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避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針

平成25年8月
(平成28年4月改定)
内閣府(防災担当)

はじめに

○ 平成23年3月11日に発生した東日本大震災においては、

  • 被災者の心身の機能の低下や様々な疾患の発生・悪化が見られた
  • 多くの高齢者や障害者、妊産婦、乳幼児を抱えた家族、外国人等が被災したが、避難所のハード面の問題や他の避難者との関係等から、自宅での生活を余儀なくされることも少なくなかった
  • ライフラインが途絶し、食料等も不足する中、支援物資の到着や分配に係る情報など必要な情報が在宅の避難者には知らされず、支援物資が在宅の避難者に行き渡らないことが多かった
  • 県や市町村の域外に避難する広域避難者に対して、情報、支援物資、サービスの提供に支障が生じた

等の課題が生じた。

○ こうした東日本大震災の課題を踏まえ、平成25年6月に災害対策基本法を改正し、避難所における生活環境の整備等については同法第86条の6に、避難所以外の場所に滞在する被災者についての配慮については同法第86条の7に、それぞれ規定されたところである。

○ この法改正を受け、市町村(特別区を含む、以下同じ。)等には、避難所における良好な生活環境の確保等に努めることが求められるが、その取組にあたっての参考となるよう、この「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を策定したものである。

○ 市町村等においては、地域の特性や実情を踏まえつつ、発災時に、避難所における良好な生活環境が確保されるよう、平時より、本取組指針を活用し、適切に対応いただきたい。

○ なお、本取組指針の下に、より具体的な対応について示すものとして、

  • 避難所運営ガイドライン
  • 福祉避難所の確保・運営ガイドライン
  • 避難所におけるトイレの確保・運営ガイドライン

を作成しているので、併せて活用していただきたい。

災害対策基本法

 東日本大震災の教訓を踏まえ、災害対策の強化を図るため、災害対策基本法等の一部を改正する法律(平成25年法律第54号)が、平成25年6月21日に公布され、一部施行されたことに鑑み、本取組指針に関係する箇所を以下のとおり抜粋した。

 (基本理念)
第二条の二 災害対策は、次に揚げる事項を基本理念として行われるものとする。
1~4 (略)
5 被災者による主体的な取組を阻害することのないよう配慮しつつ、被災者の年齢、性別、障害の有無その他の被災者の事情を踏まえ、その時期に応じて適切に被災者を援護すること。
(以下、略)

 (施策における防災上の配慮等)
第八条 (略)
2 国及び地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、特に次に掲げる事項の実施に努めなければならない。
 一~十三 (略)
 十四 被災者の心身の健康の確保、居住の場所の確保その他被災者の保護に関する事項
 十五 高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下「要配慮者」という。)に対する防災上必要な措置に関する事項
 十七 被災者に対する的確な情報提供及び被災者からの相談に関する事項
 (以下、略)

 (指定避難所の指定)
第四十九条の七 市町村長は、想定される災害の状況、人口の状況その他の状況を勘案し、災害が発生した場合における適切な避難所(避難のための立退きを行つた居住者、滞在者その他の者(以下「居住者等」という。)を避難のために必要な間滞在させ、又は自ら居住の場所を確保することが困難な被災した住民(以下「被災住民」という。)その他の被災者を一時的に滞在させるための施設をいう。以下同じ。)の確保を図るため、政令で定める基準に適合する公共施設その他の施設を指定避難所として指定しなければならない。
2 第四十九条の四第二項及び第三項並びに前二条の規定は、指定避難所について準用する。この場合において、第四十九条の四第二項中「前項」とあり、及び同条第三項中「第一項」とあるのは「第四十九条の七第一項」と、前条中「第四十九条の四第一項」とあるのは「次条第一項」と読み替えるものとする。
3 都道府県知事は、前項において準用する第四十九条の四第三項又は前条第二項の規定による通知を受けたときは、その旨を内閣総理大臣に報告しなければならない。

 (指定緊急避難場所と指定避難所との関係)
第四十九条の八 指定緊急避難場所と指定避難所とは、相互に兼ねることができる。

 (避難所における生活環境の整備等)
第八十六条の六 災害応急対策責任者は、災害が発生したときは、法令又は防災計画の定めるところにより、遅滞なく、避難所を供与するとともに、当該避難所に係る必要な安全性及び良好な居住性の確保、当該避難所における食糧、衣料、医薬品その他の生活関連物資の配布及び保健医療サービスの提供その他避難所に滞在する被災者の生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 (避難所以外の場所に滞在する被災者についての配慮)
第八十六条の七 災害応急対策責任者は、やむを得ない理由により避難所に滞在することができない被災者に対しても、必要な生活関連物資の配布、保健医療サービスの提供、情報の提供その他これらの者の生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

目次

第1 平時における対応

1 避難所の組織体制と応援体制の整備握

(1)組織体制、人的体制

①体制の整備

ア 平時から市町村の防災関係部局、福祉関係部局及び保健衛生関係部局が中心となり、関係部局等が協力して、会議を開催し、要介護高齢者、障害児者、妊産婦、乳幼児、アレルギー等の慢性疾患を有する者、外国人等(以下「要配慮者」という。)や在宅者への支援も視野に入れて連携し、避難所についての災害時の対応や役割分担などについて決めておくこと。

イ 各避難所の運営について、あらかじめ運営責任者を決定しておくほか、市町村が中心となり、学校等施設の管理者、自治会・自主防災組織等との間で、日頃からの協力関係を構築しておくことが望ましいこと。

