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CBRガイドライン・補足

CBRと精神保健

はじめに

精神保健とは、人が自分自身の能力に気づき、日常生活でのストレスに対処でき、生産的で充実した仕事ができ、地域社会に貢献できるウェルビーイングの状態をいう(1)。精神保健は全般的な健康とは切り離せないものであり、個人、家族、地域、社会のウェルビーイングや機能に欠かすことができない(保健コンポーネント参照)。

精神保健は開発課題や社会一般にとって優先度が低い。広く浸透しているスティグマ、偏見や差別とともに、精神保健の問題に関する知識の欠如が存在している。すべての地域社会に、精神保健上の問題がある人たちは暮らしていて、たいてい孤立し、虐待を受け、基本的人権を剥奪されている。障害者権利条約(2)では、障害者には精神保健上の問題をもつ人も含まれており、(i)「全ての人権及び基本的自由を完全かつ平等に享有すること」と、(ii)「市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的分野に均等な機会により参加することを促進すること」の必要性を強調している。

精神保健上の問題がある人は、低所得国では特にサポートや保健サービスへのアクセスが非常に限られており、CBRプログラムからも排除されてきた。しかしながら、慢性の統合失調症をもつ人のためのインド農村部でのあるCBRプログラムの評価によると、CBRプログラムは特にリソースの乏しい条件下で、精神保健上の問題がある人たちに対して前向きな成果を上げることができる(3)

このCBRガイドラインは、精神保健上の問題がある人を含む、すべての障害のある人に関連する。精神保健上の問題がある人に影響を与えている問題の多くは、他の機能障害のある人に影響を与えている問題と同様であるので、他のコンポーネントも参照しなくてはならない。しかし、多くのCBRプログラムではこの分野の経験が限られていると認識されているため、このセクションは精神保健上の問題がある人たちのCBR活動へのインクルージョンに関する補足的ガイダンスを提供する。

精神保健上の問題がある人に関する言葉は混乱を招くことがある。というのも、多くの異なる用語が使われるからである。例えば、精神疾患、重い精神疾患、精神障害、精神的欠陥、精神病、行動障害、狂気、精神的に健康でない、精神医療ユーザー・サバイバー、心理社会的障害など。このガイドラインでは、「精神保健上の問題がある人」を使うこととする。なぜなら、それが理解しやすく、翻訳もしやすく、慢性的うつ状態、統合失調症、双極性障害、薬物乱用障害が含まれるからである。

BOX1

こころん

2002年、こころんは日本の福島県にて村長、地域精神保健の専門家、地域住民によって、NPOとして設立された。こころんという名称は、心という意味からきており、公募で決まった。こころんは地域開発に焦点を当て、貧困がその地域の課題の1つであることを取り上げ、地域全体を発展させ支えることで、障害のある人とない人が平等の権利と安全、尊厳をもって暮らせるようにすることを目的とした。

始めの段階でこころんは、3年間にわたるワークショップの連続開催によって、地域住民、スタッフ、理事の意識向上と能力開発を行った。地方行政や地域社会の支援を得て、これらのワークショップのリソースパースンは異なる開発分野から招かれた。

その後、こころんは地域の中で多くの収入創出活動の設立に取り組んだ。付近の地域の主な収入源は農業なので、こころんは農業に関連した活動を行うことにした。「こころや」というカフェ・直売店をオープンし、そこで地元の野菜、きのこ、果物、日本酒などを販売し、ランチとスィーツを出している。こころやはまもなく、特に新聞やテレビで紹介されてから、地元の人が集まる場所になった。

2004年3月、こころんは泉崎村にコミュニティセンターをオープンし、精神保健上の問題がある人のための支援を行うようになった。こころんでは、障害のある人たち、中でも精神保健上の問題がある人たちが主流の開発から周縁化されていることに気づいたのである。こころんは精神保健上の問題がある人とその家族のために、カウンセリングサービス、住居提供、仕事に就くための教育、研修と支援など多くのサポートを始めた。

今や多くの精神保健上の問題がある人たちがこころんのさまざまな所得創出活動に組み入れられ、こころやの主要な働き手となっている。また、それ以外の地域内の仕事にも就くようになった。その結果彼らの生活は一変した。精神科施設で暮らす社会的孤立から解き放たれ、歓迎され適応できる環境で働けるようになり、健康と社会経済的状況が改善され、今や満足感と自立心を感じている。

