盲ろう者のパソコンとネットワーク利用に関する研修会
3.参考資料
3-1) スウェーデンの盲ろう者関係資料の翻訳
(日本障害者リハビリテーション協会情報センター研究情報課訳・解説)
3-1)-1 スウェーデンの盲ろう者について-1999年
スウェーデン盲ろう者協会ホームページより抜粋(http://www.fsdb.org)
定義
スウェーデン盲ろう者協会の規定では、盲ろう者とは、視力及び聴力に障害があり、日常生活に明らかに困難が生じている場合である。これは、機能面での定義であって、厳密に視力及び聴力の測定に基づくものではないが、該当者がどの位自身の障害に適応し、援助を必要としているか、その程度による。また、盲ろうとは二重のハンディキャップであり、単に聴覚障害に視覚障害が加わる以上の、大きな困難性を呈するという事実を認めるものである。
盲ろう者の数は?
1984年の調査で、スウェーデンには、およそ1200人(現在は1320人にといわれ、70パーセントが65歳以上である)の成人の盲ろう者がいることが分かっている。その10%は完全に聴覚も視力もない。約50%は、視力、聴力ともに一部残るものである。(スウェーデンは約8百万の人口なので、100,000人につきおよそ15人の盲ろう者という割合である。)
その後の調査では、 約450人の盲ろうの児童(20歳まで)がいることが分かった。その内、 約350名は、知的遅れ、精神的ハンディキャップ、てんかん、自閉症といった、他の障害も併せもっている。
盲ろう者への援助とサービスの提供
スウェーデンの盲ろう者は、他の障害や、その他の理由で援助を必要とする人々と同様に、社会から援助を受ける権利がある。様々な援助の形態があるが、交通手段(タクシーをバスと同料金で利用できる)、自宅での介護、個人的介助、特殊補助器具、自宅の改造、特別なホーム施設、年金、障害者手当て(障害による高額な生活費の為の手当て)、住宅、リハビリテーション、給与の補足(政府が障害者の給料の一部を払う)、仕事の為の特殊補助器具などである。
こういった支援があれば、多くのの盲ろう者は、一人にせよ、家族とであれ、サービスで提供されるマンションで、かなり普通の生活を営むことができる。盲ろう者の中には仕事を見つけられる人たちもいて、その数は他の障害をもつ人たちと変わらないくらいである。コンピューター技術を生かせば、盲ろう者は、例えば、オフィスワークのような仕事をするチャンスを増やすことができる。
盲ろう者のためには特別に政府及び地方自治の財源がある。
どの国も、法により、ろう、盲ろう及び難聴の人々のために通訳を手配する義務がある。このサービスについては政府が支払い、盲ろうの利用者は、一切、支払はなくてよい。必要と感じたとき、例えば、会議、買い物、学習、レジャー、病院に行く時などには、通訳センターに電話をし、通訳を頼むことができる。しかし、盲ろう者が通訳をつけられるかどうかは、当局がきめる。通訳者不足があり、まだ数年は解消の見込みが望めない。
盲ろう通訳者(盲ろう者のための通訳者)は盲ろう者が、周囲の人々や出来事に常に接していられるよう手助けをする。それ故、通訳者というのはとても大切である。盲ろう通訳とは手話と話言葉のあいだの翻訳や、他の方法(書いたり、はっきりとした話し言葉)による話言葉の通訳だけはでない。通訳者は盲ろう者に、盲ろう者の周りで起こっていることを常に知らせていかねばならない。誰がやって来るのか、誰が去ろうとしているのか、誰が話していて、部屋はどんな様子か、等々。通訳者は、また、必要とあらば、案内役としても振舞うことになる。
盲ろう通訳者の訓練は、 (目の見えるろう者のための) 手話通訳者の訓練と同じである。盲ろう通訳者は、誰もが、盲ろう者が使うコミュニケーション方法以外にも、手話を知らなくてはならない。盲ろう通訳者を目指す学生は、また、市政学、スウェーデン語、倫理、心理学、ハンディキャップの問題と政治学、それに点字を学ぶことになる。目と耳の病気及び特殊補助器具についての知識を得て、盲目者を介助する訓練を受ける。手話を学ぶ期間を含めて、訓練は4年である。