②要員の確保等

ア 災害が発生し、又は発生するおそれのある場合には、職員が決められた場所に自発的に参集できる体制を整備しておくこと。

イ 災害業務の実践を経験して実務に精通した職員をあらかじめ登録し、災害時に直ちに活用できるようにしておくこと。

ウ 市町村の職員は、交通機関の混乱や途絶の可能性があることを想定し、自転車や徒歩を含む参集場所への複数の交通手段を確保しておくこと。

エ 交通機関の混乱や途絶、また、職員自身の被災などによる救助要員の不足が想定されるため、緊急時における当面の間の、他部局や地方機関の職員による応援等の補完体制を整備しておくこと。

オ 市町村の職員は、災害時、自らの被災状況や、夜間・休日であるなどの理由により、早急にかけつけられない可能性も常にあるため、それを前提として、地域住民等関係者・団体と避難所の鍵の管理や避難所の開設方法について事前に取り決めておくこと。

③研修や訓練の実施

ア 平時から災害時を想定した職員の参集訓練を実施しておくこと。

イ 迅速かつ的確に避難所生活の支援を実施することができるよう、担当職員に対し、実践的な研修や訓練を実施しておくこと。

ウ 様々な要配慮者の特性と、それに応じた接し方について、避難所の運営管理者となりうる者を対象とした研修を実施すること。

(2)物資確保体制の整備

①食料・飲料水、毛布等の生活必需品は避難生活に不可欠であることから、災害が発生した場合に直ちにこれを提供できるよう、備蓄の推進、他の自治体との災害援助協定の締結、事業者団体等との物資供給協定の締結等を図っておくこと。また、物資搬送体制の構築等も図っておくこと。さらに、救援用物資集積基地の設置についても検討しておくこと。

②①による調達物資のほか、義援物資が大量に搬入されてくることも考えられるので、調達物資との調整や、ボランティアとの連携、民間事業者の活用を含めた受け入れ体制、運搬・配付体制についても整備しておくこと。

2 避難所の指定

(1)指定避難所の指定等

①指定避難所の指定

ア 避難所における生活環境の整備について万全を期するため、地域的な特性や過去の教訓、想定される災害等を踏まえ、災対法第49条の4から同条の8に基づき、一時的に難を逃れる緊急時の避難場所とは区別して、被災者が一定期間生活する場所としての避難所を指定すること。なお、避難場所と避難所とは、相互に兼ねることができること。

イ 発災時には当該地域の大多数の住民が避難することを想定し、避難所については、平時から事前に必要数を指定しておくこと。

ウ 当該地域に想定される災害に応じた被害想定を考慮し、可能な限り、施設自体が被災する危険性が少なく、住民が安全に避難することができるように、避難所の指定を進めること。なお、このような観点から、近隣の市町村にある避難所の利用が有用である場合には、あらかじめ協定を結ぶなどにより当該市町村の協力を得ることも考えられること。

エ 避難所として指定する施設については、災対法第49条の7に規定する政令で定める基準に沿って指定すること。

オ 上記ウの指定基準に加えて、避難所として指定する施設は、耐震性、耐火性の確保に加え、天井等の非構造部材の耐震対策を図り、災害により重大な被害が及ばないことが望ましいこと。また、生活面を考慮し、バリアフリー化された学校、公民館等の集会施設、福祉センター、スポーツセンター、図書館等の公共施設とすることが望ましいこと。

カ 管内の公共施設のみでは避難所を量的に確保することが困難な場合には、旅館、ホテル、企業の社屋の一部(ロビー、会議室等)、企業の研修施設や福利厚生施設(運動施設、寮・保養所等)等を活用できるよう事前に協定を締結するなどしておくこと。

②指定避難所となる施設の利用関係の明確化

ア 避難所をあらかじめ指定しようとする場合には、当該施設の管理(所有)者の理解・同意を得て指定するとともに、福祉避難スペース(室)の設置、物資の備蓄、災害時の利用関係、費用負担等について明確にしておくこと。

イ 学校を避難所として指定する場合については、学校が教育活動の場であることに配慮し、避難所としての機能は応急的なものであることを認識の上、事前に教育委員会等の関係部局や地域住民等関係者・団体と調整を図ること。
 文部科学省において「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」による「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」(平成24年7月25日)の報告書を公表しているので、これを参考にすること。

「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」最終報告(抄)

(平成24年7月)

2.「東日本大震災における学校等の対応等に関する調査研究」を踏まえた課題

⑤避難所運営について

 地域住民などと日常的に連携がとれていた学校等は、児童生徒等の安全確保や教育活動の早期正常化が円滑に進んだという報告もあり、事前に市町村防災担当部局や地域住民等関係者・団体と体制整備を図り、地域住民などが主体的に開設・運営できる仕組みづくりが重要と考えられる。

③指定避難所となる施設の整備について

ア 平時より、避難所として指定する施設をバリアフリー化等しておくことが望ましいこと。その際、防災・安全交付金や耐震対策緊急促進事業により、その工事費を国費により補助する等の支援が講じられているので、その活用も検討すること。

イ 避難所となる学校施設の整備については、公立学校施設整備事業等の支援が講じられており、文部科学省の「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」において「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」(平成26年3月)が取りまとめられているので、これを参考にすること。

ウ 平成12年度より入所施設附設の防災拠点型地域交流スペース整備事業が実施されたところであり、本事業を活用して入所施設を福祉避難所として積極的に整備することが適切であること。さらに、今後、南海トラフ巨大地震を念頭に置いて、在宅障害者向けの避難スペースの整備が社会福祉施設等施設費補助金の対象とされたので、その活用も検討すること。

