特集/「アジア太平洋障害者の10年」中間年を迎えて
域内各国での取り組み
香港における進捗状況
フィリップ・ユーエン
香港政府は、「アジア太平洋障害者の10年」(以下「10年」とする)に関する活動として、1993年以降、毎年(国際)障害者の日記念事業に力を入れている。また、95年に発行したリハビリテーション白書の中で10年を宣言した。
さらに、98年の第11回RI地域会議およびキャンペーン会議を香港で開催することになっている。
さて、本年は10年の中間年の年である。この機会に香港における10年の進捗状況および今後への提言をまとめてみたい。
1 10年に対する認識度
10年のことを知っている市民は、期待されたほど多くないのが実状である。これを知っているのは、地域の指導者とリハビリテーション関係者のみと思われる。
2 10年採択以降の進歩
(1) 1995年、障害者差別禁止法が制定され、1996年、この法令の施行と障害者の機会均等を促進するための機会均等委員会が発足した。
(2) 1995年にリハビリテーション白書を公表し、リハビリテーションに関する今後の方針を明らかにした。
(3) 1994年にリハビリテーションプログラム計画の見直しを行った。
(4) 障害者のための公共輸送機関および雇用機会改善について、毎年各1回、香港総督を議長とした首脳会議が開催され、成果を見せている。
(5) 1994年、裁判所は知的障害者が法廷で証拠事実を述べることを容易にするための指針を策定した。
(6)精神障害者への法的保護をさらに強化するため、現行の精神保健法令の見直しを行っているところである。
(7) 障害者の建築物へのアクセシビリティを強化するため、アクセスデザイン手引き書の見直し作業が続けられていたが、1996年に完成した。
(8) サービス規定を改善し推進活動を行うことにより、障害者の訓練および雇用機会を増大させた。
(9) 政府とNGOの働きかけにより、市民への啓発活動および障害者の社会への統合が推進されている。
3 10年推進に向けて
10年推進に向けて、次のことがらを提案したい。
[ESCAPへ]
障害者が雇用、移動、政策決定面などで社会に完全に統合することを保証するため、域内政府は積極的に行動すること、より強力に奨励すること。
[香港政府へ]
毎年、行動課題の達成状況を報告すること。
[香港市民へ]
差別なく平等で、思いやりのある「万人のための社会」をめざして皆が協力しあうこと。
[当事者団体へ]
政策決定機関に参加し、障害者のニーズと利益が正しく理解されるよう、団体への資金援助を政府に求めること。
[国際協力を促進するため、域内各国へ]
「完全参加と平等」という目標に向け、域内各国で組織化を図り、情報や経験を交換しあうこと。
[RNNへ]
域内の政府活動と役割をテーマとし、さまざまな活動を計画すること。
(香港心身障害者協議会)
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年1月号(第17巻 通巻186号) 18頁~19頁