盲ろうに関する地方在住のコンサルタントは10名ほどいるが、SIHが雇用している。その仕事は地方当局者に助言を与え、その支援をすることにあるが、地方当局者は、盲ろう者が日常生活で必要とする援助を与える責任がある。また、盲ろう者と一緒に仕事をするスタッフの教育を手助けするのも、コンサルタントの仕事である。
コンサルタントは定期的に盲ろう者のために訓練コースを用意する。これらのコ-ス(一般的には一、二週間かかる)では、参加者は新しいコミュニケーション方法(例えば、触手話、ローマ字式指文字、点字など)を学び始めることになる。コンピューター(点字画面や拡大画面テキスト)を含む特殊補助器具について知識を得、それらを使う為の動きの訓練を受けることができる。これらのコースは無料である。
盲ろう者は、他の障害者と同様、特殊補助器具を、無料で、支給される。例えば、振動を伴う目覚し時計、振動を伴う火災報知器、振動する温度計、補聴器、メガネ、拡大鏡、白杖、点字の腕時計などである。(盲ろう者専用の特殊補助器具というものはほとんどない。)
特殊補助器具は、テキストテレフォン(TTY)以外は、国当局が負担する。TTY は政府の特別補助金で賄われる。盲ろう者は、普通、テレフォンプログラム及びテキストテレフォン用モデムの付いたコンピューターが、必要であれば点字画面や拡大画面と一緒に支給される。ワープロやプリンターも、電話機の一部とみなされる。
スウェーデンにはおよそ8000台のTTY があり、およそ100台のモデムつきのコンピューターが、盲ろう者によって利用されている。TTYを支給されたろう者あるいは盲ろう者は、また、耳の聞こえる身内や親しい友達、つまり電話で頻繁に連絡を取りあう人、と電話をするための、もっと小型で安価なTTYを支給してもらうこともできる。
(スウェーデンのテキストテレフォンは、視力のあるろう者によって使われているが、技術面は普通のコンピューターモデムと同じである。それで、盲ろう者は仲介サービスを受けることなく、視力のあるろう者と電話ができるのである。
盲ろう者は他の障害も伴うことがあり、知的遅れの場合が多いが、そういう場合には、一生、介助とリハビリテーションを受けられる、介助スタッフのいるホーム施設で生活することができる
盲ろう者で、点字が読める場合は、日曜日を除く毎日、小さなニュースレターがもらえる。一週間に2回は、点字の、少し大きめの雑誌が届くが、これは字が大きく印刷された、音声カセットのついたものである。ニュースレターでは、毎日の重要なニュースのほとんどを短い項目で読める。雑誌では、長めの記事があって、背景の事実関係を短いニュース項目につけ加えている。
国立点字図書館では、盲ろう者のために、印刷物を点訳するサービスがある。盲ろう者は、ほとんどあらゆる種類の印刷物、手紙、記事、レシピ、(本一冊全部を点訳するのではないが)をこの図書館に送り、点字にしてもらえる。このサービスは無料である。
あらゆる国における弱視センターや補聴器センターは、盲ろう者が必要な特殊補助器具(眼鏡、補聴器、その他日常生活に必要な補助器具)について責任がある。また、盲ろう者の視力なり聴力が衰えた時には、新しいコミュニケーション方法や読む方法を訓練している。
Mo Gard Resource and Inforrmation Centerは、ストックホルムの南200キロのところにあり、ろう者及び盲ろう者で、なお且つ、他にも問題を抱えている人々の為の、リハビリテーション センターである。このセンターは、また、盲ろう及び盲ろう者向けサービスの分野で研究、開発を始めている。
労働市場研究所は、ストックホルムの北にあるウプサラ(AM1-Syn/Horsel)とスウェーデンの南部にあるマルモ(AMU-Hadar)にあり、就労を目的としたリハビリテーションを障害者に行っている。
視覚及び聴覚共に障害のある児童の教育は、通常、普通学校が主流ではあるが、ろう者及び盲ろう者は、ろう学校へ、聴覚障害の子供は普通学校、場合によっては、特殊聴覚クラスに、知的遅れを伴う盲ろう者は、知的遅れのある児童の為の特殊学校に、となる。視覚障害の他にもハンディキャップをかかえた児童の為の特別な学校が一校あるが, 名前をEkeskolanと言って、Orebroniにある。Ekeskolanは、また、あらゆる重複ハンディキャップのあるろう者の子供の為の、責任ある情報センターでもある。
