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国際研修機関リーダーのためのセミナー報告書

(財)日本障害者リハビリテーション協会

項目 内容
開催日 1995年11月17日~20日

Report of the Asian Regional Seminar for Trainers and Community Organizers Working in the Disability Field, November 17-20, 1995

Japanese Society for Rehabilitation of Disabled Persons



1.はじめに

財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
常務理事 奥山元保

 日本の国際化に伴い、障害者リハビリテーション分野での海外との人的交流が盛んになりつつあります。人材育成のための国際研修を行っている機関も国内に15以上あり、それぞれ独自に努力を重ねてまいりました。
 このたび、それら研修実施機関のリーダーの方々にお集まりいただき、今後の研修プログラムの質的向上のために「国際研修期間リーダーのためのセミナー」を開催いたしましたところ、50名を越える参加がありました。国内外からお迎えした実践経験豊かなリソース・パースンや講師の方々により、日本を含むアジア各地で実施されている研修や人材育成活動について多くのことを学ぶとともに、各研修実施機関が抱える共通の課題について熱心な話し合いが行われました。
 ここに報告書をまとめましたが、今後の研修・企画や国際活動のためのささやかな一歩としてご参考になれば幸いです。


2.CBR開発・研修センタ-におけるコミュニティ・ベ-スド・リハビリテ-ション分野での人的資源開発・発展のための活動経験

ハンドヨ・チャンドラクスマ インドネシア・ソロCBR開発・研修センタ-所長

久野研二 インドネシア・ソロCBR開発・研修センタ-理学療法士

はじめに

 コミュニティー・ベースド・リハビリテーション(Community-Based Rehabilitation:CBR) は、途上国の、特に農村等の既存のサービスがない地域でのリハビリテーション(以下リハ)の実践方法として1976年に世界保健機構(WHO) によって提唱されて以来、リハ分野における途上国の開発戦略として多くの国で実践されてきた。
 この間障害者のリハは、個人が障害を克服して日常生活動作(ADL)の自立を目指す考え方から、ノーマライゼーションやバリアフリーの考え方に基づいて、社会が変わっていくことを前提とした生活の質(QOL )の向上を目指すものへと発展してきた。
 また、途上国の開発も、近代化・西欧化を目指し、遅れている地域を対象として外から金・人・物を支援してきた外発的な開発・援助が、有効な戦略ではなかったどころか新たな依存や従属関係を生みだし、国連開発の10年の反省を通しても見直しが求められた。そして現在では、地域社会を主体とした内発的な発展・成長(self reliance)を支援する地域社会開発(community development:CD)へと変化しつつある。
 CBRもこの波の中で、単にサービスの提供の量と地域を拡大する活動から、徐々にCDへと展開してきた。
 国際機関としてCBRを進めてきたWHO、国際労働機関(ILO)、およびユネスコ(UNESCO)が1994年に出したCBRに関する合同政策方針の中で、CBRは「地域社会開発(Community Development) における、全障害者のリハ、機会の均等化、社会統合のための戦略の1つである。CBRは障害者自身、家族と地域社会、( そして障害者とその地域社会に) 適した保健、教育、職業及び社会サービスの連携協力を通して遂行される。」と定義されている。
 この合同政策方針は、障害者問題はもはや、障害を個人の問題としてとらえ、医師対患者という医療をチーム医療・チームアプローチへと専門職の数と領域を拡大してきた従来の方法だけでは対処できないこと、障害者問題を社会の問題として対応する方向への戦略の抜本的転換の必要性を示唆している。
 しかし、依然として多くのCBRプログラムは専門職員の巡回地域の拡大や小規模施設の建設といったサービスの増大としてしか行われていないものが多い。

途上国における障害者問題の在り方

 途上国の農村地域では様々な経済的・社会的問題が底辺にあり、障害者分野に限らず公的なサービスも非常に限られている。その上で障害者問題を考えると、まず1つは、地域社会が障害者問題を優先課題、自分たちの問題として考えていないという関心の低さがある。WHOが進めてきたプライマリーヘルスケアとしての予防接種や家族計画等は、村の多くの人に利益をもたらし、必要であると認識されることで発展した。しかし障害者問題は「自分たちの問題ではなく、都市の施設や州の役所が対処する事だ」と考えられがちである。この考えは、障害問題解決の原点が地域社会にあることを気づかせないでいる。
 もう1点は、農村では障害者を目にする機会が多く、障害者の受け入れが良いと理解される傾向もあるが、実際は「障害は神の罰である」、「障害はうつる」という考え方が、表面には見えてこない深いところで信じられているなど、障害について正しい認識・理解がないことである。そして、障害者はかわいそうという同情によって、婦人会への参加は受け入れても、リーダーとしては認めないといった非対等な関係をも生んでいる。
 これらの結果として障害者の社会参加と能力の発揮が妨げられている。
 次にいくつかの実例を通して考えてみる。
 バンジャネガラ村で農業をしていたポリオの男性が結婚することになったが、相手の親はポリオは遺伝する病気だと考えていて反対していた。しかし村長の奥さんがポリオは遺伝しないということを知っていて、親に説明をし、2人は結婚することができた。
 また、障害児の早期発見プログラムで、障害児と分かると隠してしまう例はいまだに多い。これは、子供の機能的な問題以上に、障害児がいることが知られることによって社会的なつながりに変化が生じることを恐れているためである。この結果、適切なサービスの提供や社会参加の機会を受けられない、多くの見えない障害者を生んでいる。
 CBRの代表的な活動として、CBRワーカーによる障害者の家族への訓練指導があるが、実際に訓練が継続される例は非常に少ない。その理由は、「難しい訓練は簡単にすれば継続される」という技術的な問題としてのみ訓練の実施が考えられてきたことにある。一般に訓練の指導は母親になされるが、母親の時間は家事と畑仕事、そしてたくさんの子供の世話でほとんど埋まっている。そこにさらに訓練という仕事を足して、実際に行われるであろうか。そして訓練の結果が、例えば学校に行けるなど、社会に受け入れられるという将来像が母親に描かれない限り、いくら訓練を簡単にして必要性を説明しても訓練は継続されない。
 同様に、必要なサービスを受けられる場所を障害者に紹介するリフェラル(照会)活動においても、診療費や装具代の軽減の手続きを役場で行い、不足分を村で調達する、そして町に行くためのオートバイをもっている人とその間の家族と畑の面倒をみてくれる人とを探し、町に親戚のいる村人に宿泊先をお願いする、といった多様な形での地域社会の参加があって、初めてこのリフェラルは可能となるのである。
 このように、障害者問題の解決には、障害者をとりまく人・社会に関わるところが大きい。サービスは当然必要であるけれども、CBRの導入者が単にサービスの提供をしていくだけでは、そのサービスも十分に生かされない。
 CBR導入の対象は、障害者本人ではなく(障害者を含んだ)地域社会なのである。地域社会が障害に関する理解を深め、障害問題の解決の主体として、ソフト・ハードの両面を発展させていくことで、障害者は単に地域に住んでサービスを受けるだけではなく、個々の力を発揮し、社会活動に参与していくことが可能となる。
 次に、この考え方に基づいた具体的な実践をインドネシアでCBRを展開している民間団体であるCBR開発・研修センター(CBR Development and Training Center: CBRDTC)の活動を通して検討する。

