【厚生労働省】
新しい「障害者基本計画」の推進について
1 重点課題としての精神障害者施策
新しい「障害者基本計画」は、障害者基本法第七条の二第一項に基づく法定計画として、昨年12月24日に閣議決定され、これにより、平成15年度から平成24年度までの10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向が定められました。
その中では、重点的に取り組むべき四つの課題の一つとして、「精神障害者施策の総合的な取組」を掲げています。精神障害者施策については、身体障害者や知的障害者に比べて遅れが指摘されているところであり、その計画的かつ着実な推進を図るため、厚生労働省内に大臣を本部長とする「精神保健福祉対策本部」を設置し、省を挙げて総合的な取組について検討を進めているところです。
2 分野別施策
新しい「障害者基本計画」に記されている分野別施策のうち、厚生労働省に大きく関係する部分としては、「生活支援」、「雇用・就業」及び「保健・医療」の3分野が挙げられます。
「生活支援」の分野においては、
- 身近な相談支援体制の構築、権利擁護の推進、障害者団体や本人活動の支援といった利用者本位の生活支援体制の構築
- ホームヘルプサービス、グループホームなど在宅サービス等の充実
- 雇用・就業施策の推進、年金や手当等の給付による経済的自立の支援
- 入所施設は真に必要なものに限定するとともに、施設を在宅支援の拠点として地域の重要な資源と位置づけ活用する等、施設サービスの再構築
等を施策の基本的方向として掲げています。
「雇用・就業」分野においては、
- 障害者雇用率制度を柱とした施策の推進、障害者の能力・特性に応じた職域の拡大、ITを活用した雇用の促進等障害者の雇用の場の拡大
- 保健福祉、教育との連携を重視した職業リハビリテーションの推進等総合的な支援施策の推進
を施策の基本的方向としています。
また、「保健・医療」分野においては、
- 障害の原因となる疾病等の予防・治療
- 障害に対する適切な保健・医療サービスの充実
- 精神保健・医療施策の推進
等を施策の基本的方向として掲げ、それぞれ今後の施策を実施していくこととしています。
3 重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)
前記「障害者基本計画」に基づき、その前期5年間において、障害者施策の一層の充実を図るため、重点的に実施する施策及びその達成目標を定めるものとして、「重点施策実施5か年計画」(新障害者プラン)が定められました。その中では、厚生労働省に関係する主な部分として、
- 生活支援のための地域におけるサービス基盤の整備
- 精神障害者の退院・社会復帰に向けた施策の充実
- 障害の原因となる疾病の予防及び治療・医学的リハビリテーションの推進
- 障害者の自立・社会参加のための雇用・就業の確保
の4項目が定められています。
- 「生活支援のための地域におけるサービス基盤の整備」については、地域生活を支援するための在宅サービスの充実を図るため、ホームヘルパー、ショートステイ、デイサービス等の基盤整備を図るとともに、これとあわせて、地域における住まいや活動の場を確保する観点から、グループホーム、福祉ホーム、通所授産施設等の基盤整備を図ることとしています。
なお、施設サービスについては、今後は通所施設の整備に努めるとともに、入所施設には数値目標を設けず、真に必要なものに限定することとしています。 - 「精神障害者の退院・社会復帰に向けた施策の充実」については、条件が整えば退院可能とされる約7万2千人のいわゆる社会的入院患者について、10年のうちに退院・社会復帰を目指すこととし、保健・医療と福祉の両面にまたがり、各般の施策の充実を図ることとします。
- 「障害の原因となる疾病の予防及び治療・医学的リハビリテーション」については、難治性疾患に関する研究開発や周産期医療ネットワークの整備などを行っていきます。
- 「障害者の雇用・就業の確保」については、トライアル雇用、職場適応援助者(ジョブコーチ)、各種助成金等の活用、職業訓練の実施などにより、平成19年度までにハローワークの年間障害者就職件数を3万人に、平成20年度の障害者雇用実態調査における雇用障害者数を60万人にすることを、目指します。
4 最後に
厚生労働省においては、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現に向けて、以上の施策を中心として全力で取り組んでいくこととしています。
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課)