盲ろう者とのコミュニケーション
スウェーデンにおいて盲ろう者との最も一般的なコミュニケーション方法は、手話、ローマ字式の指文字, はっきりした話し言葉、場合によっては、書いたもの(点字、読みやすい手書き、あるいはタイプ)になる。 Tellatouchのような機器はほとんど使われていない。通訳サービスが盲ろう者にはとても大切になる。
生来のろう者で、盲ろう者になった場合、通例、触覚(手で感じ取る)であるいは視覚を使って手話を使い続けることになる。どちらの場合も、基本的には視力のあるろう者が使うものと同じ手話を使い、視力をなくした時、及び、顔の表情を読み取れなくなった時などにも適用する。
盲ろう者が、一般に、触覚を使って行う、ローマ字式指文字は、スウェーデンの手話のアルファベットと同じである。国際アルファベット式指文字(アメリカ、フィンランド、デンマークなどの国々、ろう者が使っているもの)に非常に似ているが、全く同じではない。
スウェーデン盲ろう者協会(FSDB)
FSDBは1959年に設立された、盲ろう者の全国組織である。視覚、聴覚ともに障害がある人々のみが、投票権をもつ正規会員資格を得ることができる。会員数は300人以上である。FSDBの下に約10の地方支部協会がおかれている。また、親の会と青年部とがある。親の会では、盲ろう者の子供や家族に関する問題に取り組んでおり、青年部では、若い盲ろう者が協力して、自分たちの活動をおこなっている。
FSDBの目標は盲ろう者の生活をよりよいものとすることにある。ひとつの圧力団体として行動し、当局者や政治家に影響を与えて、盲ろう者が必要とするサービスを受けられるようにする。一般的には、まず、児童や障害者を対象とした政府の特別開発支援基金から経済的援助を受け、様々な開発プロジェクトやプログラムを始めることで実現されていく。これらのプロジェクトによって障害者への新しいサービスが始まったら、次の段階としては、このサービスが、通常の国家予算の中で永続的に賄われていくようにする。ニュースレター、印刷物を点訳するサービス、通訳サービス、テキストテレフォンのコンピュータ-はすべてこういったプロジェクトの結果である。
FSDBのもうひとつの大切な目標は、盲ろう者の人々が、他の盲ろう者の人々と会って、一緒に楽しいときを過ごせるようにすることである。夏季及び冬季ホリデー週間、情報ミーティングや様々なコースを用意している。
掲示板システム
FSDBは独自の掲示板システム、つまり、コンピューター会議システム、Traffpunkt 44: anをもっている。これは情報のデーターベースでもある。ここでは、盲ろう者の人たちが 毎日のニュースを読めるし、他の情報についても同様、読むことが可能だ。会議(ニュースグループ)では、E-mailの送受信や、様々な事柄について討論ができる。 掲示板システムはtelnetにより、TP44-2.frukt.org.で接続される。
FSDBは、約20人の人たちが働くオフィス(住所は下記に)をもっていて、そのうち何人かは盲ろう者である。収入のほとんどは、政府の補助金から出ている。
FSDBの住所
S-122 88 ENSKEDE, Sweden
Tel: +46 8 399000
Fax: 46 8 6595042
E-mail: fsdb@fsdb.org
3-1)-2 盲ろう者への点訳サービス・・・点字に変える以上のもの(仮訳)
[ 解説 ]
スェーデン国立録音点字図書館(Swedish Library of Talking Books and Braille-TPB)は、スェーデンの視覚障害者サービスの中心的な役割を果たしている。1980年に設立され、他の図書館と共同で視覚障害者やその他の読書障害者に文献を提供することを目的とし、①録音図書業務、②点字図書業務、③学生用教材業務、④研究開発業務をおこなっている。 また盲ろう者に対しても点訳サービスを行っているが、以下それに関する資料である。