CBRの導入と展開の進め方

 CBRDTCには既に15年以上の実践活動の経験があるが、CDの視点をより明確にした方法を実践するため、1994年にインドネシア6郡18ヶ村で新たにCBRを開始した。
 このプログラムは、各郡に1名のファシリテーターを配置し、3年でCBRをそこに根付かせることを目標としている。ファシリテーターはCBRの導入のための土壌作りや各機関との調整、村でのCBR活動を担うCBR委員会の設立などを行う。現在2年が経過するが、殆どの村でCBR委員会が主体となって活動を進めていく状況ができつつある。 CBR導入のための最初の活動として行われるものが参加型村落評価(participatory rural appraisal:PRA)である。PRAは外部の第三者が、地域社会の人達がその地域社会の問題を自分たちの方法と背景に基づいて考え・認識することを、様々なアクティビティーを通して支援する方法である。途上国の開発手法として農業開発等各方面で使われてきたもので、CBRDTCではそれを障害者分野に応用した。
 具体的には村の集会を開き、障害者を含めた村人自身の手によって障害者と社会資源(ソーシャル・リソース)との地図作りなどを行い、ファシリテーターの協力のもと障害者問題を話し合っていく。
A)障害者と社会資源(ソーシャル・リソース)との地図作り
 1枚の大きな紙に村の地図を描き、参加している村の人達に障害をもった人の家を描き加えてもらう。この過程で、例えば商売をしているポリオの人がいると、彼が障害者かどうかで村人の意見が分かれる時がある。ファシリテーターはこのようなことをきっかけに村の指導者ではなく、普通の村人が意見を述べることを促して障害に関する対話を導きだし、全員で障害とは何であるかということを見い出だしていく。
 次にその解決のための社会資源となるものを地図に書き込んでいくが、最初は村の診療所や学校などしか記入されない。ファシリテーターがそこで婦人会や宗教指導者、バイクの修理工場といったものが社会資源になれないかといった疑問を投げかけていくことで、自分たちの地域社会のなかに十分な社会資源があり、多くの人が関わっていける問題であることが認識されていく。
B)Venn ダイアグラム
 これは、先の地図作りで、様々な社会資源である村の人、施設や団体等が、障害をもった人とどの様な関係にあるかを考えていく活動である。(Venn は人名)大きな紙の中心に障害者の円を描き、病院や婦人会といった村の施設や団体を、役割は円の大きさで、障害者への身近さはその円の近さで表す図を参加者に作ってもらう方法である。
 これを作る過程でも色々な議論ができるが、村人と障害者の2つのグループを作り、双方の図を比較することでより活発な議論がなされる。図1はスマンカ村のものだが、これを比較すると、村の人が作ったものは各々の円が障害者とほとんど重なっているが、障害者が作った方は重なっているのは家族だけである。障害者自身が考える関係と、地域社会の人が考えていた関係とが異なっていた。こういうことをきっかけに地域社会のあり方等の議論が重ねられていく。
 CBRの導入は、指導や啓蒙ではなく、障害者問題が対話の中で村人に認識されることを目指している。地域社会が指導によってではなく、自らが気づくことによって、土壌が作られ、活動を確かなものにする。
 これをきっかけとし、今後村のCBRを主体的に担っていくCBR委員会を設立する。ファシリテーターは、寄り合いや村落会議に参加し、障害者本人やその家族、村役場の職員や宗教指導者、障害者問題に興味のある人を集め、10人前後の委員会を作る(表1)。次にCBR委員会を対象にした講習会を開催する。その後、委員会とCBRDTCが協力して郡レベルの病院や養護学校等へのリフェラル活動や、母子検診活動での障害児早期発見療育活動等を実施する。ただし、具体的な活動方法は、その地域社会の状況を一番把握しているCBR委員会に委ねられる。
 例えば CBRDTC が行っている村でのCBRの資金収集方法は、各世帯から毎月100 ルピアずつ集める方法が多い。しかし、ナンブハン村では、元々あったUKSと呼ばれる洪水や飢饉の対策費の資金を募金で集める運動が現在ほとんど行われていないことに着目し、役場に募金箱をおき、村人が結婚や出産、長期離村等の手続きをしに役場に来たときに募金をしてもらう方法で行った結果、1年間で50万ルピアも集まった(1ルピアは0.05円。米1キロ 800ルピア)。これは、CBR委員会がその村の全ての寄り合いでCBRについての説明を行ったことや、村の役人や宗教指導者を巻き込むことで、その地域社会のコンセンサスが得られたことが大きな理由だろう。この募金はCBRの目的で行われたが、村のCBR委員会の判断で半分はUKSに使うことにした。このようにCBRを通して村全体の活動が活性化された例もある。

アジア太平洋地域における CBR実践の問題点と対応

 アジア太平洋地域で、CBRをCDとして機関や団体が導入していくには現在いくつかの問題点がある。
 まず1つは、CBRに関わる人の多くが医療職であることから、依然として直接的なサービス提供の手法から抜け出せず、CDとしてCBRを行うことについてのノウハウが少ないことである。2点目は、CBRをCDとして行える専門職としてのプログラム・マネージャーが少ないこと。3点目は、アジア地域自身の主導性が少ないことである。
 CBRDTCでは、これらの問題に対していくつかの活動を行ってきた。
 1991年からはCBRイニシエーター国際研修会を毎年10日間程の期間で開催し、例年20ヶ国から40名ほどが参加し、現在までに35ヶ国から232 名が参加した。
 1995年の5年間の総括会議ではCBRとCDを主テーマとして行い、CBRをCDとして行うことの利点、欠点などが話し合われた(表2)。
 1994年からは、バングラディシュの4つの民間団体と協力してバングラディシュへのCBRの導入を進めている。導入にあたってはCDを中心に据えるため、それまで識字や女性問題の分野でCDを行ってきた Village Education Resource Center(VERC)を中心団体とし、障害者問題に関わってきた他の3団体が協力していく方法を採った。
 また1995年にはCDに関するものも含めた25冊のマニュアルと2枚のポスターを作製した。
 この他にも長期・短期の研修生の受け入れや職員の派遣、国際会議の実施などによってアジア太平洋各国と協力してきた。1996年にはこれをさらに積極的に展開していくため、CBRDTCでは5ヶ年のプロジェクトを開始した。

