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母親が語る『発達障害のある大学生、ユニコと歩む日々』 その14

発達障害のある子のこだわりをいかす その1 本、大好き!

ユニコは、どうやら文字にこだわりがあるらしく、

幼い時から文字を読むのが大好きだった。

活字中毒と言ってもいい。

それなら、とにかく本を読ませて、知識をつけさせ、世界を広げてやろうと、

本はもちろん、学校の授業に役立ちそうな事典や参考書、資料集などをどんどん読ませた。

小学校3年生頃のユニコの愛読書は、国語の辞書。

暇さえあれば、辞書を眺めていた。

2学年上の姉の教科書も、いつのまにか全部読んでしまう。

(さすがに中高時代の理数系の教科書は読まなかったようだが。)

当時、家から歩いて2分ほどの所に図書館があり、

ユニコは毎日のように入り浸っていた。

通学時に歩きながら本を読んでいて、先生に注意されたことも何度もある。

(二宮金次郎か?)

鞄の中にはいつも10冊近くの本。

あまりの重さに、肩や腰を壊すのではないかと心配した。

(靴の底はいつも、鞄を持つ側がすり減って三角形になっていた。)

高校では、豊富な読書体験を生かして、図書室の主となり、

生徒だけでなく先生方にもレファレンスをするようになった。

これまで読んだ本の内容を全部覚えている上に、ノートパソコンにも記録していて、

「タイトルがわからないけど、こんな話の本はどこ?」と聞かれれば、

「ああ、それはあの本ね」と、すぐに書棚に案内し、

「○○について調べたい」と言われれば、

「それならこのあたりの本はどう?」と、適当に見繕い、

「何か面白い本ない?」と相談されれば、

相手の趣味や普段見ているテレビ番組、好きな音楽などを聞いて、それにあった傾向の本を紹介する。

司書の先生から、

『本のことは、私に相談してください。』

と書いた名札をいただき、

それを首からかけて、毎日昼休みに図書館で待機していた。

学校での役割と居場所ができたのだ。

今、ユニコは大好きな図書館で働くため、司書の資格取得をめざして勉強している。

また、大学図書館が実施している、大学生の視点から大学生に勧めたい本を選ぶプロジェクトに参加し、

図書館に新しく入れる本を学生自身が選ぶという活動を楽しんでいる。

とはいえ、本をよく読んでいて、知識は増えても、

それが実生活と結びつかないこともある。

小学6年生の冬、部屋にかけてあったユニコのリュックから、水が滴っていた。

チャックを開けてみると、入っていたのは大量の雪。

「雪は解ける」という知識はあっても、

実際に、リュックに雪をつめて家にもってきたらどうなるかは、わからなかったらしい。

本の世界と現実の世界

知識の世界と実践の世界

2つの世界をうまく結び付けられるように、少し手助けが必要なのかもしれない。

<ユニコからも一言>

「理数系の教科書は読まなかった」とあるが、理科の資料集だけは例外で、よく読んでいた。そこで得た知識が何かに役立っているのかと聞かれると、ちょっと困る。でも、ただ教科書で読むだけよりは、図や写真がたくさんある資料集を見た方がわかりやすい。

通学時に読書をするというのは、よくやってしまう。(普段、自転車で大学に通う時には、さすがに危険だから何も読んでいない。それでも本を借りる時には貸し出し冊数が無限大ということもあって、リュックサックいっぱいに本を借りている。)そうして暇を見つけては読書をすることが、私の糧になっている。勉強は苦手だったけれど、教科書の文字を読むことに抵抗がなかったのは、読書が好きだったからだと思う。このおかげで図書室に居場所ができたのも嬉しかった。それまであまり話したことがない人とも、読書感想文のことで相談にのったのをきっかけに親しくなれた。今でもお勧めの本を選んでは大学図書館に入れてもらっているし、自分が選んだ本が借りられていると嬉しい。司書の資格を取得するのもそれを活用して司書として働くのも大変だけれど、一生懸命勉強して、司書もしくは司書の知識や技術を生かした職業に就けたらいいなと思っている。