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CBRガイドライン・保健コンポーネント

医療

はじめに

医療は、健康状態またはその状態の結果としての機能障害の診断、評価、そして治療と定義することができる。医療は、なんらかの治療を提供(例:ハンセン病やマラリアの治療)し、影響を軽減(例:てんかんの治療)し、予防可能な機能障害の発生を防ぐ(例:失明を防ぐための糖尿病治療)ことができる。質の高い医療を必要な時に必要なだけ利用することは、とくに健康状態レベルが悪くなりがちな障害のある人が、良い健康状態や生活機能を維持するためには不可欠である(30)

序文において、障害者権利条約25条に言及した。締約国は、障害者に対して他の者に提供されるものと同一の範囲、質及び水準の無償の又は負担しやすい費用の保健及び保健計画を提供すること、障害者が特にその生涯のために必要とする保健サービス(早期発見及び適当な場合には早期関与を含む)を提供すること、そしてこれらの保健サービスを、障害者自身が属するコミュニティの可能な限り近くにおいて提供することが求められている(2)

障害者の機会均等化に関する標準規則(23)もまた、医療に関する国家の責任項目を明確にし、さまざまな生活活動への平等参加の前段階としての医療を強調している。

権利条約や標準規則に基づき、CBRスタッフは障害のある人がインクルーシブで適切でタイミング良く医療を利用することを保証するために、地域の中で働くことができる。

BOX15 タンザニア

アドナンの大きな変化

アイリーンとモハマドはタンザニア連合共和国に住んでいる。彼らには6歳の娘がいたが、長い間もう1人子どもがほしいと思っていたので、アドナンが生まれた時は大喜びだった。アドナンが2か月の頃、彼らはアドナンの頭が小さくなっていることに気がついた。アイリーンとモハマドは治療のためにアドナンを地域の病院に連れていった。レントゲン写真が撮られたが、医師たちはアイリーンとモハマドに何も心配することはないと伝えた。しかし成長するにつれ、簡単な動作を行ったり基本的な指示に従ったりすることができなかったり、行動がどんどん難しくなってきていることが明らかになってきた。また、定期的な痙攣も経験した。アイリーンは「アドナンは声や大きな音を出したことが全くなかったから、何にもわからないんだわと思って、あまり話しかけることがなかったの。そんなことしたって無駄でしょ。でもアドナンの行動はどんどん悪くなっていったわ」と説明する。

アドナンがようやく歩きだしたのは4歳のときだった。道路で遊んでいたある日、通りがかりの人が、アドナンの知的障害に気付き、タンザニアの総合的CBR実施団体(CCBRT:Comprehensive Community Based Rehabilitation in Tanzania)という非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)により運営されている地域CBRプログラムのことをアイリーンとモハマドに話した。アドナンの両親はCCBRTと連絡を取り、支援と助言を求めた。CBRワーカーの1人、ママ・キテングは定期的な家庭訪問を始め、教育と治療を施した。また彼女は、痙攣を管理するための医療ケアを利用できるよう家族の支援も行った。その結果、アドナンは現在、てんかんをコントロールするための定期的服薬を行っている。

アイリーンは「プログラムに入る前は、アドナンは1人では何にもできなかったわ。1人で食べることも着替えることも、手を洗うことだってできなかったの。アドナンは落ち着いた、幸せな子じゃなかった。ただ1日中歩き回って道に迷っていただけだったわ。私も何をすればいいかわからなかった。トレーニング、特に指示に関するものは、本当に役に立ったわ。今では、私はいつもアドナンに話しかけるし、アドナンも私の言うことをわかってくれている。水も運べるし、1人で食べられるし、顔だって洗えるのよ。水場から家までの帰り道を何度も教えて、いつも決まったものを探すようにしたら、道に迷っても帰ってこられるようになったの。てんかんの薬もきちんと飲んでいるから、発作も起こらなくなった。前と比べて、本当に大きな変化よ」と述べている。

