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CBRガイドライン・エンパワメントコンポーネント

自助グループ

はじめに

自助グループは、自分たちの共通の問題について取り組むために集まった非公式なグループである。自助という言葉には個人に焦点を当てるという含みがあるかもしれないが、自助グループの重要な特色・特徴は、お互いに助け合うという相互支援の考えである。自助グループは、その状況や必要に応じ多くの異なる目的に供することができる(15)。例えば、開発部門において自助グループは貧困軽減、人間開発や社会エンパワメント(16)のために効果的な戦略として使われている。そのため、しばしばマイクロクレジット(小規模ローン)や所得創出活動に焦点が当てられる(生計コンポーネント参照)。

過去20年にわたり、自助グループは障害分野でさまざまな形で用いられており、障害のある人とその家族の自助グループは、健康管理、リハビリテーション、教育、マイクロクレジット、社会的運動を始めとする広範囲の活動に携わっている。また、自助グループはエンパワメントを促進することができる。グループや組織に所属することは、障害のある人が自分のコミュニティに参加するための重要な手段の1つである(エンパワメント:障害当事者団体参照)。彼らが意識を高め、変化をもたらすための行動を企画・実行する能力を開発するきっかけとなるのが自助グループへの参加なのである(2)

多くのCBRプログラムが、基本的なセラピーなどの直接的な支援の提供といった個人レベルでの活動に焦点を当てているが、障害のある人やその家族が一緒になって自分たちの問題に取り組み解決するための自助グループを作ることも奨励してもいる。自助グループは、CBRマトリックスの重要な要素であり、障害のある人のインクルージョンと障害のある人による当事者意識という、最近見られるようになったCBRの目標を達成し、また開発過程への参画を高めるための手段となり得る(15)。本要素は、CBRプログラムがどのように新しい自助グループの設立を促すことができるかということに主に焦点を当てているが、CBRプログラムを、主流の自助グループを含む既存の障害のある人とその家族の自助グループと結びつけることについても考える。

BOX13 ベトナム

地雷生存者の自助グループ

「地雷生存者ネットワーク(LSN:Landmine Survivors Network)」は、2003年にベトナムのクアンビン省で活動を始めた。LSNは、そこで地雷生存者のための15の自助グループの立ち上げを支援した。これらの地雷生存者の多くは負傷が原因の身体障害を負っているが、このグループのユニークな点は紛争に関係のない障害のある人も含めていることである。これらのグループの目的は、社会的排除を乗り越え、政策決定過程への参加を促進し、生活の質を改善することで、自己のエンパワメントを促すことである。LSNベトナムの最終ゴールは、それぞれの地域で自助グループを作ることである。

LSNベトナムで働く訪問支援スタッフの多くは障害のある人たちであるが、彼らは自助グループを作ることに関心を示す地方自治体を支援する責任を負う。スタッフは、農民組合、女性団体、退役軍人会のような主要な代表機関や地方自治体と協力関係を育成することから仕事を始める。彼らは、組織を形成しようとするグループのために自助グループの概念についての研修を行ったり、地方自治体に団体の登録をする場合の法律上の手順を教えたり、初回の関係当事者会議を設定したりする。

一度グループが正式に登録され、組織されるとメンバーによって自主的に運営される。訪問支援スタッフは必要とされるところに継続的な支援を提供する。例えば、障害の問題やグループ活動の促進(会議の議事進行方法など)についてグループのメンバーに研修を施す。一方、グループメンバーの仕事は活動の運営である。例えば、障害のある人のための保健サービスについての地方自治体の代表者との話し合い、障害のある人の保健サービスの質やアクセスを改善するための地方自治体との活動、地元のスポーツイベントの開催、全国的なスポーツ大会への参加、保健と治療についてのピア教育の提供、小規模のベンチャー企業や労働機会の創出、地域での障害のある人のイメージ向上などである。自助グループの多くは、ベトナムの「全国障害者の日」の協議事項を設定したり、公式な祝典を指揮したりという責任を負う。

