3.障害者スポーツを支援する立場から

松村 洋
障害者スポーツ文化センター横浜ラポールスポーツ課 課長

 皆様、こんにちは。横浜ラポールスポーツ課の松村です。普段は主に、リハビリテーション・スポーツ事業と地域支援事業に従事しております。どうぞ宜しくお願いいたします。

 本日は、「スポーツをはじめるための支援」、「地域への展開」、そして「東京大会の開催を契機とする変化」について触れた後、「今後の課題と方向性」についてお話をさせていただきたいと思います。

 さて、横浜ラポールおよびラポール上大岡では、障害者スポーツのシームレスな支援において、下支えとなるリハビリテーション・スポーツを実施しております。リハビリテーション・スポーツは、医学的リハビリテーションの終了段階から、生涯スポーツを獲得する段階との中間に位置しており、それぞれの段階をつなぐ橋渡しの役割を担っています。

 支援のポイント・体制としては、リハセンターの各部門や地域の医療機関、障がい者スポーツ指導者協議会、等の皆さまと連携しながら、「障害に対するさまざまな配慮」、「個々の状況や評価に応じた適切なプログラム導入」をポイントに、横浜市の北部に位置する横浜ラポールと、南部に位置するラポール上大岡の2か所で展開しています。

 実際の指導場面では、体力測定、ボッチャ、卓球、グラウンドゴルフ等、各種スポーツ活動を通じて、単に身体機能や体力の維持・向上だけを目指すのではなく、スポーツのもつゲーム性をいかしながら、家族以外の他人と主体的な関わり合いを促していくことを重視しています。

 また、横浜市ではラポール以外の場所でもリハビリテーション・スポーツを開催しています。実施にあたっては、リハセンターの地域支援課、高次脳機能障害支援センター、区の福祉保健センター、スポーツセンター、スポーツ団体、障害福祉施設、自主活動サークルなど、地域のさまざまな施設・団体等と連携しながら、障害のある方が身近な地域でスポーツを楽しむことのできる環境づくりを行っています。

 スライドは、実際に行っている「支援の内容」と主な「連携先」を表しています。図の左半分は、スポーツの開始から主体的な参加の範囲を担っており、出張教室とフォローアップ教室という、2つのプログラムで構成されています。一方、図の右半分は、主体的な参加を支える環境づくりをテーマとする、人材養成講座と共生スポーツで構成されており、対象者やニーズに応じて支援を行っています。また、提供しているプログラムは基本的に集団プログラムとなっており、主にスポーツセンター、地区センター、障害福祉施設、等で開催しています。一方、個別のニーズについては、スポーツセンターと連携し、ラポールで実施している運動メニューをスポーツセンターで引き続き利用できるように支援を行っています。

 スライドは、地域展開における「主な事業成果」を示しています。一つ目は「活動場所の確保と種目の普及」、二つ目は「指導者の養成」、そして三つ目に「障害の有無を問わず参加可能なプログラムの創出」をあげています。まず、場の確保と種目の普及についてですが、平成28年に256回の場を確保するとともに、ボッチャやグラウンドゴルフ等の普及が進んだとしています。ちなみに、リハビリテーション・スポーツプログラム(フォローアップ教室を含む)は、そのうちの約半分の回数を占めています。

 次に、「指導者の養成」については、平成25年から28年までの4年間で1000人の指導者を養成。さらに、「障害の有無を問わず参加可能なプログラムの創出」では、“既存プログラムの活用”および(養成した)“指導者の活躍支援”をテーマに作業を行い、平成28年には市内11の行政区でプログラムを創出しています。

 こうした取り組みにより、「スポーツを始めるための支援(リハビリテーション・スポーツ)」については、ラポール以外の場所でも受けることができる環境が整い始めましたが、その後の「主体的な参加を支える資源(人・場所・プログラム)」の整備と、一般のスポーツ振興を図っている組織・団体と障害者スポーツの振興を図っている組織・団体との「組織的な連携体制」をどのように整備していくかが当時の課題となっていました。

 ここからは、東京大会の開催を契機とする変化についてご紹介します。

 まずは、【施策の変化】です。横浜市では、第2期スポーツ推進計画の中間見直しの「障害者スポーツの推進」という項目の中で、「障害者がスポーツを通じて社会参画できるよう環境を整備する」。「すべての人が、分け隔てなくスポーツに親しむことで、共生社会の実現を目指す」。「障害者が住み慣れた地域で、スポーツを楽しむことができるよう、障害の種類、程度に応じた多様なスポーツに親しむ環境をつくる」「障害者スポーツの競技力向上支援体制を強化する」と定めるとともに、一般のスポーツ振興を図る団体と障害者スポーツの振興を図る団体が、それぞれの役割や責任を踏まえ連携・協働して、計画の実現を目指すということが明記されました。

 次は、【支援体制の変化】です。スライドは横浜市の組織連携をあらわしています。障害者スポーツの振興を図っている横浜市健康福祉局、ラポールと、一般のスポーツ振興を図っている横浜市市民局、横浜市スポーツ協会とが、定例会議(月1回)を開催。情報の共有と事業協力が可能となり、横浜市における障害者スポーツの普及・振興が、一層進むようになっていきます。

 最後は、【主体的な参加を支える人・機会の増加】です。まず、「ニーズの高まり」については、ラポールでは、障害や障害者スポーツの啓発に関するニーズが、オリンピック・パラリンピック推進校、競技団体、地域のスポーツ施設・指導者、民間企業、等で高まり、続いてスポーツの開始に関するニーズが、障害福祉施設、特別支援学校・個別支援学級、等を中心に高まっていきました。さらに、実際の支援を通じて「連携・協働可能な資源が増加」したことで、「プログラムの種類・開催場所の増加」につながっていきました。こうして、スポーツの開始を支援する私たちと、主体的な参加を支援している横浜市スポーツ協会を初めとする各種団体などを、直接つなぐ支援基盤が整い始めたと考えています。

 「今後に向けて」は、東京大会を契機に様々な資源と連携・協働した取り組みが、これまで以上に可能となり、スポーツの開始や主体的な参加の機会を増やすことができるようになりました。一方、障害者のスポーツ活動に対するニーズは高まっており、本年度は障害福祉施設からの依頼が増えています。対象となる方の中には、先天性の障害や精神障害の方もおられますので、従来の支援モデルだけでは対応しきれない場面もあり、変化する対象者・ニーズにどう対応していくかは、今後の大きな課題となっています。また、プログラムや職員の質を高める取り組みも同様で、リハセンター、療育センターをはじめ、さまざまな資源と「情報を共有する場」や「互いの取り組みが見える場」を設定し、相互理解を深め、それぞれの人材育成や質向上につなげる環境づくりを進めていきながら、障害者スポーツのシームレスな支援における、下支え機能としての役割を、ラポールとしては発揮していきたいと考えています。ご清聴ありがとうございました。

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