④指定避難所以外の被災者への支援

ア 指定避難所として指定していない施設を発災後に避難所として使用した場合も、災害救助法に基づく支援の対象となり、災対法第86条の6に定める生活環境を確保すること。

イ 関係機関等との連携し、指定避難所以外の施設に避難した被災者の避難状況を把握すること。

ウ 指定避難所における食事提供や支援物資について、当該避難所のみならず、指定避難所以外の避難所を含め地域全体のために行われていることを周知徹底すること。

(2)福祉避難所の整備

 福祉避難所とは、要配慮者のために特別の配慮がなされた避難所のことであり、災害発生時に設置すると、災害救助法に基づく支援として、必要な人員の配置、設備、物資に要する費用について、一般の避難所の場合より加算された国庫負担を受けることができる。

①福祉避難所は、一般の避難所では生活することが困難な要配慮者が、避難所での生活において特別な配慮が受けられるなど、要配慮者の状態に応じて安心して生活ができる体制を整備するものであり、障害等の特性に配慮し、必要数確保されること望ましいこと。

②必要な人員の確保という観点から老人福祉センター、障害福祉施設及び特別支援学校等の施設(以下、「社会福祉施設等」という。)を活用することが望ましいこと。

3 指定避難所の周知

(1)避難所を指定した場合は、災対法第49条の7第3項に基づき、広報紙等により地域住民に対し周知を図るとともに、防災の日等に年1回以上は広報を行うなど、広報活動の徹底を図ること。また、広報媒体の種類として、要配慮者に配慮した点字版、音声版、拡大文字版などを準備しておくことが望ましいこと。また、避難所として指定した施設については、住民に分かりやすく避難所である旨を当該施設に表示しておくこと。

(2)福祉避難所を指定した場合は、その施設の情報(場所、収容可能人数、提供可能な支援内容、設備内容等)や避難方法について、分かりやすいパンフレット等を作成したり、福祉団体・福祉事業所・医療機関とも連携を図ったりするなど、要配慮者やその家族を含む地域住民に対し周知すること。その際、要配慮者が自分に合った避難所を選択できる状況となるように努めることが望ましいこと。

4 避難所における備蓄等

(1)食料・飲料水の備蓄

 避難所として指定した施設には、あらかじめ応急的に必要と考えられる食料・飲料水の備蓄に努めること。また、指定した避難所に食料・飲料水を備蓄しない場合は、避難所が開設された場合に備えて、食料・飲料水の供給計画を作成すること。
 その際、 食物アレルギーの避難者にも配慮し、アルファー米等の白米と牛乳アレルギー対応ミルク等を備蓄すること。なお、備蓄食料については、近年の食生活の向上と保存食の多様化を踏まえ、乾パン等の画一的なものだけにならないよう検討すること。食物アレルギー対応食品等についても、必要な方に確実に届けられるなど、要配慮者の利用にも配慮すること。また、避難所を運営する職員の食料等の確保を検討しておくこと。

(2)その他備蓄品の備蓄等

 被災者の生命、身体の保護を優先とし、次に示した備蓄品の備蓄を検討しておくこと。また、備蓄品の品目、所在、配付方法については、事前に市のホームページや広報等で公開することが望ましいこと。

①災害用トイレの備蓄や整備を進めておくこと。

②高齢者、乳幼児、女性等に配慮し、紙おむつや生理用品を備蓄しておくこと。

③避難所の感染症予防のため、マスクや手指消毒液等を備蓄しておくことが望ましいこと。

④発災時から、灯りのある生活及び通信環境を確保するため、自家発電装置、非常用発電機及び衛星電話が避難所には設置されていることが望ましいこと。なお、通信手段の確保において、無線機や避難所の衛星電話の使用について定期的に確認を行っておくべきであること。また、避難所に備え付けのその他の物品についても使用が可能か確認しておくこと。

⑤マッチ・使い捨てライター・プロパンガス・固形燃料等の燃料を備蓄しておくこと。なお、大規模・広域的な災害での外部支援の期間を見通し、必要十分な燃料を備蓄しておくことが望ましいこと。ただし、ガソリン、石油等については、消防法で定める危険物に規定されているため、備蓄にあたっては同法との関係に留意する必要があること。

⑥その他生活必需品等については、地域、時期等により、様々なものが考えられ、個々の実情において決定するものと考えられるが、被災者の生命、身体の保護を念頭に置き、次のとおり例示したものを備蓄しておくことが望ましいこと。
 ア タオルケット、毛布、布団等の寝具
 イ 洋服上下、子供服等の上着、シャツ、パンツ等の下着
 ウ タオル、靴下、靴、サンダル、傘等の身の回り品
 エ 石鹸、歯磨用品、ティッシュペーパー、トイレットペーパー等の日用品
 オ 炊飯器、鍋、包丁、ガス用具等の調理道具
 カ 茶碗、皿、箸等の食器

(3)生活用水の確保

 飲料水の他に、トイレや避難所の清掃、洗濯、器材の洗浄などの用途に欠かせない「生活用水」の確保が必要になる。命の継続に不可欠な飲料水は支援物資として確保されるが、その他の用途の水についても、感染症の防止等、衛生面の観点から、衛生的な水を早期に確保できるようタンク、貯水槽、井戸等の整備に努めることが望ましいこと。

5 要配慮者に対する支援体制

(1) 発災時の要配慮者の支援のため、一般の指定避難所内において、必要な場合に高齢者、妊婦・乳幼児、障害者等が福祉避難スペース(室)ないし個室を利用できるようあらかじめ考慮するとともに、特段の支援を必要とする要配慮者が利用する福祉避難所を整備すること。併せて、入院・入所が必要となった場合に備えた医療施設・社会福祉施設等との連携体制を構築しておくこと。

