地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-利用者さんと共に『ワクワク』する取り組みを創り出す ~共生社会へのチャレンジ~

「新ノーマライゼーション」2019年10月号

社会福祉法人さくらんぼ共生会ギャラリー&カフェあるあーる 管理者
海鋒憲一(かいほこけんいち)

山形県寒河江市に法人本部を構える社会福祉法人さくらんぼ共生会では、開園当初から、陶芸や織物を中心に創作活動を行ってきました。利用者さんは、一瞬のひらめきや感覚、感情を大切にしながら粘土を積み重ね、糸でアート作品を紡ぎ、自己表現しています。

ギャラリー&カフェあるあーるは、利用者さんの『将来の夢や希望』の声をうけて開所した事業所です。この事業所は就労移行支援事業と就労継続支援B型事業の2つが柱になっています。ギャラリーでは作家さんの作品の常設展示と販売、カフェでは、スタッフ(利用者さん)が先頭に立ち、飲食店の運営を行っています。しかし、創作活動はなかなか工賃アップにつながらないことが課題でした。そこでもっと多くの人たちに作品を見てもらうために、私たちの事業所で2つの取り組みを始めました。

1つは「イラスト付きトイレットペーパー」です。この商品は他の福祉事業所が商品化している物ですが、企業に社会貢献の一環で購入をお願いするといった形の物ではなく、販売促進用としての付加価値を高めています。具体的には、利用者さんが描いたイラストと企業の広告やロゴマークを包装紙にデザインして、他に専用のアプリを取得できるように二次元バーコードも盛り込み、スマートフォンをかざすと会社のCMがVR動画となって閲覧できるようになっています。そうすることで企業は、動画の再生回数や閲覧者の年代情報を営業に活かすことができます。また、企業は、利用者さんが描いた作品を通じて福祉への理解と協力を多くの方々にPRでき、企業の宣伝にも一翼を担える商品となっています。

2つ目は、「アートドローン」です。山形だけでなく、農業県とされる地域では、農業従事者の『高齢化』と『担い手不足』の課題があります。また、福祉分野では『工賃アップ』を図りたいとの思いに、ドローンを活用して『スマート農業』を推し進めている先進農業に福祉分野のエッセンスを加え、工賃アップに結び付ける取り組みです。具体的には、稲作の追肥散布に使用するドローンのボディーに直接利用者さんが思い思いに絵を描き、そのアートドローンを飛ばすというものです。農家の方にアートドローンをご利用いただくことで、重労働の軽減、作業時間の短縮ができます。ドローン散布業者から、売り上げの8%~10%を事業所の活動費としてお支払いいただくことになっています。

現在まで、不動産業と大手遊技場の地元店舗に大量ロットのイラスト付きトイレットペーパーをご購入いただきました。これまでの作品展のお客様を待つ受け身のカタチから、イラスト作品を多くの方々に発信することができています。アートドローンに関しては、地元のお米の生産組合から圃場散布へのご利用をいただいており、障がいのハンデがあっても間接的に農業に携わることができています。どちらの取り組みも工賃増には至っていませんが、失敗を恐れずにチャレンジしていきます。

今後も、スタッフ(利用者さん)と共に新しいことを考え、『ワクワク』できる取り組みを創り出していきたいと思いますし、この取り組みがモデルとなって広がっていけばと考えています。


●『アートドローン』 動画
https://youtu.be/BuyV9FB--JU

●新しい農福連携の”カタチ”
https://zpng.jp/event/heartwarmingdrone/

menu