日常の非日常な幸せ

「新ノーマライゼーション」2021年10月号

福永幸太(ふくながこうた)

私は事故によって左上腕から先を失いました。1か月程度入院し退院した後もリハビリを行いながら日常生活に慣れ、半年後には一人暮らしを開始しました。要所で難解なこと、時間がかかることはありますが、工夫や人の手を借りながら生活を送っています。

ファッションに関心をもったのは友人と買い物に行った時です。さまざまなデザインやカラーを施した洋服を見て戸惑いながらも友人に勧められ試着をして購入しました。それまで特に深く考えたこともなく、ファッション誌も読んだこともありませんでした。それから洋服を見る機会が多くなりました。私の周りにもファッションに興味を持つ友人がいてくれたおかげで今まで自分が着ることはないと思っていた洋服や知ることもないお店もあり世界が広がったような感覚でした。

今現在、私自身が感じ思うことですが、ファッションやおしゃれは自由で楽しめるということであり、老若男女や性別、国籍、障害の有無に関係なく全人類が楽しむことができ、さまざまな壁をなくすことのできる一つのツールだと思います。

ワントーンの落ち着いた服からカラフルな服まで、どの洋服も魅力的で見ているだけでも楽しませてくれます。自分が着用したらさらに気分が高揚するでしょう。初めは違和感を感じていても次第にフィットしていき、いつの間にかお気に入りのアイテムになる。私もそういった経験をしました。

私が洋服を選ぶ際に気にかけている点はデザインや洋服を着た自分のイメージもそうですが、義手を着用しているので義手がスムーズに袖を通るのか、という点です。肩やその先をソケットで覆うので一回りほど大きくなってしまい、また義手自体動かすことができません。なのでそういった状態でも通しやすい服を選んでいます。用途によってはややタイトな服を着用することもありますが着用に時間がかかり、服自体にも余裕がないので服が伸びてしまうことなども起こります。

写真1の服は暑い夏の時期によく着用します。夏服は袖が短いので気にすることも少ないですが、それでも写真のようなビッグサイズの洋服を着ることが多いです。写真2の服は寒い冬の時期によく着用します。この服は古着店で見つけました。丈はジャストサイズなのですが、全体的にゆったりしていて袖も大きく膨らんでおりとても着やすく重宝しています。この古着の上にコートを羽織ったりしますが、同様に袖の通しやすさを重視しています。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真1・2はウェブには掲載しておりません。

袖が短い夏服ではいろんな場所でジロジロと見られることもありいい気分ではありませんでしたが、今では自分の好きなファッションを身にまとって気分が良いからか気にもなりません。

ファッションやおしゃれについてこれからも自分の好きなものを着ていたいし、海外のファッションや環境に配慮したファッションも気になっています。ガーナ共和国のケンテという民族衣装は鮮やかな色合いと芸術的な模様がありとても興味深いです。色ごとにそれぞれに意味が込められているそうです。

また環境に配慮したファッションではペットボトルの蓋で作られたドレスや廃棄されたプラスチックで作られたシューズなど資源を再利用して作られたアイテムがあるみたいです。そういったファッションを取り入れたいし手元にあるアイテムも補修など行い、長く身に着けることを意識していきたいです。

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