ピアスタッフとして働くこと

「新ノーマライゼーション」2023年4月号

NPO法人リトルポケット 中野区地域生活支援センターせせらぎ ピアスタッフ
斎藤俊生(さいとうとしお)

私は普段から相談支援機関として利用している東京都世田谷区の地域生活支援センターMOTAで、2008年からピア電話相談、2012年から地域移行支援の事業にピアサポーターとして従事してきました。そして2014年、ご縁があって近隣する区である中野区の地域生活支援センターせせらぎにピアスタッフとして入職しました。週3日勤務の非常勤職員として勤務9年目になります。主な業務は、月1回のピアカウンセリング、月3回のピアグループ運営、地域移行支援での個別支援、利用者の方との生活場面面接、各種プログラムへの参加になります。

ピアスタッフとして働いて良かったことはたくさんあるのですが、その中でもまず私自身が仕事を続けることにより、精神疾患の病気から回復して元気になったことが挙げられます。働く中で生活リズムができてきて、体調やメンタルの調子がとても良くなりました。せせらぎへの入職前は1日に6種類の薬を服薬していたのですが、主治医と少しずつ減薬に取り組み、現在では1日に1種類の薬だけ服薬しています。精神科への通院も4週間に1回から徐々に回数を減らし、8週間に1回の通院になりました。

もう一つ良かったこととして、ピアスタッフの仕事は私自身の自己肯定感への寄与につながる場面がとても多いことが挙げられます。実例では、回復への道のりやグループホームの利用など自分の病気の経験が活かされる場面、ピアカウンセリングなどの際に「斎藤さんと話せて良かったです」と利用者の方からうれしい言葉をいただく場面、「私も斎藤さんのようにピアスタッフになりたいです」と自分の存在が認められる場面などがあります。

ただピアスタッフとして働く中で、自分の病気の経験が活かされるのは体感的に5割程度だと思っています。利用者の方と病気の話ばかりをしているわけではなく、他愛のない話をすることや日常的な悩みについての相談を受ける場面も多いので、傾聴、受容、共感といった支援の基本的なことも大きく求められます。ピアスタッフは対等・仲間であると同時に一人の支援者でもあるということを肝に銘じています。それでも私が一方的に利用者の方を支えているとは思っていません。「斎藤さん、無理しないでね」と声を掛けてもらったり、私自身の話を聴いてもらったり、利用者の方にさまざまな場面で支えられることも多く、ピアスタッフとしては「支えたり、支えられたり」という言葉が一番しっくりときます。利用者の方や一緒に働く専門職の方など、周りの人に助けられながら今の自分があると思っています。

ピアスタッフとして働く上では良いことばかりではなく、困難なことも数多くあります。その中でも精神的に調子の悪い利用者の方に、目の前で大声を出されたり暴言を吐かれたりするのは辛いです。そのような場面では一緒に働く専門職の方に助けを求める時もあります。それでも大声や暴言は病気がそうさせているのであって、その人のすべてが悪いわけではないと私は思います。病気は本人の一部分であり、すべてを包み込むものではないという意識は大切にしたいと思っています。そのスタンスはピアスタッフの仕事を行う上での土台にもなっています。

今後の目標としては、ピアスタッフとしてもっと現場の経験を積みたいと思っています。経験によって自分の中に引き出しが増え、支援を行う上での財産になり、相対する利用者の方への貢献につながればとの思いからです。また、現場で働いていると良いことも悪いこともたくさん起こるので、ピアスタッフとして雨風にも負けない柳のようなしなやかさを持ちたいとも考えています。そしていつでも自然体で、ありのままの自分でいることを大切にしていきたいと思います。

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