私達が、普通、様々なメディアから、あるいは、他の人々との接触や会話から、また、たまたま他の人々が話すのを耳にしたりすることによって、得ている日常のたくさんの情報が盲ろう者には届かないでいる。この情報の欠如をある程度補っていこうと、スウェーデンでは、盲ろう者のために点字に変えるサービスを主として行うプロジェクトを開始した。これは最初、スェーデン盲ろう者協会(the Association of the Swedish Deaf-blind) により、運営されていたが、後になって、スェーデン障害者協会(the Swedish Institute for the Handicapped) に引き継がれた。私は1966年の最初の時点から、実際的な側面の組織化を行って来ているが、すべてが試験的試みであった。点訳サービスの目的は、盲ろう者、一人一人の、個人的な需要に応え、点字で読むことへの関心と読む能力の向上を図ることにある。このサービスは盲ろう者には無料で提供されている。
成功だった試験期間
点訳サービスは、予想以上にはるかに多くの盲ろう者によって、必要とされ、利用されている。盲目者が読み聞かせサービスを聞いて依頼してくるよりも、ずっと多くの種類の点字本を盲ろう者は求めてくる。点訳サービスには、各盲ろう読者についてよく知っておくことが必要であるし、彼らとコミュニケーションを密にとることも欠かせない。点訳サービスでは、盲ろう者個人から点訳する印刷物を受け取るのだが、盲ろう者が探して欲しい、選んで欲しいといってくる場合の方が、はるかに多い。また、その多くは、編集の仕事も、必要となってくる。
試験期間は1990年の7日に成功裡に終了し、永続的な盲ろう者への点訳サービスはその後も継続されている。現在ではTPBがその任にあたっている。
該当者数
スウェーデンでは、視覚と聴覚の両方に重度の障害がある場合に、盲ろう者と呼んでいる。
- 全盲で聴力が全くない
- 視力も聴力も少しある
- 聴力は全く無く、視覚障害をもつ
- 全盲で、聴力に障害がある
障害が重なると、それを補正できる可能性が低くなり、 視覚障害者や、ろうまたは難聴者のために講じられる方法がうまくいかなくなる可能性もある。全国障害者協議会(The national Council for the Disabled)がスウェーデンの盲ろう者の数を数年前に調べたところ、1246人であった。1984年と1985年の報告書には、盲ろう者について沢山の情報が載っていて、例えば、139人は点字を読むとの報告もある。このように、最初から盲ろう者のかなりの人数が、点訳サービスの恩恵に預かれることがわかっていた。
個人の需要に合わせた点訳サービスを利用することは、能動的な行為である。従って、139人のうち80人を超える人々がこのサービスを利用しているということは、全面的試行から生まれた好結果とみなさなければならない。1989年には全部で28000ページが点字になった。点訳の依頼の50%以上が、点字にして4ページまでのもの、印刷にして1ページ以下のものであることを考慮に入れると、極めてよい結果である。
言語上のマイノリティ
点訳サービスは、子供の時からろうであった人々のために、文化とニュースを扱っていこうとしている。スウェーデンでは、ろうの人々は、法律により、手話を第一言語、スウェーデン語を第二言語とする言語上のマイノリティとみなされている。点字を読む盲ろう者の40%は、生まれつきろうであり、学校時代の仲間、友達、親戚をろう社会にもっている。彼らは、ろう者のためのクラブからの情報、また、ろう者に対する重要な中央の施策についての情報を得たいと望んでいる。
そういった情報では、手話をビデオ化したものを与えられることがある。その後、スウェーデン語なり、点字に翻訳される。土曜日には、スウェーデンのテレビで手話によるニュース番組が流される。これは前もって要約され、27人の盲ろう者が点字でそのニュースを読める一方、ろうの人々は同じ番組をテレビで見ることができるようになっている。
絵の説明
絵からの情報や刺激が盲ろう者に求められている。たいていは、ひとつひとつのさし絵を言葉で説明されることを望む。盲ろうの人々の絵に対する興味は、そのほとんどの人が見えた時期があったという事実と関連性があると思われる。盲ろう者の過去の体験にアピールできると、彼らは自分が盲目になってから何が変わったのか知りたがる。多分、その関心の持ち方は、盲目者よりもはるかに情報から遠ざけられているという事実とも関連しているのだろう。