こころんは障害のある人、特に精神保健上の問題がある人が地域社会の不可欠で切り離せない一部となっている、地域に根ざしたインクルーシブ開発(CBID:Community-based Inclusive Development)の好事例である。

目標

精神保健上の問題がある人が、地域生活のあらゆる面でインクルージョンと参加が可能となるように支援される。

CBRの役割

CBRプログラムの役割は、精神保健上の問題がある人の権利を促進・擁護し、リカバリーを支援し、家族および地域への参加とインクルージョンを促すことである。CBRはまた精神保健上の問題の原因の予防に貢献し、地域のすべての人の精神保健を促進する。

望ましい成果

  • 精神的な健康がすべての地域住民によって価値あるものとみなされ、地域開発にとって必要なことであると認識される。
  • 精神保健上の問題がある人がCBRプログラムに含まれる。
  • 地域社会のメンタルヘルスに関する認識が高まり、精神保健上の問題がある人に関わるスティグマや差別が減る。
  • 精神保健上の問題がある人が、リカバリーのプロセスを支援する、医療的、心理的、社会的、経済的介入を利用できるようになる。
  • 家族が精神的および実際的な支援を受ける。
  • 精神保健上の問題がある人がエンパワーされ、よりインクルージョンが進み、家庭生活と地域生活に参加する。

BOX2 インド

CBRに地域社会を巻き込む

インド農村部の非常に不便な地域で、チャタジーと同僚らは(3)、CBRの原則、具体的には地域リソースの活用と精神保健上の問題がある人たちとその家族・地域社会を巻き込むという指針を、精神保健の専門サービスを補完する形に修正し、専門的な介入の利用、平等性、受け入れやすさを改善した。

地域住民は、包括的で、家庭でできるサービスを提供するため、CBRワーカーとしてのトレーニングを受けた。例えば、慢性的な統合失調症の人を発見したり、訪問クリニックの臨床チームの利用を確実にしたり、定期的フォローアップやモニタリング、本人と家族の教育、リハビリテーション介入の計画作りをするためのトレーニングである。

さらに、意識を向上させ、スティグマに取り組み、経済的・社会的リハビリテーションを促進することに一丸となって努力した。ほとんどの村では精神保健上の問題がある人の家族やその他の関係者が自助グループをつくり、重い精神保健上の問題がある地域のメンバーが社会的・経済的に復帰できるよう促進している。

CBRプログラム利用者の臨床および障害に関する成果は、外来サービスのみの利用者よりも良好であった。このサービス提供のアプローチは、利用者のエンパワメント、地域にある既存リソースの動員、セクター間の連携(福祉、地方行政、保健セクター)および人権の視点に焦点を当てていた。

CBRプログラムの成功は、地方政府の保健委員会を刺激し、地方政府は非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)と協力して、プログラムの地域全体への拡大を目的として、精神保健サービスを計画と予算に組み込むことにした(4)

主要概念

精神保健と地域開発

精神保健上の問題には貧困がつきまとう(導入と保健コンポーネント参照)―それは原因であり結果でもある。貧困にあえぐ人々と地域社会は、環境的・心理的ストレス(例えば暴力、リソースへの限られたアクセス、失業、社会的排除、不安)の重い負担に直面しており、精神保健上の問題のリスクが高い(5)。 貧困はすでにある精神保健上の問題を悪化させ、絶望と無力の感情を増幅させる。また、精神保健上の問題がある人は教育、雇用、住居とインクルージョンに対する障壁に遭遇しがちであるため貧困に直面し、逃れることの困難な悪循環に陥っている。

地域開発および経済開発は精神保健の回復と向上に役立てられる。貧困削減、経済的自立の達成、女性のエンパワメント、栄養不良の削減、識字率の向上と教育の普及や弱い立場に置かれた人をエンパワーすることを目的とする地域開発プログラムは、精神保健の促進と精神保健上の問題の予防に貢献するであろう(5)。精神的健康を謳歌する人々のいる地域社会は、自分たちの問題を解決し、社会的ネットワークを確立し、相互支援を推進する力がより備わっている。CBRは地域開発の一環として、すべての地域住民のメンタルヘルスに関するニーズを考慮し、そのプロセスに地域社会の指導者や住民を巻き込まなければならない。精神保健上の問題がある人も、地域社会の開発に貢献できるのである。

