の整備(宮城県仙台市)

 地域防災計画の改定においては、地域からの連絡になどにより指定避難所等への避難が困難な要援護者を把握した場合には、区(市)災害対策本部の判断により、自宅から福祉避難所への直接避難も可能とすることとした。
 また、生活物資の購入ができない状況が長期化する場合は、指定避難所等の避難者だけではなく、在宅要援護者に対しても地域団体等の協力も得ながら食料等の配布を行うこととした。

資料:内閣府「避難行動要支援者対策及び避難所における良好な生活環境対策に関する取組事例集」平成26年

一般避難所での福祉避難室の取組(京都府)

 災害時における要配慮者への支援として、福祉避難所の指定を進めているが、大規模災害の場合すべての要配慮者への対応は困難になることから、一般の避難所をユニバーサルデザインにするための指針として「福祉避難コーナー設置ガイドライン」を作成した。本ガイドラインは、国の指針の他、全国の先進的なガイドライン等を参考に、京都府のユニバーサルデザインの取り組みの一環として、識者からなる「あったか京都推進会議」での検討の他、障害者や難病者などの要配慮者の当事者団体からの意見を反映している。
 府内市町村や関係団体に広く配布し、市町村が実施する避難所における福祉避難コーナーの設置訓練の実施支援の他、要配慮者当事者団体、民生児童委員や自治会長など地域住民を対象とした要配慮者支援を推進する研修会等にも広く活用していただくなど、要配慮者を支援できる体制の構築を進めている。

資料:京都府提供資料

災害福祉広域支援ネットワーク構築(東京都社会福祉協議会)

 東京都社会福祉協議会では、東京都との委託契約に基づいて、高齢者・障害者等の要配慮者の福祉支援ネットワークを構築している。この福祉支援ネットワークは、大規模災害時に、高齢者・障害者等の要配慮者が、災害後の避難生活等によって生活環境が変化することで、状態が重度化することを防止するための災害対策強化の一つである。
 この福祉支援ネットワークは、災害福祉広域支援ネットワーク(災害時要配慮者支援センター)の構築と、災害福祉先遣チームの確保からなる。災害時には、災害福祉先遣チームが把握した現地被災状況に関する情報を元に、災害福祉広域支援ネットワークが、人的支援の調整を行う。社会福祉協議会が運営の主体である為、ボランティアも人的支援の調整対象である他、ボランティアがもつ現地の情報を集約しやすい点が特徴的である。
 ①災害時要配慮者支援センター
 災害時要配慮者支援センターは、国が各都道府県単位で進めている「災害福祉広域支援ネットワークの構築支援事業」の東京都における本部機能を担う。
 同センターは平常時、緊急期、応急期、復旧期以降と災害の全フェーズに渡って一貫して災害時の要配慮者対策に関わる。平常時においては、都内の要配慮者支援関係者(東京都福祉保健局、東京都社会福祉協議会、区市町村、区市町村社会福祉協議会、福祉施設の種別毎の全都的組織、都内職能団体等)からなる、災害時の活動体制の構築を推進する。緊急期、応急期においては、被災地域の要配慮者に対する支援体制を把握して、福祉専門職等の人的支援の調整を行う。復旧期以降は、現地の福祉ニーズに基づいた福祉専門職等の応援派遣等の支援を行う。
 同センターは、災害発生時あるいは災害が発生する可能性があると認められた場合や、東京都あるいは区市町村において、災害対策本部が設置された場合等に、東京都が設置して、東京都社会福祉協議会が運営する。
 ②災害福祉先遣チーム
 災害福祉先遣チームは、専門職の視点で被災地の状況と福祉支援力の状態に関する情報収集を行うためのチームである。同チームが避難所、福祉避難所、福祉施設、区市町村社会福祉協議会、病院等を回り、現地の状況を把握する。把握した情報は、現地災害対策本部と協議の上、災害時要配慮者支援センターに伝える。災害時要配慮者支援センターは、災害福祉先遣チームからの報告を基に、現地の状況や福祉専門職等の支援の必要性を把握して、支援の調整を行う。
 災害福祉先遣チームは、災害時要配慮者支援センターあるいは東京都社会福祉協議会事務局長が派遣の有無を決定する。災害福祉先遣チームは、発災害後のなるべく早い時期から被災地に入って、現地の状況を把握することが期待されている。
 災害福祉先遣チームは高齢者福祉施設職員や児童福祉施設職員等、福祉施設職員を主体としたチームと、社会福祉士や介護福祉士等専門職を主体としたチームを想定しており、災害時には都内の各施設や職能団体に対して、メンバーの派遣を依頼する。

