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セーリングはバリアフリー

須藤正和

 海は遠くから眺めるものそして、年一度ぐらいは海水浴に行くこと、これは日本ではとても平均的なことではないでしょうか。私もヨットエイドと出会う前はそうでした。1991年の2月、新聞に「障害者用ヨットがアメリカから来る、4月から講習会が始まる」を見て、私のヨットライフが始まったのです。
 講習会でみたヨットはフリーダム・インディペンデンスという全長6.3mのヨットで船全体が不沈構造になっていて、障害が重くても乗れるヨットでした。初めてヨットに乗って海に出た時、海の雄大さ、静けさ、そして波と風の世界に魅了されたのです。
 それから一般のヨットに乗り、ソナーという3人乗りのヨットでアトランタパラリンピック、シドニーパラリンピックでは2.4mRという1人乗りのヨットに乗ってレースに参加しました。
 毎年2.4mRクラスの世界選手権(健常者)では70艇の中に障害者が15艇ぐらい、その中で車いす使用者は半分ぐらいいます。他のスポーツではありえないことですが、そんなことができるのがヨットなのです。そして、シドニーパラリンピックの金メダリストが翌年の2.4mRクラスの世界選手権のチャンピオンでもあるのです。障害者が障害をもっていながらも健常者に勝てるスポーツがヨットであることを証明してくれたのです。もちろん、これは今回が初めてではないのです。大西洋横断の過酷なヨットレースでも多くの障害者がレースに出場して、良い成績を収めています。
 そして、私はいまアメリカのフロリダ州のセントピーターズバーグに来ています。今年の9月4日からギリシャで開催される世界選手権で来年のパラリンピックの出場権を取る最後のチャンスのために練習しているのです。ここには恵まれた気候とソナー、そして2.4mRがいつもある土地です。日本では設備上1人で海に出ることができませんが、ここでは私1人で、自分でヨットを艤装(セールなどをセットしたり)して、そして1人で海に出て行けるのです。その開放感と自由を得た喜びは言葉で表すことができません。
 これから、日本でも設備を整え、人の手を借りずに、だれでも、いつでも海に出たい時に出られる環境を作りたいと思っています。そして、世界に通用するセーラーを一人でも多く育てたいと思っています。

(すとうまさかず ヨットエイド九州)