第43回目を迎える総合リハ研究大会

総合リハビリテーション研究大会
常任委員会委員長 松井亮輔

総合リハ研究大会会場の様子

1977年以来毎年開催されてきた総合リハビリテーション研究大会(以下、総合リハ研究大会)は今年で第43回目を迎えます。同大会の概要について紹介する前に、これまでの歴史およびその意義についてふれることにします。

総合リハ研究大会の歴史

(1)総合リハ研究大会の前史

関東在住の各リハ分野の一部の関係者が、情報交換や交流、そして連携を図ることを目的に、1977年に東京でリハビリテーション交流セミナー(以下、リハ交流セミナー)を開くことになったきっかけは、1965年4月日本ではじめてのリハに関する国際会議である、第3回汎太平洋リハビリテーション会議(現・RIアジア太平洋地域会議)が、国際肢体不自由者リハビリテーション協会(現・国際リハビリテーション協会、RI)と(財)日本肢体不自由者リハビリテーション協会(1964年に創設。1970年に日本障害者リハビリテーション協会と名称変更、以下、リハ協)との共催で開かれたことです。この会議には、海外からの参加者約300名を含め、全体で1,000名近い関係者が参加しています。

同会議は、「リハビリテーションの具体的実施」をメインテーマに、全体会議と分科会から構成。全体会議では、「途上国におけるリハ・サービスの具体的実施」などについての基調講演が、また分科会では、社会リハ、特殊教育(現・特別支援教育)や職業リハなどの専門分野別の会議が行われました。このようにあらゆる種別の障害者を対象とした医学から職業までを含む、総合的なリハという新しい概念が紹介されたことなど、この会議が日本関係者にもたらしたインパクトは、きわめて大きかったといえます。

同会議のあと、RIは、1966年には西ドイツ(当時)のヴィースバーデンで第10回世界会議、1968年には香港で第4回汎太平洋リハ会議、1969年にはダブリンで第11回世界会議、1972年にはシドニーで第12回世界会議、そして1975年にはシンガポールで第5回汎太平洋リハ会議をそれぞれ開催しています。とくに1972年にシドニーで開かれた第12回世界会議は、アジア太平洋地域ではじめての世界会議だっただけに、日本からも各分野の関係者が多数参加。これらのRI会議に参加した日本関係者が、国内のリハ・プログラムやサービスをさらに拡充・発展させるために、障害種別や専門分野を越えた横断的なネットワークの形成や連携の必要性を痛感したことや、これまでリハ交流セミナーや総合リハ研究大会で中心的な役割を担われてきた上田敏先生の言葉を借りれば、「これらの会議を通して、それまでは教育は教育、医学は医学、職業は職業で別々に、ばらばらにやっていたのが、リハビリテーションという言葉ならばひとつにくくれるのだ、自分たちも仲間なのだということを認識するようになったこと」が、1977年の交流セミナーの開催につながったといえます。

(2)リハ交流セミナーから総合リハ研究大会へ

リハ交流セミナー(1977年~1990年)および総合リハ研究大会(1991年以降)は、第16回RI世界会議が東京で開かれた1988年を除き、毎年開催されています。

リハ交流セミナーは、1979年の第3回までは各リハ分野の有志により組織された実行委員会が主催。その事務局を担当したのは、実行委員会の中心メンバーの一人であった故・調一興氏が当時常務理事をされていた社会福祉法人東京コロニーです。

1980年の第4回リハ交流セミナー以降、リハ協が主催団体となり、それに伴って事務局もリハ協が担当。そして、リハ協が主催団体になったことによる大きな変化は、大会の開催がそれまでは東京に限られていたのが、原則として東京と地方で交互に開催することになったことです。また、それまでは毎年新たに実行委員会を立ち上げ、その実行委員会が主催するという形がとられていたのが、同大会の継続性を確保するため、リハ協のもとに大会の企画・実施のための常任委員会が設置され、同委員会のもとに実行委員会が組織されるようになったこと。つまり、常任委員会が毎年の大会の開催地を決め、開催地で組織される実行委員会により企画される大会プログラムを承認するということがルール化されたことです。

総合リハ研究大会の意義

13回に及ぶリハ交流セミナーを含め、総合リハ研究大会はこれまで42回開催されていますが、毎回20名前後の各分野を代表する委員で構成される実行委員会が、大会のプログラムの企画から実施、報告書の作成過程にかかわることで、各リハ分野の関係者の交流や連携が強化されています。

また、すでに触れたように、リハ交流セミナーおよび総合リハ研究大会は、その開催のきっかけとなった第3回汎太平洋リハ会議以降、RIの各種会議などと密接な関連を持ちながら展開してきています。とくに1981年の国際障害者年記念事業として開催された国際リハ交流セミナー/第5回リハ交流セミナーには、RI事務局の協力も得て海外の各リハ分野のキーパーソンを講演者などとして招く一方、その後のRI世界会議やアジア太平洋地域会議などで日本におけるリハ分野での実践や調査研究の成果を発表する日本関係者が増えるなど、国際的な交流や連携も広がっています。

1988年9月には、「総合リハビリテーション~その現実的展開と将来展望~」をメインテーマに、第16回RI世界会議が東京で開催されましたが、1965年の第3回汎太平洋リハ会議との大きな違いは、後者は主として先進国における各分野のリハ実践から学ぶことにより、日本のリハの前進に役立てることが意図されたのに対し、前者ではむしろ日本の取組みを海外からの参加者に積極的に紹介することに重点が置かれたことです。それは、1980年代初めごろからアジアなどの途上国を対象にリハ分野での国際協力事業(途上国からの研修生の受け入れや途上国へのリハ分野の専門家の派遣など)が進められてきたことから、途上国関係者の日本におけるリハ分野への取組みについての関心の高まりを反映して、第16回RI世界会議にはアジアを中心に途上国関係者が多数参加したことにもよります。

第43回総合リハ研究大会の概要

同大会は、今年10月2日(金)および3日(土)の2日間にわたり、障害者スポーツ文化センター横浜ラポールを会場に開催されます。2020東京オリンピック・パラリンピック直後というタイミングであること、また、実行委員会の事務局を担当される横浜市総合リハビリテーションセンターは、横浜ラポールと一緒に長年障害者のスポーツ活動支援にも取り組まれてきたことから、その成果や課題を取りまとめる機会にしたいということで、つぎのような大会プログラムが予定されています。

全体テーマ:「リハビリテーション・スポーツと総合リハビリテーション」

<10月2日(金)>(予定)

 10:00開会式
 10:30~12:00 障害者をめぐる国内・国際動向
 13:00~13:50 基調講演
 14:00~16:00 シンポジウムI:スポーツを通して社会参加を考える

<10月3日(土)>
 10:00~12:00 シンポジウムII:スポーツのための環境整備を考える
 13:15~15:15 電動車いすサッカーについての講演・対談など

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