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被災地支援センター

8/29南相馬市長への調査結果提出

障害者が安心して暮らし・働ける南相馬市をめざして
~緊急避難時における要援護者調査から~


1 調査のねらい(経過)

 3月11日の東日本大震災で、福島県南相馬市では、663名(8月25日付)の死者・行方不明者をだし、原発事故で7万人あった人口が緊急避難で一旦1万人まで減り、街はゴーストタウン化した。その後4月に入り、避難生活の困難さから南相馬市に住民が戻り始めた。障害のある人やその家族も同じように戻った。
 そうしたなかにあって、再び何らかの災害にあった場合の備えとして、4月上旬、南相馬市は自衛隊の協力のもと「災害時要援護者名簿」のリストを作成される。この名簿は、政府が定めた災害時要援護者対策の中の「地域において、災害時の避難にあたって支援が必要となる人」を決め「誰が支援してどこの避難所等に避難させるか」という「避難支援プラン」づくりの一環だった。
 しかし、その中に障害のある人が入っていないことがわかり、障害のある人の要援護者名簿づくりに地元障害者事業所(ぴーなっつ)への依頼要請があった。さらに事業所から、JDF(日本障害者フォーラム)被災地障がい者支援センターふくしま(以下、JDF支援センター)に協力要請の呼びかけがあり、ぴーなっつとJDF支援センターが共同して取り組むこととなった。

 名簿づくりのための調査活動を始めるにあたって、原発事故により避難生活が流動的で、今後も住民の移動の予測がつきづらいという困難な状況をふまえつつ、調査目的について南相馬市より

1.障害のある人やその家族が南相馬市に今住でいるのか、住んでいないのか。またその安否はどうなっているのか。

2.緊急避難時において、何らかの支援が必要なのか。どんな支援が必要なのか。

ということを明らかにするという提案があった。
それを受け、ぴーなっつとJDF支援センターでは、

3.多くの方々が避難経験を持ったり、逆に避難できずに南相馬市にとどまった経験を持つ方もおり、その内容をきちんと把握することで、緊急避難時や避難後の問題改善につなげる。

4.訪問面接の中で、緊急に生活に困っていることがあれば対応することも考える意味で、現在の生活実態を押さえる。

と提案し、調査内容の柱が決まり、4月30日より調査が開始された。

 調査活動が進むなかで、被災後、被災体験や避難体験をするなかで特に障害があることによる厳しい実体験をしたことについて初めて詳しく話される方も多く、一方で今の生活に困窮しているという厳しい実態にもぶつかった。
そうした中、この調査活動は

5.まず当事者・家族の方の話をじっくりと聞くこと自体の意義も大きく、多少なりともケアにつながる。

6.今抱えている問題への対応として、様々な関係機関との連携を作り出していくこと。

が目的に加えられた。

●災害時での個人情報開示に基づく今調査活動の意義
 今回の調査活動は、最終的には災害時における個人情報開示に基づく調査活動の形となった。
残念ながら大災害となった東日本大震災後には、このような形で民間団体が中心となって行なった調査活動は、南相馬市だけである。
 南相馬市では、65歳未満の障害のある人の3割の人が福祉サービス(南相馬市健康福祉総合計画より)を利用していたが、震災後事業所も一旦閉鎖され、利用者全員の状況把握が出来なかった。障害関係団体も組織されている人が少なく、震災後はその機能を果たせず、状況把握が出来ない。施設サービスを利用していない7割の在宅障害者となると、全く周りとの関係が遮断された。
 一方で、行政関係者も被災したり、避難したりして、末端までの機能が停止する。 地域においても自治会・民生委員などの地域実情を知りえる立場の人たちも被災や避難をしており、地域自体がバラバラとなった。結果、地域の中で障害のある人の状況を把握できる状況ではなくなった。
 平時であれば困ったときには、自身で相談に出向いたり、福祉サービス利用の申請を行なう。しかし、大震災、重大な原発事故と、いまだ経験したことがない状況下に置かれ、障害のある人は、混乱・不安・孤立・情報遮断などの状態に陥り、とても自らが出向いて、問題解決の行動を起こすことは不可能な状況だった。
 誰も障害のある人の状況を把握できず、障害のある人自身が関係機関や行政機関に訴えることが困難な緊急時において、この調査活動を行なった。障害者手帳に基づき1軒1軒を訪問し、直接本人・家族から状況を聞き取った。この調査は、「取りこぼし」「把握もれ」をなくすという基本的原則を実践した貴重な取り組みであった。
 さらに調査活動の中で以下のとおり、必要性・緊急性の高い情報が収集でき、また様々な支援活動を広げることとなった。

① 災害直後の安否確認・所在確認を実施できたということは、生命・身体に対する危険の状態把握という最も重要な取り組みであったこと。
② 緊急時における要援護者名簿づくりということで、特に大災害直後で、まだ事態がどう変わるか分からないということでの緊急時の対応計画づくりであったこと。
③ 厳しい避難体験をした直後の調査と言うことで、避難計画づくりにおいて、体験に基づいた避難計画づくりに繋がること。
④ さらに震災直後で、困難な生活実態や情報不足、相当な不安を抱えた状態とニーズの把握ができたこと。さらに緊急の場合、地元関係機関に繋げたこと。
⑤ 調査活動を通じて、地元社会資源の再開支援や相談員も含めた地域の中でのネットワークづくりを推進できたこと。

 今回取り組んだ「災害時での個人情報開示に基づく調査活動」は、緊急時・非常時において、最も困難な立場にたたされる障害のある人の命と生活を守るためには、必要な取り組みであることを実証した。


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