(2) 要配慮者が必要とする育児・介護・医療用品や、日常生活上の支援を行うために必要な紙おむつ、ストーマ用装具等の器材について、備蓄又は調達体制の構築を検討しておくこと。

(3)在宅避難する要配慮者の安否確認、物資提供、医療・福祉等の支援の方法についても検討しておくこと。

(4)上記の支援が的確に実施されるよう、平時から自主防災組織、地区代表者、地域の医療・福祉の関係者等と連携体制を構築しておくこと。

(5) 被災生活が長期にわたると想定される場合、要配慮者の状況に応じて被災地外の適切な施設等に避難させることについて、他の市町村等と協定を締結しておくことが望ましいこと。

6 避難所運営の手引(マニュアル)の作成

(1) 避難所の運営が円滑かつ統一的に行えるよう、あらかじめ、「避難所運営ガイドライン」を参考にするなどして、避難所運営の手引(マニュアル)(以下、「手引」という。)を作成し、避難所の良好な生活環境を確保するための運営基準やその取組方法を明確にしておくこと。なお、要配慮者に対する必要な支援についても明確にしておくこと。

(2) ページ数の多い手引は活用し難いこと、また避難所のあらかじめ決められた運営責任者が被災することも想定し、市町村の避難所関係職員以外の者でも避難所を立ち上げることができるよう分かりやすい手引の整備が必要であること。

(3) 手引に基づき、関係機関の理解や協力を得て、平時から、避難所の運営責任予定者を対象とした研修や、地域住民も参加する訓練を実施すること。

第2 発災後における対応

1 避難所運営等の基本方針

(1) 発災後の避難所の運営については、

  • 発災直後に避難・救助により助かった命の確保が最優先事項となる時期
  • 次第に生活が安定し始め、被災者自身による自治的な運営が行われる時期

といったフェーズごとに、その設置から解消に至るまで、避難所の設置やそのレイアウト作り等のハード面だけでなく、その運営等に係るソフト面についても、人員や物資が限られる中、最優先ですべき事項や、フェーズの移行につれて重要度が増してくる事項等を整理し、適切に対応していくこと。具体的には、「避難所運営ガイドライン」を参考にすること。

(2) 市町村の災害対策本部の下に、各避難所における被災者のニーズの把握や他の地方公共団体等からの応援及びボランティア等の応援団体の派遣調整等をする「避難所支援班」を組織し、避難所運営を的確に実施することが望ましいこと。

(3) 避難所のスペース、支援物資等が限られた状況においては、避難者全員、または要配慮者全員に対する機会の平等性や公平性だけを重視するのではなく、介助者の有無や障害の種類・程度に加え、性別、環境が変わったことによる健康状態や声の出しやすさ、本人の理解、家族や周囲の状況等、様々な事情を考慮して優先順位をつけ、高齢者、障害者等の枠組みにとらわれず、「一番困っている人」から柔軟に、機敏に、そして臨機応変に対応することが望ましいこと。

(4) 避難所を運営するにあたっては、避難所で生活する避難者だけでなく、その地域で在宅にて避難生活を送る者も支援の対象とし、地域の避難所を、情報収集や情報提供、食料・飲料水、物資、サービスの提供等に関する地域の支援拠点とすることが適切であること。

2 避難所の設置と機能整備

(1)避難所の設置

①災害が発生した場合には、指定避難所の被災状況、周辺火災の延焼等の二次災害の可能性、危険物の有無などの安全面を直ちに確認の上、避難所を設置すること。その際、設置した避難所の数では不足する場合には、公的宿泊施設、旅館、ホテル等の借り上げ等により避難所を確保すること。

②ライフライン機能が容易に回復せず、孤立したり、避難が長期化すると見込まれたりする場合は、避難所での生活環境が悪化したり、十分な支援が行き届かったりすることもあるため、当該地域に避難所を設置・維持することの適否を検討した上で、行政やボランティア等による支援が享受できる地域への避難やさらなる広域一時滞在について検討することが必要であること。

③超大規模かつ超広域的な災害時は、避難者が大量に発生し、通常想定している避難所だけでは、大きく不足することが想定されることから、避難所への避難について、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児を抱えた家族、子どもなど災害発生時に配慮を要する者を優先的に避難させたり、住宅の被災が軽微でライフラインが途絶されていない被災者は在宅で留まるように誘導したりすることも検討しておくこと。

(2)避難所の機能

①避難所には、緊急物資の集積場所となる、情報発信の場所となる、情報を収集する場所となる、在宅避難者が必要な物資を受け取りに来る場所となるという役割があるので、運営上、避難所避難者のためだけの施設とならないようにすること。

②福祉避難スペース(室)又は個室の設置にあたっては、一般の避難所環境と比べて劣悪な環境としないことに留意すること。また、被災者の状況をアセスメントした上で、スペースの利用、個室への入室等を調整し、優先順位が高い被災者から被災者自身の選択でスペースを利用したり個室へ入室したりできるようにすることが適切であること。

③障害児者用トイレを障害児者以外の被災者が使用することで本来、障害児者用トイレの使用を必要とする障害児者が利用できないということがないようにするとともに、要配慮者のトイレの使用を支援する要員も確保するよう努めること。なお、要員については、避難所の運営にあたり、被災者自身の役割分担を決める中で確保できるよう努めること。

