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くま弁ニュース第2号

~熊本地震災害の被災者のみなさまへ~(2016.5.17発行)

1 り災証明書を取得するコツ!

 被災者生活再建支援制度,義援金の分配,仮設住宅や公営住宅への入居についての優先順位,応急修理制度の利用,税金や学費の減免の際などに利用されます。借家住まいであっても発行されます。
 証明書は,お住まいの市町村に申請することになります。柱や屋根,外壁などの主要構造部の損壊具合について写真を撮っておきましょう。様々な角度から撮っておきましょう。また,家屋の平面図を書いて,損傷個所などを図示しておくとスムーズです。

 不服がある場合は、再調査を受けることができます。

2 生活再建支援制度って?

 生活基盤に著しい被害を受けた世帯に,最大300万円の支援金を支給する制度です。住宅が「全壊」「大規模半壊」した世帯のほか,「解体世帯」が対象となります。
 「解体世帯」とは,①住宅が半壊以上のり災証明を受けるか,住宅の敷地に被害が生じている場合で,②そのままにしておくと非常に危険であったり、修理するにはあまりにも高い経費がかかるため,③これらの住宅を解体した世帯をいいます。

 市町村に問い合わせるか,熊本県のHP(2016年4月30日更新「熊本地震に係る被災者生活再建支援金について」)を参照してください。

3 建物の修理費の補助をうけられる!?

 屋根等の基本部分、ドア等の開口部、上下水道等の配管・配線、トイレ等の衛生設備の日常生活に必要欠くことのできない部分を修理することで居住が可能となる場合に,応急修理制度を利用して住宅を修理し,57万6000円を限度に修理費を支払ってもらえます。半壊又は大規模半壊でそのままでは住めない状態で,修理後避難所等への避難を要しなくなると見込まれる場合で,資力要件をクリアする場合に使えます。詳しくは,市町村へ問い合わせてください。*この制度を利用すると,応急仮設住宅を利用できなくなる可能性があります。

 熊本県のHP(2016年4月27日更新「熊本地震で被災した住宅の応急修理について」)を参照ください。

賃貸物件に関する法律問題

ケース1 地震で借りている住居が損傷したので引っ越しを考えている場合

Q1:修理すれば住むことができる場合でも,賃貸借契約を終了させて引っ越すことはできますか?

A 賃貸借契約通りの解約手続きをせざるを得ません。

 修理すれば住むことができる場合には,賃貸借契約は存続します。ですから,この場合,あなたの賃貸借契約通りの解約手続き(解約申し入れの時期,違約金等)をしなければなりません。
 もっとも,大家が建物の修理に応じてくれない場合などは,違約金等の契約上の条件 なしに賃貸借契約を終了させることができる場合もあります。
 また,「修理すれば住むことができる」かどうかの判断で,大家と争いになることも考えられます。「修理すれば住むことができる」かどうかは,建物に生じた損傷の部位や程 度,修理ができるかどうか,修理費用としていくら必要となるか等の様々な事情から考え ることになります。
 大家と話がまとまらない場合には,弁護士にご相談ください。

Q2:敷金は返してもらえますか?

A 返してもらえます。

 今回の地震で壊れた部分の修理費用等を借主が負担する必要はないので,賃料の滞納等がなければ返してもらえます。
 賃貸借契約上,借主側の都合で賃貸借契約を終了させるときには敷金は返還しないという特約がある場合があります。この場合も,特約があるからやむを得ないとあきらめずに,弁護士にご相談ください。Q1のように例外が認められる可能性があります。

Q3:立ち退き料や引っ越し費用は出してもらえますか?

A 請求できません。

 大家の都合で賃貸借契約を終了させるわけではありませんから,立ち退き料や引っ 越し費用などを大家に支払ってもらうことはできません。

ケース2 今回の地震で借りている住居が損傷したものの住み続けたい場合

Q1:大家から修理したいから出て行ってほしいと言われました。出ていかなければなりませんか?

A 修理に必要があれば一時退去せねばならない場合があります。

 修理して住めるような損傷であれば,賃貸借契約は終了しないので,出ていく必要はありません。ただし,大家が借家を修理する場合に,借主には協力義務があるため,修理工事の状況によっては,一時的に退去しなければならない場合もあります。この時の引っ越し費用等は,借主が負担することになります。

Q2:大家から「修理する必要があるから,賃貸借契約を更新しない(解約する)」と言われましたが,出ていかねばなりませんか?

A 出ていく必要はありません。

 大家から賃貸借契約を更新しない(解約する)場合には,借地借家法上,賃借人よりも厳しい条件が必要になります。 この条件については,大家が建物の使用を必要とする事情や,借主の建物の利用状況,建物の現況,立ち退き料の有無や金額等から総合的に判断されます。弁護士にご相談ください。

Q3:大家から「『危険』と書かれた赤い紙が貼られた家には住まわせることができ ない。」と言われました。出ていかねばなりませんか?

