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シンポジウム「デイジー教科書の現状、課題、そして将来に向けて」

グループごとのテーマについての発表
テーマ:デイジー教科書の現状・課題・将来について

Fグループの発表

Fグループには実際、利用者さんに対応されている方など、いろんな方がいました。まず導入事例を伺いました。

1つが、もう帰られてしまったのですが、北海道の「かかわり教室」という、発達障害を持った子どもたちに塾のような形で指導している団体の例ですが、デイジー教科書を小学校1年生に入る時点で教科書への不安感や恐怖感を取り除くための一つのツールとしてマルチメディアデイジーを使用しているということでした。その結果、継続してマルチメディアデイジー教科書を使う子どももいれば、紙の教科書に移行する子どももいるということでした。

もう1つ、興味深かった事例は、山口県で図書館の館長をされている方がいました。その方が、ある市立図書館に赴任されて、デイジーの体験コーナーを作ったということです。最初は個室みたいなところで、近寄りがたい雰囲気だったのですが、中央カウンターの前にデイジー体験コーナーを移動させて、誰でも体験できるような雰囲気にしたらよかったということです。その取り組みが県下に広がって、山口県ではマルチメディアデイジーの体験コーナーが結構あるそうです。学校に呼ばれて、マルチメディアデイジーのレクチャーもされているということでした。

次に課題と解決案について話し合いました。まず課題としては、いろんな成功事例はあるにしても一般には圧倒的に知られていない。そもそもパッケージが貧弱ではないかということでした。「手にとってみようかな」という雰囲気がないのではという意見もありました。それからPR不足があるということです。

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もう1つは、教育現場での対応が不十分であるということです。これは教員一人ひとりの認識がまだ不足していることだということです。教員免許更新の講習でこのようなことも教わるとしても、その時期が来ないと接する機会がなく、また知ったとしても、教員の方は忙しすぎて一人ひとりにあった対応など、とてもできる状態でない場合も多いのです。授業が終わったら会議があり、また、保護者の方の対応も結構大変で体力的にも厳しいという問題があります。

これらは教育現場のソフト的な問題ですけれども、その上にハードの問題もあり、導入しようとしても予算の問題があるのです。

もう1つの課題は、著作権的な問題です。先ほどリハ協の野村さんに確認しましたところ、学校でも図書館でもみんなに見せる分には問題がないそうです。対象になる生徒・児童がいれば、プロジェクターなどで紹介することはできるのですが、それを一般の人に、著作権フリーではないものを貸し出したり提供するということはなかなかできないということなのです。このようなこともPRの足かせになっているのではないかという意見もありました。

解決案ですが、これがなかなか難しいです。マルチメディアデイジーという教科書にかかわらず、コンテンツを一般の人に知ってもらうには、出版社自らがマルチメディアのものを「売り物」として作って売る。そうすれば、貧弱なパッケージ問題もちょっとは解決するのではないかと思います。皆が購入するようになれば、「こういうものがあるんだ」ということになり、いろんな人に知ってもらえるかと思います。

山口県の成功事例がありましたが、公共図書館という誰でも利用できる場を普及の場にするというのも有効ではないかという話になりました。以上です。