④避難所には地区の情報拠点として、健康等の生活支援等の相談窓口を開設すること。また、就労相談のためハローワーク職員が指定避難所を巡回するようハローワークへ要請することが望ましいこと。

⑤物理的障壁の除去(バリアフリー化)がされていない施設を避難所とした場合には、要配慮者が利用しやすいよう、速やかに障害児者用トイレ、スロープ等の仮設に努めること。

⑥常時の介護や治療が必要となった者について、速やかに特別養護老人ホーム等への入所や病院等への入院手続きをとること。また、このような状況を想定し、あらかじめ関係機関と連絡調整しておくこと。

⑦災対法86条の6に基づき、被災者の避難所における生活環境の整備のため、優先順位を考慮して、必要に応じ、次の設備や備品を整備するとともに、被災者に対する男女別のトイレ・更衣室・洗濯干し場や授乳室の設置等によるプライバシーの確保、暑さ寒さ対策、入浴及び洗濯の機会確保の他、子どもの遊びや学習のためのスペースの確保等、生活環境の改善対策を講じること。
 ア 畳、マット、カーペット、簡易ベッド
 イ 間仕切り用パーティション
 ウ 冷暖房機器
 エ 洗濯機・乾燥機、洗濯干し場
 オ 仮設風呂・シャワー
 カ テレビ・ラジオ
 キ 簡易台所、調理用品
 ク その他必要な設備・備品

⑧避難生活が長期化した場合、被災者の孤立感を解消し、生きがいや居場所を見出し、心身の健康を確保していくため、避難所内に喫茶、足湯、集会所等の交流の場を提供することが望ましいこと。

(3)福祉避難所の設置

 災害が発生し、必要と認められる場合には、直ちに福祉避難所を設置し、福祉避難所に避難することが必要な要配慮者を避難させること。

3 避難所リスト及び避難者名簿の作成

(1) 避難所の状況を把握し、支援を漏れなく実施するため、市町村の避難所担当部門は開設している避難所をリスト化しておくこと。

(2) 避難者の数や状況の把握は、食料の配給等において重要となることから、避難者一人一人に氏名、生年月日、性別、住所、支援の必要性の有無等を記帳してもらい、避難者名簿を作成することが望ましいこと。

(3) そのため、こうした個別の情報を記載でき、情報の開示先、開示する情報の範囲についての被災者の同意の有無についてもチェックできる避難者名簿の様式をあらかじめ作成し、印刷して避難所の備蓄倉庫等に保管しておくことが望ましいこと。また、避難所運営訓練をとおして自治体担当者と住民がこれら様式を普段から活用できるようにしておくこと。

(4) 作成した避難者名簿の情報については、災対法第90条の3に基づき作成する被災者台帳に引き継ぎ、継続的な被災者支援に活用することが適切であること。

4 避難所の運営主体

(1)運営責任者の配置

①避難所を設置した場合には、運営責任者を配置し、避難所の運営を行うこと。

②運営責任者として予定していた者の配置が困難なこともありうるため、当面本来の施設管理者等を運営責任者に充てることも考えられるので、運営責任者の役割について施設管理者の理解を十分に深めておくこと。

③災害発生直後から当面の間は、運営責任者について、昼夜での対応が必要となることが予想されるため、交替ができる体制に配慮すること。

(2)運営責任者の役割

①避難所に避難した被災者の人数、性別、世帯構成、被害状況、必要な支援の内容など支援にあたり特別な配慮を要する者の状況等を可及的速やかに把握し、当該避難所における避難者の名簿を第2の3の(2)のとおり整備すること。

②避難所に必要な食料・飲料水、毛布等の生活必需品の過不足を把握し調整するため、常に、市町村等の行政機関(災害対策本部)や近接する他の避難所と連絡をとること。

③避難所の運営にあたって、例えば次のような班を設置し、避難者自身の役割分担を明確化することにより、避難者自身が避難所運営に貢献できる体制を整えること。また、必要に応じて、避難所内の役割分担に問題が生じた際に、それを調整するコーディネーターを置くこと。

【班構成の参考例】

班名役割
調整班各班の業務の調整
情報班市町村等との連絡・調整の窓口、情報収集と情報提供
管理班避難者数等の把握、施設の利用管理
相談班避難者のニーズ把握、避難者からの相談対応
食料班食料配給、炊き出し
物資班物資の調達・管理、配給
環境班生活衛生環境の管理、避難所内の清掃
保健班被災者の健康状態の確認、感染症予防
要配慮者支援班要配慮者の支援
巡回警備班避難所の防火・防犯対策
避難者交流班避難者の生きがいづくりのための交流の場の提供
ボランティア班ボランティアの要請、調整

④分かりやすくまとめた紙媒体などを活用し、発達障害を含む障害特性に対する要配慮者の配慮事項や支援方法等を避難所に滞在する避難者へ周知することが適切であること。

⑤第2の3の(2)の名簿に基づき、常に被災者の状態やニーズを把握すること。救助にあたり特別な配慮を要する者を把握した場合は、必要に応じて、ホームヘルパーの派遣、社会福祉施設等への緊急入所又は福祉避難所への避難等を行うため、市町村に連絡すること。特に、当該施設が定員を超過して要配慮者を受け入れる必要が生じた場合等においては、市町村と福祉サービス等事業者等との間で緊密な連絡を取ることが望ましいこと。

⑥要配慮者支援のための全体のコーディネートを行うために、要配慮者支援連絡会議を適宜開催し、関係機関等の支援活動の実施状況や人的・物的資源の状況、避難所等における要配慮者のニーズを把握し、共有することが適切であること。また、関係機関等に、支援活動の状況把握や調整を担当できる者の派遣を要請する等、外部からの人材を活用することが適切であること。