目標

障害のある人が、それぞれのニーズに基づいて一般的または専門的な医療サービスを利用する。

CBRの役割

CBRの役割とは、障害のある人が健康状態や機能障害を診断、予防、最小限にし、そして治すためのサービスの利用を保証するために、障害のある人、彼らの家族、医療サービスと協働することである。

望ましい成果

  • CBRスタッフが、医療サービスに関する知識を有し、障害のある人や家族をそれぞれのニーズに合った一般的または専門的な医療へ照会することができる。
  • 障害のある人と家族が、健康状態や機能障害の早期発見活動(スクリーニングや診断サービス)を利用する。
  • 医療を提供する施設がインクルーシブであり、障害のある人が利用しやすいように改善されている。
  • 障害のある人が、機能障害の影響を最小限にしたり治したり、ひいては健康状態や生活機能の改善に寄与する外科手術を受けることができる。
  • 障害のある人や家族が、質問し、治療の選択肢について話し合い、十分な説明を受けた上で治療法を決定し、健康状態を管理することができるような自己管理技能を育成する。

医療ケアワーカーが、障害のある人の医学的ニーズについて理解を深め、障害のある人の権利や尊厳を尊重し、質の高いサービスを提供する。

主要概念

医療ケアの種類

低所得国における多くの保健システムには、1次(プライマリー)、2次、3次の3つのレベルの保健ケアがある。これらは通常、照会システムにより相互に結びついている。例えば、プライマリーヘルスケアワーカーは、必要に応じて2次レベルのケアに照会する。普段は2次保健ケアが行われるところで、プライマリーヘルスケアが提供されていることがあるなど、互いのレベルの間には重なる部分も多いが、CBRスタッフにとって、それぞれのレベルの基本的な違いを理解しておくことは、障害のある人や家族による利用を強化するために重要である。

プライマリーレベルのケアは、地域レベルにおける基本的保健ケアである。保健所やクリニックにおいて提供されることが多く、通常、保健システムから受ける最初のケアになる。プライマリーレベルで提供される医療には、急性疾患の簡単な応急手当(例:感染)や慢性疾患の定期的管理(例:ハンセン病、てんかん、結核、糖尿病)が含まれる。CBRプログラムは地域レベルで展開されるため、プライマリーヘルスケアサービスとは密接に働く。

2次レベルのケアは、大きなクリニックや地区レベルの病院において提供される専門的な医療サービスである。プライマリーヘルスケアは、照会機能を通して、2次ケアへとつなぐ重要な役割を果たす。

3次レベルのケアは、高度に専門化された医療である。看護師や救急医療スタッフなど専門的な医療職員により提供され、専門技術が使用される。これらのサービスは、国や地域レベルの、主に大都市にある大病院が提供する。3次レベルで提供される医療には、脳外科手術、癌治療、整形外科が含まれる。

障害のある人のための医療

医療スタッフはしばしば一般診療のために、障害のある人をプライマリーヘルスケア施設ではなく、リハビリテーションサービスに照会する。これは医療スタッフの理解不足、すなわち、障害のある人は一般の人々と同じようにその生涯にわたってさまざまな場面で医療、それも特にプライマリーヘルスケアが必要な、一般的な病気になる可能性があることを理解していないことが原因である。例えば、呼吸器感染症、インフルエンザ、高血圧、中耳炎、糖尿病、結核、マラリアのための治療が必要になることもあるのである。

保健ケアスタッフは、機能障害になりうる状態の早期発見において重要な役割を果たす。すべての健康状態は、早期に発見され治療されること(2次的予防)が重要である。治療や管理が不十分なままの健康状態は、新たな機能障害を引き起こしたり、既存の障害を悪化させたりすることもある。早期介入は損傷が少ないうえに経済的で、より良い結果につながる。

障害のある多くの人もまた、人生のある期間、あるいはずっと、特別な医療ケアのニーズをもっている。例えば、てんかんのある人やメンタルヘルスに問題がある人は、長期間の投薬計画が必要な場合もある。また、障害のある人の中には、機能障害に対処するため外科手術が必要な人もいるだろう。