自助グループの果たした最大の成果の1つは、障害のある人のニーズに関して、またそのニーズに対処する上で、障害のある人が重要な役割を果たすことができることについて、地方自治体に影響を与え、意識を高めたことである。次のステップはすべての自助グループを1つの傘下にまとめることである。

目標

障害のある人とその家族が、共通の問題の解決、個人の能力の強化、生活の質の改善のためにグループに参加する。

CBRの役割

CBRの役割は障害のある人とその家族に支援・援助を提供し、新しい自助グループを作ったり、現在あるグループを存続させたりすることである。女性グループやマイクロクレジットのグループなどのような主流のグループがすでにコミュニティ内にある場合、CBRの役割は、そうしたグループに障害のある人とその家族が含まれるよう促すことである。

望ましい成果

  • 障害のある人たちとその家族のために、コミュニティの中に自助グループが存在する。
  • 自助グループのメンバーが、自分たちの家族やコミュニティに貢献する人材となるために知識や技術を向上させる。
  • 障害のある人たちやその家族が、コミュニティの人たちに門戸を開いている主流の自助グループにアクセスできる。
  • 自助グループがCBRを奨励し、そしてメンバーがCBRプログラムの立案や実施に参加するようになる。
  • 自助グループが結束し連合体を作り、自立する。

主要概念

自助グループ

特徴

CBRプログラムと関連する自助グループの共通する特徴は以下のとおりである。

  • 自発的な性格。グループメンバーによってグループメンバーのために運営され、定期的な会合が開かれ、新しいメンバーに対してオープンである(17)
  • 一般的に特定の問題、例えば障害のある子どもが学校に行けないとか、収入の機会がないなどの問題に対応するために形成されている。
  • グループメンバーのニーズに応じた明確なゴールを全メンバーが知っており、共有している(15)
  • 形式張らない組織だが、どのように効果的に一緒に活動すべきかをメンバーに示すための基本的なルール、規則、指針がある。
  • 参加型である。支援を得ること、知識や経験の共有、支援の提供、自助の学び(18)
  • メンバー内での責任の共有。メンバー各人が明確な役割をもち、それぞれが自身のリソースをグループと分かち合う。
  • 民主的な政策決定。
  • メンバーによる統制。グループの設立に必要な場合のみ外部のファシリテーターを使う(15)
  • 時間をかけ少しずつ広範囲の問題に取り組むよう進化する。
  • より広い領域にわたるグループを統合し連合体を結成する可能性がある。

BOX14 ガーナ

自助グループが生計の手段を提供

ガーナのイースタン州、アクアピン南地区コドベダでは、4人の障害のある人が、自らの経済状況を改善するために自助グループを作ることを決めた。村長や長老との会議で、彼らは畜産業を始めるためにメスヤギ3頭の提供を求めた。要望は認められ、ヤギはすぐに子どもを産んだ。子ヤギは他のメンバーに与えられ育てられ、親ヤギはそのまま最初のメンバーの所で飼育された。その親ヤギが再び子どもを産むと、その子ヤギはそのメンバーが育て、親ヤギは売り、そのお金は次のメンバーが別のヤギを買うことに使われた。このプロセスは、メンバー全員がヤギをもち、生計を立てていけるようになるまで続いた。

会員

グループのメンバーはボランティアで報酬がないが、相互の支援を通して自分自身の状況を変えるために組織的・定期的に活動をしている。CBRにおいて、自助グループはたいてい障害のある人たちと彼らの家族で構成されている。こういうグループはたいてい小さく、少ないメンバーで成り立っている。しかし、時とともにグループが成長し、7~30人のメンバーに拡大することもある。少人数のグループだと、討論や政策決定を行う際、すべてのメンバーが効果的に参加することができる。一方、大きいグループは力と影響力で勝る。

促進と指導力

CBRスタッフは、特に新しい自助グループが作られるときに、ファシリテーターの役割を担うことを要求されることがある。CBRスタッフは選ばれたリーダーがそのグループを支配しないようにガイダンスを提供することができる。例えば、少数の人間が利益を乗っ取ることのないようにしたり、やる気を維持したり、グループの機能のあらゆる面に関連するトレーニングを提供したりすることができる(15)。障害のある人のために働く担当者は障害者である必要はないが、差別という体験を共有していることで外部のファシリテーターとグループの間で理解と共感が強まることもあろう。障害のあるファシリテーターは、そのグループの障害のある人のロールモデルにもなり得る。