(3)住民による自主的運営

①避難所における支援は、被災者の生活再建という最終目標を視野に入れ、その対応力の向上につなげていくことが重要である。そのため、避難所の運営担当者は、避難所の設置後、施設管理者や市町村職員による運営から避難者による自主的な運営に移行するため、被災前の地域社会の組織やNPO・NGO・ボランティアの協力を得るなどして、その立上げや地域のコミュニティ維持に配慮した運営になるよう支援すること。 また、被災者による自発的な避難所での生活のルールづくりを支援すること。

②住民による避難所運営組織においても、人口の半数を占める女性等、多様な主体が責任者として加わり、乳幼児や子どものいる家庭等のニーズや、生理用品等女性に必要な物資や衛生・プライバシー等に関する意見を反映させるようにすること。また、避難所における要配慮者支援班等と連携し、要配慮者の意見も反映させるようにすること。

③住民による自主的な運営を進めるにあたっては、炊事や清掃などの役割分担が、一部の住民に負担が偏らないよう配慮すること。

5 福祉避難所の管理・運営

 福祉避難所においては、要配慮者の特性に応じた福祉用具、資機材等を備えておき、日常生活に必要な支援を適切に行うとともに、避難者が必要な福祉サービスや保健医療サービスを受けられるよう配慮すること。

6 応援体制の整備

(1)応援要請

①被災市町村の職員のみでは救助要員が不足する場合には、速やかに都道府県に対し、避難所を運営する職員の他、要配慮者の状態等を鑑み、介護を行う者(ホームヘルパー等)、手話通訳者、通訳介助者等の必要な職員の応援派遣を要請すること。

②医師、歯科医師、看護師等の医療関係者や、社会福祉士等の専門職種については、別途、全国単位や都道府県単位で職能団体が独自の人的支援スキームを設けているものもあることから、都道府県と連携し、これらを適切に活用し、対応することが望ましいこと。

(2)ボランティアとの連携

①被災者への救援物資の配布、避難所の運営や炊き出し、要配慮者の安否確認 やきめ細かな在宅生活支援等、災害時においてボランティアが果たす役割は極めて大きいことから、ボランティアと積極的に連携すること。

②ボランティアを迅速かつ円滑に受け入れることができるよう、ボランティアの行政窓口とボランティア活動の連絡・調整(コーディネート)組織を明確に定め、その周知を図ること。

③ボランティア活動を支援するため、社会福祉協議会、NPO・NGO・ボランティア団体等と連携し、刻々と変化するボランティアニーズについて把握し、活動者に的確な情報を提供すること。

④ 避難者自身にも、ボランティア活動に参加するよう呼びかけること。

7 食物アレルギーの防止等の食料や食事に関する配慮

(1)食事の原材料表示

 食物アレルギーの避難者が食料や食事を安心して食べることができるよう、避難所で提供する食事の原材料表示を示した包装や食材料を示した献立表を掲示し、避難者が確認できるようにすること。

(2)避難者自身によるアレルギーを起こす原因食品の情報提供

 避難所において、食物アレルギーの避難者の誤食事故の防止に向けた工夫として、配慮願いたい旨を周囲に伝えるために、周りから目視で確認できるよう食物アレルギーの対象食料が示されたビブス、アレルギーサインプレート等を活用すること。

(3)文化・宗教上の理由による食事への配慮

 文化・宗教上の理由から外国人等の避難者が食べることができない食料がある場合、当該避難者に対し、可能な限り配慮することが望ましいこと。

8 衛生・巡回診療・保健

(1)各避難所への保健師等の巡回

①市町村は各避難所に保健師等を巡回させ、避難所内の感染症の予防や生活習慣病などの疾患の発症や悪化予防、被災者の心身の機能の低下を予防するため、避難所全体の健康面に関するアセスメントやモニタリングを実施すること。

②そのアセスメント等の結果を踏まえ、避難所運営関係者、福祉分野をはじめとした専門職、ボランティア等の外部支援団体とも連携し、避難者の健康課題の解決や避難所の衛生環境の改善を図ること。

③また、プライバシーに配慮して診察を受けることができるよう、被災者のプライバシーの確保を徹底し、可能な限り診察スペースも設けることが望ましいこと。

(2)各避難所における保健師等の巡回相談の体制整備

 長期の避難所生活により、生活環境の変化による被災者の心身の機能の低下、生活習慣病などの疾患の発症や悪化、こころの健康に関する問題等健康上の課題が多く生じることから、保健師・看護師等のチームによる個別訪問や保健指導、巡回相談などを実施し、身近な場所で健康相談をできるようにすること。

(3)避難者に対する避難所内の巡回活動

①避難所運営スタッフやボランティアの活用により、第2の8の(1)の結果を踏まえて避難所の環境改善を図ることや、被災者の保健、医療ニーズの把握、被災者の体調の変化への気づき等が行えるように体制を構築しておくこと。

②把握した被災者の体調の変化については、保健師等専門職が被災者の健康管理、個別支援を実施し、必要に応じて外部医療機関等へつなげるなどの対応を図ることが適切であること。

(4)避難所の衛生管理

 感染症等の疾病予防、健康問題の悪化防止のため、避難所内の清潔保持等の環境整備を図ること。

(5)トイレの確保・管理

 避難所においてトイレが利用できない事態が発生すると、様々な健康被害や衛生環境の悪化につながることから、状況に応じた手法により十分なトイレを確保するとともに、避難者の協力を得て適切に管理すること。