大人になって点字を学ぶ
点字に関する出版物や盲ろうの人々からの印象で、点字読者は生まれつき盲目である人々だと思われがちだが、そういう人々は数にしたらほんのわずかである。現在、点訳サービスを利用している80人あまりの人たちの中には、子供の時に点字を学んだ者は10人に満たない(ここには生まれつき盲目である者も含まれる)。盲ろう者の点字読者のほとんどは大人になって点字を学んでいる。そのうちの多くの者にアッシャー・シンドローム(*)がみられる。
* アッシャー・シンドローム 遺伝的な聴覚及び視覚障害があり、視覚障害については、軽い症状から始まってしだいに視力を喪失していくという進行性である。
3-1)-3 エクス・コンプ(Ex―komp)について
スウェーデンの盲ろう者がコンピュータ、インターネット、及びその他のサービスにアクセスするためにコンピュータについての研修を行っている団体である。初めはスェーデン盲ろう者協会に属していたが、1998年から1999年にかけて税金を払う団体としては独立した団体になった。カンティカウンセル(地方議会*)の要請を盲ろう者協会を通して受け、コンピュータ訓練を行うインストラクターを派遣して報酬を受けている。事務所はスウェーデン盲ろう者協会と同じ建物の中にある。
代表は世界盲ろう者連盟の会長であるステッグ・オルソン(Stig Ohlson)である。彼は盲ろう者で、全盲で、難聴者。難聴者といっても言葉として聞こえるのではなく音として聞こえるだけで、コミュニケーションは触手話を使用するが話すことはできる。発展途上国における盲ろう者団体の設立、発展をめざして海外での活動も多いそうだ。
エクス・コンプとして、いくつかのプロジェクトを財団から経済的な助成を受けて行っている。ウインドーズプロジェクト、IT(Information Technology)プロジェクト等を進めている。ITプロジェクトとは、別々の地域に住む15人のコンピュータ研修のなる核になってくれるキーパースンを育成し、他の盲ろう者のコンピュータ研修後のフォローアップを託する。
このエクス・コンプは3人の運営スタッフとスェーデンの各地域に住む5人のインストラクターで構成する。普段はそれぞれ個々に活動を地域で行っている。彼ら自身が盲ろう者、難聴者であり、直接、盲ろう者とコミュニケーションをとってコンピュータ研修を行う。
研修は事務所で行っているわけではなく、個々の家に出向いて、そこでの機材を用いて研修を行う。時には短期のリハビリテーションのコースに参加する指導をしているインストラクターもいる。盲ろう者の場合、電話としてTTY(テキストテレホーン)を使用するためにモデム、点字ディスプレイ、テキストテレホーンプログラムがインストールされており、JAWS(スクリーンリーダー)、点字プリンターなどを含めてパッケジとしてカウンティ・カンセルから無料で支給される。
研修の内容は、コミュニケーションプログラム、ワープロ、掲示板システム、インターネット、電子メイルの使用法についての研修も行っている。拡大ソフトウェアや点字ディスプレイを使用して研修行う場合もある。また総合的なTTY(テキストテレホーン)の使用法についても研修を行っている。特に研修マニュアルがあるわけでなく、メモリーのサポートと同様に研修を行っていく上での研修生のための注意書き程度のものをつくり、指導者に受け継ぐ。その注意書きは個々の研修生のため能力に応じて適用される。
コンピュータの研修に関してウィンドウズ、ブレイルディスプレイ、インターネットのソフトウェアについて盲ろう者に教える場合、視覚あるいは聴覚がどのぐらい残っているかによるが50時間から150時間かかるというのがインストラクター達の意見である。
エクス・コンプの盲ろう者と私たちとのコミュニケーションは、盲ろう者は国から通訳サービスを受けることができるので手話通訳者を通してであったが、今回の通訳者たちは彼らの通訳を受け持つことが多いらしく、慣れた通訳および盲ろう者のサポートが印象的であった。ちなみに通訳者のトレーニング費用は国が負担する。