BOX16

てんかん

てんかん(発作)は慢性的神経障害のひとつであり、とくに発展途上の地域では障害を引き起こす例が多い。てんかんのある人と家族はしばしば、スティグマや差別に苦しむ。てんかんとその適切な治療に関して、多くの誤解や神話がある。高所得国および低所得国における最近の研究では、新たにてんかんと診断される子どもや成人の約70パーセントは抗てんかん薬により治療が成功する(すなわち彼らの発作は完全にコントロールされる)ことを示している。治療が成功すれば2~5年後には、子どもの約70パーセントと成人の60パーセントは再発することなく薬をやめることができる。しかし、低所得国のてんかんのある人の約4分の3は、必要な治療を受けることができていない。

外科手術

外科手術は医療ケアの一部で、通常は保健ケアシステムの2次あるいは3次レベルで提供される。外科手術の中には、機能障害を矯正したり、変形や機能障害と関連した合併症を予防または軽減したりすることができるものもある。外科手術の例として、視覚障害の原因となる白内障の除去手術、骨折や脊椎変形に対処するための整形外科手術、そして口唇口蓋裂、火傷、ハンセン病の再建手術などがある。

外科手術を実施する前に考えなければならないことはたくさんある。家族は外科手術に関して限られた知識や理解しかもっていないこともあるので、外科手術による利点や結果について適切に知らされていなければならない。外科的ケアはしばしばとても高額で、貧しい人々が社会保障や健康保険なしにそれを利用することは困難である。外科手術による好ましい結果を得られるかどうかは、さらなる医療ケア、セラピーや支援機器など、手術後の包括的なフォローアップが行われるかどうかにより決まる。したがって、医療とリハビリテーションの専門家が協働することが必要である。外科手術そのものだけですべての機能障害や障害に関する問題に対応できるわけではないことを覚えておくことが大切である。

BOX17 ケニア

可能性を学ぶ

キエンヨージョ県で1987年に生まれたパトリックは内反足であった。そして彼の妹サラも内反足であった。パトリックは17歳で、障害のある子どもはカムウェンゲ町に行くようにと促すラジオの声を聞くまで、障害と生きてきたと話している。「それまでずっと、僕は仲間の間で孤独だった。ラジオの声を聞いたとき、複雑な気持ちだったよ。だって僕の足をどうにかする何かがあるなんて信じられなかったからね。でもとうとう僕はカムウェンゲアウトリーチセンターに行ったんだ。そこには障害のあるたくさんの子どもたちがいたよ。同じような経験をしている人がいるなんて全く知らなかった。2度の外科手術の後、僕の足は矯正されたんだ。今は、普通の靴が履けるのが本当に嬉しい。夢みたいなことだったからね。歩くことにもだんだん慣れてきているよ。僕の14歳の妹も外科手術を受けたんだ。地域のみんなが、障害のある子どもも医療サービスやリハビリテーションサービスを使えること、それが可能だって知ることは本当に大切だよ。僕らの地域ではそういったサービスについてあまり知られていなかった。サラと僕は、僕らの家族、友だち、そして地域の人にそういったサービスについて知ってもらうためにがんばっているよ。僕らも、障害のある他の人も、みんな社会の一員で、教会や学校、色んなグループの普通の活動に参加したいんだ。妹と僕が手術を受けてからは、たくさんの人が他の障害のある子どもも、失った希望を取り戻せるってことを信じるようになったよ」

自己管理

自己管理(セルフケアやセルフケアマネジメントともいわれる)とは、医学的介入なしに自分の健康を管理するという意味ではない。自己管理には、自分の健康をコントロールする、すなわち説明を受けた上で医療に関する選択や決定に責任をもち、健康の改善や維持のためのケア計画実施において積極的役割を果たすことをいう。より良い健康状態を獲得することを確実にするために、当事者と保健ケアワーカーとの良好な関係が必要である。ケアを自己管理する人々は、次のことを行う。