資料:東京都社会福祉協議会提供情報

社会福祉施設、医療機関での連携 (福島県における事業者間の取組)

 福島県では、福島県社会福祉協議会の内部組織である福島県老人福祉施設協議会が、東日本大震災とその後の東京電力福島第一原子力発電所事故後の対応の反省を踏まえて、福島県内の老人福祉施設間の連携強化に取り組んでいる。具体的には、福島県老人福祉施設協議会の構成員である養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、ケアハウス及びデイサービスセンター内で、被災した施設を非被災施設が支援する仕組みを構築して、災害時には被災者の受け入れ調整や、給食、給水および生活必需品の提供、応急措置に必要な職員の派遣や資材物資の提供等を実施することとしている。
 まずは福島県内での支援調整を行うが、県外からの支援が必要と判断される場合には、より広域的な支援の仕組みである、東北ブロック・指定都市の災害時相互支援協定に基づいて、全国老人福祉施設協議会等と協議の上、被災地への支援要請を行う。

資料:福島県老人福祉施設協議会提供情報

福祉避難所を設置せず社会福祉施設で要配慮者を受入ることを原則とする(愛知県田原市)

 福祉避難所開設の必要が生じた場合、施設・設備等が整っている市内の福祉施設で受入れが行えるよう、市内事業者と協定を締結した。収容能力等により協定福祉避難所での受入れが困難な場合には、福祉避難所(市内福祉センター等4か所)を開設することとした。

資料:内閣府「避難行動要支援者対策及び避難所における良好な生活環境対策に関する取組事例集」平成26年

避難所設置・運営訓練等の実施(大分県社会福祉協議会)

 沿岸部にある福祉施設入所者や利用者が、内陸部にある福祉施設やホテルに避難し、実際に宿泊するという「訓練」を年間6回行った。訓練による課題なども踏まえながら、県と県社協で「福祉避難所開設・運営マニュアル」を作成し、指定促進に活用するとともに、福祉避難所や市町村、市町村社協等に配布した。

資料:内閣府「避難行動要支援者対策及び避難所における良好な生活環境対策に関する取組事例集」平成26年

指定施設周辺の住民に対する啓発(高知県高知市)

 福祉避難所運営については、大規模災害時を想定しているが、その際市職員による運営は困難であることから、指定時には福祉避難所指定施設近隣住民に対し説明し、福祉避難所運営に協力を依頼している。
 また、介護等行うための専門職員が不足することが想定されるため、市内ヘルパー事業所やケアマネージャー事業所等訪問系事業所と支援員確保のための協議を進めることとしている。
 大規模災害時は遠方よりの支援が困難であるため、支援員確保が課題となる。このため、指定時には近隣地区住民と協議をし、福祉避難所運営、特に食事の準備や清掃等収容避難所でも行うこととなる活動についての支援を依頼している。
 また、物資についても災害発生直後から搬送することが困難となることが想定されるため、各福祉避難所への分散備蓄を行うこととし、県補助金を活用して各社会福祉施設に対し整備補助を行う等取り組みを進めている。

資料:内閣府「避難行動要支援者対策及び避難所における良好な生活環境対策に関する取組事例集」平成26年

2 災害時における取組事例

感染症に対する措置の要望(平成19年能登半島地震、石川県輪島市)

 輪島市では、一般の避難所において感染症が発生した。これを受け、福祉避難所の協定を締結した高齢者関係の施設長から、災害時においては、ライフラインが復旧していない中、あるいは通常の状態に比して衛生面が確保できていない中での定員を超えた受入を行っている状態や福祉避難所の開設にあたっては、施設内において感染症が発生しやすい状況となることが懸念される。このため、市区町村等の枠を超えた広域的な調整について県が主体となって早期に取り組み、関係医療機関や社会福祉施設等との協定締結が必要であるとの要望がなされた。

資料:石川県輪島市提供情報

福祉避難所の設置実績(平成19年能登半島地震、石川県輪島市)

