特集/障害者基本計画
(1)千葉県障害者施策新長期計画
全員参加の社会づくりをめざして
千葉県社会部障害福祉課 久我秀行
はじめに
千葉県では、昭和57年に千葉障害者施策長期推進計画を策定し、障害者施策を総合的、かつ積極的に推進してきました。
しかし、近年においては、疾病構造の変化等に伴う障害者の増加や、障害の重度化・重複化、障害者の高齢化等への対応が重要な課題となってきています。また、核家族化や介護者の高齢化などに伴う家庭の介護機能が低下する一方で、障害者が地域社会で自立した生活を望む傾向も強くなってきています。
そこで、こうした障害者を取り巻く環境の変化やニーズの変化等を踏まえつつ、21世紀を展望し、障害者施策の一層の充実を図るため、新たに「千葉県障害者施策新長期計画」を策定しましたので、その概要を紹介します。
1.計画の期間
平成7年度からの概ね10年間としています。
2.計画策定の理念
障害を持つ人も持たない人も、誰もが社会に参加し、一人ひとりが自らの生き方を主体的に選択し決定できる社会の実現を目標としています。
このような社会をつくっていくためには、障害者を特別に対象とした措置を講ずるだけでなく、社会の様々な場面で、障害者の参加や利用を考えた配慮を行っていくことが必要であり、このためには、行政だけではなく、社会の全ての構成員の主体的な参加を得ることが必要です。
そこで、「全員参加の社会づくり」を基本理念として策定しました。
3.計画策定の基本的視点
計画では、次のような基本的な視点にたって、施策の基本的方向と具体的方策を示しています。
◎障害者の可能性の尊重と、主体性・自立性の確立
◎全ての人の参加による、全ての人に住みよい千葉県の創造
◎障害者を取り巻く環境の変化や、ニーズの多様化への対応
◎連携のとれた施策の推進
4.施策の基本的方向と目標
計画では、前述の基本的な視点に沿って、各施策の基本的方向と目標を掲げており、その要旨は次のとおりです。
(1)啓発広報
障害及び障害者に関して正しい理解と認識の定着を図るために、啓発広報を積極的に推進する。
・県における啓発広報の推進
・市町村における啓発広報の促進
・民間団体における啓発広報の促進
(2)保健・医療
心身障害の予防、早期治療、リハビリテーション医療体制の体系的整備及び精神保健対策等を推進するとともに、専門従事者の養成・確保を行う 。
・心身障害の予防、早期発見の推進
・早期療育体制の強化
・医療の充実
・精神保健対策の推進
(3)教育・育成
教育環境を整備し、乳・幼児期から生涯にわたる学習を推進するとともに、教育・医療・福祉等の諸機関がきめ細かく連携する。
・教育の充実
・教育条件の整備等
・教職員の資質の向上
・育成施策の充実
(4)雇用・就業
雇用の促進を図るとともに、授産施設等の整備を進め、福祉的な就労を促進する。
・雇用の促進
・福祉的就労の促進
・職業リハビリテーション体制の充実
(5)福祉サービス
在宅福祉サービスの充実、施設整備の促進及び施設機能の強化等を推進するとともに、福祉人材の確保充実を図る。
・社会参加の促進
・地域在宅サービスの推進
・地域ぐるみ福祉ネットワークの整備
・生活安定のための施策の充実
(6)生活環境(全員参加の街づくり)
障害者があらゆる社会活動に参加できるよう、物理的障壁やコミュニケーションにあたっての障壁を除去し、障害者のみならず、全ての人々にとって住みよい街づくりを推進する。
・住みよい街づくりの推進
・障害者に配慮した住まいの整備
・交通施設等の整備改善
(7)スポーツ、レクリエーション、文化及び国際化
身近な場や施設でスポーツ、レクリエーション等を楽しめる環境整備を図るとともに、指導者の養成・確保や、団体等の育成・活動支援を行うことにより、活動の活性化を図る。
・スポーツ、レクリエーションの推進
・文化活動の推進
・国際化の推進
おわりに
この計画は、障害者施策の総合的、かつ基本的な推進指針としてとりまとめたものであり、具体的な各施策の展開については、県の総合五か年計画において明らかにすることとしています。
また、障害者施策は広範多岐にわたるため、各施策を円滑に推進するための連絡調整組織として「千葉県障害者施策推進連絡会議」を新たに設置し、関係各課等との緊密な連携のもとに、計画理念である『全員参加の社会づくり』の実現に向けて積極的に取り組んでいくこととしております。
(くがひでゆき)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1996年1月号(第16巻 通巻174号)10頁~11頁