  • 定期的かつ効果的に保健スタッフと話し合い、
  • 意思決定やケア計画作りに参加し、
  • 保健に関する情報を要求、獲得、理解し、
  • 保健スタッフと作成した治療計画を守り、
  • 保健スタッフと合意した適切な自己管理活動を実行する。

自己管理は、長期的な障害のある人、例えば対麻痺や糖尿病などの慢性疾患のある人にとって重要である。保健ワーカーは、障害のある人や家族が自己管理において重要な役割を果たせることを見過ごすこともあるだろう。同様に、当事者たちも、自分自身の健康にきちんと責任をもつ技能が欠けているかもしれない。自助グループは、他者と知識や技能を共有することで、障害のある人が自己管理を学ぶ良い機会を提供することができる。そこでは、利用可能な医療ケアの内容、効率的に保健ケアシステムを利用するためのコツ、そして現在の健康状態の管理方法など、価値のある情報を学ぶことができるのである。

BOX18 エルサルバドル

数の強み

AIFO(Italian Association Amici di Raoul Follereau)は、世界保健機関の障害とリハビリテーションチームや障害者インターナショナルと共同で、同じような医療ケアニーズをもつ障害のある人同士でグループとして集まることで、自己管理技能を学んだり、自身の医療ケアを改善するために積極的な役割を果たせるようになるかを調べるための研究を、数か国で実施した。パイロットプロジェクトでは、同じような医療ケアニーズをもつ障害のある人を特定し、グループを設立し、主要な医療ケアニーズを把握し、保健専門家と協働し、ニーズに対処するためのセルフケアに関する知識や技能を提供し、障害のある人または家族によるセルフケアや医療ケアの質が向上したかどうかを評価し、そして障害のある人の知識や技能が医療システムの中で認められ何らかの役割を与えられたかということを明らかにすることが求められた。

エルサルバドルで実施されたパイロットプロジェクトは、脊髄損傷に焦点を当てたものだった。AIFO/Italyは、ドン・ボスコ大学やInstituto Salvadoreño Para La Riabilitación de Inválidosと協力して、サンサルバドル地域やトナカテペケ村の脊髄損傷のある30名と彼らの家族を対象とした。4つの自助グループが作られ、定期的なミーティングが開かれた。グループメンバーは、尿、膀胱、腎臓に関する問題、褥瘡に関する問題、関節拘縮に関する問題、性や家族計画に関する問題などの主要な医療ケアニーズを特定した。プロジェクトに関わった保健専門家は、特定された問題を扱うための自己管理技能訓練を提供した。徐々に、プロジェクトに参加した自助グループのメンバーや保健専門家の思考に変化が生まれてきた。適切な支援とトレーニングがあれば、脊髄損傷のある人は健康を管理でき、より高い生活の質を獲得することができること、また、保健専門家は従来の医療の役割を超える必要があるということ、責任を分かち合うという考え方の下、自己管理・セルフケアを強化促進する必要があることに気づいたのである。自助グループのメンバーは、ALMES (Asociación de Personas con Lesión Medular de El Salvador)という彼ら自身の組織を作り上げた。

推奨される活動

CBRプログラムは、障害のある人の医療の利用を促進するため、以下のような活動を実施することができる。

医療サービスに関する情報を集める

保健システムの1次、2次、3次レベルで利用可能な医療サービスに関する知識は、障害のある人や家族の医療やサポートの利用を支援するために不可欠である。CBRプログラムでは、以下のことができる。

  • 市町村レベル、地方レベル、国レベルの既存医療サービスを把握して、政府、民間、そして非政府サービスの提供者や、もし適切ならば伝統医療の提供者を把握することを保証する。
  • サービス提供者と連絡を取り、提供される医療の種類、利用のしやすさ、費用、スケジュール、そして照会制度に関する情報を集める。
  • すべての情報が、CBRスタッフ、当事者や地域の人に利用可能であることを保証するためにサービス一覧をまとめ、そのサービス一覧が地域の言語で書かれ、わかりやすい形で、保健ケアが提供される場所に置かれることを保証する。