*1:法律の施行は中央行政機関と21のレーン行政機関(お中央行政機関の地方出先機関)が行う。各レーン(全国を21に分けた行政区域)にはランスティングと呼ばれる地方議会が置かれ、所得税を徴収する権限を有し、主に地域内の保険医療の責任を負う。現在全国289のコミューン(地方自治体に分かれ、それぞれ普通選挙で選ばれた議会)が置かれている。
3-1)-4 アラン(Allan) について
[解説]
「アラン」とは、スウェーデン盲ろう者協会が開発したテレビ電話(ビデオ・テレフォン)用のソフトウェアで、パソコンを電話回線に接続し、聴覚障害者が手話通訳を介して電話を利用することができる。現在はアランのシステムに点字ディスプレイをつけて点字も読むことができるアスラン(Aslan)を開発中である。
(http:// www.omnitor.se)
技術情報
必要な機能
コンピューター | 450MHz ペンティアムII以上 |
カメラ | PAL または NTSC |
オーディオ | Full duplex sound card ヘッドセット、ハンドセットまたはマイク、 スピーカー |
ディスプレイ | DirectXドライバー・ヴァージョン6.0以上ハイ・カラー(16ビット)モード以上 |
運用システム | ウィンドウズ95 または ウィンドウズ98 |
ヴィデオによるコミュニケーションによって、(ろう者用)手話を使う者には、よりよい遠隔通信可能となる。テキスト、音声、ヴィデオの組合せは、すべての人にコミュニケーションの革命をもたらすものである。
アランは、多機能なパソコン端末で、ヴィデオ、テキストおよび音声が一体化したコミュニケーションを可能にする。この端末は、また、テキストフォーンとしても、ヴィデオフォーンとしても使えるし、マルチメディア、一般的なパソコン利用、インターネット接続にも対応している。
アランは、ろう、聴覚障害、言語障害の人達のコミュニケーションに対応した多機能端末である。カメラ、ヘッドセット、プログラム、それに、ヴィデオ・コミュニケーションとテキストテレフォン用特別カード各一枚、がついたコンピューターである。ISDNネットワークにも繋がる。
機能
- 手話を取り入れたヴィデオ・コミュニケーション
- ISDN 128 Kbps での接続
- 音声によるコミュニケーション
- 国際標準V18にそったテキストテレフォンで最新のテキストフォーンに接続される自動選択モードを持つ。
- 電話をしらせる信号
- ビデオ、電話、テキストテレフォンを自動選択
- ビデオを使ったテキストによる会話
- ビデオ、テキスト、音声による留守番電話
以下のような使用が可能
- ろう及び難聴者が使用
- 言語障害者が使用
- 手話が可能
- 読唇術が可能
- 手話通訳が可能
- テキストテレフォンとして
- インターネットとして
- マルチメディアとして
- コンピューター利用として
3-1)-5 SPRIDAコミュニケーションセンター
SPRIDAとはOrebrollの地方議会に付随するコミュニケーションセンターのことである。17人の構成員からなる。 私達の仕事は、児童及び成人のコミュニケーションを援助することである。また、話したり、書いたりするための補助機器を開発し、利用者には使い方の指導もしている。
試験
対象者グループとしては、書く、読む、電話するなどに関して、個別に対応を必要としている人々である。中には、コンピューターの助けを借りて、 例えば、記号や絵を使って、自己表現する必要がある者もいる。個々の機器仕様を決定後、依頼者用の機器の試験、設計をする。通常は、機器の設置も行っている。主な依頼者としては、郡議会、社会保険事務所、私企業が挙げられる。
教育
機器が設置されると、依頼者、親族、介助者にその使用方法を教える。また、できる範囲で、セミナーも開催している。これらのセミナーは、コンピューターの基礎知識及び機器の働きを教えるものである。プログラムは4日間の基礎コースになっているが、具体的なソフトの問題点解消及び(もしくは)機器に関連したもっと短いセミナーも用意することが可能である。
研究と開発