精神保健上の問題についてのよくある迷信

精神保健上の問題については社会の中に大変な理解不足があり、多くの迷信を作り上げている。よくある迷信には次のようなものがある。

  • 精神保健上の問題はよくあることではない。実際は、精神保健上の問題はすべての年齢、地域、国、社会で見られる。約4億5千万人が精神保健上の問題をもっていると考えられ、4人に1人が人生のいずれかの段階で影響を受けると推定されている(6)
  • 精神保健上の問題がある人、特に統合失調症などの精神病の人は、地域で暮らすことが許されたとしたら、暴力的で他の人の安全を脅かす。実際、大多数の精神保健上の問題がある人は暴力的ではない。精神保健上の問題が暴力リスクの増大につながる人の割合は少ない(6)(7)。しばしば暴力リスクの増大は、例えば、薬物乱用や生い立ち、生活環境からのストレスのような付属的な要因に関連している(8)。精神病を経験している人たちは、暴力的というより、しばしばおびえて混乱し、絶望した状態にある。
  • 精神保健上の問題は治療が難しく、良くならない。実際は精神保健上の問題に対して、多くの効果のある介入があり、完全に回復するか、症状をコントロールできるようになる。
  • 精神保健上の問題は性格の弱さからもたらされる。実際は、精神保健上の問題は生物学的、心理学的、社会的要因の産物である。

スティグマと差別

精神保健上の問題がある人のスティグマと差別は広がっており、個人的、家や家庭生活、仕事、さらに基本的な生活水準を維持する能力にまで影響する。精神保健上の問題がある人は、しばしばスティグマや差別を、病気や障害そのものよりひどいと言い表すことがある。精神保健上の問題がある人の家族もまた、理解が不足し偏見に満ちた態度や差別的な振る舞いにさらされる(7)

スティグマはセルフスティグマにつながる。それは精神保健上の問題がある人とその家族が自分たちの中に社会的スティグマを取り込んでしまうことであり(9)、他人の言うことやどう思っているかを実際に信じ始めてしまい、多くの場合自分を責めたり自信をなくしたりすることにつながる。

スティグマにより拒否されることへの懸念は、多くの人を社会的ネットワークへの参加や人生での機会を生かすことから遠ざけることになる。こうしたことが孤独につながり、失業または低所得に転じることにもなる(9)。差別の経験や差別への懸念は、多くの人が精神保健上の問題を隠し、助けを求めない主な理由である。

人権

多くの国で精神保健上の問題がある人たちは日常的に人権侵害を被っている。このような人権侵害は精神病院での不適切でひどいケアや扱い、また不衛生で人間が住めるようなものではない生活環境などにしばしば見られる。社会の中でも人権侵害に出会うが、精神保健上の問題がある人は市民としての自由の権利を行使できず、教育、雇用機会、住宅の利用も限られている。

精神保健上の問題がある人たちを含むすべての人には人権がある。世界人権宣言など、あらゆる国際人権条約は精神保健上の問題がある人たちに適用され、彼らの人権は平等と非差別の原則を通じて護られている(7)。さらに、障害者権利条約など、精神保健上の問題がある人たちに適用される特定の人権条約もある(2)

国際人権規約が精神保健上の問題がある人たちに確実に適用されるためには国の政策や法律が必要とされる一方で、すべての地域社会が今にも行動を起こし、精神保健上の問題がある人たちの生活と福祉の保護・推進・改善に向かって動くことができる。

保健

精神保健上の問題がある人たちは専門的な医療や一般的な医療の利用を必要とすることがある。

精神保健上の問題のために

精神保健上の問題がある人のリカバリーを促進するための、医療による介入はいくつもある。医学的介入には向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定剤)の処方と関連する身体症状の治療が含まれる。また心理的介入には次のうちの1つかそれ以上が含まれる。病状と治療の選択肢に関する指導、カウンセリング、個人またはグループに対する心理療法、そして家族介入である。

多くの文化において、精神保健の概念には、宗教的、スピリチュアルなことや超自然現象への信仰が含まれる。そのため、宗教指導者や伝統的な治療師がしばしば真っ先に相談を受けることになる。伝統的な治療師の実践、例えば特定の慣行が非常に多様であることを知っておくことは重要である。害になる治療法もあれば、害にならない治療法もあるだろう。保健には、地域の伝統的な治療法への配慮、経験の交流、そして相互理解を深めるような、その土地の文化に敏感に対応するアプローチが必要である。