早期発見を支援する

CBRプログラムは、以下のことができる。

  • プライマリーヘルスケアワーカーと協働して、障害と関係がある健康状態や機能障害の早期発見のための制度を構築する。
  • 感染症や非感染症(例:結核、ハンセン病、糸状虫感染症、眼オンコセルカ症、糖尿病、癌)の早期発見を目的としたスクリーニング活動を特定する。
  • 障害のある人と家族にスクリーニング活動の時期と場所に関する情報を提供し、また彼らがそれを利用できるよう保証する。
  • 筋ジストロフィーなどの遺伝的疾患の病歴をもつ家族が評価やカウンセリングのために適切な医療施設に照会されることを保証する。
  • 障害のある人と仕事をする際に、2次的疾患、例えば特定の障害に関連する褥創などについて注意を払う。
  • 外科手術により恩恵を得る可能性のある障害のある人を把握する。

BOX19 インド

ケアを提供するために力を合わせる

インドのマンディヤ地域で2つのNGOにより運営されているCBRプログラムは、国家ハンセン病プログラムと協働している。ハンセン病の初期のサインや症状に関する情報を提供したり、疑いのある人が最寄りのプライマリーヘルスケアサービスに行くことを促したりして、ハンセン病への認識を高める啓発活動をしているのである。ハンセン病と診断された人は、プライマリーヘルスケアサービスが無料で実施する6か月から12か月の治療計画を始める。もし、治療に参加できない場合には、プライマリーヘルスケアサービスは、CBRプログラムにそうした人たちへのフォローアップを求める。

早期治療を保証する

CBRプログラムは、あらゆるレベルにおける医療ケアサービスの利用を増やすために、障害のある人、彼らの家族、プライマリーヘルスケアワーカーとの協働を促進強化することができる。推奨される活動は以下のとおりである。

  • スクリーニング検査を受けた障害のある人に、必要な医療のフォローアップが確実に提供されているか、保健ワーカーに確認する。
  • 2次ないし3次レベルの保健ケアが必要な障害のある人が、きちんと照会されたことを保健ワーカーに確認すること。
  • 代弁すること、例えば、手話を知っているCBRスタッフがろうの人と保健施設に同行し、彼らのニーズを伝えたり、提供された情報を理解できるように保証したり、適切な治療が受けられるよう支援する。
  • 医療の利用を阻む障壁について啓発し、それらの障壁を減らしたり取り除いたりするために他者と協働する。例えば医療に関連する費用などのように、取り除くためには革新的な制度が必要な障壁もあるだろう。
  • 障害のある人へのサービス供給に関する格差を把握し、障害のある人、彼らの家族、医療スタッフ、政策立案者などとともに、それらの格差を減らしたりなくしたりするための方法を探すこと。

BOX20 ベリーズ

成功を作り上げる

内反足または先天的な足の変形は、低所得国ではしばしば障害の原因となる先天的なものである。ベリーズの障害者リハビリテーション・教育コミュニティ団体(CARE-Belize: The Community Agency for Rehabilitation and Education of Persons with Disabilities)は、これがベリーズの子どもにとって重大な問題であると認識した。国際子ども病院(International Hospital for Children)や保健省と協力して、CARE-Belizeは内反足のある子どもの早期発見と治療を確実にするためのプログラムを開発した。

地域の医師、療法士、そしてリハビリテーション分野の担当者が、丁寧な療法やギプスや副子の継続的使用により、発達の早い段階で内反足変形を矯正する非外科的方法であるポンセティ法の研修を受けた。CBRスタッフを通し、CARE-Belizeは超早期に子どもを発見し、内反足矯正のための医療ケアサービスセンターへ照会した。これは、地域のNGOが主体的に始めたものであったが、この成功は国家レベルの内反足プログラムの策定に大きく寄与した。

外科治療へのアクセスを促す

障害のある人の中には、外科的ケアが必要な人もいる。フォローアップケアとリハビリテーションが合わさったとき、外科手術は機能障害を矯正し、悪化を防ぎ、機能改善に寄与することができる。CBRプログラムは以下のことができる。

