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1000字提言

沖縄はパラダイス?

内藤喜和子

 青い空青い海、常夏の島沖縄は、障害者にとって暮らしやすいところだろうか。各地を旅してみて沖縄は、日本一異質なところだと思う。言葉、食べ物、宗教、祭事、人間関係や人の意識も違う。沖縄の観光に来る障害者はみんな「沖縄は障害者にとって暮らしやすい」と言い、移り住もうとする人も多い。この私も最初はそう錯覚した。
 しかし、実際に暮らしてみると、制度は確立していないし、ボランティアはいないし、毎日珍しがられるし、周りの当事者は消極的でちっとも動かないしと、どんなにいらだったかわからない。ウチナンチュは確かに老人や子ども、障害者といった弱い立場の人に優しい。道を尋ねて無視されたり、障害者を毛嫌いする人は少ない。
 沖縄にはユイマールという助け合いの文化がある。昔、貧しかった時代、キビ刈りなど手伝い合った。だから、障害者に対しても、何もできないのだから助けてあげなければと思うようだ。離島では対応できないこともあり、在宅より施設福祉が中心で、日常的に健常者と障害者が触れ合う機会はなく、無知から誤解が生まれると思う。最近、施設を出て自立する人やそれをサポートするグループがいくつかでき、うれしい限りだ。
 自立と言えば、沖縄自体自立していない。歴史的には仕方ないかもしれないが、社会的にも経済的にも大和やアメリカに依存している。健常者に依存しあっている。私が名護の小児科に子どもを連れて行くと、「1人でえらいサー」と言われる。最初は「見えないのにえらいね」と言われていると思いムッとしたが、「私でもできないのにえらいサー」という意味だった。確かに病院には夫や祖父母が付いてきており、母親1人で連れてきているのは私だけだった。
 沖縄の離婚率が日本一高いのも、女が自立しているからではない。強依存型夫婦で関係が崩れやすく、実家に帰れば親が「かわいそうにここにいなさい」と迎え入れ、離婚になるのだ。
 とにかく健常者も障害者も、もっと自立すべきだと思う。1人ひとりが自立しあったうえで他の個性を認め合い、共生が成り立つ。そうなった時、ユイマールヌチったから(出会ったら皆兄弟)などという気持ちが息づいている沖縄こそ、だれもが暮らしやすいバリアフリー社会になれる。そんなチュラシマをめざして「恥ずかしいから家にいる」という親せきの言葉を無視し、息子2人と共に外を飛び回っている私。

(ないとうきわこ 沖縄県自立生活センター・イルカ理事)