CBR分野の人材育成のためのプロジェクト(AP-CBR-HRD)

Asia-Pacific Community Based Rehabilitation Human Resource Development Project
 このプロジェクトの目的は、アジア太平洋地域において、CDを基本とするCBRの考えかたを理解し、戦略を作り上げていく過程で、CBRに関わる各人がCDの考え方を理解すること、最も不足しているマネージャーを育成すること、そしてCBRはCDであるというコンセンサスを作ることの3点である。
 具体的には(a)研修やワークショップ、セミナーの計画と実施(b)インターン、学生や研修生の受け入れ(c)マニュアルの作成やニュース等による情報や経験の共有(d)調査・研究活動、等を行う。
 人材の育成は、村レベルのCBR委員会や診療所の職員から、国際機関の研究者やマネージャー、技術専門職や政策決定者等、多様なレベルと分野においてなされなければならない。またどの分野・レベルにおいても障害者の参加が最も求められている。
研究者の行う調査研究活動はCBRプログラムの発展のための重要な一部門であり、CBRのコンセプトや方法論は常に研究され、刷新されていくべきである。そしてこれらの調査による情報や研究結果が、他のCBRプログラムの計画発展のために応用されていかなくてはいけない。
 マネージャーはプログラムの実施において非常に重要な役割を担う。人材を含めた資源の配置や運用、プロジェクトの立案・申請・運営管理・資金の調達、政府や団体との協調など活動は多岐にわたる。そのため、プロジェクト・サイクル・マネージメント(PCM )などの開発戦略や、ブレークスルーといった企業経営戦略なども求められる。
 CBRに関わる医学や社会学など全ての分野の技術専門職は、各々の活動の実施にあたり、CDの考え方を基礎とした上で、各技術を生かしていかなければいけない。
 政策決定者やCBRの推進者も社会的コンセンサスを作り上げていく上で重要な役割を担っている。
 初年度の活動は、各団体や機関との今後5年間の活動計画会議や、アジア保健研修所と協力してのCBRとCDに関する1ヶ月間の研修等を予定している。このプロジェクトはCBRに関わるアジア太平洋地域の政府や機関、団体と共同ですすめていきたく、日本の多くの団体にも協力していただきたいと考えている。

まとめ

 アジア太平洋障害者の10年において、その基本戦略の1つはCBRといえるだろう。特に近年急激に成長・変化しているアジア地域では、その基本戦略の考え方においても、従来の開発手法ではなくCDを基本にした方法論が必要とされているのは、アジア各国で行われている他の領域の開発プログラムの状況から見ても当然と言えるだろう。そのためにはそれを実践していける人材育成と戦略形成がより重要な課題であると認識している。


3.プログラム全体のまとめ

丸山一郎 全国社会福祉協議会

 参加者にとって、今回のセミナ-から得たものは、様々に違うのであろうが、今後の活動の指針として参加型研修の重要性を強く認識したことは共通していたのではないだろうか。
 この研修を行う準備の際、私に与えられた役割は、2日間の研修から導き出される今後の活動をまとめてみることであった。しかもそのまとめをアジア太平洋地域における具体的な協力プロジェクトとして討議することを目論んでいた。
 各国からのリソ-スパ-ソンから出される問題提供に日本側からの意見や協力活動の申し出を出せれば大きな成果と考えたからであった。
 しかしながら、最終日のまとめのディスカッションは、予定したものを変えて、2日間の流れをより深めるところから開始したのである。
 このため前日の継続を図るため松井さんに引き続き座長をお願いして、2日間の話の中からそれぞれの人が疑問として抱いていることや理解を深めたいことを問うた。発言は次々となされ時間が足りない程であった。
 特にCBRにおける個人、家族、住民、団体、専門職、行政、政府の役割と協調について、参加者自身のかかわり方も含めて活発な意見が出された。結論が出されることはないものの、それぞれの見方や考え方が出されたことにより、参加者は、自分自身の課題についてのアプロ-チの仕方について、新たな示唆や確認をしたのではないかと思う。
 後半まとめる意味も含めて、私が座長となり最後のディスカッションを続けたが、今回参加者の得たもの含めて、感想を交えた多くの発言が更にあった。自ら気付く、発見するものが多く表明されたが、その一つは、言葉の困難さもあって論議に参加できなかったと思われていた人々が、実に活き活きとした感想を述べられたことである。
 今後の具体的プロジェクトに直接結びつく話し合いはなされなかったのであるが、冒頭述べたように、参加者は今後の自分の活動に資するものについて何かを得たと思う。そして、”参加型”を目指す一連のやり方が、一つの確信をもたらしていた。このアプロ-チを意識して、日常生活や職場で更に地域活動、国際活動での応用をされてゆくことであろう。
 私自身の反省を付記したい。この企画に携わりながら、3日間の期間中、途中で抜け、完全な参加を果たすことが出来なかったことである。参加するということは、様々な条件を整えて参加しなければならず、こうした準備を怠ったことを今後の活動への警告としたい。
 いずれにせよ、参加型研修のもつ積極性と、個々の発見を促しかつ見守る忍耐力そして人間性を改めて認識したことは私にとって大きな収穫であった。


4. 池住義憲氏による「参加型研修の理念と実際」について 

松井亮輔 日本障害者雇用促進協会

 わが国で一般的に行われている研修では、事前に用意されたプログラムに従って研修が実施される。したがって、研修に参加する研修生のニ-ズに応じてプログラム内容を随時変更することは、部分的にはともかく、基本的には困難である。その結果、場合によっては、折角苦労して研修プログラムを用意したにもかかわらず、研修生のニ-ズに合わず意味ある研修ができなかったといったことになりかねない。事実、研修事業に携わる多くの関係者からこうした経験をよく聞かされる。

