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ケアについての一考察

こころのふるさと
“しののめハウス”

山田礼子

 今結婚した旦那と交際する前に、「池田君しののめハウスに来てるらしいで」そんな友人の言葉を耳にし、ただ、会うための口実のように最初、しののめハウスに顔を出しました。
 きっかけがそのような下心からでしたが、しののめハウス(大阪府堺市)に通いはじめて数えてみると4年目になります。
 私の24時間の中で、しののめハウスの生活支援の役割はとても大きいです。1食200円~300円でバランスのとれたおいしい食事を食べられるのはもちろん、最初のうちは洗濯や入浴サービスも利用しました。
 カラオケの音響はどこのカラオケBOXにも負けません。1曲30円、2台のマージャン台からは惜敗と勝利の声が今夜も賑やかにしののめハウス内をこだまします。かわいいロン(犬)の声もこだまします。

 通所して4年目となった今では、私は夕食サービスとカラオケを利用しています。しののめハウスは、祝日を除く月~金の昼1時から夜9時過ぎまでの開所ですが、夕方から閉所までほぼ毎日通っています。
 夕食は女の人では食べきれないほどのボリュームと栄養価の高いメニューが日替わりで味わえます。毎日お昼を過ぎると、今夜のおかずは何かな? と夕食の時間帯が来るのが楽しみです。
 カラオケのサービスは毎回利用しませんが、時々利用するときは、1日30曲を超えるときもあり、そのような日の帰り道は、かなり気分爽快で夜もぐっすり眠れて、私にとっては何よりの精神安定源です。このカラオケサービスは、毎回利用すると他の利用者の迷惑になる場合があるので、一定期間空けるのがミソです。

 私が外で働いていたころ、土曜日で早く帰宅できるときがあり、北花田駅の公衆電話から「もう夜9時だから無理かな」と思いながらしののめハウスに電話すると、「まだ開いているからおいでよ」と施設長の菅野先生の声が耳に届きました。自転車をこいで、しののめハウスに着くと、いつもと何も変わらないしののめハウスのメンバーとおいしい料理が待っていました。その時は、障害のことを告げずに働いていたので、とてもしんどかったのですが、時々、しののめハウスに足を運ぶと、長年会っていなかった家族に会うような懐かしい感じがわいてきました。

 生活支援センターは、利用者側からすると、いろいろなサービスも大切な要因です。たとえば、安くて栄養価が高く、ボリューム的にも満足な夕食サービスと、湯船にしっかりつかれる1日100円の入浴サービスと、1回30円の洗濯サービスなどです。そして、そこはだれでも、最初の一歩を踏み入れやすいOPENな場であり、そして無理なく通えて、少し期間が空いて再び訪れるのにも、通いやすい、故郷のようであってほしいのです。

 特に私たちは心に病を持つ人間です。親、兄弟と離れ、一人暮らしの人も少なくありません。そのような人たちが、家族よりも本当に家族のように思える人々の集まりであってもいいと思います。そのような場で、日々温かい食事と暖かいメンバー(たまにはけんかもしますが)が何気ない時間を共にすることで、生活支援センターから気持ちの支援、精神の病の支援へと広がることもありなのではないでしょうか。

 私が、しののめハウスに通所した、はじめの一歩は不純な動機でしたが、4年経った今、私たちの生活の中で、なくてはならない場所となりました。
 しののめハウスは利用者のすべてを支援するわけではなく、食事をすれば食器洗いを各自がして、30円を払えば洗濯機を回すのは各自です。言ってみれば、体の不自由な人が、一人では歩けなくても、転びそうになったとき、転ばぬ先の杖のようであってほしいです。

(やまだれいこ しののめハウス)