BOX3 ガーナ

伝統的な治療師との協働

ガーナでは、精神保健上の問題がある人の75パーセントが最初の段階で伝統的な治療師に相談している。したがって伝統的な治療師と協働することは、精神保健上の問題がある人とその家族のウェルビーイングのために重要である。ベーシックニーズガーナ(BasicNeeds Ghana)というNGOは、ガーナの精神保健の状況における望ましい変化や進展を確実にするために、伝統的な治療師と協働している。このNGOは伝統的治療師協会(Traditional Healers Association)のフォーラムを主催し、リカバリーを含む、精神保健のさまざまな課題に関するトレーニングやオリエンテーションを行っている。

精神保健のための効果的な介入は明らかになってきたが、専門的な保健医療の提供は大変限られている。低・中所得国では、精神科医、精神科専門看護師、心理士、ソーシャルワーカーの不足が、治療や医療の提供を阻む主な障壁である(11)。もし提供されていたとしても薬や専門家にかかる費用が高額であり、低所得国の人々には利用が難しい。

精神保健上の問題がある人たちのための医療が利用可能であっても、しばしばその内容は不適切である。身体拘束、隔離、基本的ニーズやプライバシーの否定など、精神疾患患者の人権侵害は多くの国で日常的に報告されている(11)。精神保健上の問題がある人の多くは、意思に反して精神病院へ入れられるのではないかと恐れて、診察を受けたがらない(12)。精神保健サービスのユーザー・サバイバーは、しばしば精神保健の専門家によって見下され、辱められていると感じている。つまり、精神保健サービスのユーザー・サバイバーは、しばしば彼ら自身の状態に関する情報を得られず、自分の人生に責任をもつことや意思決定を行うということができないと思われている。

一般医療

精神保健上の問題のある人は多くが一般の人よりも身体的な病気になる率が高い。彼らは肥満や高血圧、糖尿病など重大な健康問題を抱える傾向にある(13)。統合失調症の人は心血管疾患の罹患率と死亡率が一般の人よりも高いことが示されており、感染症、呼吸器疾患、ある種の癌やHIVに罹ることも多い。その理由には、精神保健上の問題に特化した問題(薬の副作用を含む)や喫煙・運動不足といった健康に関わる行動、そして保健システムなどに関連した要因が考えられる(14)

精神保健上の問題があるある人たちのための医療へのアクセスの制限は世界的現象であり、その結果、深刻な健康リスクと重大な健康問題の可能性の拡大につながっている。医療へのアクセスがしにくい理由は複雑だが、社会的剥奪、物理的アクセスの困難、身体疾患の過小診断、モニタリングを伴わない治療、保健サービスの管理の悪さなどが含まれる。

リカバリー

リカバリーは精神保健上の問題を直接経験している人たちから持ち上がった概念である(15)。リカバリーに万人共通の定義はなく、人によって意味の異なる個人的なプロセスである。多くの保健専門家は、リカバリーを治癒と考えているが、リカバリーの概念は治癒を超えたものであり、生活機能のあらゆる側面を含んでいる。リカバリーは、苦痛や排除を超えた個人的な成長と変容のプロセスである。それは個人の強みと能力を強化し、充実した満足感のある人生を送る能力を身につけ、エンパワーされるプロセスである。精神保健上の問題がある人たちはリカバリーについて、人生の楽しみを謳歌すること、個人的な夢や目標を追い求めること、実りある人間関係を育むこと、症状や後退があるにせよ、精神保健上の問題に対処する方法を学ぶこと、再発を減らすこと、症状をなくすこと、病院の外で暮らすこと、仕事を得ることなどと表現するだろう(7)

BOX4

リカバリーの個人的な話

私にとって、リカバリーした状態にあるということは、心が安らぎ、幸せを感じ、この世界で他の人たちといることに心地よさを感じることであり、将来に希望を感じることである。より良い人間になるため、あらゆる否定的な経験を活かすことである。自分が誰であるか、何を感じるかを恐れないことを意味する。また、人生における前向きなリスクをとることができることである。現在に生きることを恐れないことでもある。自分が何者であるかを知り、あるがままでいられることである(16)

精神保健に関する特定の課題

子どもと青年

大人と同じように、子どもと青年も精神保健上の問題を経験する。しかし彼らの問題は広く無視されるか、または知的障害と誤診される。世界の子どもと青年の20パーセントに精神保健上の問題があるとされ、文化を超えて同様の問題が報告されている(17)。子どもと青年の精神保健に関心が注がれないと、人生の長きにわたり影響を及ぼすことになる。

