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列島縦断ネットワーキング

兵庫
地域に権利擁護相談支援センターを!!

~「にしのみや権利擁護支援センター」の活動から~

上田晴男

 支援費制度等の福祉サービスの利用契約化は、それを利用する人たちの権利擁護の取り組みにも新たな課題を提起してきました。
 たとえば、それは支援費の支給申請や契約という「法律行為」における本人の「主体」を確立すること(具体的には、成年後見制度の利用支援や適正な契約内容を確保するための支援等です)であったり、苦情解決の仕組みを活用して自分の意見や要望をきちんと伝えたりという「権利行使」であったりします。そして、何よりも地域で自分らしく暮らすために必要な支援を確保することが権利保障の課題として求められてきました。
 これまでの措置制度での権利擁護は、権利侵害からの保護・救済やその予防という役割が大きくありました。1990年代から始まった施設オンブズマンの取り組みは、こうした「事後的」な権利擁護から日常的な意見聴取とその反映を通してサービスの向上に結びつけるという権利擁護の転換点となりました。
 その後、社会福祉法の成立により、福祉サービスが新たな利用形態になるのに伴い、基本的な利用者保護の仕組みは、成年後見制度や消費者契約法等、さまざまな形で整備されてきました。
 「にしのみや権利擁護支援センター」は、こうした背景の中で新たな権利擁護のニーズに応える地域における「権利擁護相談支援事業」の制度化をめざして、2002年10月に設立されました。ここでの活動は、成年後見制度の利用支援や地域での暮らし、福祉サービスを利用しているうえでのさまざまな権利擁護に関する相談支援が中心です。別名をPASセンターとしていますが、「PAS」は、Protection & Advocacy Support の略で、権利擁護・代弁に関する支援サービスを意味しています。
 活動を担うメンバーには、弁護士や司法書士、社会福祉士等の専門職が中心となっており、兵庫県内の各専門機関ともメンバーを通して連携しています。
 初年度は毎週の「権利擁護なんでも相談」をはじめ、「家族のための成年後見教室(障害者編、高齢者編)」や権利擁護市民セミナーの開催等を行ってきました。
 2003年の4月から7月までの「権利擁護なんでも相談」の実績は、別表の通りです。4か月で32件というのは、延べ件数であっても、週1回のしかも午前中だけの相談活動という点ではニーズの高さを示していると思われます。方法としては、来所が一番多いのですが、メールや出張等の方法も利用されてきており、今後の拡大が予想されます。
 内容的には、成年後見の利用支援が多く、苦情対応の関係や契約締結に関する支援等の福祉サービスの新たな利用形態に対応したものもあります。そのほかに、権利侵害の救済に関わるもの、犯罪者となってしまった知的障害者の支援等もあり、まさに多種多様です。対象者も知的障害者、精神障害者、高齢者と、これも多様です。障害者の地域生活支援センターや精神保健福祉センター等の公共的な機関との連携もあります。
 こうした実績は、やはり地域を基本とした権利擁護の専門的な「相談支援センター」が必要であることを示しています。
 現在、NPO化をすすめており、今後ますます増大すると思われる成年後見の利用ニーズに対応して、法人後見センターとしての役割を担うとともに、地域の権利擁護支援ネットワークを形成していくことをめざしています。また今年度は、後見人候補者や支援に関わる人材の確保のために、独自に設定した「権利擁護支援員」の養成も企画しています。
 昨年末に示された国の新障害者長期計画にも、地域における権利擁護の仕組みの必要性が明記されています。しかし、「重点5か年計画」にはその記述はありません。社会保障審議会にも権利擁護に関する分科会等も設置されていません。高齢者をはじめ、障害者や児童、女性に対する権利擁護等、あらゆる分野で権利擁護に関するニーズが高まっているにもかかわらず、それらに対応する地域における専門的な相談支援機関の必要性は議論されていないのが現状なのです。
 PASセンターの取り組みは、権利擁護という市民としての基本的な権利行使(自分の権利は自分で守るという意味)を行うことが困難な人たちの支援を、社会的な支援サービスとして事業化することを求めています。皆さんのご支援・ご協力をお願いいたします。

「権利擁護なんでも相談」相談件数
(2003.4~)
棒グラフ 相談件数

相談方法の状況
円グラフ 相談方法の状況

(うえだはるお にしのみや権利擁護支援センター代表)

◆にしのみや権利擁護支援センター(PAS)ホームページ
http://www.pasnet.org