個々の依頼者に対する試験期間中、及び設計を行う過程で、必要なコミュニケーション補助機器が既に姿を消してしまっていることがある。そのときは、その具体的な問題に対して独自の解決法を私達で開発するか、外の専門家に相談をすることになる。コミュニケーション機器の設計を成功させる基盤は、依頼者とそのプロジェクト関係者が、それぞれに自身の専門知識、技術を出し合う、緊密な協力体制にある。この分野の進歩はきわめて早い。したがって、常に最新情報をキャッチして、個々の問題に最高の解決法を提供できるようにしなければならない。
構成員
私達の仕事は、広い知識を身につけた熟練者を必要とする。いくつかの専門職があり、それぞれを構成員が受け持っている。ひとりはスウェーデン語の手話を巧みにこなす。
5名のコンピューター教育者は試験期間及び設計の過程で、技術及び教育的能力を発揮し、貢献している。全員が協力して、能力に関する幅広い分野をカバーしている。コンピューター教育者の中の2人はSIH(全国特殊教育機関)にも関わっている。ひとりはプログラマーとして働いている。
3名の作業療法士は医療の専門家で、依頼者が機器になじめるよう身体的側面から指導を行う。
2名の言語療法士は、言語障害, 知的障害などから必要となる,コミュニケーションの代替手段に関係するプロジェクトに参加する。
2名の弱視指導員は、視覚障害のある依頼者が読み書きをしたいと望む時に浮上してくるあらゆる問題について相談にのる。
1名のリハビリテーション技術者は開発とその応用という側面から協力する。
4人のコンピューター技術者はspeech synthesizer、変形キーボードなど、異なる機器やコンピューターを用意して、 応用し、依頼者の試験に向けて準備する。
3-1)-6 スプリーダ・コミュニケーションセンター
スプリーダコミュニケーションセンター職員
- センター長 1名
- コンピューターインストラクター 4名
- 弱視指導員1名
- 福祉住環境コーディネイター1名
- 技術者(テクニカルエンジニア) 4名
- 作業療法士 3名
- 言語療法士 2名
- 管理者 1名
計17名
スプリーダが持つ機能の主な構成
機器の試用
教育
開発
最初の訪問
-文字電話としてのコンピューター
日時、場所、参加者
- 現在の作業状況
- 作業方法
- 補助器具
- 周囲の状況
- 起こりえる問題と欠陥点
- 興味
- 補助器具は何を補うのか
- 目標/期待
- コンピューターの使用経験
- どの文字電話またはコンピューター設備を今日使用するか
- 教育の必要性
- コンピューターはどこに設置されるべきか
- コンセント/電話のプラグ
- 家財に対する保険
- 試用の日時/出張料金
視覚聴覚重複障害者に対するリハビリテーションへの協力
視覚聴覚障害者専門コンサルタント、聴覚障害者支援協会、視力障害者支援センターとスプリーダが協力する。
ある人が視覚と聴覚両方に重度の障害を持っているとしたら、その人は視覚聴覚重複障害者ということになります。
視覚聴覚重複障害者の中には、完全に視覚または聴覚が機能しない人もいるし、視覚と聴覚の機能を残している人もいます。
視覚聴覚重複障害者が(機器の)試用をしてみて要求されること
- 様々な分野のコーディネーターからの良い協力体制が必要である
- 必要を分析するのは、話を複雑化させるだけである
- 豊かな空想と創造性は浮かんできた解決方法を現実のものとさせる
- 課題を迎えるにあたっては、謙遜になることが必要である
- 手話を用いたコミュニケーションが必要である
作業手順
- スプリーダへの申請
- 完全な情報
- 依頼人の作業環境への訪問
- (依頼人の)経験/必要の図表化
- その都度考えうる補足
試用下の役割(コンピューター及びその他の機器)
- 適当な作業資料の準備
- 適した調整器具を提供
- 調整器具の数は3機までに制限すること
- 依頼人が自分で試用できるように援助する
- 私達が試す時間がなかった個々の違いについて伝達すること
- この試行がどのように機能したのかメモを取ること
- 試行の間に何を行ったのか依頼人と出席者が一緒にまとめること
- 依頼人が結論を出せるような、支え手となること!