子どもと青年の精神保健の状況は家族や社会的・文化的な環境に影響される。貧困、暴力、身体的・性的暴力、ネグレクト、刺激の不足などが影響を与える。母親の精神保健上の問題と子どもの認知的・社会的・情緒的発達との間には関連性があるという証拠がある(18)。精神保健上の問題がある親の面倒をみる子どももまた、十分に注目されず、世話をしてもらえない。一方、多くの場合本人の能力を超えた親への責任を担ってしまうため、脆弱な立場にも置かれてしまう。

子どもと青年の精神保健上の問題に取り組むことは重要であるが、過剰診断や、この時期の通常の生活や発達に見られる問題に精神科的なラベルをつけるようなことがないよう、慎重さも必要である。というのは、このようなことは子どもと家族の両方にマイナスの影響をもたらすからである。

ジェンダー

精神保健上の問題の発生率全体では男性と女性とほぼ同数だが、特定の障害については男女の差がある。例えば女性は、不安やうつ病など一般的な精神保健上の問題を経験しやすいが、男性はアルコール依存症により多くなりがちで(19)、自殺者も多い。

一般的な精神保健上の問題には、女性に偏って影響を及ぼす、ジェンダー特異的な要因がある。多くの社会で女性の社会的地位は男性より低く、そのため従順な態度と劣等感や自尊心の低下、絶望的な感情を引き起こし、必要なストレス対処技能が奪われる。女性は一般的に男性より力が弱く、リソースへのアクセスが少なく、人生のコントロールができにくい状態に置かれている。ジェンダーに根差した女性に対する身体的、性的暴力は屈辱と服従と身動きができない気持ちを引き起こす。性的虐待は精神保健上の問題のある女性には非常に多い。しかも保健サービスとの関わりにおいて、男性にくらべ大きな差別を経験する。

危機的状況

危機的状況の後では、生存者の精神保健上のニーズに配慮すべきである。というのは、戦争やその他の大きな災害は精神保健上の問題の増大につながるからである(11)。しばしば既存のリソースだけでは不十分で、深刻なトラウマが生じるような出来事への対処に必要な時間は、実際より短く考えられることが多い。トラウマが関連する精神保健上の問題がある人には押しつけがましくない精神的サポートを前向きな対処方法の教育と促進が必要である。

精神保健上の問題がすでにある人を含む、障害のある人のグループの中には、危機的状況の後に社会的または精神的な問題の起きるリスクがより高いグループも存在する(20)。精神保健上の問題がある人は、孤立、スティグマ、恐れ、自身によるネグレクト、障害やアクセスの不十分さにより、危機的状況の間、支援を求めないこともある。それまで支えになっていた社会的支援は、危機の直接の結果により、失われるかもしれないし、あるいは、増加したケアの負担による家族のストレスによって、放棄されるリスクが増えるかもしれない(20)。CBRプログラムでは、危機的状況の間、精神保健上の問題がある人たちに焦点を当てることが重要である。というのは、特別な注意なしでは、精神保健上の問題がある人たちは忘れられ、無視されてしまうからである(補足:CBRと人道上の危機参照)。

推奨される活動

精神保健の促進

精神保健を促進するにあたり、貧困、暴力、ネグレクト、性的虐待などの文化・社会経済・政治的な決定要因は、関連セクターと協力して取り組まれる。CBRはそれぞれのコミュニティにおいて次のように精神保健を促進することができる。

  • 精神保健上の問題がある人たちを含むすべての人の基本的人権を尊重し擁護する、インクルーシブな環境を作り出す。
  • アルコール・薬物依存、性差別、コミュニティ内および家庭内暴力を防止するためのコミュニティネットワークを強化し、連帯責任を奨励する。
  • 精神保健や福祉に関わるその他の関係者とのパートナーシップを構築する。例えば、ジェンダーに関して活動する女性クラブや子どもの早期介入に焦点を当てて活動する地方のNGOなど。
  • 小児期発達の強化のため、保護者とその子どもの良い相互作用を促進する。
  • 薬物乱用と暴力の防止を促進するため、学生の社会的・感情的能力を強化するような、エビデンスに基づくプログラムを学校で推進する。
  • 精神保健上の問題がある人の否定的なイメージを変えるようメディアと協働する。

保健:健康増進参照)

