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インチョン戦略目標の実施

UNESCAP
秋山 愛子

日本障害者リハビリテーション協会(仮訳)

こんにちは、皆さん。秋山愛子と申します。国連アジア太平洋経済社会委員会、ESCAPの障害フォーカルポイントを務めております。

私は、障害インクルーシブな防災(DiDRR)を促進するために、言わば多くの攻撃手段が必要だと理解しています。そして、 このアジア太平洋地域には、非常に強力な攻撃手段、すなわち、アジア太平洋障害者の「権利を実現する」インチョン戦略がある、と信じています。そこで今日は、本セミナーのテーマに関連のあるインチョン戦略、そして、インチョン戦略とその他の重要な国際文書との相乗効果について、ご紹介したいと思います。

皆さんの多くがご存知のとおり、アジア太平洋地域には、およそ6億5千万人の障害のある人がおり、これは世界の障害のある人 の3分の2に相当します。また、アジア太平洋地域は、最も災害の多い地域でもあります。統計データを少し引用いたしますと、 2005年からか2014年までの間に、アジア太平洋地域では、少なくとも1,625件の大きな災害事象が発生し、50万人以上が命を失ったと報告されています。

インチョン戦略は、障害者権利条約の実施を迅速に行い、障害インクルーシブな開発を促進するために、2012年にESCAP加盟国によって合意されました。

インチョン戦略は、過去のミレニアム開発目標や、現在の持続可能な開発目標と非常によく似た構造をしています。それは、 相互に関連のある10の開発目標と27のターゲット、それに続く62の指標から構成されています。インチョン戦略は、いわゆる SMARTアプローチを採用しており、具体的で、測定可能、行動可能な、期限を定めた指標を伴っています。この文書は、2013年から2022年までの間、有効です。

この戦略について、本日のセミナーの視点から考えたときに重要なのは、目標7という、障害インクルーシブな防災に焦点を絞った1つの目標がある、ということです。そしてこれには、障害インクルーシブな防災計画とその実施を促進するための、2つのとてもシンプルなターゲットがあります。私たちは政府に、これらのターゲットを確実に実施してほしいのです。しかし、政府がターゲットを達成していることは、どのようにしたらわかるのでしょうか?そこで、私たちは6つの指標を考案しました。

指標1 私たちは、私たちの地域の各国政府が、障害インクルーシブな防災行動計画を立てているかどうか知りたいと考えています。もし、立てているのであれば、それはどのような計画なのでしょうか?

指標2 私たちは、各国政府が障害インクルーシブな防災にかかわるサービスを提供する職員に研修を行っているかどうか知りたいと考えています。サービスを提供する職員とは、どのような人を言うのでしょうか? 災害への対応だけでなく、やがて起こる災害への準備もしなければならない、警察官や消防士あるいは医療専門家などが考えられるでしょう。

指標3 私たちは、各国政府がアクセシブルな避難所を設けているかどうか知りたいと考えています。また、現在の避難所が、さまざまな障害のある人にとって、実際には何パーセントアクセシブルなのかも知りたいと考えています。

指標4 私たちは、例えば、ある特定の災害の結果、障害のある人が何人死亡したのか、あるいは、災害の結果、何人が障害を持つようになったのか知ることができるように、障害の程度別にまとめられた、災害に関する統計を得たいと考えています。

指標5 私たちは、障害のある人に対する心理社会的支援が、被災後、常に利用できるのかどうか知りたいと考えています。

最後に、大事なことですが、指標6として、各国政府が、これから発生する可能性のあるいかなる災害にも備え、また、対応するために利用できる支援機器及び技術を持っているのかどうか知りたいと考えています。これらは、私たちが障害インクルーシブな防災の実施状況を理解する上で実際に役立てられる、私たちの地域の政府が取り組める指標です。

ところで、私は「私たちの地域」や「私たちの政府」と繰り返し申し上げてきました。私たちの地域、すなわち、アジア太平洋地域は、62のESCAP加盟国で構成されており、イランやトルコなどの西方の国々から、太平洋の南の島々、東は日本、そして北はロシアまでを網羅しています。つまり、私たちは広大な地域に住んでいるのです。そして、これらの国の政府それぞれに対して、指標に関するデータを用意するよう求めています。では、私たちの地域のこれらの政府は、いつ、そのようなデータを提出するよう求められているのでしょうか?

実は、来年までなのです。来年、2017年に、ESCAPはインチョン戦略の実施状況を評価するため、アジア太平洋障害者の10年の中間レビューを実施します。

このレビューに備えて、今年10月には、私たちの地域の政府にアンケートを配布する予定です。そして、来年2月までに、障害インクルーシブな防災の指標に関するものも含めて、データを提出してもらうことになっています。

時間は迫っています。では、今年、何をしたらよいのでしょうか?まず、指標に関するデータを求めるとともに、障害インクルーシブな開発に向けた組織作りの状況や政策背景について尋ねる、アンケートの内容を考えます。アンケート案は、私たちのパートナーである市民社会団体や各国政府とも共有し、そのフィードバックを得ます。

この中間プロセスに加えて、ESCAPは障害インクルーシブな防災に関する双方向型のeラーニングツールを開発し、加盟国とその他のステークホルダーが、これを行うことがなぜ極めて重要であるのか、また、どのようにして行えばよいのかを学べるようにします。

このツールは、アクセシブルなものにしなければなりません。2016年11月5日の世界津波啓発デーに、これを発表したいと考えています。

今日、セミナーに参加されているパートナーの皆様には、引き続きご協力をお願い申し上げます。

世界的なレベルでは、DiDRRの大義を支援する仙台防災枠組と持続可能な開発目標(SDGs)があります。

アジア太平洋地域には、インチョン戦略もあります。インチョン戦略の実施によって、仙台枠組とSDGsの実施が強化されます。ですから、私は心から、この地域独自の法律文書の存在を利用してほしいと願っています。このセミナーからは、キト、そしてインドネシアでのプロセスにおいて障害の視点を主流化するという戦略的な考えが生まれつつあると理解しています。どうぞ、このインチョン戦略のプロセスを活用してください。そして、言うまでもないことですが、これに参加してください。

http://www.maketherightreal.net/をご覧ください。
ありがとうございました。


原文はこちら(英語)