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列島縦断ネットワーキング

東京
異業種交流を超えた
ノーマライゼーション交流会議

古谷博之

 去る2月22日(土)、タスク主催のシンポジウム「異業種交流を超えたノーマライゼーション交流会議」を行いました。主催のタスクはトータルアクセスサポートセンターの通称で、障害当事者を中心とし、計画段階から「バリアフリー社会の街づくり」や「福祉機器の開発」に積極的に加わり、だれもが気持ちよく生活できる提案、相談を行う事業展開を目的として2000年1月に設立しました。
 シンポジウム当日は約70人の方々に参加していただき、障害当事者をはじめ福祉機器販売や福祉機器開発者、出版社、学生、介護ヘルパー等、多業種の方々の参加で始まりました。
 会議は2部構成で行われ、前半に神奈川県総合リハビリテーションセンター工学研究室室長藤井直人氏の講演を、後半では分科会として「福祉用具に関して」と「社会参加とまちづくり」の二つのシンポジウム形式で開催しました。
 1部の藤井氏の講演では「障害を持つ人たちのノウハウが活かされる時代」がテーマで、藤井氏の研究成果である福祉用具の開発研究の紹介や欧米の公共交通アクセスに関するレポート、車いす使用者の安全確保の課題、福祉機器評価・モニターを支援する海外の非営利組織のレポートなど資料やスライドを使い、大変興味深い内容でした。中でも交通機関での安全性などはさすがに欧州的考えだと思いました。日本でも車いすに乗ったままバスやリフト付きタクシーに乗車できるようになりましたが、欧州では一歩進んでいて、車いすで乗り込んだ際に乗り物が万一の急ブレーキや衝突が起きたことを想定し、車いすの固定方法や乗り込み方法、またそのときの車いすの強度までが基準化されつつあるようです。
 また、国内では開発された福祉機器のモニターや評価なども利用する人が実際に使ってみて、本当に使えるものなのかどうか評価しなければ自画自賛になってしまいます。現在、福祉機器を評価し商品化していくことをサポートする機関として、福祉機器を研究している大学や専門家、NPO団体を交え機器の審査をし、障害当事者に使用してもらい、その結果使いやすい機器の商品としての評価をしていく方法が考えられているところです。
 2部の分科会では当事者の能力や経験を活かし、住環境や交通環境が当事者不在で計画、設計されるのではなく、共に計画参加していけることを進めていくことなどが話し合われました。これはタスクが中心としている事業の一つで、障害をもつ人たちの多くは地域の中で自立生活を築くためにそれぞれに試行錯誤を繰り返し、多くの経験やさまざまな生活の知恵を工夫しています。このように、当事者がもつノウハウを積極的に社会貢献につなげていくことがこれからは望まれると思います。
 これらのノウハウを活かしたタスクの事業の一つに、現在実施している青少年育成のための「体験学習」プログラムがあります。これは校外学習で中高生を対象に、街中の建物や交通機関を使い、バリアフリーについて障害当事者がインストラクターとなり、一緒に歩きながら説明し、交流を図ることを目的として行っているプログラムです。将来、このプログラムを受講した子どもたちが社会の一端を担うことを期待します。
 最後に、今回のシンポジウムで印象に残ったことは、まだまだ障害当事者抜きの設備や施設の設計がなされており、宣伝文句ではありませんが、「主婦の意見で作られました」とか「働く○○の意見から開発しました」のように、一番利用する人間の立場に立ってモノつくりや意見を吸い上げていただき、まただれもがこのようなことに参加できる機会がもっと増えるようしていきたいと新たに思いました。

(ふるやひろゆき タスク副事務局長)