 それに対し、参加型研修は、参加者が一緒に協力しながら研修プログラムを作り上げていくことを意図したものである。つまり、これは言うなれば、研修のスタ-ト時点では白紙の研修計画表に、参加者が話し合いながら一緒にプログラムを書き込んでいくようなもので、この研修方式では構成される参加者によってプログラム内容が違ったものになりうる。そこでは、個々の研修生の積極的な参加が前提とされる。したがって、規定のプログラムに従って言わば、自動的にすすめられる従来型の研修とは違い、参加型研修では、個々の研修生の参加の度合いがポイントとなる。その意味では、研修を支援するファシリテ-タ-の役割がきわめて重要となる。
 今回のセミナ-の初日には、池住義憲氏により参加型研修の一端を経験できるプログラムがいくつか紹介された。その一例としては、ファシリテ-タ-から示された複数のテ-マのひとつを参加者が選択することにより、できあがった各グル-プのメンバ-発表するというもの。このプログラムを通して各参加者は、役割分担をしながら自発的にすすめられる参加型研修の特長を理解することができたと思われる。


5.研修参加者の団体紹介

A)農村貧困者のための協会(ARP)農村障害者連合

住所:No. 59 East Mada Church Road, Royapuram, Madras-600 013, India
TEL:+91-044-5954183
FAX:+91-044-5950052

設立年:1985

代表者:Dr. Felix N Sugirtharaj (Programme Director-Secretary)

職員: 常勤 7 非常勤2

組織の目的
.政府や一般社会に対して障害者の諸問題や権利の擁護を訴える討論会やフォ-ラムを開催する。
.障害者団体や障害者に関わるボランティア組織、個人で連盟を作り、一致団結して障害者支援の活動をする。

活動内容
.障害者団体のメンバ-が定期的に集まり、問題解決や将来へ向けての計画作成の話し合いをする。各自のかかえる諸問題に対してカウンセリングを受け、自信につなげるこうしたミ-ティングをとおして、自らの権利に対する意識を高めていく。
.中央・州政府の福祉政策、ボランティア団体の計画などに関する情報収集を行い、障害を持った者がこうした情報を活用できるよう奨励する。
.中小企業サ-ビス協会の協力を得て、粉石けん、洗剤、ろうそくなどの製造技術研修を行う。


B)マレ-シアン・ケア (CARE: Christian Association for Relief)

住所:21 Jalan Sultan Abdul Samad, Brickfields, 50470 Kuala Lumpur

TEL:03-2746266
FAX:03-2746373

設立年:1979年3月

代表者

担当者:コ・アイナ(障害者サ-ビス局)

職員:常勤60

組織の目的
1) 児童福祉
2) 麻薬中毒者のリハビリテ-ション
3) 精神障害者のリハビリテ-ション
4) 障害者サ-ビス

4) 障害者サ-ビスの活動内容:
レスパイト・ケア
地域ベ-スのリハビリテ-ション
早期介入プログラム
成人訓練プログラム
両親支援プログラム
職業訓練センタ-
雇用支援計画
スタッフや教師のための研修プログラム
リソ-スセンタ-による情報サ-ビス


C)タイ精神保健局(保健省内)

住所: Department of Mental Health, Ministry of Public Health, Tivanond Road, Nonthaburi 11000 thailand

TEL:066-5252987
FAX:066-5252977

設立年:December 1989

担当者:Ms. Suchada Sakornsatian

職員:常勤 6,730

組織の目的
健康増進と精神病の予防のための知識と技術の推進
精神病患者の治療とリハビリテ-ション技術の開発

活動内容
精神保健の推進
日常生活技術の教授法の開発
学校でのエイズ教育
精神病の治療
精神病患者のリハビリタ-ション
保健・教育関係者のためのエイズ・カウンセリング技術訓練

今後5-10年先における活動計画
精神病患者や知的障害者の在宅プログラム
人材開発 

出版物
メンタル・ヘルス(ニュ-スレタ-)
精神保健局ジャ-ナル
家庭における精神保健推進のためのステッカ-、ポスタ-、パンフレット、ビデオ等


D)CBR開発研修センタ-(CBR-DTC)

住所:Jl. LU Adisucipto Km7-Colomadu Solo 57176 Indonesia

TEL:+62-271-780075
FAX:+62-271-780976
設立年:1979年
代表者:Dr. Handojo Tjandrakusuma

担当者:Ms. Ety

職員:48人

組織の目的
 CBR開発研修センタ-は、非営利の民間団体であるインドネシア障害児協会の一つである。CBRセンタ-の活動は、ハンドヨ医師によって、中部ジャワ州のソロ市を中心とし、インドネシア障害児協会の活動の一つとして、1979年に始められた。1989年には、CBRの研究開発を行うセンタ-を設置し、1992年にはその実践、特にコンセプトの構築に対し世界保健機構から表彰されている。

活動内容
現在の活動は、大きく4つに分けられる。
(1)国内活動
中部ジャワ州でのCBR。6郡、18村を対象に1994年から行われている。
スラウェシ島北部、マナドにおけるCBR。1992年から開始された、クリストファ-ランダンミッション、カナダ・クウィ-ンズ大学との共同プログラム。
ヘレンケラ-協会と協力しての東チモ-ルでのCBR。
中部ジャワ州、スコハルジョでのピアカウンセリング、所得創出プログラムを中心とする自助グル-プの育成。
口蓋裂の手術や車いすの提供など、個々の障害者を対象にした支援プログラム。
(2)国際活動
1991年から毎年、国際CBRイニシエイタ-ワ-ショップ(INTERNATIONAL CBR INITIATORS' WORKSHOP) を開催し、例年20ヶ国、40名ほどが参加している。
(3)バングラデシュへのCBRの導入
バングラデシュの4つの民間団体と協力し、バングラデシュへのCBR導入を進めており、CBRセンタ-は特に人的資源開発を担当している。
(4)その他
CBRマニュアルの作成。CBRマニュアルは、既に3回刷新されている。当初は早期発見に関するものだけてあったが、現在はCBR全体を網羅するものを、インドネシア語と英語で作成中である。
CBRにおける人的資源開発。学位論文執筆の機会の提供。受け入れ・派遣双方の人的交流。リサ-チの実施・機会の提供。


E)フィリピン障害者連合(KAMPI)

住所:Old Administration Bldg. Quezon Memorial Circle Elliptical Road, Philcoa Entrance Quezon City

TEL:+632-929-4409
FAX:+632-929-4409

設立年:1990

代表者:Ms. Venus M. Illagan (President)

担当者:Ms. Venus M. Illagan (President)

職員:常勤8人 非常勤1人

会員:14地域における 178の障害者団体および特別な障害グル-プ

組織の目的
.完全参加の促進、およびフィリピンの障害者を社会に統合し生産的かつ自立した生活を送るのに必要なサ-ビスを自ら決定し、管理できるようにする。
.障害者への態度、政策および慣行における必要とされる変革を提唱し、万人のための社会を実現する。そこにおいては障害者は地域社会に貢献することができ、ひいては納税をする市民となる。

