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厚生労働省の発足について

宮島俊彦

1 統合の目的

 二〇〇一年一月六日から厚生労働省が発足します。厚生労働省は、厚生省と労働省を統合再編してできる省ですが、これは、現在の一府二十二省庁を一府十二省庁に再編する一環として、実施されるものです。今回の中央省庁の再編成では、厚生労働省のほか、建設、運輸、国土、北海道開発各省庁を「国土交通省」、自治、郵政、総務各省庁を「総務省」、文部省、科学技術庁を「文部科学省」に統合し、また、大蔵省と通産省がそれぞれ「財務省」「経済産業省」に衣替えし、環境庁が環境省に昇格します。
また、内閣・官邸の機能強化を図るため、内閣府が設置されます。
 昨年七月に公布された厚生労働省設置法では、まず、任務に関し、「厚生労働省は、国民生活の保障及び向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることを任務とする」と規定しています。また、所掌事務の第一号は「社会保障制度に関する総合的かつ基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること」となっています。
 終戦直後の昭和二十三年に厚生省から労働省が分離独立して、五十年あまりを経た今日、再び両省は統合されることとなりました。
厚生行政と労働行政は、新憲法下における福祉国家発展の礎として共に発展してきました。今回の統合によって、政策面では、年金と高齢者雇用の連携、仕事と子育ての両立支援、障害者の雇用と福祉施策の連携、職域・地域を通じた健康と安全の確保など多くの期待が集まっています。日本は今後、急速に高齢化し、医療、福祉、年金、雇用、男女共同参画などの分野で、横断的で総合的な政策の展開が必要となっており、新しい厚生労働省が統合のメリットを十二分に発揮していくことが求められています。

2 組織再編の概要

 新しい厚生労働省の組織は、図に示しているとおりです。今回の組織再編に当たってはその減量・効率化に努め、内部部局の統合再編、審議会の整理合理化、企画立案機能と実施機能の分離が図られています。企画立案機能と実施機能の分離というのは、政策の企画立案に係わる事務は本省で行い、政策の実施に係わる事務・事業は地方支分部局、外局、独立行政法人などの本省以外の組織で行うことにより、その責任を明確にしようという考え方です。

(1)内部部局

 厚生労働省には、内部部局として一官房十一局人部が置かれます。
現在は、厚生省が一官房九局四部、労働省は一官房五局五部ですので、官房は統合して一減は当然ですが、このほか、局は三滅、部は一減となっています。局については、”厚生省の生活衛生局、労働省の労政局がなくなり、厚生省の児童家庭局と労働省の女性局を統合し「雇用均等・児童家庭局」を置くことになりました。また、部については、水道環境部は廃棄物行政が環境省に移管されるのでなくなり、厚生省の統計情報部と労働省の政策調査部は統合し、新しく食品保健部が置かれました。
 「医政局」は、健康政策局を承継し、医療の普及向上、医療関係者の確保や資質の向上、医薬品の開発や経済問題を担当します。
 「健康局」は、保健医療局と生活衛生局の一部を統合し、健康増進、感染症などの疾病対策、生活衛生関係営業の振興、水道行政などを担当します。また、国立病院部が置かれます。
 「医薬局」は、医薬安全局で行ってきた医薬品、医療用具の安全対策と生活衛生局で行ってきた食品安全、化学物質対策などを一元化し、対物安全対策を担います。食品安全のため、「食品保健部」が置かれます。
 「雇用均等・児童家庭局」は、育児と仕事の両立支援、職場や家庭での男女共同参画の推進などを図るため、児童家庭局と女性局を統合するものです。
 「社会・援護局」には、大臣官房から障害保健福祉部が移されることになりました。介護保険法施行後の福祉行政の中心的役割を担います。
 「老健局」は、老人保健福祉局を承継しますが、老人医療制度は保険局に移管し、介護保険の実施という観点から再編しました。
 このほか、.従前どおり、保険局、年金局、労働基準局、職業安定局、職業能力開発局が置かれます。
 「政策統括官」は、政府全体にまたがる社会政策の課題や省内の部局の所掌を超えた政策に取り組むために、新しく設けられました。
社会保障制度に関する総合的かつ基本的な政策の企画立案、少子高齢化社会への総合的な対応に当たります。

