分科会 5−2 個人、家族、地域社会における支援的環境 2023年3月17日

報告:稲葉 久之

参加者: 30人程度

概要:

【発表】

1)Development and verification of the effectiveness of a CBID education program – case study of the “Let’s Collaborate” card game for inclusive society in Japan

CBID教育プログラムの開発と効果検証-日本におけるインクルーシブ社会に向けたLet’s協力カードゲームの事例-(資料(PDF)

2)Access to infrastructure and public transport for persons with disabilities Cambodia

カンボジアの障害を持った人のためのインフラストラクチャーと公共交通へのアクセス

1)日本障害者リハビリテーション協会が開発した地域共生社会を考えるLets’協力カードゲームの紹介と、参加者58名へのアンケート結果からの効果検証が報告された。アンケート結果からルールが明瞭であること、2時間から3時間の時間は適切な長さであること、また自由記述回答から、さまざまな気づきが得られる教育プログラムであることが明らかとなった。またカードゲームの基礎となっているCBRマトリクスが日本における地域共生を考えるフレームワークとしても有効であることが明らかとなった。

2)カンボジアの首都プノンペンにおける公共交通(バス)の障害者目線での課題検証が報告された。障害者とともに行われた調査から、障害者が多く住むエリアにバス路線がないこと、バス停やバス車体が障害者に配慮されたものになっていないこと(例:車内の通路が狭く車いすが移動しづらいなど)、乗降において介助が必要な際に、男性運転手に身体を触れられることに女性の障害者は抵抗を感じること、などが明らかとなった。こうした検証から、バスやバス停の障害者への配慮、バス運転手など従業員へのトレーニング、バス路線や停留所の分布の改善などが指摘された。

議論:

演題2についての意見交換では、自身も障害者であるという当事者から調査結果に賛同するコメントが寄せられた。また調査結果は行政や中央省庁と共有されたのか?など質問が出された。発表者からプノンペンのバス公社や所管する省庁への報告はなされたと回答された。また障害者が住むエリアにバス路線がないことについては、低所得者層が居住するエリアと重なっていること、そうしたエリアは道幅が狭くバスが通らない道路環境の課題があることも補足された。参加者からは、そうした際の代替策として改造されたトゥクトゥクなどを活用できないか?などのアイデアが示された。

所感:

当日の急遽の時間変更により演題1については途中から参加された方が多く、セッション修了後に補足する形でカードの展示と説明を行った。個別に意見交換したなかでは「関係者とCBIDの考え方を共有するツール/機会として実施できるのではないか」「自国版のニーズカードや支援カードの開発に関心がある」というコメントを受けた。

演題2は、車椅子の方と協働で実地調査を行った報告であり、当事者参加型の調査としても興味深い内容であった。出発地から目的地のバス停から乗降に同行し課題を明らかにしたり、障害者の居住地とバス停・バス路線のマッピングなど具体的な調査内容への参加者の関心も高く、次回CBID会議開催国のネパールからの参加者から「次回の参考にしたい」というコメントも寄せられた。

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