地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-医療的ケアが必要な児童生徒の通学支援について

「新ノーマライゼーション」2023年7月号

京都市教育委員会総合育成支援課

2021(令和3)年9月、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行されました。たんの吸引や経管栄養などを日常的に必要とする医療的ケア児やその家族の生活を、社会全体で支えていくことを目指して定められたこの法律には、子どもたちにとって大切な日常生活の場である学校についても、保護者の付添いがなくても安心安全に学校生活を送れるよう、設置者である自治体等が責任をもって適切な支援や環境整備に取り組むべきであるとの考え方があらためて示されています。

京都市では、この法律の成立よりも早くから、医療的ケアが必要な児童生徒が在籍する学校への看護師の配置や、医療的ケアに関するガイドラインの作成など体制整備を進めてきましたが、残された課題もありました。保護者による送迎の問題です。医療的ケアが必要な本市児童生徒の多くは、市内に4校ある地域制の総合支援学校(全国的な名称は「特別支援学校」)に在籍していますが、総合支援学校は通学区域が広いこともあって、大半の児童生徒はスクールバスで通学しています。ところが、通学時間中に医療的ケアが必要であることを理由にスクールバスに乗車できない児童生徒については、自家用車等での送迎をお願いすることとなり、保護者の負担につながっていました。

こうした状況を踏まえて2022(令和4)年度から新たに始めた取り組みが通学支援です。具体的な方法は次の2点です。1点目は、看護師や医療的ケアを実施できるヘルパーの派遣が可能な事業所(訪問看護ステーション等)との契約です。契約する事業所は一律ではなく、それぞれの児童生徒が日頃から利用されていたり、自宅の近くであったりと、なるべく身近な事業所に関わっていただけるよう、個別に調整・決定しています。2点目に、送迎に必要な福祉タクシー等の車両を庸車しますが、こちらも個々の状況を踏まえた個別契約としています。これら2点の組み合わせにより、これまで自家用車での送迎を余儀なくされていた保護者の方に対し、自家用車の代わりに福祉タクシーを手配し、保護者自身の代わりに看護師等に同乗いただくことによって、保護者の付き添いなく通学できるという仕組みになっています。送迎に係る費用(看護師等の派遣やタクシー代)は原則として公費で支払われ、保護者が料金を負担する必要はありません。

制度利用の流れについてですが、通学支援を希望される方には在籍校を通じて申し込んでいただき、利用する事業者が決定すれば、事業者・在籍校・保護者が集まっての打ち合わせを行い、送迎の実施手順や緊急時の対応方法等について共通理解を図ります。さらに試走を実施して送迎ルートや医療的ケアを行う場合の停車場所をあらかじめ確認するなど、安心安全をしっかり確保したうえで送迎を開始するようにしています。なお、制度を開始した2022(令和4)年度は、予算の制約もあり、送迎を利用できる回数に週当たりの上限を設けていましたが、今年度は上限を撤廃し、必要な分だけ利用いただけるよう充実を図ったところです。

現在(2023(令和5)年6月時点)、11名の児童生徒が本制度を利用しており、「他の家庭と同じように玄関先で子どもを見送ることができるようになって、本当に嬉しい」などの声をお聞きしています。引き続き、関係事業者の皆様との連携のもと、個別のニーズにできる限り寄り添い負担軽減に努めるとともに、子どもたちが安心安全に学校に通うことができる環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。

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