BOX15 中国

自助グループの奨励

中華人民共和国、チベット自治区のCBRプロジェクトでは、子どもたちのニーズに対応する新しい方法を見出すために、障害のある子どもの親とともに活動している。親たちは、子どもたちに向けられる偏見のある態度や差別的な行為の解決が優先課題であるとみなした。子どもが学校に通うことを妨げ、子どもをコミュニティに連れ出しにくくしていたからである。かつて自助グループの概念について説明を受けていたCBRスタッフは、この親のグループが自助グループを作ることに、潜在的なメリットがあると考えた。

2人の親が自助グループを作ることを決め、障害についての人々の意識を高めることに焦点を置き、活動を開始した。彼らは意識向上のための会合を地元の喫茶店で開いた。親たちが互いを信頼するようになり、同じような経験を共有することでますます打ち解けるにつれ、グループのメンバーは2名から12名に増えた。地域の人たちは肯定的で、少しずつその態度が変わり始め、意識向上のための集まりでは住民の多くが車いすを寄付するなどして支援した。これは大きな励みとなった。障害をもった多くの子どもたちが学校に通い始めるようになり、今では家族も受け入れられ、地域の活動に参加している。

この自助グループはCBRプログラムの支援を受けながら他の活動にも少しずつ携わるようになっていった。グループは喫茶店を開き、その利益は障害者のいる、より貧しい家族に与えられた。CBRプログラムは、最初の助成金を拠出しビジネス研修を提供した。自助グループはまた、低学歴であったり、仕事が忙しかったりといった理由で子どものリハビリテーション計画に従うことが困難な家族を支援するため、そうした家庭を訪問し始めた。CBRプログラムでは子どもの発達を促すための簡単なリハビリテーションについて自助グループのメンバーに研修を施した。そして、CBRスタッフが自助グループの家庭訪問に同行し、ゆっくりと彼らの能力と自信を築き上げていった。この自助グループの成功に刺激され、似たようなグループを作った人たちもいる。

自助グループを設立する上での問題点

自助グループ(地方と都市)

CBRの経験からわかったことは、自助グループの形成は、地方での方がやりやすいということだ。都市部では、人々の出入りが頻繁で、グループメンバー間の信頼や所属意識の構築が困難なため、自助グループの設立はことさら難しい。一方、地方ではメンバーが人里離れているところにいたり、遠距離を移動しなければならなかったり、コミュニケーションの手段に限りがあったりで、定期的に会議をもつことが難しいことに留意するべきである。

女性と男性

一般的に言って、女性グループの方が男性グループよりも設立が容易であることがCBRの経験から言える。女性は他の人と結束する意識が強く、他の人と協力して仕事をする傾向がある。男性も女性もいるグループでは、必ず女性メンバーの代表者がいて、女性の発言にも耳が傾けられ、彼女らの問題が討議されることが重要である。

教育のレベル

自助グループはさまざまな教育レベルのメンバーで構成されている。障害のある人は教育レベルが低い傾向にあり、そのため、社会的に不利な立場に置かれる場合が多い。自助グループの会議は教育レベルの高い人たちが独占しないことが重要であり、マイクロクレジットを主にしている自助グル―プの場合は、利益の不公平な分配がないことが重要である。グループ内で不平等が起きないように、読み書き能力に劣り、発言の少ないメンバーの結束感やエンパワメントの構築のために、グループ形成の初期段階で十分な時間を割く必要がある。

単一障害のグループ

似たような障害のある人たちによって、似たような障害のある人たちのために形成されるグループは多い。単一障害のグループは、その目的が明確・明瞭である一方、特定の障害を1つだけもつ人がほとんどいない小さなコミュニティでは障害種別を超えたグループの方がしばしばより実際的である。障害の種類に関わらず、障害のある人の基本的なニーズ(食べ物、住まい、健康管理、教育など)は同じである。単一障害のグループは、障害のある人たちをしばしば分裂させ、乏しいリソースを求める競争を引き起こす。