A 建物損傷の程度によります。

 建物が物理的に全壊していない場合でも,建物の損傷の程度,修理の費用,建物の耐用年数,老朽度,家賃額などの事情から,契約中にもかかわらず賃貸借契約が終了する場合があります。この場合は,契約が当然に終了するため,立ち退かねばなりません。
 「危険」と書かれた赤い紙は,応急危険度判定の結果と思われますが,応急危険度判定は,余震などによる倒壊の危険性等を行政が判断するもので,上記の賃貸借契約終了の判断と直接の関係はありません。
 大家から,「危ないので住まわせられない」と言われた場合は,建物の損傷の程度や,修理の可否,修理する場合の見積額などを聞いたうえで,弁護士にご相談ください。

Q4:借家が一部壊れてしまいました。自分で修理しないといけませんか?

A 主要な部分の修理費用は,基本的に大家もちです。

 柱,屋根,壁や構造部分については,基本的に,大家に修繕する義務があります。
 他方,契約書上,「修理費用は借主が負担する」となっている場合は,基本的に借主が負担することになります。ただし,天災の場合に,裁判所が例外を認めたケースもありますから,大家との話合いがまとまらない場合は,弁護士に相談しましょう。
 大家が修理をしてくれない場合は,借主で修理した上で,大家に費用を請求することもできます。この場合,修理費用分を賃料から差し引くこともできます。さらに,大家に損害賠償を請求することができる場合や,損傷の程度に応じて賃料を減額する請求ができる場合もあります。弁護士にご相談ください。

Q5:修理中は住むことができませんが,家賃は払わないといけませんか?

A 支払う必要はありません。

 修理工事のために借家が全体的に使えない場合,家賃を払う必要はありません。
 建物が使用可能な場合は,借主が避難していても,家賃を支払う必要があります。ただし,修理工事により一部使用ができない場合には,家賃の減額を請求できることもあります。また,修理工事のためにほとんどの部分が使用できないときは,全体が使用できない場合と同じ扱いになる場合があります。

注意!!「電話や訪問による勧誘は、相手をよく確かめて!!」

現在,次のような事案が,県消費生活センターなどに報告されています。

①「県から屋根の見積もりに行きます」という電話がかかってきた。

②自治体の職員等を名乗って,「地震の被害者への義援金を集めている」と勧誘された。

③自動音声電話で、地元の一級建築士事務所を名乗り、無料の見積もりや業者の紹介をされた。

④早く屋根の修理をした方がいいと言われ,屋根修理工事の契約をしたが,一般より高額だった。

 いずれも詐欺や災害に便乗した悪質商法のケースもあります。電話や訪問による勧誘の際には、相手をよく確認し、慎重に対応して下さい。修理工事などの場合は,他の業者にも見積りをお願いする等,十分に注意してください。

国民生活センター熊本地震消費者トラブル110番

TEL:0120-7934-48 毎日(土日・祝日を含む)10:00~16:00

熊本県消費生活センター

TEL:096-383-0999 平日9:00~20:00 土日祝9:00~17:00

熊本市消費者センター

TEL:096-353-2500 平日9:00~17:00 (21日,28日も対応します)

★こんな時だからこそ,知っておいてほしいこと

避難生活中においても,性暴力被害が発生することは少なくありません。

  • 着替えやトイレをのぞかれた
  • 男の子が,男性からわいせつな行為をされた
  • 子どもたちだけで遊んでいたとき,子どもを対象に性器を露出する行為があった
  • 建物のがれきの中でリュックをつかまれ,引きずりこまれてレイプされた

など。

 身近な人に相談しにくい場合には,「ゆあさいどくまもと」にご相談ください。病院や警察への付き添い,臨床心理士によるカウンセリング,弁護士へつないで法的なアドバイスを求めるなどの支援があります。

ゆあさいどくまもと(熊本県性暴力被害者のためのサポートセンター)

TEL:096-386-5555 (現在の受付時間:毎日10:00~16:00)

E-mail: support@yourside-kumamoto.jp

  • 相談・支援は無料
  • 秘密は守られます

 熊本県弁護士会は、今後も本ニュースの発行等を通じ、被災者のみなさまへ情報を発信いたします。
 熊本県弁護士会のホームページでも情報提供を行っておりますので(熊本県弁護士会ニュースも掲載)、ご覧ください。

 http://www.kumaben.or.jp/ (『熊本県弁護士会』で検索)

 本ニュースの内容については、無料電話相談・情報提供にて弁護士におたずねください。

 無料電話相談・情報提供 0120-587-858 午前10時~午後4時(5,6月は土日も実施)

 ※東京,福岡,大阪など県外の弁護士が相談を担当させていただくことがあります。

 本ニュースは、発行日時点の状況及び制度を元に作成しております。最新の情報や個別の事情についてご確認・ご相談をされたいときは、無料相談にて弁護士におたずねください。

 本ニュースは、内容を改変されない限り、自由に複製・頒布をしていただいてかまいません。


出典

熊本県弁護士会.熊本地震に関する「くま弁ニュース」はこちら。.
http://www.kumaben.or.jp/news/2016/07/qa.html (参照 2016-05-23)

熊本県弁護士会.くま弁ニュース第2号.~熊本地震災害の被災者のみなさまへ~(2016.5.17発行).(PDF版)
http://www.kumaben.or.jp/news/%E3%81%8F%E3%81%BE%E5%BC%81%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E7%AC%AC%EF%BC%92%E5%8F%B7.pdf (参照 2016-05-23)