BOX5 ジャマイカ

良い相互作用の促進

社会的に不利な状態に置かれた母親たちによる幼児への早期刺激を支援する、ジャマイカの定期的な家庭訪問プログラムが、青年の精神保健において自尊心の強化、中途退学や反社会的態度の減少といった長期的な効果を示している。

CBRプログラムにおけるインクルージョンの促進

次の活動は、CBRプログラムの精神保健上の問題がある人のインクルージョンを促進するために提案される。

  • CBRスタッフが精神保健に関する綿密なトレーニングを受け、精神保健上の問題がある人たちのインクルージョンと支援に前向きな態度をもつようにする。
  • CBRプログラムの計画、実施、モニタリングにおいて、精神保健上の問題がある人とその家族に相談し参加してもらう。
  • 保健サービス、教育、生計、社会保障などの基本的ニーズの充足について、精神保健上の問題がある人やその家族と連携し、障壁および可能な解決策を明らかにする。
  • CBRの人材研修にリソースパーソンとして関与可能な精神保健分野の人材、精神保健サービスユーザーやその家族を明らかにする。

地域におけるスティグマと差別の克服

精神保健上の問題とリカバリーの可能性に関する一般的知識は非常に乏しい。精神保健上の問題がある人たちが社会に積極的に参加できるようにするためには、一般的な迷信、偏見、差別に取り組まなくてはならない。CBRプログラムはそのために主要な役割を果たすことができる。推奨される活動は次のとおりである。

  • CBRスタッフがいかなるときも尊厳と敬意をもって人々に接するようにする。
  • 精神保健について前向きなメッセージとイメージを伝えることでCBRプログラムを支援できる地域のキーパーソンを見出す。その中には、地域の政治的・宗教的指導者のような影響力のある人々も含まれる。
  • 見出したキーパーソンにコンタクトをとり、地域内の精神保健上の問題に関する情報を伝える。例えば、CBRプログラムが開催するイベントに来賓として招待する。
  • キーパーソンが、精神保健上の問題についての鍵となるメッセージを伝える方法を話し合う。例えば、宗教指導者が信者に話をする時に伝えるなど。
  • 地域の住民やグループの中で精神保健上の問題がある人にもっともコンタクトする可能性があり、そして否定的な見方や態度をとりがちな人を特定する。例えば、警察官、保健ケアスタッフ、伝統的治療師など。
  • 地域の住民やグループに教育やトレーニングを提供する準備を行う。精神保健上の問題に関する迷信(例えば、精神保健上の問題がある人は暴力的であるなど)を一掃するための正確な情報を伝える。そして、有効な介入があることを人々に気づいてもらう。例えば、精神保健上の問題からの回復を可能にする医学的・心理学的介入など。
  • 人権を推進し、場合によっては、地域内で起こった精神保健上の問題がある人とその家族への差別に取り組む。ロールモデルとして良い行動を示す。

BOX6

個人的なコンタクトを通して精神保健に関する考えを変える

精神保健上の問題がある人と一般市民とが個人的に直接関わることは否定的な態度を変えるために大変有効であることが知られている。精神保健上の問題がある人たちを、地域住民や学生との会合に誘い、精神保健上の問題の経験を語ってもらえるようにすると良い。精神保健上の問題を克服し、家庭や職場や地域でやりがいのある役割をもつようになった人たちは差別と闘うパワフルな権利擁護者になる。

リカバリーのプロセスへの支援

リカバリーは、人々の強みと実りある満足な人生を送るための能力に焦点を当てる。リカバリーのプロセスは包括的であり、医学的・心理的・社会的・経済的介入の連携を必要とするだろう。

医療の利用の促進

低所得国の精神保健上の問題がある人たちは、貧困や距離の問題や専門サービスの欠乏によって医療の利用が難しい。CBRプログラムでは、専門医療および一般医療の利用を促進するため、プライマリーヘルスケアシステムおよび地方にある既存の精神保健のリソースと協働することが必要である。次のような活動が推奨される。