活動内容
.障害者の自助グル-プを全国的に組織し強化する。
.人的資源の開発、能力の育成および指導力訓練プログラムを通じて自立のための障害者組織のネットワ-クを強化する。
.障害者を社会の主流へと取り込んでいくのを促進するような支援サ-ビスを提供することにより、自立生活という考え方を推し進める。
.情報の公開、提唱プログラムおよび意識改革訓練(障害に対する考え方や態度をかえさせることを目的とする訓練)を通じて障害者の・特にに女性や子供の・地位を高める。

今後5-10年先における活動計画:
.障害者の社会への完全参加のための作業
.障害をもつ女性および子供の地位向上のための作業


F)残疾人士援助協会(SAP)

住所:2 Peng Nguan Street #01-01 SAP Centre Singapore 168955

TEL:+65-323-2303
FAX:+65-323-7008

設立年:1964 年

代表者

担当者:Mr. Lim Puay Tiak, Executive Director 

職員:常勤67人

会員:651人 

組織の目的
.身体障害者を援助する。
.身体障害者の訓練とリハビリテ-ションのための訓練、スポ-ツ、福祉、教育施設の開発と維持。
.上記目標達成のための活動や施策の実行

活動内容:  
.SAP授産施設における雇用と実習
.介護者の負担を軽減し、本人の自立を可能な限り促進する成人身体障害者のデイ・ケア・サ-ビス
.公共交通機関を利用することが難しい障害者のための移動サ-ビス
.身体障害をもつ学生、または親が身体障害者である学生むけの奨学金の支給
.身体障害者への車いすや他の補助器具の貸与
.在宅障害者への訪問事業
.食料品の配給
.障害者の社会への統合を促進するための教育的・社会的活動、またリクレ-ションやスポ-ツ事業

今後5-10年先における活動計画
.障害者の授産施設を採算のとれる形で運営する
.障害分野関連の情報センタ-を設立し、啓蒙活動に役立てる
.障害分野における地域内協力の促進

出版物
.SAP年次報告書(年刊)
.SAP Paraplegics(年刊)
.SAP Update(季刊)


6.リソ-スパ-ソン プロフィ-ル(Profile of the Resource Persons)

A)池住義憲 Mr. Yoshinori IKEZUMI (日本 JAPAN)
 1944年、東京都生まれ。現在は愛知県日進市にて妻の圭子さんと息子の義行さん(14 才) の三人暮らし。1980年にそれまで13年間勤めた東京YMCAを退職し、現在のアジア保健研修所(AHI) に勤め,今日に至る。AHI では一職員としてアジアの農山村・漁村・都市スラムの中堅的な開発・保健ワ-カ-の研修と日本国内での「開発教育」活動などに学びつつ従事。
Born in Tokyo in 1944. Now living in Nisshin City, Aichi Prefecture with wife, Keiko and son, Yoshiyuki (14years old). Resigned from Tokyo YMCA in 1980 after 13 years of service. Presently works at Asian Health Institute (AHI) being engaged in training of Asian health workers who are working in rural areas, small fishing ports and slums areas in big cities. Also engaged in conducting development education in Japan.

B)ハンドヨ・チャンドラクスマ Dr. Handojo TJANDRAKUSUMA(インドネシア INDONESIA)
 インドネシア、アイルランガ大学医学部卒業、WHO医学リハビリテ-ション医認定コ-ス修了。現在、インドネシアCBR開発訓練センタ-所長。他にインドネシア障害児協会役員、パンティコサラ保健協会理事長、ワルガ教育協会理事長を兼務。
Graduated from Medical Faculty of Airlangga University, Indonesia, and finished WHO Upgrading Course on Medical Rehabilitation. Present position: Director of CBR Development and Training Center. Also serves as a board member of the Indonesian Society for the Care of Disabled Children, and as Chairman of the Board of Panti Kosala Health Foundation and Warga Education Foundation.

c)久野研二 Mr. Kenji KUNO(日本 JAPAN)
 理学療法士。札幌医科大学衛生短期大学部理学療法学科および法政大学第二文学部教育学科卒業。帝京大学リハビリテ-ション部、マレ-シア・サラワク州福祉局(青年海外協力隊)を経て、現在インドネシア、ソロ市にあるCBR開発研修センタ-にて活動。
Graduated from Sapporo Medical College (Physical Therapy Department), and Hosei University (education). As a physical therapist, has worked at Rehabilitation Dept. Teikyo University Hospital, and Welfare Department, Ministry of Social Development Sarawak, Malaysia (as a Japan Overseas Cooperation Volunteer). Now, works at CBR Development and Training Center, Solo, Indonesia (since 1994).

D)コ・アイナ Ms. KHOR Ai-na(マレ-シア MALAYSIA)
 ペナン、メソジスト女子大卒。言語療法、特殊教育などに関する研修、全社協のアジアのソ-シャルワ-カ-のための研修、また障害分野地域サ-ビス上級コ-ス修了。ペナン脳性まひ児協会を経て、現在マレ-シアン・ケア障害者サ-ビス局にて情報、研修、啓蒙活動等担当。
Graduated from Methodist Girls' College, Penang, and attended speech therapy assistant training, course for teachers of special children, training program for Asian social workers, advanced certificate in community service (disabilities). Has worked at Spastic Children's Association of Penang ('81-86), and Malaysian CARE ('86-present).

E)リム・プアイ・ティアク 林 培徳 Mr. LIM Puay Tiak(シンガポ-ル SINGAPORE)
 米国フリ-ド・ハ-ドマン大学卒(心理学)。シンガポ-ル社会省、社会開発省にて福祉関連のポストを歴任。現在、残疾人士援助協会常務理事。1985年のJICA研修に参加。
Graduated from Freed Hardeman College (psychology), USA. Has worked in the welfare related fields in the Ministry of Social Affairs and in the Ministry of Community Development, Singapore. Present position: Executive Director, The Society for Aid to the Paralysed. Participated in 1985 JICA Training Course.

F)スチャダ・サコンサティアン Ms. Suchada Sakornsatian(タイ THAILAND)
 大学で作業療法を学んだ後、6ヵ月働く。米国ボストン大学で修士過程終了。現在、タイ保健省精神保健局所属精神科の作業療法士としてリハビリテ-ション(心理)に携わる。
Graduated with Bachelor degree in physical therapy and worked for 6 months. Graduated with Master degree from Boston University, USA. Presently, working as Occupational therapist at Department of Mental Health, Ministy of Public Health, Thailand and responsible for psychology rehabilitation.