- その後の処理;書くこと、電話すること、等々。
試行後
- まとめ及び(機器の)推薦
- 情報(課題)提供者への送付
- スプリーダによる一括購入
- スプリーダによる相対的配置
- スプリーダによる(機器の)設置
- スプリーダによる依頼人への教育
- 責任は視覚障害者支援センター及びスプリーダが継続的に負うこと。
添付1
個々のリハビリテーション計画―実用的な住居と補助器具
参加者(リハビリテーション技術者):福祉住環境コーディネイター、弱視指導員、盲ろう者専門コンサルタント、言語聴覚士
依頼人:カタリーナ・ラーション
問題列挙 | 対策 | 責任者 | 期間 |
---|---|---|---|
1.送迎ドライバーの必要 | 申請 | 盲ろう者専門コンサルタント | 早急 |
2.室内外における強化された照明の必要 | 住居調整 | 福祉住環境コーディネイター | 一ヶ月以内に申請 |
3.眼科へ行くこと | 眼科の予約 | 弱視指導員 | 一ヶ月以内 |
4.めがね屋へ行くこと | めがね屋の予約 | 弱視指導員 | 眼科へかかった後早急に |
5.弱視指導員のもとへ行くこと | 弱視指導員の予約 | 弱視指導員 | 眼科へかかった後早急に |
6.火災報知機及び補助器具操作訓練 | 聴覚障害者支援協会への連絡 | 福祉住環境コーディネイター及び言語聴覚士 | 3週間以内 |
7.文字電話の調整器具の必要 | スプリーダに申請 | 福祉住環境コーディネイター及び言語聴覚士 | 眼科へかかった後早急に |
例1
スティーグの身体的状況
- 38歳
- ウーシェルスシンドローム
- 夜盲症
- 眩しいものへの過敏症(眩うん)
- 均衡感覚障害
- 色弱
- 視力 0.3
- 聴覚障害者-手話使用
- 1994年よりコンピューターを使用-WINTEXT
スティーグへの対応
試用:
- 拡大機能プログラム
- 色彩調整器具
- 文字電話機能プログラム
- ワードプロセッサープログラム
スティーグへの推薦
コンピューター | デスクトップ PC スタンダード WINDOUWS98 |
モニター | EIZO 17" |
モデム | POWERBIT |
文字電話機能プログラム | KOMTEX95 |
ワードプロセッサー機能 | WORD |
プリンター | レイザープリンター(既存のもの) |
PCボード | 長方形 ぶな材 1.40×0.80(既存のもの) |
テーブルトップ | 5ケ口 アース付き |
例2
アンナの身体的状況
- 29歳 - 軽度精神発達遅滞
- 幼少時より失明
- 聴覚障害あり
- 文字電話を所持したことはない
- 彼女の発する音声の一部は理解困難
- 点字使用
アンナへの対応
試用:
コンピューター | デスクトップPC スタンダード |
ディスプレイ | VIEW SONIC 14" |
Speech Synthesiser (文字から合成音声への変換機) |
INFOVOX 500 スピーカー スウェーデン語 |
画面読み上げソフト | ILTALK |
モデム | POWERBIT |
文字電話機能プログラム | TELO |
ワードプロセッサー機能 プログラム |
EJWIN |
点字ディスプレイ | POWERBRAILLE 40 |
プリンター | HP DESKJET 690 INDEX BASIC-S 防音ケース付き |
PCボード | 長方形 ぶな材 1.40×0.80 |
テーブルトップ | 5ケ口 アース付き |