 石川県輪島市では、平成19年の能登半島地震の発生時に、災害救助法に基づき、我が国で初めてとなる福祉避難所を老人保健施設デイケア内(20畳を超える和室部分を割り当て)に設置をした。
 全ての経験が初めてであり、手探り状態での福祉避難所運営を強いられた中において、福祉避難所の介助員については、幸いにも当該施設の退職者の自宅が大きな被害がなかったことから、その方を確保することができた。
 次に、福祉避難所の利用については、地域包括支援センター職員が一般の避難所と密接な連携を確保し、そこで生活をすることにより何らかの支障が生ずると考えられる要配慮者等について調査を行ったうえで利用者を決定するという方法を採用した。この結果、実人数13人、延べ320人が利用し、利用者からは「夜間のトイレの心配解消、行き届いた食事内容、生活物資の配給、最小限のプライバシーが確保されていたことなどについて、福祉避難所に避難できてよかった。」という意見が多く出された。また、対象者を絞っていること(状態が似かよっている方が避難してきている)、避難人数も限られていることや、避難日数も一般の避難所に比して長くなることから、時間の経過とともにひとつのコミュニティが形成されていったのも大きな特徴であった。
 この福祉避難所の設置運営の効果を踏まえ、輪島市においては、高齢者関係施設、障害者関係施設、妊産婦・乳幼児関係施設を有する市内外20施設との間で、協定を締結してきたところである。(被災地における福祉避難所の円滑な運営は、福祉避難所の現場で避難者のお世話を行う介助員と、福祉避難所を総合的にコーディネートする市職員に懸かっているため、輪島市の協定では、原則として、市内法人相互の協力体制を盛り込んでいる)

資料:石川県輪島市提供情報

福祉避難所の設置実績(平成19年新潟県中越沖地震、新潟県)

 新潟県では、平成16年の新潟県中越地震の発生時に、小千谷市において総合体育館に設けられた別室スペース、ケアハウスにおいて、災害時要配慮者のための福祉避難所が、必要に後押しされる形で事実上設置された。しかし、これらは災害救助法に基づく正式なものではなかった。
 それらの経験を踏まえ、平成19年の新潟県中越沖地震においては、発災時以降、積極的に福祉避難所の設置を呼びかけ、結果的に、柏崎小学校は空き教室を利用したコミュニティデイホームの部屋及び音楽室を、高校はセミナーハウスを、特養やデイサービスセンターは空きスペースを福祉避難所として利用し、9箇所の福祉避難所が設置された。
 福祉避難所への介護専門職の派遣については、県老人福祉施設協議会、県介護老人保健施設協会、県ホームヘルパー協議会を通じて、県内外から介護専門職の派遣を要請し、延べ1,233人の介護専門職から協力があった。
 今回設置された福祉避難所では、延べ46日間、2,335人が利用した。本格的な福祉避難所の設置は新潟県中越沖地震が初めてといえる。また、発災翌日から設置され、設置時期も極めて早く、組織的に行われたのが特徴である。利用者からは、「おむつなどの生活物資、食事内容に配慮が行き届いていた。」「避難対象を絞った避難所は安心できる。」という意見が出た。
 一方、課題としては、「福祉避難所の意義について、市町村の理解と周知徹底が課題」、「福祉避難所の設置場所をあらかじめ決めておく必要がある」「福祉避難所の運営に必要な看護職をボランティアでなくきちんと確保する」ことが挙げられている。

資料:「新潟県中越沖地震における福祉保健部の対応状況」(平成20年1月、新潟県福祉保健部)及び新潟県提供情報

現地保健福祉本部の設置(平成19年新潟県中越沖地震、新潟県)

 新潟県では、被災地の保健福祉に関する情報収集と迅速な対応を図るため、柏崎保健所内に現地保健福祉本部を設置した(設置期間:7月21日から8月10日)。同本部は、県福祉保健部副部長を本部長、同健康対策課長を副本部長とし、県福祉保健部や柏崎保健所、県社会福祉士会、県介護福祉士会職員等から構成され、①柏崎市の関係部署との連絡調整、②健康福祉ニーズ調査の実施、③福祉介護専門職の活動支援、④高齢者総合相談窓口、を主な任務とした。特に、多数の看護職、福祉介護職の受入調整や在宅の要支援者に対する健康福祉ニーズ調査の実施、高齢者等からの相談に対するワンストップ・サービスの提供等を通じて、要配慮者の避難生活支援の面で成果を上げることとなった。

資料:「新潟県中越沖地震における福祉保健部の対応状況」(平成20年1月、新潟県福祉保健部)及び新潟県提供情報

避難所アセスメントを実施して避難所の健康課題の解決等につなげる(宮城県東松島市)

 避難所内全体に対して感染症予防、生活習慣病発症・悪化予防、被災者の心身の機能の低下等を予防し、避難所内の要医療者、要援護者、要支援者の早期発見、処遇対応を行うことを目的として、避難所毎に避難所、避難者の健康面に関するアセスメント、モニタリングを行った。
 この結果を踏まえ、避難所運営者、避難所健康リーダー、医療救護チーム、保健福祉分野の専門職、福祉避難所、ボランティア等と連携し、避難所の健康課題の解決、衛生環境の改善、避難者への個別支援を避難所閉鎖の平成23 年8月末まで行った。