G)ヴィ-ナス・イラガン Ms. Venus ILAGAN(フィリピン PHILIPPINES)
 マニラのセントロ・エスコラ-大学ジャ-ナリスム学科卒業。カガヤン・ヴァレ-のセント・ポ-ル大学行政学修士課程在籍。現在、フィリピン情報局第二支部課長。フィリピン障害者連合会(KAMPI)会長。他に、週刊新聞や季刊誌などの編集顧問など兼務。1994年のJICAリ-ダ-研修に参加。
Graduated from Centro Escolar University, Manila (Mass Communication major in journalism), and currently enrolled at St. Paul University of Cagayan Valley (master's course in public administration) Present position: Division Chief of Philippine Information Agency Region 2 Office, and President of KAMPI (National Federation of Persons with Disabilities). Also serves as an editor/editorial consultant for weekly newspapers and quarterly newsletters. Participated in 1994 JICA Training Course.

H)フェリックス・スジルタラ-ジ Dr. Felix SUGIRTHARAJ(インド INDIA)
 牧師、および社会活動家。インド・マドラス近郊の不可触民の村に生まれる。マドラス大学、米国コロンビア大学等で神学・社会学を専攻。ハ-レムに住み込み黒人運動に深く関わる。インドに帰国後、不可触民の解放のために農村貧困者の協会(ARP)を結成し、農民の意識化、組織化活動を行う。APR では、Disabled Development Federation を設立し、そこでは、障害児のための教育や職業訓練、リハビリテ-ションを行う。同Federationは、土地を持たない農民のための農業組合(組合員約6,000 )から支援を受けている。
Christian minister and social activist. Born in a village of scheduled caste near Madras. Graduated from University of Madras. Studied in the US at Union Theological Seminary, New York, (sacred theology, black theology, sociology) etc. and worked in a black community. After returning to India, started the Association for the Rural Poor (ARP) to conscientize and organize the rural poor who are deprived of the basic human rights. For the rural poor disabled adults, ARP initiated a Disabled Development Federation and at the request of the Federation started a Residential School for disabled cildrens' education, vocational training and rehabilitation. The Federation is being supported and enhanced by the Dalit Landless Agricultural labour union which has six thousand members and spread around northern Tamil Nadu, India.

座長
Chairmen

A)上田敏 Dr. Satoshi UEDA
日本障害者リハビリテーション協会副会長。
帝京大学リハビリテ-ション科教授。
Vice President of Japanese Society for Rehabilitation for Disabled Persons (JSRD)
Professor in the Department of Rehabilitation, Teikyo University

B)松井亮輔 Mr. Ryosuke MATSUI
日本障害者雇用促進協会国際協力審議役
日本障害者リハビリテーション協会国際委員。
Director of International Cooperation Dept., Japan Association for Employment of the Disabled
A member of International Committee of JSRD

C)丸山一郎 Mr. Ichiro MARUYAMA
全国社会福祉協議会障害福祉部長
日本障害者リハビリテーション協会国際委員
Director, Dept. of Welfare for Disabled Persons, Japanese Council of Social Welfare
A member of International Committee of JSRD


7. カントリーレポート
A)インド

面積:3,287,263平方キロメートル
人口:900,000,000 人(推定)

障害者数:16,154,000人(国立サンプル調査機関の1991年調査による)
内訳 視覚障害4,005,000人 聴覚障害3,242,000人 肢体不自由8,939,000人
障害者数全体では50,000,000~60,000,000人と推定され、その中には知的障害者約6,000,000 人等も含まれる。(「障害とリハビリテ-ション展望」による)

法律
                               インド政府は、障害に関する国家政策を作成中。
政府は、障害に関する総合法案を国会に提出した。(1995年8 月26日)
この法律の中には、予防、教育、障壁のない環境、差別禁止などが含まれる。

障害者サ-ビス
適切な雇用を確保するため、23ヵ所に身体障害者のための職業あっ旋所を設置
労働省による17の職業リハビリテ-ションセンタ-の設立。
その年の最も良い雇用主、障害を持つ労働者、職業紹介担当、リハビリテ-ション分野で働く個人に対する、大統領からの表彰。
企業での障害者雇用促進のためラジブ・ガンデイ-財団はニュ-デリ-に1996年初めまでにセンタ-を設立する予定。

身体障害者サ-ビス
州政府による奨学金の供給。
政府はカンプ-ルに補装具製作機関を設け、約400 の義肢装具を製作。
政府による、低所得の障害者への補装具の無料供給。(所得の高い人へは一部援助)
カルカッタに国立肢体不自由者センタ-(NIOH) がある。

視覚障害者サ-ビス
15,000人の視覚障害を持つ学生はほとんどが民間団体により運営される盲学校で学ぶ。(さらに5,000 人の学生は統合プログラムで学ぶ。)
デラダンに国立視覚障害者センタ-がある。
弱視者のためのプログラムはまだ充実していないが、開発中である。

聴覚障害者サ-ビス
25,000人の聴覚障害を持つ学生はほとんどが民間団体により運営される500 のろう学校で学ぶ。
ボンベイに国立聴覚障害者センタ-がある。
保健省の全インド聴覚言語研究所では大学および大学院の学位を与えている。
補聴器はいくつかの民間企業で製作されている。所得の低い人に対しては、政府の援助計画により無料で供給される。

知的障害者サ-ビス
ほとんどが民間団体により運営される620 の特殊学校で教育の機会が与えれられている。
セカンデラバドには国立精神発達遅滞センタ-がある。
政府は知的障害および脳性まひ分野におけるマンパワ-開発のため民間団体に対し100%協力する。

精神障害者サ-ビス
精神病回復者に対し、15の民間団体がアフタ-ケアサ-ビスを行う。政府はそのような団体に90% の資金援助を行う。

障害者運動
キリスト教宣教師により始められた障害者への活動は、慈善団体に引き継がれた。
最近になっていくつかの団体が自助運動を始めた。
全国視覚障害者団体(1973年設立、視覚障害を持つ会員7,000 人)は雇用促進に重要な役割を果たした。
障害者福祉連盟(1970年代設立、会員は障害を持つ人々のみ)は特殊学校の運営や職業訓練等いくつかのサ-ビスを提供。
「障害者権利グル-プ」(DRG,1994 年設立)は、8 人の障害を持つ人と持たない人により政治とは離れた権利擁護を目的とする非常に強い運動を開始した。彼らは慈善ではなく、権利として障害者のサ-ビスを要求した。DRG は政府やマスコミに有効に働き掛け、障害者総合法案の国会への提出実現の推進力となった。


B)インドネシア

面積:1,904,569平方キロメートル

人口:約190,000,000 人

障害者数:3,500,000 人(1988年国勢調査)

