サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者(サビ児管)に求められていること

和洋女子大学 髙木 憲司

はじめに

サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者(以下、「サビ児管」という)は、障害者総合支援法・児童福祉法に基づき、各事業所ごとに配置が義務付けられている資格者であり、主に当該サービス・支援における個別支援計画の作成をはじめとしたプロセス管理の責任者です。障害者自立支援法の施行(2006年)に伴いサービス管理責任者が位置づけられ、その後児童福祉法改正(2012年)によって児童発達支援管理責任者が位置づけられました。これまでの経験と勘に頼った支援から脱却し、支援のPDCAサイクルを回すとともに、そこから波及する支援現場での人材育成や地域へ視野を広げることが期待されています。

サビ児管とは

まず、省令上、サビ児管が行うべき役割を箇条書きにしますと、以下の13の項目になります。

  1. 個別支援計画の作成に関する業務
  2. アセスメント
  3. 連携
  4. 計画の作成に係る会議の開催
  5. 利用者への説明と同意、計画書の交付
  6. モニタリング(少なくとも6か月に1回)
  7. 利用者及び家族等との継続的な連絡
  8. 面接・記録
  9. 計画の変更
  10. 他事業所等への照会・把握
  11. 定期的な検討
  12. 自立した日常生活を営むことができると認められる利用者に対し、必要な支援
  13. 他の従業者に対する技術指導及び助言

それぞれ、関連がありますので、明確に分けられませんが、用語として拾ったものになります。大きく分けると、アセスメント(見立て)と、個別支援計画の作成(手だて)、それに係る会議運営、計画の見直し、関係機関との連携、面接・記録、従業者に対する指導・助言と、自立した日常生活を営むことができると認められる利用者に対する必要な支援(これだけ少し長い文章となっています。最後の方でお話しできればと思います。)。

言葉を少し言い換えて、図にしたものがこちらになります。まず、利用者本人を中心とした「見立て」と「手だて」ですね。本人の望む生活を支えるものになります。これが個別支援計画という形で表されます。計画は絶えず見直されなければなりません。関わる方々の意見の集約と支援方針の統一を図るための会議の運営。会議の場は人材育成の場でもあります。本人の望む生活は、一つの事業所だけで成り立ちませんから、家族を含めて、関係機関との連携が必要となります。そもそも計画作成の段階、見立ての段階から、連携は必要になります。相談支援はもちろん、他事業所、医療機関、教育機関、場合によっては虐待防止センターや権利擁護機関等、本人の関係先との連携なくしては、本人理解が進まないまま見立ててしまうということになってしまいます。サービス開始後から徐々に見えてくることもあると思いますので、なるべくアンテナを高くして、本人理解に努めていく必要があります。これらはすべて「本人の望む生活を支える」ための一連のプロセスであり、一つ一つの業務内容はバラバラなものではなく、全て関連していることがわかります。

サビ児管業務図

サビ児管は、現場のリーダー的存在であると言えます。サービスや支援のプロセスの管理者であり、本人の権利擁護者、虐待防止に責任を持つ立場でもあります。一方で、家族との連絡の窓口であり、事業所外部の連携の窓口でもあります。事業所の外に目を向けると、様々な地域課題があることもわかってきます。そもそも、自らの事業所が地域の社会資源そのものであるというスタンスですので現場のリーダーであるとともに、地域の課題にも目を向けて、自事業所で対応できることがないか、考えていく立場でもあると言えるのではないでしょうか。

現場のリーダー図

現役サビ児管の声

令和元年度厚生労働科学研究「計画相談支援等におけるモニタリング実施標準期間の改定に伴う効果検証についての研究」において、インタビューさせていただいたサビ児管の皆さんの声をご紹介します。就労系の事業所のサビ管さん、自分の事業所だけでは本人のニーズや見立てを完結しないで、連携することを重視しています。あるサビ管さんは、相談支援専門員さんと連携することにより、自分の事業所だけで得られない気付きを得ているということです。刻々と見立てが変化してく過程、本人の全体像の共有を関係者間で行っていくことを重視しています。また、当然ですが、個別支援に重点を置いておられるところもあります。ある事業所では、リフレイミングすることで、マイナスをプラスに転じていくということを重視しています。別の事業所も個別支援を重視しており、障害特性、個別性の重視ですね。職員と共有するため、事業所内でのカンファレンス、学習会を開催しているということで、個別性の重視を職員の人材育成にも活かされているということです。また、相談支援で立てられた計画に基づき、望む生活の実現を支援するための、一事業所のスタンスを重視しています。これも、一事業所ですべてを抱え込まない、連携につながる考え方かと思います。目先の利便性ということではなく、将来を意識した対応を重視している児発管さんの言葉もありました。将来につなげるための連携ということも意識していらっしゃると思います。すぐに、望む生活を思い描けない場合も多いですが、日々の支援の中で、それを見つけられるよう支援していくということを重視されています。人は必ず変わっていく存在です。ニーズの変化に対応し、関係者と情報共有していくことが重要だと思います。スモールステップで自信をつけていただきながら、長い目で支援していくことを重視しておられます。それぞれ、重要な視点が入っていると思います。
以上、ご紹介させていただいたサビ児管さんへのインタビューの内容をまとめると、

  • 関係機関との連携
  • 障害特性の重視
  • 利用者の個別性の理解
  • 利用者の状態像にあった支援
  • 利用者の目標・希望の重視

といったキーワードに集約されると思います。

サビ児管へのインタビュー図

これらを大事にしていくために何をしていけばよいか・・・結局、最初にお話しした「サビ児管に求められる役割」を着実にこなしていくということに帰結するのではないかと思います。
あと、「自立した日常生活を営むことができると認められる利用者に対し、必要な支援」についてですが、自立といっても、これは「ヘルパー等の支援が必要であっても」という補足は当然だと思います。そのうえで、施設・病院からグループホーム、グループホーム・親元から一人暮らし、福祉的就労から一般就労など、できる限り、本人が望む暮らし方となるよう、必要な支援をすること「地域移行支援」が、サビ児管の責務であるという意味と理解できます。そのために必要なものは、地域の社会資源となります。皆さん方の事業所一つ一つが社会資源なので、そこまでの思いを馳せて事業展開をしていっていただきたいと思います。

支援が必要であってもの図

おわりに

現在、障害児・者福祉の理念とされているいくつかのキーワードを並べていますがこれらをあえて2つに大きく別けると個別支援と社会資源の開発ということに集約されるのではないかと思います。個別支援から入っていくわけですが、本人の望む生活を支援しようとすると、どうしても地域の社会資源との連携が不可欠になってきます。現時点でそれらが不十分だった場合に、開発していかなければなりません。一人の努力や一事業所の努力だけでは難しいかもしれません。市町村行政、協議会、基幹相談、地域生活支援拠点といった仕組みを活用し、この理念を現場で具現化していくのが、サビ児管が行っていくべきことではないかと思っています。

障害児・者福祉の理念の図

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