資料:内閣府「避難行動要支援者対策及び避難所における良好な生活環境対策に関する取組事例集」平成26年

要援護者の安否確認(平成25年台風26号、東京都大島)

 東京都大島では、平成25年台風26号の際に、町と地域包括支援センターで協議して、要援護者名簿の対象を「要介護認定を受けている人」と暫定的に決めて要援護者名簿の作成が行われた。大島では、障がい者、難病患者等、避難を要する方の多くが高齢者であったため、要援護者名簿への掲載の基準として「要介護認定」を指標とすることに妥当性があり、こうして作られた名簿に、町が把握していたその他の障がい者・難病者等の追加が行われた。
 地域包括支援センターが中心となって、ケアマネジャーと情報交換をしながら名簿の作成が進められ、この名簿を元にして、福祉避難所の受入が行われた。

資料:社会福祉法人東京都社会福祉協議会「災害時要援護者支援活動事例集」平成26年

障害者や高齢者に配慮した食事の提供(平成23年東日本大震災、宮城県仙台市)

 栄養士が中心となり、避難者への炊き出しと栄養管理を行った。重度障害者や高齢者が多く、通常非常食(アルファー米等)をそのまま食すことが困難であった。このため、非常食を再調理することで、嚥下食等個々人の身体状況や好みに合わせて食形態を変化させながら炊き出しを行った。
 通常配給されるアルファー米や乾パンは、特に高齢者や嚥下に障害を持つ方々にとっては、非常に食しにくいものであった。仙台市宮城野障害者福祉センターでの福祉避難所では、非常食を再調理し、形状を変えることで何とか食すことが可能であったが、福祉避難所に限らず、食される対象者等も考慮した非常食(レーション)の形状や種類についても見直しが必要と思われる。
 また、非常食以外の通常食材については、震災後、日を追うごとに比較的入手することが可能であったが、調味料などの保存食品は支援物資も含めて入手が困難であった。

資料:財団法人仙台市障害者福祉協会「ともに、前へ 仙台 東日本大震災の取組記録」平成25年

福祉避難所を開設した社会福祉施設への外部からの支援~発災直後~(平成25年台風26号、東京都大島)

 東京都大島では、平成25年台風26号の際に社会福祉法人の運営する大島老人ホームにおいて福祉避難所が開設された。約100人の入居者に加えて、福祉避難所を開設した同施設に対して、8日間に要援護者204名、付添い延べ65名の計269名の受入が行われた。福祉避難所の運営は、東京都から派遣された保健師と看護師、日本赤十字社の看護職員、大島町職員、法人職員で行われた。

資料:社会福祉法人東京都社会福祉協議会「災害時要援護者支援活動事例集」平成26年

福祉避難所を開設した社会福祉施設への外部からの支援~発災後約2週間後~(平成25年台風26号、東京都大島)

 東京都大島では、平成25年台風26号の際に社会福祉法人の運営する大島老人ホームにおいて福祉避難所が開設された。約100人の入居者に加えて、福祉避難所を開設した同施設に対して、出来るだけ早く通常の体制へと復帰することを支援するため、現地施設からの要請に基づいて、東社協高齢者施設福祉部会の会員施設から職員の応援派遣が行われた。
 介護職員の派遣調整は東社協福祉部高齢担当が担当した。受入施設側のニーズを把握して、派遣職員が担う業務を事前に調整した上で派遣調整が行われた。施設に最初に着任する派遣者は、派遣先の施設と受入環境を調整する役割も担う必要があるため、ある程度業務経験がある人材が望ましいと考えられた。そのため、50代の相談員と介護職の2名、20代の介護職1名の計3名が派遣された。

資料:社会福祉法人東京都社会福祉協議会「災害時要援護者支援活動事例集」平成26年

付属資料② ツール類(参考)

 次ページ以下に、福祉避難所ワーキンググループの参加委員を中心として、提供いただいたツール類を掲載する。本資料掲載のツール類は、あくまで市区町村等が取組む上での参考のために掲載するものであって、内閣府としての統一した様式をまとめたものではない点、留意すること。

転載者注:ツール類は、HTML化には時間を要するため、現在は、まだ作業をしていません。JDFいわて支援センターのサイトに、ワード版と機械的にHTML化した文書が掲載されていますので、そちらをご参照ください。
http://jdf.himawari-iwate.org/jdfiwate_20160420.html


出典

内閣府.防災情報のページ:避難所の生活環境対策.
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/ (参照 2016-04-20)

内閣府.福祉避難所の確保・運営ガイドライン(平成28年4月)(PDF版)
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/1604hinanjo_hukushi_guideline.pdf (参照 2016-04-20)