(2)審議会

 厚生省に置かれている二十二の審議会は、政策の企画立案に関する審議を行う二つの審議会(基本的政策型)と、法令に基づく基準作成、行政処分、不服審査などに関する審議を行う六つの審議会(法施行型)に整理合理化されます。
 二つの基本的政策型審議会とは、医療、福祉、保険、年金などについて審議する「社会保障審議会」と、科学技術、公衆衛生などについて審議する「厚生科学審議会」です。また、六つの法施行型審議会は、現行のまま存続する「中央社会保険協議会」「社会保険審査会」「援護審査会」と、複数の審議会の機能を承継する「医道審議会」「薬事・食品衛生審議会」「疾病・障害認定審査会」です。
 このほか、厚生労働省には、労働関係の三つの審議会、独立行政法人の業績評価などを行う「厚生労働省独立行政法人評価委員会」が設置されます。

(3)地方支分部局

 地方支分部局というのは、国の事務を地方において実施する出先機関のことです。厚生労働本省では、地域ブロック単位で地方厚生局(七局一支局)と都道府県単位で労働局(四十七局)が置かれます。地方厚生局は、国立病院・療養所の管理、麻薬取締、医療・薬事・福祉の監視や健康保険組合などの指導監督を行います。また、都道府県労働局は、下位機関として労働基準監督署と公共職業安定所を置き、労働基準監督や職業安定の実施に当たります。

(4)外局

 外局というのは、もっぱら事業の実施を担当するために、本省から独立して置かれる組織です。厚生労働省の外局として、「社会保険庁」と「中央労働委員会」が置かれます。社会保険庁は従来どおり、医療保険事業や年金事業を実施しますが、今年の四月から、地方支分部局として、都道府県単位の「地方社会保険事務局」が置かれ、社会保険事務所がその下位機関として位置付けられました。

(5)独立行政法人

 独立行政法人は、今回の行政改革で新たに設けられる法人制度で、従来、国で行っていた事務や事業を国から独立して行わせ、業務の効率性や質の向上を図ろうとするものです。厚生労働省関係では、平成十三年四月に、健康栄養研究所、産業安全研究所、産業医学総合研究所を独立行政法人化し、さらに、平成十六年度には、国立病院・療養所(定員約四万五千人)を移行することとしています。

3 障害者行政との関係

(1)障害者行政と組織再編

 今回の組織再編の中で、障害者行政に関係のあるものとしては、まず、従来厚生省の大臣官房にあった障害保健福祉部が「社会・援護局」に移管されたことがあげられます。これは、厚生労働省の部の数が全部で八部にもなるので、統計情報部以外の部は各局に置くことにした結果です。また、労働省の職業安定局の「高齢者・障害者雇用対策部」はそのままですので、厚生労働省では、障害者関係の部が二つできることになりました。今後は、障害者の保健、福祉、雇用政策が同じ省の中で検討されることになり、いっそうの施策の充実が期待されています。
 このほか、障害者に関する政策についても、社会保障審議会でより大きな観点から審議されることとなりました。また、従来、身体障害者福祉審議会で審議されていた障害程度の認定は疾病・障害認定審査会が担当します。

(2)障害者行政の新たな展開

 厚生省と労働省の統合により、障害者行政においても新しい芽が生まれてきました。来年度の予算要求では、厚生行政と労働行政の一体的推進のため、次のような共同事業が盛り込まれています。
○障害者雇用機会創出事業の創設 民間の事業所に障害者を短期間の試行雇用の形で受け入れてもらい、事業主の障害者雇用のきっかけづくりを積極的に推進します。
○職場適応援助者(ジョブコーチ)による就職後の人的支援パイロット事業の実施 障害者の就職後の職場適応を支援するジョブコーチについて、その養成方法や援助技法を開発するため、実地の検証・研究を行います。
○障害者就業・生活総合支援事業の拡充 「障害者就業・生活支援センター(仮称)」の設置に向け、試行的に、社会福祉法人等に障害者の就業・生活の支援のための拠点を拡充します。
○グループ就労を活用した精神障害者の雇用促進モデル事業の実施 精神障害者地域生活支援センターを運営する社会福祉法人等が事業所と請負契約を締結し、数人の精神障害者のグループが指導員の支援のもとに一定期間就労し、一般雇用につなげていきます。
○企業等の事業所における授産活動の推進による障害者の就職の促進 障害者授産施設の入所者が企業等の事業所において授産活動を行い、終了後に公共職業安定所が、職業相談、個別求人開拓、職場定着の支援等を行い、障害者の企業等への就職を促進します。
 いずれの事業も、福祉と雇用施策の一体的展開という観点から生まれてきたものです。今後、障害者が就業していくための施策がいっそう充実していくものと考えています。

(みやじまとしひこ 厚生省大臣官房組織再編準備室長)


厚生労働省の機構

「厚生労働省の機構 拡大図」

(内部部局)
1官房 11局 2総括室 1次長 8部

厚生労働省の機構についてはこちらをご覧下さい。http://www.mhlw.go.jp/general/sosiki/index.html