(6)感染症患者への対応

 感染症を発症した避難者の専用のスペースないし個室を確保することが適切であること。感染症を発症した場合は、感染拡大防止や安静等を目的に、被災者自身の希望に関わらず個室への入室等を要する場合もあるため、被災者の理解に努めること。

(7)生命・身体に配慮を要する避難者への対応

①人工呼吸器を使用しなければいけない難病患者・障害者がいる場合、優先的に電源を使用できる環境を整備することが適切であること。

②アトピー性皮膚炎の悪化を避けるために避難所の仮設風呂・シャワーを優先的に使用させることや、喘息など呼吸器疾患の悪化を避けるために、避難所内でほこりの少ない場所に避難することなどの配慮がなされることが望ましいこと。

(8)避難所の運営職員への配慮

 避難所を運営する職員等のストレスを解消するため、運営職員等からの相談担当者を決めておく等、運営職員等の心身の安定の確保を図る方策を講じておくこと。

9 被災者への情報提供等

(1)通信手段の確保

 被災者への情報提供や被災者相互の安否確認、在宅避難者の情報入手等のため、避難所にラジオ、テレビ、電話、ファクシミリ、パソコン等の通信手段を確保すること。

(2)被災者の必要性に即した情報提供等

①被災者が必要とする情報は、1)避難誘導段階、2)避難所設置段階、3)避難所生活段階、4)応急仮設住宅設置段階、5)応急仮設住宅生活段階等、災害発生からの時間の経過に伴い、刻々と変化していくことから、被災者の必要性に即した情報を的確に提供すること。

②応急仮設住宅における生活段階等、災害発生から一定の時間が経過した段階において、恒久住宅の建設計画等に関する情報等、被災者が将来に希望を持って安心して生活ができるような情報を提供すること。

③市町村から避難所や地域への情報提供ルートを確立すること。一方で被災地の市町村の避難所の状況、被災者数、避難所内の問題等を市町村から都道府県へ情報提供できるような体制を確立しておくことが望ましいこと。

(3)要配慮者等への情報提供

①各避難所へ専門的支援者が派遣等された際、避難所にいる要配慮者に対して、専門的支援者が派遣された旨の情報提供を行うこと。

②障害児者への情報提供にあたり、障害児者(支援)団体やボランティア団体と連携し、情報提供を行うこと。特に視覚障害児者をサポートする人の配置等の配慮が必要であること。

③障害児者等には情報が伝達されにくいことから、避難者の状態に応じ、例えば、次の方法によるなど伝達の方法を工夫すること。

  • 聴覚障害児者に対しては掲示板、ファクシミリ、手話通訳や要約筆記、文字放送等
  • 視覚障害児者に対しては点字、音声等
  • 盲ろう者に対しては指点字、手書き文字等
  • 知的障害児者、精神障害児者、発達障害児者、認知症者に対しては分かりやすい短い言葉、文字、絵や写真の提示等

④視覚障害児者、聴覚障害児者、盲ろう者は、仮設住宅、就労支援等の自立に向けた支援等の情報の取得が難しい面もあるので、被災地における障害児者団体のコミュニティ等を通じて、障害児者同士がそういった情報を得られる環境・場の設定や体制作りを検討すること。

⑤外国人については、日本語を解せない者や、被災地の地理や事情に不慣れな者もおり、必要な情報を得ることが困難と考えられることから、ボランティア等の協力も得ながら、必要に応じて、可能な限り多様な言語やひらがな・カタカナ等のわかりやすい言葉による情報提供、絵や写真の提示など、多様な手段により情報提供がなされるよう配慮することが望ましいこと。

10 要配慮者からの情報提供

 要配慮者が周囲の避難者に対して支援して欲しいこと、知っておいて欲しいことについて、カード等を活用することにより、要配慮者自ら自分の状態に関する情報を発信できるように配慮するなど、要配慮者自身の意思を尊重すること。また、家族や支援者と十分な連携を行うことが望ましいこと。

11 相談窓口

(1) 高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児を抱えた家族、外国人等の要配慮者や在宅の人も含め、様々な避難者の意見を吸い上げるため、相談窓口を設置すること。その際、女性の障害者等が安心して相談できるようにするため、窓口には女性を配置することが適切であること。

(2) また、そうして把握した被災者のニーズについて、避難所において対応できない場合は、必要に応じ、避難所の責任者から市町村へ、市町村でも対応できない場合は、都道府県へと適切に伝えていく仕組みを構築すること。

(3) 避難所で避難生活を送っている段階から、生活再建に向けて取り組むことが必要であるため、生活再建に必要な多様な相談支援を行うことができるよう、就労支援等の相談窓口を提供することが適切であること。

(4) 外国人について、第2の9の(3)の⑤の情報提供の他、ボランティア等の協力も得ながら、必要に応じて、可能な限り通訳を配置した外国人向け相談体制について配慮することが望ましいこと。

12 防火・防犯対策

(1)防火対策

①防火担当責任者の指定、喫煙場所の指定、石油ストーブ等からの出火防止、ゴミ集積場等に放火されないための定期的な巡回警備等の防火対策を図ること。

②火災発生時に安全に避難するため、避難所の防火安全に係る遵守事項を、避難所の出入り口等に掲示すること。

(2)防犯対策

①避難所の環境について、犯罪を誘発・助長する面もあることから、特に被害に遭いやすい子供、高齢者、女性からも危険箇所・必要な対応についても意見を聞き、照明の増設など環境改善を行うこと。また、警察とも連携し、巡回や被害者への相談窓口情報の提供を行うとともに、被災者・支援者全体に対して、いかなる犯罪・暴力も見逃さない旨を周知徹底すること。

