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シンポジウム「デイジー教科書の現状、課題、そして将来に向けて」

講師のコメントおよびまとめ

神山 博(青森公立大学経営経済学部 教授)

皆さん、お疲れさまでした。今年は去年までと違って、ワークショップの形態での開催でした。去年はパネルディスカッションをして、最後に会場からの意見を出していただいたら、かなりいろいろな意見ができたので、今年はワークショップ形式をやることにしたところ、皆さんに積極的にグループ内で意見を出していただくことができました。

デイジー、特に教科書の話題について、自分たちで意見を出し合ったり討論したりしていただいたので、最後の我々のコメントも、すっと頭に入ってきただろうと思います。非常によかったと思います。

私自身もあるグループに参加していろんな意見や問題点が出され、それを解決しようというやりとりがあって、とても楽しく有意義でした。皆様お疲れさまでした。でも楽しかったでしょ?本当にそう思います。

私自身は製作する側の立場なのですが、これは絶対言わないといけないなと、毎年言っていることがあります。製作サイドのマンパワーが関わることですが、図書の速度やハイライトの問題や、使いにくかったという問題としてアンケートに端的に現れていますが、これはハイライトが短すぎたとか長すぎたということ自体が問題なのではなく、使っている人にとって、合っていなかった、ミスマッチの問題です。そのミスマッチを極力減らすようないくつかのバージョンを作って提供していかないといけないのですが、これには先例があります。拡大教科書ガイドラインがあって、22ポイントであるとか、26とか、32とか、いくつかのセットを用意して、それでも足りない、個別ニーズに合わない部分はボランティアが製作します。デイジー図書でも同様です。

よく合理的配慮といいますが、デイジー教科書を提供するというのは、他の先生もおっしゃっていましたが、基礎的環境整備の部分です。必ず国の責任で、義務教育の教科書は提供しないといけないと思います。その部分をボランティアに頼るというのはあってはならないことです。ボランティアの活躍する場があるとすると、環境整備の部分では十分フィットしなかった利用者に対してであって、それらの個別のニーズに対して、ボランティアが活躍するのが現状では一番良いやり方だとは思います。しかし、なかなか国はそういう方向に向かっていきません。どうしても個別ニーズに対応できない部分だけ、カスタマイズを最後の部分だけボランティアが活躍するのが私は良いと思います。

もう1つ製作する立場で言わなければならないことがあります。今日、要約筆記が入っていますよね。障害には視覚障害、聴覚障害、学習障害、等々ありますが、聴覚障害のサポートするための法整備はかなり遅れました。2000年ぐらいまで遅れていましたがその後挽回して、今はかなり進んでいます。現在は聴覚障害者の情報保障をするためのプロの仕事として、第二種社会福祉事業として規定されています。当然のことながら1時間いくらといった報酬も出ます。ところが我々がやっているのは何かというと、ボランティアなので、お金は出ないのです。出るかもしれませんが、実質ほとんどゼロですよね。これは、あってはいけないことです。

聴覚障害では情報を支援する立場の方と情報を受け取る立場の方々、コミュニケーションをする方々、双方が手をとりあって政府に働きかけ続けたことが実を結びました。それと同様のことを、我々もやっていかないといけないと思います。

製作者だけが動くのではない、利用する側も積極的に活動していかなければいけないのだろうと思います。これは、製作する立場から強く申し上げておきたいことです。

アンケートを見て思ったのはこれも端的には文節区切りの読み方が上手になったとか、スムーズに読めるようになったとアンケート結果が出ています。目につきやすいそういったことだけにとらわれてはいけないと思います。それよりも読むことに積極的になったとか、上手に読めたといった成功体験を通して、他のことにも積極性が出てくるとか、友達とコミュニケーションをとれるようになったとか、そういったことのほうが、大事だと思います。

それからデイジー図書を製作するという点では先ほどもお話がありましたが、かなり簡単に作れます。青森でセミナーを開くときも15分くらいの話す時間のなかで、5分ぐらいで作ってみせます。こんなにも簡単にできてしまうのだ、製作講習会をやるときも30分で製作を完了するような、教材をまずやってもらうことをしています。ところがマルチメディアデイジーを作るのはすごく難しいといった先入観が一般的にあるので、なかなか製作者が増えていかない。これを変えていかないといけないだろうと思います。以上です。