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JANNET研究会「カンボジアの村人たちはどうして障害に取り組んだのか?」

■グループディスカッション

(図5)
図5(図5の内容)

今西座長 お手元の資料にグループ討議の質問例(図5)を記載していますので参考にしてください。1つ目の質問は、報告頂いた事業において、障害者の巻き込み(インクルージョン)は上手くいったと思うか、そしてその理由です。2つ目は、この事業の結果や教訓から、今後実施する事業に応用できる点とそのためのヒントやコツを挙げてください。3つ目は障害者のインクルージョンを促進していくために今後、取り組むべき課題です。そしてその他質問等がありましたら後ほどお聞きします。今から30分かけて自由に議論していただきます。最後に各グループの話し合いの内容を各グループから5分程度で共有してください。できれば皆さんで最初に発表者を決めていただければ助かります。

◆グループディスカッション終了後の発表

今西座長 それでは、この辺でグループディスカッションを終えていただきます。どんなディスカッションになったかそれぞれのグループからシェアをしていただけたらと思います。Aグループから発表をお願いします。

Aグループの発表

Aグループでは、色々な話が出たり、議論が盛んになったり、活発にならなかったりしました。沼田さんの話の中で興味を持ったのは、村を廻って説得したということでしたが、説得する際のinvolvementをどういうように作っていったか詳細を聞いてみたかったと思いました。普段、障害と関わりの無い人たちをどうやって巻き込んでいくか、巻き込み方について実体験を含めて自分もそうですが、難しいと言っている人達がいます。もう一つ、賃金の話が出てきて、障害者が作った野菜が安いとか水汲みなどの賃金格差の話が挙がりました。今まで全く稼げなかったのが稼げるようになったのは本人の自信に繋がるという意味で良かったのかもしれません。しかし、長い目で見た時に同じ仕事をしていて障害の有る、無しで格差が出てくるのは良くないとの話がありました。

今西座長 ありがとうございます。それでは、Bグループお願いします。

Bグループの発表

こちらのグループではまず今回の活動で障害者の巻き込みが上手くいったと思うかとその理由について話し合いました。全体としてはとても上手くいったというのが共通の意見です。村人の言葉でやっているうちに楽しくなっていった、障害者に限らず村全体で図書室や子供会ができたりして、村全体に利益がある成果との評価でした。Aグループから話があったのですが、上手く行った理由としてどういったプロセスがあったのかという点が重要との声がありました。村の人達が自分達で調査に関わって、障害者がどういう生活をしているのか自分達で調べてそこから何をしたら良いのか、村の人達が自分達で考えたというところが良かったのではないかと思いました。活動の中で否定しなかったという点が自己肯定感に繋がったのではないかと思います。

事業の中で、グループ1とグループ2がありましたが、自己資金のグループは時間はかかっているものの、地域の中で自分達が抱えていることを時間をかけて見つけていくことで実は成果に繋がっていました。一方で外部資金のグループでは、計画ありきということで、活動が地域に根付くかという点では難しさがあったと思います。

今西座長 最後に沼田さんに質問にお答えいただき、まとめていただきたいと思います。

◆質疑への回答

沼田氏 Aグループからは、議論の途中で巻き込みのプロセスについて質問をいただいていました。村の中でファシリテーターを養成し、ファシリテーターがそれぞれの村の人に集まってもらって、村の人達が知的障害者を見つけるという方法を取りました。そして、その知的障害者がどんな暮らしをしているのか、絵にしながら、村人がインタビューをして、彼らの生活を分析しました。全ての調査は村人自身が行いました。2年目位には、村人が集まるといつも皆で知的障害者の話をするようになったと言っていました。事業のオーナーシップといいますが、完全に村の自分達の活動として理解していましたので、そのプロセスが知的障害者への理解を深め、また何かしたいという気持ちを生んだと思います。

ただ、ファシリテーターを養成するという取っ掛かりのプロセスは大変でした。初めて村に行った時は、金を持ってきたか、今度持って来いよと言われました。何回か通ううちに、「お昼ごはん食べていかない?」と言われるようになって、お昼ごはんをいただいて、「泊まっていけよ」と言われたりしました。泊まりませんでしたが、一緒に水浴びをして、関係を作っていきました。「何で知的障害者の事業なの?」と聞かれた時は、「知的障害者の団体の者だから(笑)」といいかげんなことも言いました。「石鹸すらどこの家にも無いくらい、私達は貧乏」と言われたりもしました。知的障害者の事業だけど、村の利益になる事業に発展させていきたいと説明しました。実は、発展するか自信はありませんでしたので、これは口から出まかせです(笑)。でも、みんな合意してくれ、始めたら面白くなったと言ってくれました。

次に、野菜の売値の格差が障害者の賃金の格差に繋がらないかとの質問でした。彼らが安い値段と言ったのは、マーケットより安いという意味であって、知的障害者が作ったものだから障害のない人が栽培した同じ野菜より安いという意味ではありません。マーケットで販売すると、場所代を払って、荷物を運んで1日誰かがそこに貼りついて、売らないといけません。知的障害者が作ったものを買っていってくれる、そこから活動が始まりました。今、ご紹介した人は24歳になり、自分で農場を持っていますが、これをマーケットで売っていますので安くありません。

◆まとめ

沼田氏 全体のまとめをします。私達は、「村人が自分達で知的障害者のことを知って、自分達で活動する」というプロセスを作るお手伝いをしたと思っています。そのプロセスが一番大切だと思います。私はこの分野に入って何十年と経つのですが、初めて入った時に日本の知的障害者支援に違和感を覚えました。まず、支援者から「知的障害者のオムツを変えたことがないあなたに何が分かる?」と言われました。

日本はその頃から既に社会統合を目指していましたが、「やったことがないあなたに何が分かると言っていたら、社会統合があり得るわけがない」と思いました。「『知的障害者を教えたことがないあなたに何が分かる』って社会統合と言えるのか」と思いました。この事業で、村の人たちはそれを打ち破って、専門家ではない私達が本当に社会統合を果たしたということで誇りを持ってくれています。以上です。

今西座長 他にも質問があると思いますが、ここでグループ討議を終了したいと思います。