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国際セミナー「世界の障害者インクルージョン政策の動向」

講演2 関連資料

「ジャレズ氏(54歳)の話」

私自身は、自分のためになることですから、働くということをいつも楽しんできました。でも、大人になってからこれまでずっと、私は給料をもらえる仕事を一つしかしたことがありません。しかもその仕事は1年しか続きませんでした。

アクアリウム(観賞用水槽)と魚を扱うソーシャルファームを設立したスチュアート(アクアマックス)を紹介されるまで、私は10年間働いていませんでした。その間、病院やケアホーム、支援付住宅に出たり入ったりしていました。ケアホームにいたときに「青天の霹靂」といえる電話を受け、その18ヵ月後にスチュアートの会社に入ることになったのです。

それ以来、私の人生も私自身も大きく変わりました。

私の母は、私が家庭の外で興味のあるものを見つけ、責任を持って関わるようになっていく様子を見てきました。母は、私が仕事を持つことで再び自分に価値を見出し、また仕事をし、それを成功させることで誇りを持てるようになったと考えています。そして、他の人(スチュアート)やアクアマックスの他のメンバーとともに働くことを通じて、私が人間として成長し、また人生観も広がったと考えています。私は以前よりも人柄が丸くなり、分別がつくようになり、他の人々や物事についてより深く考えるようになりました。母は私がずっとよくなったように見えると大喜びしており、もちろん私自身もこうなることができたことにとても満足しています。

私自身、自分が役に立っているという実感や職場での友情を通じて、また私たちが設置した設備から利益を得るお客様と、上司であるスチュアートが満足するような仕事を成功させることによって、やりがいを感じています。また、同僚とともに励ましあいながら目標を達成するために一生懸命働くことで育まれる友情から、喜びや満足感も得ています。私は、自分が一員となっている社会にとって何か価値の在ること、役立つことをした結果、報酬を得ているわけですが、これはほとんど、或いは全く自分自身をコントロールできない状態であった私には、長い間ずっとできなかったことでした。

ソーシャルファームは、社会が自分に与えてくれたものの一部をお返ししたいと望んでいる私のような者のために、そのような機会を作り、容易に実行できるようにした場です。このような企業や事業に関わることにより、人々はよりよい向上をするための能力を獲得して(自分自身が「よりよく」変わる訳ではないかもしれませんが)またそのプロセスにおいて社会の力になることができるのです。

最後に、私は能力のない者は不利な立場におかれて当然だとは思いません。働く能力がないことには理由があり、多くの複雑な問題が伴っており、それがその人の状況を難しくしているからです。