依存

障害はしばしば依存関係と関連づけられる。例えば、「障害のある人たちとともに」ではなく、「障害のある人たちのために」何かをするという関係である。その結果、寄与する側ではなく受取る側であることに慣れてしまった障害のある人は、自助グループや活動に参加する意欲や自信が不足していることがある。

推奨される活動

新しい自助グループを形成するための支援の提供

CBRプログラムは、障害のある人たちとその家族の自助グループの形成に積極的な役割を果たす必要がある。自助グループを形成する過程は各地の状況により異なるであろうし、グループにより必要とする支援のレベルもさまざまであろう。推奨される活動の概要を以下に示す。

立ち上げ

CBRスタッフは、通常、障害のある人たちとその家族との活動を、相手の家で始める。彼らのニーズを特定し、障害についての基礎知識、また利用可能な支援の種類についての基礎情報を提供する。時間が経つにつれ信用・信頼度が高まると、障害のある人は似たような経験をもつ他の人と会うことを勧められる。この段階で、CBRスタッフは以下のことができる。

  • 障害のある人たちとその家族に、自助グループの概念についての情報を提供し、彼らのコミュニティでグループを形成することを奨励する。グループのメンバーであることのメリットや、取り組み可能な問題のタイプについても話し合う(例えば、家族を養うために収入を得ることが主な関心事である場合のグループ形成についての心配事など。定職や収入の提供など、どのようにグループが直接的な支援をしてくれるのかを知りたい場合もある)。
  • 障害のある人やその家族が、コミュニティの中でグループ参加に興味のありそうな人を見つけ、話をすることを奨励する。
  • もし興味とやる気が十分にあるならば、アクセスしやすい場所で正式な企画会議を計画する。

計画

  • 共通の関心事について議論し、グループが活動の中心をまず何にするかを決める(例えば、感想や経験を話し合うこと、意識の向上、情報やリソースの交換など)。
  • グループの利益のためにどんなリソースを提供する用意があるかを尋ねる。
  • グループのリーダーやコーディネーターを決める。複数いる方が良い場合もある。
  • なるべく早く仕事を割り当てることで、当事者意識や責任感を育てる。
  • グループに名前をつけることによってグループのアイデンティティを確立する。
  • グループに参加できる人を決める。参加の機会をすべての人に提供するために、初めは小さなグループにする。
  • 会議をもつ頻度を決め、最初の会議の日時を設定する。会議はアクセス可能で、メンバーが住んでいる所からそれほど遠くない場所で開催すること。グループやCBRプログラムの存在が人の目に触れるように、学校のような人々が集う場所で会議をもつようにする。
  • 必要であれば、初回の会議への参加を呼びかけるためにグループをどのように宣伝するかを決める。これは、人と話をしたり、ポスターを掲示したり、地元のラジオ局や新聞で宣伝したりすることを含む。

会議の運営

CBRスタッフは会議運営の責任者にはならないよう奨励されているが、必要なところで支援・援助することができるように、自助グループの会議実施のために基本的な流れを知っておく必要がある。基本的な流れとは以下のようなものである。

  • 会議に到着した人たちを迎える。
  • 会議を開始し、自己紹介をするようにメンバーを促す。
  • 会議中に議論された事、起こった事が外部に知られないようにするため、守秘義務のルールを定める。文化により秘密の解釈が異なることもある。したがって、そのグループが守りたい秘密を決めることが重要である。
  • 会議の主な活動を実行する。
  • 議事録を取り、出席者や主な議題と決定事項を記録する。
  • 事務的事項を扱う(次回の会議の日時など)。
  • 閉会。

手助け

CBRプログラムは、自助グループの中でメンバーが協力的、効果的に活動ができるように手助けする役割を果たさなければならない。例えば以下のことができる。

  • 要請があった時に、グループリーダーのために支援・援助を提供する。
  • 会議の内容を全員が理解しており、全員が参加できるように会議が運営されるようにする。
  • グループ内での役割と責任を持ち回りにするよう促す。
  • どのようにお互いを支援できるかがわかるようにする(仲間との付き合い、学校へ子どもを連れて行くこと、グループ助け合い活動を始めることなど)。
  • グループ活動の利益分配が公平で透明性のある方法でされているかをチェックする。
  • いったんグループが設立された場合、グループのルールや規則の草稿作りを支援する。
  • 財政的援助を提供する(自助グループが活動を広げるための元手やマッチンググラント、銀行口座を開くことなど)。