  • 障害のある人にどのような外科手術が可能か、特に利用できる資金援助があるかどうか調べる。
  • 外科手術を受ける前に、障害のある人と家族が外科手術により起こりうるリスクと利点、また外科手術と治療計画の全過程にかかる費用と時間について、しっかりと情報が伝えられていることを確認する。
  • 手術後、外科手術の効果を最大限にするため、外科手術および看護チームやリハビリテーション専門家(例:理学療法士、作業療法士、義肢装具士)適切なフォローアップをから受けていることを確認する。CBRは医療からリハビリテーションへのスムーズな移行を確実に実施することを支援することができる。

慢性疾患の自己管理を推進する

CBRプログラムは、障害のある人と家族が医療を利用する権利に気づき、慢性疾患の管理が自分でできるようにすることを支援することができる。CBRプログラムで推奨される活動には以下のものがある。

  • 障害のある人と直接連携し、適切な医療ケアを求めることや健康的なライフスタイルを実践することにより自分の健康に責任をもたせ、彼らが確実に医学的アドバイスを理解しきちんと守ることができるようにする。
  • 既存の健康状態に関する医療情報を提供する教材や出版物をわかりやすい言葉、シンプルなスケッチや絵、現地の言葉に翻訳するなど、障害のある人やその家族に適切な形で作るまたは作りかえる。
  • 障害のある人が他者と知識や技能を共有することで、自己管理について学べるように自助グループと結びつける。そうすることにより、彼らは、利用可能な医療リソースや、保健ケアシステムとの効果的な付き合い方、そして自身の健康状態の管理の仕方などの価値ある情報を学ぶことができる。

BOX21 ニカラグア

変化を作るための協力

ニカラグアでは、高血圧や糖尿病などの慢性疾患をもつ人々のための「クラブ」がある。これらのクラブ、つまり支援グループは、さらなる疾患や機能障害の発生を防ぐために確実に自分の健康管理に責任を持つことによって、より良い保健ケアシステムを目指している。ミーティングでは、自分たちの問題について話し、健康状態の自己モニタリングの仕方を学び、健康的なライフスタイルを送るための方法の探索を行っている。クラブの管理委員会は、保健システムでは通常提供されない薬や検査の費用を賄うため、資金集めの活動を実施している。CBRプログラムは、障害のある人が確実に組み込まれるよう、これらの支援グループと協働する。

医療ケア提供者との関係をつくる

医療従事者はしばしば、障害そのものや、障害のある人がどのようにすれば医療ケアサービスをきちんと利用できるかということについて多くの知識をもっていない。CBRプログラムは、これらのサービスと連絡をとり、スタッフとの良好な関係を築くことにより、照会システムや障害のある人への包括的な医療ケアを促すネットワークを作り上げることができる。CBRプログラムは以下のことができる。

  • 障害のある人や家族の健康に関するニーズについて、医療従事者の意識を高める。
  • 障害当事者や障害のある人のグループ、(必要であれば)家族と医療従事者の間で、障害に関する主な問題を話し合うための対話型の勉強会を企画する(例:利用に関する問題や経験共有)。
  • 障害のある人や家族が治療やケアプラン作成に関わることを医療従事者に促す。
  • CBRスタッフが早期発見を手伝い、適切なサービスへの照会や、地域においてフォローアップを提供できるようにするため、医療サービスにCBRスタッフを教育およびトレーニングするように要求する。
  • 地域保健プログラムと一緒に活動し、障害のある人がこれらのプログラムの恩恵を受けられるようにする。

BOX22 インドネシア

インドネシアにおける啓発

インドネシアの南スラウェシのCBRプログラムは、村の保健ワーカー、小学校の先生、そして多くが障害のある人または家族に障害のある人がいる地域ボランティアなどを含む、多部門のチームを形成している。CBRチームは、保健システムの全レベルの関係者と一緒に定期的な勉強会を実施している。これらの勉強会は、ネットワークづくり、障害のある人の医療ケアニーズの周知、そしてCBRの役割や医療ケアサービスの促進のための、良い機会となっている。