②避難所の治安・防犯等の観点から、必要に応じ、警備員等の雇用も検討すること。

13 一定期間経過後の食事の質の確保

(1) 食事の提供にあたり、管理栄養士の活用等により長期化に対応してメニューの多様化、適温食の提供、栄養バランスの確保、要配慮者(咀嚼機能低下者、疾病上の食事制限者、食物アレルギー患者(児)等)に対する配慮等、質の確保についても配慮すること。

(2) ボランティア等による炊き出し、特定給食施設の利用等による多様な供給方法の確保に努めるとともに、被災地の地元事業者が営業を再開するなど災害の発生から一定の期間が経過した段階においては、食料等の供給契約を順次地元事業者等へ移行させることなどにより、適温食の確保に配慮すること。

(3) 一定の期間が経過した段階において、被災者自らが生活を再開していくという観点や、メニューの多様化や適温食の確保を図るという観点からも、避難所等における炊事する場の確保、食材や燃料の提供、ボランティア等の協力や避難所内の互助体制等の環境づくりを進めること。

14 避難所の解消

(1) 避難所の解消に向けた環境整備

①避難所の解消を円滑に進めるため、住宅の応急修理の実施、公営住宅の活用、迅速な応急仮設住宅の設置又は民間賃貸住宅の借り上げを行うこと。

②半壊した住宅については、居住を続けながら本格補修へとつなぐことができるよう、住宅の応急修理制度の活用を図るなどし、住宅の残存部分の活用が可能となるよう配慮すること。

③避難所の設置は応急的なものであるため、避難所とした施設本来の機能を早期に回復することが必要であることから、上記の施策を講じるのと平行して、できるだけ避難所の早期解消を図ること。

④福祉避難所で生活する避難者については、障害等の特性を有していること等に鑑みれば、できる限り早期に退所し、よりよい環境に移ることが望ましいことから、福祉仮設住宅等への入居のほか、関係部局と連携を図り、高齢者世話付き住宅(シルバーハウジング)への入居又は社会福祉施設等への入所等を積極的に活用することで、早期退所が図られるように努めること。

(2) 避難所の再編に際して、コミュニティ維持に配慮すること。また、仮設住宅にもコミュニティ単位で入居することは仮設住宅におけるコミュニティの維持や防災集団移転等の地区の復興を考えるうえで、有益であるので、考慮すること。

(3) 住まいや仕事の確保、訪問等による個別相談、地域の人間関係づくりのための茶話会や季節行事等とあわせ、避難所の解消後のコミュニティの維持・再生のことも考慮し、総合的に対応すること。

15 在宅避難

(1) 避難所の運営にあたり、避難所で生活する避難者だけでなく、個々の事情によりその地域において在宅にて避難生活を送ることを余儀なくされた者等も、支援の対象とすることが適切であること。

(2) そのため、避難所の運営担当は、在宅避難者を含めた当該避難所及びその設置された地域において避難生活を送る被災者に対する情報発信の場所となるとともに、当該被災者が情報を収集する場所となること、在宅避難者が必要な物資を受け取りに来る場所となること等の地域の支援拠点としての機能を有するものとして、避難所を設置することが適切であること。

(3) 在宅での避難生活を余儀なくされた方々に対して、自治会や行政職員等の見守り機能を充実させ、特に要配慮者等の支援が必要となる者に対して行政が適切な対応を取ることで、情報、紙おむつや生理用品、食物アレルギー患者(児)用の食材等の支援物資、医療、福祉等のサービスの提供が行き届くよう必要な措置を講じること。

(4) 災対法第90条の3に基づき作成する被災者台帳の活用などにより在宅避難者の状況把握を行うとともに、避難所を拠点として支援を行うことが望ましいこと。

(5) 在宅医療患者等、必要な薬剤・器材等(水・電気等を含む。)を得られないため直接生命にかかわる者又は日常生活に重大な支障をきたす者などの把握及び必要物資の提供について、関係部局・団体等と連携を図り特に配慮すること。

16 広域一時滞在(広域避難)

(1) 当該市町村の地域に係る災害が発生し、被災住民の生命若しくは身体を災害から保護し、又は居住の場所を確保することが困難な場合に、災対法第86条の8等に基づき、当該被災住民の受入れについて、受入先として考えられる市町村の市町村長等に協議すること。

(2) 協議を受けた市町村長等は、正当な理由がある場合を除き、被災住民を受け入れるものとし、避難所を提供すること。

(3) 広域災害時には、被災者の避難先は広く他の都道府県に及ぶことから、被災地域外の避難者が情報過疎に置かれることのないよう、災対法第90条の3に基づき作成する被災者台帳の活用などにより、被災者の居所の把握等情報収集を行うとともに、地域外避難者に対し広報紙の送付やインターネット(Eメール、ホームページの開設)等による情報提供を行うこと。

(4) 広域的に避難した被災者が、受入先の地方公共団体においても、継続的に福祉サービスを受けられるよう配慮すること。

(5) 被災地方公共団体が所在を把握できる広域避難者に対しては、地方公共団体間で連絡を密にし、情報、サービスの提供に支障が生じないよう配慮すること。


出典

内閣府.防災情報のページ:避難所の生活環境対策.
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/ (参照 2016-04-25)

内閣府.避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針平成25年8月(平成28年4月改定)内閣府(防災担当)(PDF版)
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/1604kankyokakuho.pdf (参照 2016-04-25)