能力開発

グループはしばしば彼らが効果的に独力で機能を果たすことができるまで、多くの支援と能力開発を必要とする。グループメンバーにとっての重要なスキルには、協議事項の準備、会議の実施、自信をもって人前で話すこと、議事録を取ること、争いごとの解決、問題解決、民主的な政策決定、仕事の委任、進捗状況のモニタリングなどが含まれる。自助グループは特定のスキルを向上することで利益を得ることもあるし、そのスキルがすでにグループ内に存在することもある。自助グループの会議そのものがメンバーにとって新しいスキルを練習する良い機会である。

新しい自助グループは、その地域ですでに設立されているグループから学ぶことができる。新しいグループはその地域内にすでにある自助グループからメンバーを招待することで得るものもある。新しい自助グループは、似たような状況にある先輩たちの経験からもっとも多くを学べる。早い時期に障害のある人の自助グループ間で連絡を取ることは、学ぶこと、将来のつながりや相互援助にとって重要である。

グループは、自分たちのノウハウや能力が不足していると感じ、最初は社会的、政治的な行動に参加することを躊躇するかもしれない。しかし、十分な時間と忍耐と励ましにより、メンバーは彼らの状況を変えるのに必要な活動を理解し、企画し、実施できる自分の能力を発見し始めるであろう(例えば、安全な飲料水や下水設備の改善への第一歩として地方自治体への嘆願書の形でコミュニティを動かすこと)。

BOX16 ドミニカ共和国

母親の自助グループが子どもたちの生活を改善する

障害児の母親のための自助グループが国際非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)の支援によりドミニカ共和国のサンチアゴのスラムで結成された。メンバーの共通の関心事は、子どもたちのためのサービスにアクセスすることであった。保健と教育の両方の分野における子どもたちのニーズへの政府の反応は鈍かった。政府からの支援がないため、母親たちは基本的なリハビリテーションと教育サービスを自分たちで始めることにした。彼らはNGOから研修を受け、やがて、そのサービスを広げ、サンチアゴのスラム地区の他の子どもたちも受け入れるようになった。この自助グループは成長し続け、障害のある思春期の若者向けの支援サービスや回転基金を立ち上げた。母親たちは回転基金の設立と管理に関し、政府の協同組合機関の専門家の援助を求めた。この母親たちのグループは、支援の必要な分野をさらに見つけ出し発展し続けている。今では、社会的イベント、意識向上の催し、所得創出などを手がけている。母親たちはグループの成功を誇りに思い、自分たちの子どもたちの成功を誇りに思っている。

既存の自助グループとのパートナーシップを展開

多くの地域で、障害のある人とその家族のための自助グループは、CBRプログラムとは関係なく、すでに存在し活動している。そのようなグループには、特定の状態や機能障害(視覚障害、聴覚障害、ハンセン病、地雷による負傷など)を抱える人たちのためのグループもあるだろうし、ある特定のテーマや問題(障害のある人の権利、所得創出、女性の問題など)に焦点を当てているグループもあろう。「自助グループ」と同じ意味の他の言葉には、地元の障害者グループ、親のグループ、社会的グループ、ピアグループ、クラブ、相互援助グループなどがある。

こうしたグループと、CBRプログラムによって開始された自助グループの目的はしばしば似ている。したがって、CBRプログラムとしては、その地域にある既存のグループを探し出し、連絡を取り、知識やリソース源を共有するための連携強化に向けて活動し、より多くの障害のある人およびその家族に確実に接触することが重要である。

主流の自助グループに障害のある人たちのインクルージョンを促す

障害のある人たちとその家族に限定した自助グループは重要な役割を担ってはいるが、一方でCBRプログラムは、障害のある人たちとその家族が主流の自助グループのメンバーになるよう奨励すべきである(例えば、女性グループ、青年グループ、マイクロクレジットグループ、農家グループなど)。それには以下の活動が推奨される。