法律
障害者雇用促進法はない
インドネシア政府条例(1980年) 障害をもつ人への社会福祉目標を制定
社会福祉大臣条例(1983年) 障害をもつ人への社会福祉の連携強化を制定
社会福祉大臣規則(1981年) 障害をもつ人へのリハビリテーションを制定
社会福祉大臣理念(1984年) 社会福祉の発展への基本構想を設定

障害者サ-ビス
約70%はNGOが提供している。
デイ・ケア・サービス、学校、入所施設などいろいろな形態がある。
NGOは各々の方針に基づき各種サービスを提供しているため、政府が提供するサービスのように段階ごとになっていない。
政府、地方社会福祉局、民間社会機関によるサ-ビスは、施設、地域、社会的定住。

施設
次の4 段階に分類
全国レベル(センタ-)、州レベル、県レベル、郡レベル。
内容は、宿泊、食べ物、衣料、教育、技術訓練等を行う。

施設外
コミュニテイに基づく。
日常必要なもの、作業、自営業のための資金。
サ-ビス拡大と地域住民の参加促進。
モ-バイル・リハビリテ-ション・ユニット(MRU)
農村部の障害者に医学、社会等の総合リハビリテ-ションサ-ビス、技術訓練、社会的支援、補助具、フォローアップガイダンス等を提供
地域に根ざしたリハビリテ-ション(CBR)
家族集団、コミュニテイで実施。
コミュニテイにあるコミュニテイのための資源を活用。
自営業(KUP)
授産施設(LBK)
障害者のための作業
地域の社会福祉に関する情報センタ-の役割も担う

社会的定住
慢性病の治療が終わった患者とその家族を特別地区に定住させ、複合的サービスを提供(特に元ハンセン病患者)。

肢体不自由者へのサービス
あらゆる障害をもつ子供のため、教育・文化庁が初等・中等教育を提供(特殊学校)。
障害児協会(YPAC) (NGO) が5才から18才児の医学的、社会的リハビリテ-ションや教育を提供。

視覚障害者へのサービス
視覚障害児財団(YPAB)(NGO) が5才から18才児の医学的、社会的リハビリテーションや教育を提供。

聴覚障害者へのサービス
聴覚障害児財団(NGO) が5才から18才児の医学的、社会的リハビリテーションや教育を提供。

障害者運動
インドネシア肢体不自由児協会
インドネシア脊髄損傷協会
インドネシア肢体不自由者社会福祉連盟
インドネシア障害者協会(NGO の包括団体。会長はDPI アジア太平洋地域議長でもある、コスビオノ・サルマンハディ氏)
国立肢体不自由者福祉連盟
国立視覚障害者福祉連盟
国立聴覚障害者福祉連盟
国立精神障害者福祉連盟
インドネシア視覚障害者協会
インドネシア障害者スポーツ協会
インドネシア傷痍軍人協会
障害児リハビリテーション協会
インドネシア障害者連盟
上記以外に色々なサービスを提供する団体がある。


C)マレ-シア

面積:329,727 平方キロメートル

人口:約19,200,000人

障害者数:53,908人(人口の0.25%)
内訳 視覚障害者10,047人 聴覚障害者10,097人 肢体不自由者18,837人 知的障害者14,927人(資料:マレ-シア社会福祉局統計課1994年12月)

法律
公的機関における雇用率1% (勧告)
障害者のための公共建築物アクセス法令
免税

障害者サ-ビス
施設
身体障害者リハビリテ-ションセンタ-
知的障害者入所施設
精神病回復者のためのデイケアセンタ-利用者委員会

その他:
障害者の確認と登録
補装具に関する財政援助
収入が300 マレ-シアドル 以下の障害のある労働者への手当ての支給。
補助金支給開始。
自営業開始希望者に対し、補助金として2,000マレ-シアドルの支給。
民間企業での障害者の雇用の促進。
CBR

雇用 全国に24の授産施設。

肢体不自由者へのサ-ビス
肢体不自由者を含むすべての市民の初等教育の授業料免除。
マレ-シア国家統一社会開発省による2つの訓練機関の設立(セランガ-)。
公共の建物内に障害者のための環境を整備するための法令。

視覚障害者へのサ-ビス
1926年ペナンに教育機関である聖ニコラスホ-ムが設立。
セレンバン、ネグリ センビランにおいて1963年から統合教育開始。
ガ-ニ-訓練センタ-がマレ-シア視覚障害者協会により設立され、日常生活訓練、歩行訓練、電話交換、速記等の訓練を実施。
学生への特別奨学金の支給、スタッフのサラリ-の支援。
弱視者への機器の供給。

聴覚障害者へのサ-ビス
1954年ペナンに政府によりろう学校が設立。
1980年代半ばに公立および私立学校における手話と口話の導入。

知的障害者へのサ-ビス
ジョホ-ルに2つの訓練機関を政府が設置。
ネグリ センビラン、セランガ-、トレンガヌに入所施設を政府が設置。
1980年代後半に普通学校に学習遅滞児のための特殊学級を政府が設置。
民間団体が設立した学校に対し、国家統一社会開発省をとおし、政府は10% の資金援助をする。
国家統一社会開発省はCBRセンタ-を設立。

障害者運動: 
1946年社会福祉局開設以来、多くの「障害者のために活動する」任意団体が設立された。
マレ-シア障害者連合会の構成団体は、
マレ-シア盲人協会
身体障害者協会(1975)
中国障害者協会(1977)
聴覚障害者協会(1987)

マレ-シアリハビリテ-ション協議会の主な構成団体は、
全国視覚障害者協議会(1984)
全国ろう者協会   (1961)
全国知的障害者協議会(1992)他


D)フィリピン

面積:300,000 平方キロメートル

人口:68,000,000人

障害者数:WHO の開発途上国の試算によると約6,800,000 人

法律:アクセス法(1984年)、障害者のためのマグナ・カルタ(1992年)

障害者サービス
社会福祉開発省(DSWD)及びその障害福祉局が国内における障害関連の事項を取り扱っている。その目標は個人・家族の健康を確保し、日用品を保証すること、窮乏状態からの解放をすることである。
全国障害者福祉評議会(NCWDP、社会福祉開発省の附属機関)は、国連の国際障 害者年(1981年)の結果1983年に設立された。ここでは社会啓発キャンペーンの実施、また国内の障害者のためのプログラムの監視が行われている。