  • 専門的な精神保健ケアの既存の仕組み、所在地、人員とリソースを確認する。例えば、クリニック、病院、入所施設、コミュニティセンター、NGOなど。この活動は地域、地方、国家のレベルで行うことができる。
  • 精神保健サービス機関を訪ね、良い関係性を構築する。サービス内容(向精神薬治療の利用可能性を含む)、政策、照会の仕組み、診療時間と医療費などについて質問したり、CBRに関する情報やCBRが彼らの業務にどう協力できるかを伝えたりすることで情報交換を保証する。
  • 地域内の伝統的な治療師と宗教指導者のリストを作成し、経験交流のため訪問し、考えを共有し、相互理解と尊重を発展させる。
  • CBRとプライマリーヘルスケアスタッフが必要に応じて精神保健の専門家への照会の促進ができることを保証する。要請に応じて研修を提供する。
  • 精神保健上の問題がある人とその家族が向精神薬の副作用についての情報を与え、その情報を理解していることを確認する。
  • 精神保健上の問題がある人を支援するリソースの1つとして、保健スタッフと伝統的な治療師の連携を推進する。
  • プライマリーヘルスケアワーカーの意識を向上し関連情報を提供することで、精神保健上の問題がある人たちがプライマリーヘルスケアシステムを通して一般ヘルスケアを利用することを支援する。
  • 地域精神保健プログラムが存在するところでは、パートナーシップを構築し業務連携を推進する。つまり、地域精神保健プログラムが保健・医療ニーズに取り組む一方で、CBRプログラムは、例えば生計機会のような、その他のニーズに取り組むことができる(保健:医療参照)。

BOX7

精神保健へのホリスティックアプローチ

ベリーズでは、精神保健分野で働く看護師が知識とスキルを共有するため、伝統的な治療師に会っている。看護師たちは地域の伝統的な治療師との関係性を発展させることは地域の精神保健のニーズを満たすために有効であることを発見した。慣習的、および伝統的なアプローチはいずれも精神保健ケアへのホリスティックアプローチを確実にするものとして認められている。

心理的支援の利用の促進

低所得国では、専門的な心理的支援の利用が非常に限られているだろう。しかしながら基本的な介入はCBRスタッフによって行われうる。推奨される活動は次のとおりである。

  • 基本的な心のケアについてCBRやプライマリーヘルスケアスタッフのためのトレーニングを企画または提供する。このトレーニングは文化に配慮したものであるべきであり、情緒的支援(基礎的カウンセリング技能)、安心や情報を与えることやリラクゼーションの手法も含まれる。
  • オープンなコミュニケーションと信頼に基づいて、精神保健上の問題がある人やその家族との間に良い関係を築く。精神保健上の問題がある人と家族を定期的に訪問し、話を聴く時間をとりながら、彼らがどのように感じ、どう対処しようとしているのかを尋ねる。
  • 問題の解決やストレスの管理や対処技能の向上のための支援を提供しながら、精神保健上の問題がある人たちと密に連携する。
  • 伝統的な治療師やスピリチュアルリーダーがどのような心理的介入を精神保健上の問題がある人やその家族に提供できるか、そしてこの支援の最善の利用方法を見出す。
  • 精神保健上の問題がある人やその家族の自助グループの設立を奨励し、相互協力とエンパワメントを可能にする。自助グループが地域にすでにあるなら、適切な場面で精神保健上の問題がある人のインクルージョンを促進する。

社会的支援の利用の促進

CBRプログラムは次のような方法で社会的支援の利用を促進することができる。

  • 地域内で利用可能な関連する社会的サービスを確認する。
  • 精神保健上の問題のある人やその家族とともに、社会的ニーズを確認し、可能な解決の計画を立てる。
  • 家族とともに精神保健上の問題がある人の権利に取り組み、基本的ニーズ(食べ物、衛生、衣料、住まいなど)を満たせるようにする。
  • 精神保健上の問題がある人が毎日の家庭での活動に加わる方法を家族に提案する。
  • 親戚や友人とのつきあいを続け、必要な場合は関係性を再構築できるよう精神保健上の問題がある人とその家族を励ます。精神保健上の問題について親戚や友人を教育する手助けを行うことは必要であろう。
  • 地域社会で精神保健上の問題がある人とその家族が参加できる活動を見出す。自信をほとんどなくし、明らかな障壁のある場合は彼らがコミュニティに入っていくのに同行することが必要となるだろう。
  • 社会的支援ネットワークをもたず、路上で暮らし、深刻なスティグマに見舞われている人たちと定期的なコンタクトをとる。
  • 精神保健上の問題がある人のニーズ(例えば、食糧、まっとうな住まいや住居、教育と雇用など)が確実に満たされるよう異なる開発分野とのパートナーシップを育てる。
  • 費用面で医療の利用が困難である場合にはそれを克服する方法を探す(社会コンポーネント参照)。