  • 主流の自助グループが障害のある人たちを、他の人たちと平等の権利をもつ正会員として含めるように奨励する。その際、会合は障害のある人たちがアクセスしやすい場所で行う。
  • 障害のある人たちもない人たちも直面する共通の問題に焦点を当てる。例えば、女性グループではジェンダー差別についての議論を促進し、どのようにこの問題をすべての女性と共有するかに焦点を当てる。このことで、主流の自助グループが障害のある人の自助グループと提携して活動しようと思うようになるかもしれないし、自分たちのグループに障害のある人を入れようという気持ちになるかもしれない。
  • 障害のある人や家族に障害者のいる人で主流の自助グループにすでに所属している人を見つける。そして、彼らが直面している問題について話をすることを促し、自助グループの会議・討論の議題に「障害」を組み込むよう促す。
  • 障害のある人やその家族が主流の自助グループとつながりをもつ前に、必ず必要な技能や知識をもっていることを確認すること。ない場合は、差別の対象になりやすい。

自助グループのメンバーがCBRプログラムに参加するよう奨励する

自助グループメンバーは(障害に特化したグループでも主流の自助グループでも)CBRプログラムの重要なリソースとなる可能性がある。したがって、彼らはCBRについてよく知っている必要がある。自助グループは、障害やインクルーシブな開発の促進について意識を喚起する重要な役割を果たすことができる。自助グループメンバーは自分の時間を自発的に使い、地域の障害のある人たちを見つけ出したり、リハビリテーション活動を行っている人々を支援したり、フォローアップ活動をすることによってCBR活動に貢献することができる。障害に特化した自助グループは、CBRプログラムの中でより大きな役割を徐々に果たすことが特に奨励されるべきである。彼らがCBRプログラムの運営(計画、実施、モニタリング)に参画することで、プログラムをより適切で、信頼度の高い、持続可能なものにすることができる。

自助グループの合同を奨励する

障害のある人たちとその家族の自助グループは、地方レベルでは変革をもたらすことができるかもしれないが、より高いレベルに変化をもたらす能力は限られている。メンバーの数が多くなればそれだけ変化をもたらすことも期待できるというものだ。したがって、次のステップは自助グループ(CBRプログラムによって始められたグループと、独立して存在するグループの両方)が1つの傘下で団結するよう勧めることである。これを一般的に連盟という。CBRプログラムはそれぞれの自助グループから選ばれた代表者1、2名を結集することで、自助グループ連盟の形成を促すことができる。自助グループ連盟はさまざまなグループの人たち(年齢、機能障害、性別、社会経済状態など)が平等に代表されることを保証する必要がある。自助グループ連盟はまた、より大きな責任をもち、いつか、独自に1つの正式な組織になる可能性もある。

BOX17 バングラデシュ

数の強さ

アズガーはバングラデシュのベルガチ自助グループの最初のメンバーの1人である。彼は熱心で勤勉なので選挙で代表者になった。今日、メンバーは21名おり、問題と解決策を話し合うために毎週会合をもっている。アズガーは身体障害があることに加え、耕地へのアクセスが悪かったため、普段は毎月10~12日だけしか仕事ができず、家族を養うことがとても難しかった。そこで彼は近くの未開墾地で農業をする許可を役所に申し込んだ。村人の中には申請に反対する人もいたが、自助グループは支援し続けた。アズガーに1エーカーの土地が与えられると、あるNGOが彼に農業技術の研修を授けた。アズガーは今では野菜の栽培・販売をしており、そのおかげで家族の生活水準は向上した。アズガーは自助グループのポルダ連盟の選挙に立候補し、副代表に選出された。彼は未開墾地の小区画を連盟に割り当てるよう、政府官僚を説得し、竹を集めて会議場を建てるよう連盟のメンバーを動かした。彼は、障害のある人たちの権利を確立し、地域がきちんと障害のある人を受け入れるようにするため、今後も活動を行っていく。