政府による雇用サービス
ルソン、ビサヤス、ミンダナオの3ヵ所における職業訓練センター。DSWD所管の全国リハビリテーション・職業訓練センターによる訓練を受けた人達への職業紹介プログラム。
仕事がえられなかった訓練生を受け入れるための敷物やその他の手工芸品を生産する、小さなワークショップ(マニラ市内のみ)。               
労働雇用省により開始された、障害者のための組織と組んで障害者の自営を促進することを目的としたプロジェクト「Tulay2000 」。
融資資金は非政府団体により提供された
2年目を迎える同プロジェクトは引き続き調査段階である。

民間による雇用サービス
タハナン・ワラン・ハグダナン(段差なきセンター)、エプフェタ盲人財団、グッドウィル・インダストリー、フィリピンろう者協会などの非政府団体によるワークショップ。
サリサリ・ストアー(雑貨商)や露店商などの商い、その他靴磨き・時計修理・傘修理といった職種での雇用。

障害者のためのサービス
障害の原因はポリオまたは事故による脊髄損傷。
6歳以下の子供を対象に政府による無料の抗ポリオ経口ワクチンの実施。
医療リハビリテーション施設、フィリピン整形外科センターにより提供される補助具や松葉杖。
長く病床にある患者への特別学級(文部省附属)。

障害者運動
KAMPI(全国障害者連盟)は1990年バコロドで開かれた第二回障害者会議により設立され、13地域における障害者団体により構成される。
活動は、州支部の組織づくり、職員・会員のためのリーダーシップ訓練、社会における障害者のニーズ、権利に対する認識を高めるための情報提供、各支部のための生計プロジェクトのための資金確保、教育キャンペーンの実施など。


E)シンガポール

面積:639.1 平方キロメートル

人口: 2,930,000人(1994 年 6月付)

障害者数:約111,348 人 日本及び香港のように人口の3.8 %として試算

法律:教育・雇用に関しては障害者のための法律は特にない。1990年に建築物のアクセスビリティー法令を制定。

障害者サービス
地域開発省(MCD)が中心となり社会サービスを企画・提供する。
政策面では全国社会サービス協議会(NCSS)と協力して行う。NCSSは、法律にもとづいた、福祉関連団体すべてを傘下にもつ団体である。

特別援助計画
障害者が、必要な補装具を購入したり技術的な援助を受けるための財政的支援

所得税減税特別計画
障害を持つ扶養家族に対し、障害者一人当たりにつき3,500 シンガポールドルの減税が適用される。すべての障害者は追加収入に対し、2,000 シンガポールドルの減税が適用される

全国社会サービス協議会(NCSS):障害者の公教育、社会啓発プログラムを実施。

共同募金
1983年に設立されたNCSSの資金調達部門
会員団体をより効果的・効率的に援助する
資金の65%は障害者に振り分けられる。現在までに総額200,000,000 シンガポールドルが振り分けられている。

ビズリンク・センター(NCSSのプロジェクト)
地域開発省及びNCSSによりモデル生産ワークショップとして1986年に設立
職業判定、職業紹介、障害者と雇用者のためのフォロー・アップを行う

任意の福祉団体:
以下のような障害者のための社会福祉サービスを提供する
早期介入プログラム
特殊教育
職業訓練
授産施設の運営
デイ・アクティビティ・センター、デイ・アクティビティ&作業
就業前プログラム
雇用ユニット/ワークショップ
社会参加支援プログラム
治療/リハビリテーションサービス
職業判定
職業紹介
滞在型/ホステル型/休暇型ケア
交通手段
スポーツ、ソーシャル及びレクリエーションプログラム等々

障害者運動
 1988年政府により指名された障害者諮問協議会により「障害者のための機会」という報告書が提出された。これは障害者の社会参加をいかに支援するか、障害原因の予防、特殊教育、職業訓練、雇用、交通とアクセスに関する包括的研究である。
 1991年NCSS、政策研究機関(IPS)、CCSにより初めて官・民、研究者及びボランティアセクターが一同に会した会議が開催され、障害者及びボランティア団体が直面している事柄、課題が話し合われた。内容は次のとおり。
a)社会サービスの将来的方向づけ
b)一般の人々の障害者への認識の向上
c)コミュニティにおける障害者のニーズヘの理解
d)ボランティア団体を助けて上記のニーズを満たす長期計画を策定する。
「ハンディイキャップ福祉協会」:障害者が運営し、身体障害者のためのプログラム、活動及び福祉を実施。
「シンガポールろう者協会」:ろう者自身により運営され、社会プログラムを実施
「残疾人士援助協会
身体障害者を援助する民間福祉団体。障害者の生産ワークショップおよびデイセンタ-を運営。
その他の主だった動き
「社会サービス-次の一周」1991年NCSSが出版
 障害者、その家族及びボランティア団体が直面している問題を取り扱った本


F)タイ

面積:514,000平方キロメートル

人口:58,500,000人 

障害者数:1,057,000人(全人口の1.8%) 国立統計局の1991年調査による

内訳
上下肢切断 122,400人
視覚障害(片眼)99,400人
視覚障害(両眼)48,900人
言語障害 57,400人
聴覚障害 139,800人
ろう者 20,000人
下肢麻痺 105,300人
口唇裂 20,700人
肢体不自由 206,800人
精神障害 50,700人
知的障害 106,000人
側彎症・後彎症 15,700人
その他 108.600人

法律
障害者リハビリテ-ション法(1991 年)
障害者リハビリテ-ション委員会の設置
障害者リハビリテ-ション委員会の事務所を福祉局内に設置
様々なサ-ビスを得るための登録を障害者リハビリテ-ション委員会事務所にて実施
障害者リハビリテ-ション基金を障害者リハビリテ-ション委員会事務所内に設立
雇用率(従業員200 人以上の企業は障害者を1人雇用しなくてはならない)

障害者サ-ビス
医学的リハビリテ-ションは保健省、大学病院、また防衛省やバンコク市当局管轄の病院で行われる。
保健省医療サ-ビス局の下にシリントン国立医療リハビリテ-ションセンタ-があり、ここは社会福祉局や障害者団体とも密接に連携している。
タイの社会福祉サ-ビスの実施については、社会福祉局が責任を持つサ-ビスには、施設ケア、職業訓練等がある

施設ケア:バンコク近郊に肢体不自由および知的障害者のための6つのホ-ム

職業訓練:地域に4つの職業訓練センタ-

その他
身体障害者リハビリテ-ションセンタ-
最低限の生活を支えるための現金支給
重度障害者または他の弱者(ハンセン病者等)のための手当て(1日28バ-ツ )の支給
補装具の支給
76の地方の福祉局にてサ-ビスを実施し、全国に拡大。

障害者運動
「タイ障害者協議会」1983年にナロン・パテイバツアラキ氏をリ-ダ-に設立された障害者団体。