生計機会へのアクセスの促進

生計活動への参加はリカバリーのプロセスの重要な一部分である。収入を創出するだけではなく、生計への機会は、自立、自律、自信回復、社会ネットワークの構築、価値ある社会的地位、自分の人生を管理することを促進する。生計の機会の利用を増やすために推奨される活動には次のことが含まれる。

  • 所得創出に焦点を当てた地域内の開発の取組を見出す。それらにコンタクトをとり、精神保健上の問題がある人を受け入れる能力をもてるようにするために連携する。
  • 精神保健上の問題がある人が地域で利用可能な生計機会が他にもないか確認する。例えば、以前の職場に復帰できるように支援する、あるいは精神保健上の問題がある人を雇用するのに前向きな地方の企業とコンタクトをとる。
  • 以前の職場に復帰できる場合、労働環境の必要な調整のため雇用主に働きかける。例えば集中することや騒音に敏感であることが問題の場合は、静かな作業スペースの提供するよう助言したり、フレキシブルな労働時間や労働時間を徐々に増やしたりすることを薦める。
  • 国の関連法律を参照しながら、障害のある人のための法的義務を雇用主に伝える

(生計コンポ―ネント参照)。

BOX8 タンザニア

生きがいのある生活を送る

タンザニアにあるムトワラ精神病院は、精神保健上の問題がある人が地域内で利用しやすく、手ごろな価格で一貫した治療を受けられるよう、5つの地区の保健局との協働を開始した。

パイロットプロジェクトの第1フェーズでは1,026人が家から歩いて行けるところで治療を受けられ、その後、その人数は4,711人にまで増加した。治療と心理社会的な支援の利用は多くの精神保健上の問題がある人たちの生活の質を向上させた。彼らの生活はより安定したものとなった。多くの者が元の職場に復帰し、また地域内で新たな仕事に就く者もいた。プログラムマネージャーによると「精神保健上の問題がある人が、症状から解放され、意義のある活動に参加し始めると、直ちに社会の彼らに対する態度も変化する。このことは施設アプローチよりコミュニティアプローチの方が比較優位にあることを示している」

家族を支援する

低所得国では家族はもっとも重要な精神保健のリソースになる。次のような活動が推奨される。

  • 家族に、精神保健上の問題と対処方法の情報を提供する。情報を共有する前に、精神保健上の問題がある人の許可を得ること。
  • 他の家族や地域住民とケア負担を分担することで、多くのニーズを抱える人をケアする家族がバーンアウトしないよう支援する。
  • 経験を他の人と共有するため、自助グループに加入することを家族に勧める。

BOX9 ウガンダ

経験を共有する母親たち

ウガンダの母親のグループは障害のある子どもをもつ親の組織に加入している。彼女らは、障害のある子どもが産まれた母親たちに会うため、地元の産科病院を定期的に訪問している。母親の話を聞き、その出産に伴う悲しみと喪失感を認め、前向きな経験を共有し、将来の希望をもってもらうようにしている。

エンパワメントのプロセスへの貢献

精神保健上の問題からのリカバリーはエンパワメントと密接につながっている。エンパワメントのプロセスの詳しい全体像と活動の包括的なリストはエンパワメントコンポーネントで触れているので、ほんの少しだけ以下に記載する。

  • CBRスタッフは、敬意を払って精神保健上の問題がある人とその家族にアプローチしコミュニケーションをとるようにする。
  • 精神保健上の問題がある人とその家族が個人的な知識と技術をもっていることを認識する。人々の強みに焦点を当て、リカバリーのプロセスで積極的な役割を担うよう励ます。
  • 精神保健上の問題がある人(そしてもし適切なら家族にも)に不必要なレッテルを貼ることなく、精神保健上の問題に関する情報を提供する。彼らが自らの人権と、権利を行使する方法を認識しているようにする。
  • 精神保健上の問題がある人が自身の希望する行動について、説明に基づいた決定ができるように、地域において利用可能な治療と支援の選択肢について認識させる。
  • 精神保健上の問題がある人とその家族を自助グループにつなぐ。
  • 利用しやすく、手ごろな価格で、満足できる地域精神保健サービスの開発を自助グループが提唱するよう推奨し支援する。
  • 他の人たちと連携して、障害者権利条約についての意識を高め、精神保健上の問題がある人たちが権利を行使できるよう、地方レベルや国レベルの法制に取り組む(エンパワメントコンポーネント参照)。

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